2591.胡錦濤と曽慶紅の駆け引き



中国指導部の政治闘争が面白い。その検討。   Fより

中国の外交はその成果を益々発揮している。イランとイスラエルの
首脳を中国に呼び、和平を呼びかけているし、それに対して両国は
中国に感謝している。中国外交の成果であり、日本国粋主義者は、
中国との敵対が日本の世界的な孤立を生むことを知らないようだ。

そして、李登輝氏までが「台湾独立、主張したことない」と発言し
て、李登輝氏も日本の国粋主義者を見捨てている。このように日本
の国粋主義者が主張する中国敵視政策は破綻している。米国も中国
と戦略的なパートナーとして対話をしているので、日本が中国敵視
政策をすると米国は困ることになる。

しかし、その中国外交は成功しているが、内政はガタガタになって
いる。曽慶紅が胡錦濤に国家主席の地位を譲るよう求める動きや、
胡錦濤が北海艦隊の演習を視察した際に、胡錦濤の乗った軍艦が砲
撃を受けたことなどに出ている。

この原因が上海閥との闘争だけではなくて、どうも退役軍人の不満
も起因している。そして、上海閥の実力者・陳良宇が逮捕されたた
めに、現在、曽慶紅が上海閥トップになり、かつ太子党(中国共産
党元首脳の子供達)のトップでもあり、軍隊内部の人脈も築いてい
る。

それに比べて、胡錦濤は共産党青年団から這い上がった成り上がり
であり、事なかれ主義の「温室の花」で、その権力基盤が強固では
ない。共産党青年団出身の幹部が多数要職に着いているが、それで
胡錦濤・温家宝の執政能力が顕著に向上したわけでは決してない。

胡錦濤は曽慶紅に対抗するには、その権力基盤をより強固にする必
要がある。1つには軍人の処遇改善であり、もう1つが国民に期待
を持たせるための民主化革命である。このために、米国も民主化を
期待して胡錦濤・温家宝政権を支持している。

しかし、現在、集団指導体制である政治局常務委員は胡錦濤(総書
記)、呉邦国、温家宝、賈慶林、曽慶紅、黄菊、呉官正、李長春、
羅幹の9名であるが、黄菊氏は上海閥汚職に関与して失脚状態にな
っているが、それでも胡錦濤派は温家宝と李長春で、後は曽慶紅派
(上海閥)になっている。羅幹は少数民族であるために、胡錦濤派
である可能性が高いが、それでも4対5か、4対4である。

秋の第17回党大会で、胡錦濤が青年団出身者を大量に政治局常務
委員に登用しようとしているが、それを阻止しようと曽慶紅派は、
いろいろなラインから胡錦濤を苦しめている。特に軍部を動かして
いる。

しかし、それとは違う兆候も出ている。省政府・県政府の高級役人
・党幹部の汚職や農民からの土地取上げなどの各級役人の横暴から
、中国全土で群集暴動事件が多発している。その70%から80%のリ
ーダーが退役軍人であるという。全国各地の退役軍人の暴動関与は
、全て、直接中央軍事委員会に報告されている。

退役軍人の人権活動は、現役軍人の広い支持と同情を得ている。な
ぜなら、現役軍人の94%が退役に直面している。この状況は近い将
来のわが身と、中国人民解放軍の軍心を直接に動揺させている。

このため、軍心の安定は、2007年における胡錦濤の最重要課題
となっている。しかし、胡錦濤にとって明らかなことは、反腐敗に
よって、退役軍人の「民心」を獲得することはできるが、現役の司
令官の反応はそれとは異なるということである。元・海軍司令官・
王守業の汚職、収賄、公金横領は、軍の上層部数百名が連座するこ
とになり、事件の広がりに胡錦濤も王守業を減刑した。このように
軍部把握は難しい。

退役軍人は、中国の矛盾した専制社会主義と市場主義の混合した社
会に直面して、共産党に裏切られたと思うようである。しかし、そ
の共産党を牛耳っているのが実質的に太子党であり、平民出身の胡
錦濤、温家宝は、彼らのために働き、単なる社長として彼らの管理
を手伝っているにすぎないとも見える。現在の体制において、胡錦
濤は曽慶紅及び太子党を超えることができない。

この太子党の政治支配から権力を胡錦濤総書記が奪うのは、権力構
造を民間に移す民主化しかない。それではなぜ、太子党が強いのか
?これは中国のトップ家族は中南海という狭い範囲に住み、子供達
が友達同士で、かつエリートとして育てられるために、固いネット
ワークが形勢されるからである。

胡錦濤と同じ共産党青年団から這い上がった胡耀邦は、太子党と対
抗するために改革開放路線と自由化路線を打ち出したが、その理由
で保守派という太子党からの要請で失脚している。次の趙紫陽も共
産党青年団出で、同じく学生や知識人らの民主化運動による天安門
事件で失脚している。このように太子党は権力を確立し、次の江沢
民は太子党と結び、太子党の権力を犯さなかった。

このように共産党青年団出身の胡錦濤・温家宝政権が退役軍人と結
び、民主化に行くと太子党との決定的な対決で負けるために、その
ような無謀はしないように見える。
そして、太子党の汚職で社会秩序が乱れて、軍の反乱に繋がる心配
も出ている。
さあ、どうなりますか??
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中国がイラン・イスラエルの仲裁に 2007/02/02[JANJAN]

【北京IPS=アントアネタ・ベツロヴァ、1月12日】

 イランの核兵器獲得を阻止するため、イスラエルが戦術核兵器を
使ってイランを攻撃する計画かもしれないとのセンセーショナルな
報道がある中、中国はイランとイスラエルから指導者を相次いで北
京に迎え、この2週間、中東紛争交渉者というこれまでにない役割
を演じた。

 イランの核交渉責任者アリ・ラリジャニ氏が先週北京を訪問した
のに続き、今週は、拒否権を行使できる国連安保理常任理事国にイ
ラン制裁の強化を働きかけることを目的に、イスラエルのエフード
・オルメルト首相が中国を訪れた。

 両政治家ともに、中国外交に感謝の意を示し、訪中は成功と評価
した。オルメルト首相の訪中に先立ち、北東の都市ハルビンではユ
ダヤ人共同墓地の修復が行われ、広く報道された。オルメルト首相
の祖父母が19世紀ロシアでの迫害を逃れてハルビンに亡命、父親
はイスラエルに移住するまでハルビンで育った。中国は大規模な修
復工事に300万元(38万5,000米ドル)を投じた。

 オルメルト首相は、中国指導者との会談は「期待以上」の成果を
上げたと語った。「中国政府がイランの核武装を望まないとの考え
を明らかにしていることは極めて重要」と、1月11日北京を離れ
る前に記者団に語った。

 一方イランのラリジャニ氏は、北京滞在中、イランと中国の関係
、とりわけ拡大しつつある商業関係は、たとえ中国政府がイランの
核研究プログラム非難に米国をはじめとする安保理理事国と同調す
る決定を下しても、その影響は受けないことを強調しようと努めた。

 「当然ながら、こうした制裁の背後にいるのは誰か承知している
。だから誰のことも責めてはいない」とラリジャニ氏は先週記者会
見で語った。さらに「長期の戦略的関係にある国は、戦術的な問題
を理由に関係を改めることはしない。そしてこれは戦術的な問題で
あった」と述べた。
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「台湾独立、主張したことない」 李登輝氏発言に波紋(ASAHI)
2007年01月31日22時43分
 中国が「台湾独立派の大親分」と一貫して非難している台湾の李
登輝(リー・トンホイ)前総統が、「私は台湾独立を主張したこと
はない」など従来の立場を百八十度ひっくり返す発言をしていたこ
とが31日明らかになった。その真意をめぐって台湾政界は大揺れ
になっている。 

 31日に発売された大手週刊誌「壱週刊」の29日の取材で語っ
た。李氏は「台湾は事実上主権が既に独立した国家だ」としながら
、「このうえ独立を求めることは後退であると同時に、米国や大陸
(中国)との多くの問題を引き起こして危険」と断じた。そのうえ
で「私は台湾独立派ではない」と明言した。 

 また「大陸の多くの団体や個人が私の大陸訪問を希望している。
うまくいけば孔子が巡った道を私も歩いてみたい」とも述べた。 

 李氏に近い筋によれば、昨年後半から中国側から李氏への訪中要
請が積極化しているという。08年の北京五輪開催などをにらんだ
中国の「微笑戦術」の一環とみられ、李氏が「台湾独立」を表立っ
て主張しなければ、中国要人との会談さえ現実味を帯びてきそうだ。 
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対中武器禁輸解除に反対=人権状況を重視−欧州議会
1月27日16時0分配信 時事通信

 【ブリュッセル27日時事】欧州議会はこのほど、欧州連合(EU)
が1989年の天安門事件を受けて実施している対中国武器輸出禁止措
置について、「人権および社会的・政治的な自由をめぐる状況に明
確かつ持続的な改善が見られない限り解除すべきではない」とする
報告を圧倒的多数の賛成で承認した。発動後17年たち、一部加盟国
からは解除を求める声も強まっているが、人権問題を重視する欧州
議会としては、そうした動きをけん制する狙いがある。 


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