2572.日本状況と個人の規範について



日本が10年のデフレを乗り越えて復活してきたが、日本の現状を
分析し、次を構想する必要がある。    Fより

日本の工場が中国や東南アジアにシフトして、労働力過剰な状態に
陥り、かつ中国から安価な商品が流入してデフレになり、かつ日本
経済は不動産バブルが弾けて、不良債権が膨れ上がり、3重の苦難
に直面した10年であった。

しかし、やっと不良債権の処理が終わり、かつ日本でしかできない
製品の工場が建ち始め、また日本企業が積極的に海外に進出して、
企業は社員が必要になってきた。企業が積極的に世界に飛び出して
いる。それと、世界で売れている日本商品は日本文化を基盤にした
製品であることが分かってきた。この商品は日本で作るか、日本企
業が世界で作るかしか、その維持が出来ない。しかし、その商品を
構成するキーデバイスや工作機械などは秘密保持のために、日本で
製造するようになってきている。

日本国内に目をやると、退職者が急増して社員が足りなくなり、か
つデフレで価格が減少した製品自体は赤字でも、その後のメンテな
どのサービスで黒字にする企業モデルに変化して、メンテナンス要
員が大量に必要になっている。このメンテナンス要員が海外に逃げ
ていった工場から追い出された労働者を吸収するベースになって来
た。

それと、女性が会社の中核として活躍するようになり、その家庭を
支えるサービス業も出てきて、東京には仕事があるし、労働不足を
起こしている。このため、東京では人口が増加して、その増加した
人口を支えるインフラが今、急ピッチで作られている。インフラに
はビル、地下鉄、マンションがあり、道路も臨海部では作られてい
る。このように日本が復活した状況にある。

しかし、今後の日本は中国の追い上げを受けるために、日本文化の
一層の活用が必要となっている。

このため、日本文化を解析する必要になっている。このコラムでも
日本文化を解き明かすように古代日本や神道を取り上げているが、
神道だけでは日本文化を言い尽くしたことにならない。

ここで注目するのが、山本七平が書いた日本文化論の膨大な本であ
る。その本を再度読み始めて気がつくのは、日本文化の骨子は神道
であるが、その中核に肉付けしているのが、中国の諸子百家の思想
である。孔子・孟子・老子・墨子・孫子などのいろいろな思想、特
に日本に多大な影響を与えたのが論語である。その発展系である朱
子学やその朱子学に反対した陽明学など、日本の規範は中国の古典
で作られている。

一方、欧米ではエンロンのような企業犯罪を防止するSOX法など
の企業倫理を法律で規定する方向であるが、その法律施行で明らか
になったのは、法律の規定が複雑で、その複雑な規定でも企業犯罪
を除去できないことであった。このことから個人の倫理規範を定義
する論語などの中国の古典に注目する米企業経営者が出てきた。
その個人の規範を確立して、法の規定を軽くしないと、企業経営に
大きな負担になり、企業競争力が落ちると米企業家は見ているよう
だ。

また、中国ではその古典が省みられていない。共産思想と相容れな
いために批判されて、50年の間特定の研究者しか研究できない状
態にあり、退化した。日本は中国古典に造詣が深い故安岡先生のよ
うな学者が多数いる。

しかし、日本でも時代変化が早くなり、思想などの固定性が強いも
のに関心がいかなくなり、現在の情報を追いかけるだけで手一杯で
、日本でも中国古典が読まれなくなっている。そして、思想が生み
出す価値も忘れ去られているように感じる。個人の規範確立も疎か
になっている。

このために、個人で構成する日本文化自体にも深みが無くなってい
る様な感じがする。古典を批判する人が多いが、批判するべき中国
古典を知らないで批判しているように感じる。

日本は中国古典を捨てる方向で、米国では反省から中国古典を見直
している。このため、日本の中国文学者が米企業家から持て囃され
ている。しかし、日本も米SOX法を真似したJ−SOX法が施行
されるが、その法律の規定は複雑で、日本の企業家も個人の規範確
立がいかに大切かを思い知るはずである。


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