2544.「イラン研究グループ」の提言と影響



「イラン研究グループ」の提言とその影響を検討しよう。 Fより

イラク研究グループの提言がされたが、画期的な内容ではなくて、
2008年春までに撤退するというものであった。周辺国を含めて
イラク紛争を解決するべきであるとしている。

ブッシュ大統領は、イランとシリアへの対話に懐疑的であり、イス
ラエルは、この提言に危機感を抱いている。この提言が出て、シリ
アやイランは、歓迎している。しかし、シリアとイランの影響力が
広範囲に及び始めたことが明らかになっている。

まず、レバノンで親シリアのシーア派ヒズボラが力を持ち、キリス
ト教の政治的な指導者を暗殺し、それだけではなく首都ベイルート
で、シニオラ現政権を非難する大規模なデモを行う。

また、テヘランを訪問しているパレスチナ自治政府のハニヤ首相が
、「イスラエルの存在認めず」と発言するなど、中東でイラン・シ
リアの影響下にある勢力が力を持ち始めた。

シリアは先月、イラクとの国交を四半世紀ぶりに回復し、米国に協
力する姿勢を見せているが、どちらにしても、シリアとイランの影
響力は増す。中東で、シーア派の影響力が増えることになる。

しかし、そのイランとシリアの中東における影響力の増加で脅威を
感じているのは、イスラエルだけではなくて、サウジアラビアなど
の親米・スンニ派諸国である。イラク各派の和解会議を開き、イラ
ク自体で平和を取り戻すべきと、スンニ派諸国主流のアラブ連盟本
部で外相会合を開き、イランなどの周辺諸国の干渉を排除するべき
と提言している。

そして、このスンニ派諸国がイスラエルに要求しているパレスチナ
国家をイスラエルは容認して、このスンニ派諸国との友好条約を結
び、共同でシーア派のイランに対応することで、中東のパワーバラ
ンスを均衡させる外交戦略に米国は変更する必要がある。それには、
中東の民主化戦略を放棄することが前提になる。

イスラエルもスンニ派諸国と同盟を結ばないと孤立してしまうし、
イランが核武装をすると、エジプトのムバラク大統領は、核武装す
るしかないと言っているように、中東国家群は核の拡散を起こすこ
とになる。このためにも、イスラエルの核の傘をスンニ派諸国に広
げて、核の拡散を防止する必要がある。

ということは、イラクでの米国の行動は非常におかしいことになる。
イラクではシーア派の味方になり、イラク外ではスンニ派とイスラ
エルの味方をするという戦略の分裂が起きている。この修正を迫ら
れているのが、米国国務省のライス長官である。お手並み拝見です
ね。

今回の「イラン研究グループ」の提言は、本当の部分が出ていない
と見る。本当はシーア派からスンニ派に乗り換えろということを言
うべきであるが、その部分は外交的に書けないのだ。
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イラク米軍「08年に大半撤退可能」 米超党派が提言(ASAHI)
2006年12月07日01時26分
 米国のイラクをめぐる新たな戦略について、超党派の立場で検討
を続けてきた有識者の集まり「イラク研究グループ」(共同議長・
ベーカー元国務長官、ハミルトン元下院議員)が6日午前(日本時
間同日夜)、08年春までにイラク駐留米軍の戦闘部隊の大半を撤
退させることが可能だと指摘し、イラン、シリアとの直接対話も含
めて外交を活発化させるなどの提言をまとめた報告書を、ブッシュ
大統領と議会に提出した。

 大統領は「真剣に検討する」としつつ、「すべての提言には賛成
しないだろう」とも述べた。同報告書は、イラク政策の変更に向け
た「たたき台」になるもので、政権側の対応が注目される。 

 「前進への道――新たなアプローチ」と題した報告書は、イラク
の現状は深刻で悪化しているが、なお改善は可能だと認識。その上
で、イラク側への戦闘任務の移管により米戦闘部隊を「責任ある方
法」でイラク国外へ再配置を開始するなど、79項目にわたって提
言した。 

 現在約13万人いる駐留米軍の兵力水準をめぐっては、最小限の
勢力を除き、米戦闘部隊の大半を削減することが可能だ、と指摘し
た。 

 米国はイラク政府に対して、大量の米軍部隊をイラクに無期限で
駐留させると約束するべきではないと警告した。イラク側が目標を
満たさなければ政治経済、軍事的支援水準を下げることも辞さない
と圧力をかけるべきだと提唱している。 

 外交面では、ブッシュ政権がテロ支援国家とみなして接触を拒ん
できたシリア、イランと直接「建設的に関与」していく方策も含め
、イラクの近隣諸国を招いた地域和平の枠組みを通じて安定を実現
するべきだと指摘した。 

 ブッシュ大統領はこの朝、同グループから報告書について説明を
受けた後、記者団に対し「興味深い提案がなされており、どの案も
真剣に受け止めた上で、すみやかに対処したい」と述べた。 
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イラク各派の和解会議、4カ月内に開催を・周辺国外相
(nikkei)
 【カイロ=金沢浩明】エジプト、サウジアラビアなどイラク周辺
のアラブ諸国は5日、カイロのアラブ連盟本部で外相会合を開き、イ
ラク各派による国民和解会議を4カ月以内にバグダッドで開くよう提
唱した。和解会議は昨年、準備会合を開いた後、実施が延びていた。
再び開催を提唱することで、イラクの治安安定へ向けたアラブ諸国
の意思を示す狙いとみられる。

 外相会合では、イラク内の対立に外国が直接介入すべきではない
として、イラクで影響力を強めるイランなどの動きをけん制。同時
にアラブ諸国がイラク問題でより積極的な役割を果たすことで一致
した。

 具体的には、駐留米軍の削減など米国の政策変更が現実味を帯び
るなかで、治安安定へ向けてイラク国軍の増強や民兵の解体などが
急務だと指摘。そのために和解会議の開催が重要になるとし、準備
へ向け来年初めに再び外相会合を開くことで合意した。ただ増強の
計画などは「イラクが決めること」として言及を避けた。 (12:39) 
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イラク新提案、シリアは「重要なステップ」と歓迎(ASAHI) 
2006年12月07日20時54分
 シリアのシャーバン移民問題相は6日、中東の衛星テレビ局アル
ジャジーラに対し、イラクを巡る米超党派グループの提言について
「重要なステップだ」と歓迎する意向を示した。提言がシリアなど
周辺国の関与の強化を求めており、シリアが国際的な孤立から抜け
出せる可能性があるためだ。 

 同移民問題相は「これは米国の干渉の時代と、さまざまな問題を
もたらしたイラク占領の終わりを意味する」と語った。 

 シリアはブッシュ政権下で、イラクやパレスチナ、レバノン情勢
を巡り「テロを支援している」などと糾弾される一方で対話や「取
引」を拒絶され、制裁などで経済的にも追いつめられている。 

 シリアは先月、イラクとの国交を四半世紀ぶりに回復し、米国に
協力する姿勢を見せている。提言が実行に移されれば、シリアがイ
ラクで役割を果たす見返りに、イスラエルが占領中のゴラン高原の
返還を求めるなど、水面下での取引が活発化する可能性がある。 
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パレスチナ自治政府首相「イスラエルの存在認めず」
(nikkei)
 【バーレーン=加賀谷和樹】イランを訪問中のパレスチナ自治政
府のハニヤ首相は8日、テヘラン大学での金曜礼拝で演説し「我々は
シオニスト国家(イスラエル)の存在を決して認めない」と言明、
エルサレム解放に向けイランと戦略的な共闘態勢を築くと表明した。

 ハニヤ首相は「我々はエルサレムを(イスラエルから)解放する
ため、聖戦のような活動を続ける」と指摘。さらに「彼ら(イスラ
エル)はパレスチナが孤立しているというが、我々はイランと戦略
的に深い関係にある」と反論した。

 ハニヤ首相は今回のイラン訪問中に最高指導者ハメネイ師、アハ
マディネジャド大統領と会談する予定。イランは自治政府に総額
1億2000万ドルの資金援助を実施済み。 (00:01) 
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イスラエル外相、ライス米長官と会談へ=イラク報告書に危機感 
(AFP=時事) 
【エルサレム8日】イスラエルのリブニ外相は、ライス米国務長官
らと会談するため、米国入りした。米国の超党派の「イラク研究グ
ループ」がイラクに絡む中東政策全般の見直しを提言したのを受け
、ライス長官らと中東問題について意見を交換する。

 イスラエル外務省スポークスマンは、リブニ外相はライス長官ら
と研究グループの報告書を検討し、地域情勢に与える意味合いにつ
いて協議すると述べた。
 報告書は、イラク安定化のためにはアラブ・イスラエル間の和平
推進がカギとなると指摘。さらにイスラエルと敵対するシリアや核
開発計画を推進するイランと、米国が直接対話するよう呼び掛けて
いる。

 イスラエルのオルメルト首相は、報告書に対する不満を表明。同
首相は7日、報道陣に対し、米国がイラクで直面している問題は、
パレスチナ紛争とは無関係であると強調した。また、報告書が提言
したシリアとの和平交渉再開について、近い将来に実現することは
ないとの考えを示した。
 一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長とアラブ連盟のムーサ
事務局長は、イラク研究グループの報告書を歓迎している。 
[2006年12月8日23時28分] 
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イスラエル首相、近くサウジ高官と会談へ
(nikkei)
 【カイロ=森安健】英紙サンデータイムズは3日、イスラエルのオ
ルメルト首相が近くサウジアラビアの高官と再度会談し、サウジが
2002年に提案した「ベイルート宣言」の実現を軸に和平交渉を進め
ていく方針だ、と報じた。サウジの和平案に基づいて同国とバーレ
ーン、カタール、オマーン、アラブ首長国連邦(UAE)、モロッ
コ、チュニジアのアラブ7カ国がイスラエルとの和平条約締結を検討
するとしている。

 ベイルート宣言は1967年の第三次中東戦争前の境界線を国境とし
、ヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムの3カ所からなるパレスチナ
国家を樹立するという構想。イスラエル政府はこれまで受け入れを
拒否してきた。しかし、オルメルト首相は先の演説で「評価できる
部分がある」と転換を示唆。先月のブッシュ米大統領との会談で同
案受け入れを働きかけられたもようだ。 (23:00) 
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対イラク政策 問題解決、広がる疑問 米英首脳 勧告に終始原則論

 【ワシントン=山本秀也】米ホワイトハウスで7日行われたブッ
シュ米大統領とブレア英首相の会談は、イラク戦争を主導してきた
米英首脳の結束を確認する場となった。米超党派で作る「イラク研
究グループ」(ISG)の報告書が議論のたたき台だったが、勧告
の目玉となる2008年初めまでの駐留米軍の削減勧告については
、「柔軟で現実的であることがより大切」(ブッシュ大統領)と両
首脳とも明言を避けるなど、イラク問題解決の前途は、なお多難で
あることが浮き彫りとなった。

 共同記者会見ではブッシュ大統領が「イラクでの勝利こそがイラ
ク国民、米英の安全、文明世界にとり重要だとの点で一致した」と
述べるなど、米英がイラクから手を引くよりも、むしろ積極的な関
与を続ける方針を改めて強調した。

 さらに、米英同盟の結束の重要性を訴えたなかで、大統領は同日
(日本時間8日)が65周年にあたる真珠湾攻撃に言及。「大戦で
は難局にもぶつかったが、米英の指導者は勝利への力に疑問を抱か
なかった」と、イラク戦での難局克服を訴えた。

 首脳会談では、79項目の勧告を盛り込んだISG報告書をはじ
め、米国防、外交当局の分析をもとにイラク情勢や中東全域の政策
について意見が交わされた。

 ブレア首相は、イラク政策の見直しについて「成功に何が求めら
れているのかをはっきりさせるべきだ。失敗すれば深刻な結果につ
ながる」と述べており、会談では兵力削減問題のほか、米側が強い
難色を示すイラン、シリアとの対話問題でも踏み込んだやりとりが
あったもようだ。

 ロイター通信は、ホワイトハウス高官の話として、新たなイラク
政策がクリスマス前に公表されるとの見通しを伝えた。

 しかし、大統領は首脳会談後の記者会見で、(1)駐留米軍の削
減は状況に即した判断による(2)イラン、シリアとの対話は、核
開発やテロ支援の停止が前提−など、報告書の勧告に対しては、す
べて従来の原則論を繰り返したに過ぎない。このため新たな政策に
、今回の勧告内容がどこまで取り込まれるのかは疑問との声が広が
り始めている。

 一方、ベーカー元国務長官らISGの共同座長を呼んで同日行わ
れた上院での公聴会では、次期大統領候補の一人であるマケイン議
員(共和党)が報告書の兵力削減勧告に激しく反発。勧告は結果的
に陸軍と海兵隊に過剰な負担を強いるとして、「この筋書きに従え
ば、われわれは早晩、イラクで敗北することになる」と警告した。
(産経新聞) - 12月9日8時0分更新


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