2539.米国の衰退とイラク研究グループ



超党派のイラク研究グループが報告書を出すことになった。Fより

超党派のイラク研究グループは報告内容で合意して、12月6日に
報告書を出すことになるが、リアリストが中心を占めているので、
現実的な米軍撤退計画が盛り込まれることになる。

ラムズフェルド国防長官も、辞任の前に「重大な路線変更の時期に
至った」と機密メモでホワイトハウスに具申していたことが分かっ
た。また、米軍からイラク政府に治安の権限が全面的に移管される
ことが確定した。

しかし、シーア派とスンニ派の宗派間対立は内戦状況になって、宗
派同士での復讐合戦になっている。クルド人自治区は独立に向けて
、独自の軍などを持った。このように分裂の危機が迫っている。

そして、マリキ首相は2007年6月には米軍から国の治安を委譲
させるとしているが、マリキ首相はシーア派であり、マハディ軍を
率いるサドル師にも近い。このため、マリキ首相は民兵であるマハ
ディ軍を正規軍に移行して、イラクの治安を確立しようとしている
ことが明確である。

シーア派のマハディ軍は、ビスボラでテロの訓練を受けていること
は明白で、そのマハディ軍を使って、スンニ派テロ集団を撲滅させ
る計画なのでしょうね。政府内でもシーア派、スンニ派間で不信感
がある。その中で、クルド人のタラバニ大統領はイランを訪問して、
イランのクルド人独立に向かわない代わりに、イラクのクルド人独
立を容認するように説得したように感じる。

これはシリアやイランと米国が話し合うとしているので、先手をク
ルド人たちが打ち始めたのでしょうね。そして、米国もイラクのイ
ラン支配を容認することになる。大ペルシャ帝国の復活になり、こ
の復活で中東のスンニ派諸国は、イランを警戒する必要が出てくる。

湾岸諸国地域はシーア派住民が多い地域であり、バーレーンは国王
はスンニ派であるが、ほとんどの国民はシーア派であり、イランの
影響は大きい。シーア派のイランの影響力を割く必要から、イラク
でも対応が変わり始めている。

この一環として、米国は裏でスンニ派武装集団と交渉をして、バー
ス党の元幹部を、イラク現政府や軍に採用することも検討している
ようである。このように、米国は3つの民族で軸足を変え始めてい
るが、シーア派、スンニ派、クルド人は、それぞれ分裂する事態を
見越して、それぞれが分裂した時の準備をし始めている。分裂は即
内戦になることは確かである。

米国は軸足をシーア派からスンニ派に移行しようとしているが、ど
ちらにしても、イランの影響力UPは避けられない事態になってい
る。

世界各地で反米国家が増えている。ベネズエラのチェベスと親交が
厚いエクアドルのコレアが大統領になり、南米12ケ国中8ケ国が
反米、非米政権になっている。中東では反米のイラン、シリアがあ
り、ロシアや中国も非米であり、その反米、非米諸国の政治力が、
どんどん増している。親米である欧州も日豪も、米国と共に世界か
ら孤立しているように感じるこの頃である。

反非米諸国の石油やその他の資源がこの非米、反米諸国の力を裏付
けているように思う。そして、中国の安い工業製製品がこの非米諸
国へ輸出されて、工業製品でも日米欧を必要としなくなったことが
反米を一層力づけている。

中東で躓いた米国の力が、世界中で認知され、もう米国を特別視し
なくなっている。将来の歴史家は子ブッシュを米国の世界覇権を失
わさせた大統領と言うことになるでしょうね。
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イラク研究グループ、6日に提言発表 政策見直しに影響(ASAHI)
2006年11月30日10時58分
 イラク情勢の新戦略をまとめている超党派の「イラク研究グルー
プ」が12月6日にブッシュ大統領に提言を提出することが決まっ
た。同グループの提言は、中間選挙での与党・共和党の大敗も踏ま
えたブッシュ政権のイラク政策見直しに影響を与えるとして注目を
集めている。 

 グループはベーカー元国務長官とハミルトン元下院議員が共同議
長を務める。ロイター通信によると、ハミルトン氏は29日のワシ
ントン市内の会合で「グループは提言内容の合意に達した」と述べ
た。内容は明らかにしなかったが、イランやシリアを含めた多国間
外交の必要性を訴える可能性が取りざたされている。 
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イラク駐留「変更の時期」・米国防長官、選挙前にメモ
(nikkei) 
 【ニューヨーク2日共同】米中間選挙での共和党敗北を受けて事
実上の解任が決まったラムズフェルド国防長官が選挙前日、宗派対
立やテロが激化するイラクの現状に対して駐留米軍が十分機能して
いないことを認め「重大な路線変更の時期に至った」と機密メモで
ホワイトハウスに具申していたことが分かった。ニューヨーク・タ
イムズ紙(電子版)が2日、報じた。 

 長官は選挙直前まで、公式の場ではイラク政策に誤りはないと繰
り返していたが、実際には情勢の行き詰まりを自覚。メモでは米軍
の部分撤退や基地の削減、クウェートやイラク国内の安全な場所へ
の再配置などを提案、治安権限移譲を急ぐことの重要性を強調して
いた。 

 メモは11月6日付。長官が2日後に解任が発表されることを知って
いて書いたかどうかは不明。 

 冒頭、イラクでの米軍の役割がイラク戦争当初の大規模戦闘から
「対テロ、対暴動」に変わってきたと位置付け「米軍が現在やって
いることは明らかに機能していない」と認めた。 (11:58) 
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 通巻第1631号  
タラバニがイランを訪問。クルド族もシーア派の御機嫌取り?
 「イラクの治安は最悪」とタラバニ、「治安はイラクで守れる」
と豪語するマリキ首相との温度差

 棚ぼたでイラク大統領となったタラバニは、クルド族。
 クルド族居住区はトルコ、イラン、イラクに跨り、独立すれば
1500万国民の国家となりうるが、不幸なことに独立の旗を振る
とトルコ、イラク、イランから軍事介入がある。
 とりわけイラクでは、サダム時代に多くのクルド族が虐殺された。

 タラバニ大統領はイランを訪問し、アハマデネジャッド大統領、
ハメネイ師、ラフランジャニ元大統領らから歓迎をうけ「イラクの
安全に協力する」という言質をえた。

 米国が介入したイラク戦争では、地理的にクルドは戦場から離れ
ているために、スンニ派とシーア派の内戦、殺戮に巻き込まれず、
油田の操業にも邁進できる黄金の日々がやってきた、かに見えた。

 ヘラルドトリビューンは、29日付け一面トップで「イラクのテ
ロリストは「ヒズボラ」が訓練している」と報道している。
 これは米国情報のトップが匿名を条件に同紙に語ったものだが、
ヒズボラの軍事基地でイラクの「マハディ軍」と呼ばれるグループ
が1000名から2000名の規模でテロルの訓練を受け、すでに
300名がイラク領内に潜入している。背後にシリアも噛んでいる
、と言う。
 ヒズボラはレバノンを食い荒らすエイリアンだが、胴元はイラン
である。

 イランの漁夫の利は、米国の介入で宿敵サダムを打倒し、シーア
派の天下をイラク南東部一帯に復活させて呉れたことだ。

他方、米国はあれほどの犠牲を払って、結局、中東にペルシア帝国
を再現させてしまった。
 イランの核武装は時間の問題、米国は手も足も出なくなった。
 クリスチャン・サイエンス・モニター(11月29日付け)に従
うと、それでもブッシュ大統領はめげずに「イラクの民主化、市民
の自由と人権のために米国は支援の手を止めない。イラク戦略は変
更しない」と熱狂的に演説した(28日、ラトビアの首都リガで)。

 イラク問題を大統領に諮問する「ベーカー委員会」。
ちかく「テヘランとの直接対話を呼びかける提言を纏めるだろう」
とNYタイムズが報道している。

嘗てルーズベルトの失策で米国はソ連に手玉に取られ、東欧、中国
を喪った。
ケネディの愚策で米国はベトナム戦争に敗れた。
こんど、イラクから不名誉な撤退をすれば、ブッシュは WHO 
LOST MIDDLE EASTの代名詞に後世の歴史家から認
定されるかもしれない。
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マリキ首相、治安権限の完全移譲「来年6月までに」(ASAHI)
2006年12月01日10時36分
 イラクのマリキ首相は30日、滞在先のアンマンで米ABCテレ
ビのインタビューに応じ、イラク治安機関は、来年6月までに多国
籍軍から治安権限の移譲を受ける準備が整う、との見通しを示した。
AP通信が報じた。 

 治安権限の完全移譲は米軍撤退の前提条件ともなるため、30日
にアンマンで同首相と会談したブッシュ米大統領も「移譲を加速さ
せる」と述べるにとどまり、時期については明言を避けてきた。
こうした中で一歩踏み込んだマリキ首相の発言は、米軍撤退の時期
を示すよう求める国内の政治的圧力を受けた「希望的観測」の要素
が強いとみられる。 

 首相はインタビューで「いかなる民兵組織の存在も拒否する」と
述べ、自らの支持基盤であるイスラム教シーア派を含むすべての民
兵組織を武装解除する意向も示した。 

 完全移譲の時期についてマリキ首相は7月、「07年末までに」
との意向を示していた。一方、駐留米軍のケーシー司令官は10月
末、「今後1年から1年半以内」との見通しを述べている。 

 イラクではすでに、治安が比較的安定している南部ムサンナ州な
ど複数の州で権限移譲が進んでいるほか、南部バスラ州に駐留する
英軍も、来年の早い時期の撤退を探っている。ただ中南部では、治
安部隊にスンニ、シーア両派の民兵や武装勢力が浸透して互いに
テロ攻撃を繰り返し、むしろ治安の悪化要因になっている。 


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