2517.シーパワーの限界



米国の戦後史を見ると、ユーラシア連合の阻止を志向していること
が分かる。         Fより

地政学は純粋なパワーの力学だけで論議する学問であり、似非地政
学が蔓延る日本の状況はいかがなものかと思っている。民族の性格
やその行動様式は議論してはいけない。その変数を地理や経済、軍
事の変数だけにして、論議することが重要です。そうしないと理論
化ができない。この基本が守られていない地政学が紹介されている。
このため、数回、地政学の見解から議論をしてみたい。

戦後、リムランドを制した米国は、石油を中東諸国からタンカーで
日本などのリムランド諸国に配布した。これは米海軍の制海権が太
平洋、インド洋、大西洋、地中海とスエズ運河を押さえていたこと
でできたのだ。

このため、ソ連とワルシャワ機構諸国や中国はウラル山脈やカスピ
海周辺の石油を主に鉄道・パイプラインで配布した。この防衛は
ソ連の数万台の陸軍戦車隊がいたために出来た。

ユーラシア大陸のハートランドに位置するソ連は、中東でも欧州で
もアジアでも、鉄道で戦車を移動させて、数日で配備できる利点が
あった。

しかし、米国はアジアでの紛争と中東での紛争を続けて行われると
輸送が船でしか出来ないために、数週間の時間が必要になる。この
ため、戦争前、戦争にならないように交渉をまず行い、時間稼ぎを
していた。

この時間差がハートランドを抑えているソ連が米国に優位な点で、
軍事費も桁違いに安い。ハートランド防衛陸軍とリムランド防衛海
軍では装備の面とその数量の面で桁違いに違う。有利なのはソ連で
ある。しかし、米国はその不利な面を超越できる経済力を持ってい
たので、対抗できたのです。

このように、陸を押さえていたほうが有利であり、そのため、現在
ロシア経済はそれほど大きくないのに、政治的な力を持てるのだ。
特にユーラシア大陸の内部の石油はパイプラインで輸送するのが経
済的である。カスピ海の石油がまさにそのいい例になっている。
この石油を狙って、中国もパイプラインや鉄道を中央アジアに伸ば
している。

米国は自国の力が弱くなると、ユーラシア連合を組まさないために
いろいろな工作を行い、ソ連の力を殺ごうとした。

ベトナム戦争敗戦後の1978年に中国と米国は正常化を行う。
そして、その翌年1979年親ソ連のベトナムに中国は侵攻するが
、敗退する。ソ連と中国は同じ共産主義を掲げているが、仲が悪い
ことをキッシンジャーは知っていて、ソ連の軍事力を中国国境線に
も配備させて、欧州への圧力を軽減化させたのです。

現在の米国もイラク戦争中で、ロシアと中国を連合させるわけには
行かないために、中国との友好関係を維持している。ロシアの関心
を欧州に向けさせるために、グリシア問題やウクライナ問題を米国
が仕掛けている。

しかし、ロシアは二正面作戦が容易であるが、米国はほとんど無理
である。このため、ロシアはいつも米国の嫌がる地点で問題を発生
できるのですよ。ロシアのシベリア鉄道は複線電化されて、輸送力
が上がっている。戦車隊の大量の戦車をどこにでも数日で送りこむ
ことができる。イラン、グルシア、北朝鮮、東欧などロシア規格の
広軌の鉄道網がある地域は特にそうである。

米国は海経由の北朝鮮の船は臨検できるが、ロシアのシベリア鉄道
経由の荷物を検査できない。ロシアがユーラシア大陸を押さえてい
るために、米国はいつもロシアをけん制するしかない。ロシアの地
政学的な位置がそうさせているのです。

この観点が日本の保守主義者に足りないように感じる。米国の力が
どんどん落ちている。この米国をサポートするためには、ロシアや
中国とどう関係を持つかを真剣に考える必要が出てきている。

米国の力が弱ってきた時点では、ロシアと中国を組ましてはいけな
い。次の覇権をだれが担うのか、欧州や日本、ロシアと中国と米国
の関係を再整理する時期に来ているように感じるが、どうであろう
か??その観点は、地政学的な観点ですよ。

リムランド:ユーラシア大陸の周縁部ー欧州、中東、東南アジア
ハートランド:ユーラシア大陸の中心部


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