2516.米国中間選挙の結果



米国中間選挙の結果から、今後を考察する。   Fより

中間選挙は共和党の完敗に終わり、これで露下院外交委員長が指摘
するようにネオコンの時代が終了した。そして、この選挙はイラク
戦争が大きな争点であり、その中心人物であるラムズフェルド国防
長官が辞任し、次の国防長官はロバート・ゲーツ元CIA長官にな
った。

アメリカの投票日前日の11月6日には、米軍系の新聞「アーミー
タイムス」など4誌が合同で、ラムズフェルド国防長官の辞任を求
める社説を掲載した。イラクへ派兵された軍関係者や軍OBたちも
ラムズフェルド国防長官のやり方を批判していた。

ラムズフェルド国防長官は、RMA(軍改革)を進めるために、陸
軍の通常兵器装備の費用をハイテク兵器の研究開発費に回したが、
この影響でイラク派遣軍の防弾チョッキや装甲車などの装備が不足
して、米兵を死に追いやっていると批判された。

ラムズフェルド国防長官指揮の下、一向に改善されないイラク情勢
が、米国国民にも米国一国主義は間違いであると認識させ、ブッシ
ュ大統領の政策を拒否させた理由ですね。

ブッシュ父はベーカーに息子である現ブッシュ大統領の政策が心配
でイラク問題をリアリスト(現実主義)の立場で検討する委員会を
立ち上げさせた。

これが米行政府と米議会共管のイラク政策再検討委員会、俗に言う
ベーカー委員会である。
その委員会は、イラクとその周辺国の有力者たちと話し合い、イラ
クの新生軍隊や警官隊の育成を成功させるとともに、シリアやイラ
ンなどの敵視して交渉を拒否してきたイラク周辺諸国と話し合いを
開始して、イラクの安定化に協力させ、中東の人々の反米感情を煽
ってきたパレスチナ問題も解決するという、軍事重視から外交重視
への政策転換をブッシュ政権に起こそうとした。

しかし、その委員会が活動を開始した時期からイラクでのテロ事件
が増加して、その活動が停滞している。周辺諸国もその活動に理解
を示していない。

そして、後任のゲーツはこの委員会のメンバーでもあり、今後ブッ
シュ政権は、ブッシュ父政権と同様なリアリスト中心の現実外交に
シフトすることになる。タカ派はチェイニー副大統領しかいない状
態になる。ゲーツとライス両名ともにリアリストであり、どちらも
ソ連外交政策の専門家である。

逆にネオコン(新保守派)の代表格リチャード・パール元国防次官
補からもブッシュ政権の政策は間違いであると批判されている。
もともとネオコンは民主党から共和党に鞍替えしてきた理念先行の
理想主義者たちで、レーガン政権時にソ連を崩壊させ民主主義を目
指そうとしたユダヤ系米国人たちである。

しかし現時点、共和党主流のリアリストたちは、ユダヤ系のロビー
活動に批判的になっている。しかし、共和党は伝統的にリアリスト
が外交政策を決めてきた。その伝統を覆したのが現ブッシュ政権で
あり、リアリストたちからもネオコンが進めるイラク戦争の批判が
出ていた。共和党は、このリアリストが外交政策を決定する伝統に
戻ることが明確になった。

このため、ユダヤ系の資本家たちは、共和党から本来の支持政党で
ある民主党に政権を回す方向で準備を開始した。この表れが、ヒラ
リー・クリントンの大勝利である。NY州で65%の票を獲得した。
2年後の大統領選挙はペロシさんかヒラリーさんか、民主党の女性
対決が見物ですね。

そして、日本の安倍政権は米民主党とのパイプも確保する必要が出
てきている。ペロシさんは反中派の代表ですから、ジャパン・パッ
シングにはならないように日本は対応策を打つべきでしょうね。
==============================
ブッシュ崩れた世界戦略…ラムズフェルド更迭 

 【ワシントン=夕刊フジ特電】ブッシュ米大統領は8日(日本時
間9日未明)、ホワイトハウスで記者会見し、ラムズフェルド国防
長官(74)の辞任を発表、後任にロバート・ゲーツ元中央情報局
(CIA)長官(63)を指名した。イラク政策が最大の争点とな
った中間選挙で野党・民主党が12年ぶりに下院多数派となるなど
大きく躍進、与党・共和党が事実上の敗北を喫したのを受けて、ブ
ッシュ大統領はラムズフェルド氏の更迭に踏み切った。

 イラクの治安回復のめどが立たず、米兵犠牲者が2800人を超
える中、米国内では14万人規模の駐留軍の撤退を求める声が強ま
っており、ブッシュ政権はイラク政策の軌道修正を迫られることに
なった。

 ブッシュ大統領は記者会見で、イラク政策に関して、「うまく機
能しておらず、迅速に推進されていない」と不満を表明、中間選挙
前から国防長官人事を検討していたことを明らかにした。

 大統領は「ラムズフェルド氏とわたしは新しい視点が必要だとい
う認識で一致した」と語り、ベーカー元国務長官、ハミルトン下院
議員が共同委員長を務める超党派の独立委員会「イラク研究グルー
プ」の勧告に耳を傾ける意向を示した。

 ただし、大統領は「任務完遂前に(イラクから)去りはしない」
と述べ、駐留軍の即時撤収に反対する考えを重ねて表明した。
ZAKZAK 2006/11/09
==============================
<米国防長官更迭>ネオコン時代の終わり…露下院外交委員長

 ロシア下院のコサチョフ外交委員長は9日、ラムズフェルド米国
防長官の更迭について「新保守主義者(ネオコン)が米国の外交、
内政を支配した時代が終わったことを意味する」と語った。インタ
ファクス通信が伝えた。委員長は「米国の新保守主義はアフガン戦
争やイラク戦争、核問題への対処に失敗した」と語った。
(毎日新聞) - 11月10日0時47分更新
==============================
ネオコン代表格もイラク戦不支持=ブッシュ政権を厳しく批判−米誌

 【ワシントン5日時事】ブッシュ米政権に影響力を持ち、イラク戦
争を強力に支持してきたネオコン(新保守派)の代表格リチャード
・パール元国防次官補らが、米誌バニティー・フェア1月号(電子版
)のインタビューで、イラク戦をめぐる政権の対応を厳しく批判、
戦争への不支持を初めて表明した。
 パール氏は、国防総省の諮問機関である国防政策委員会の委員長
を務めた重鎮で、イラク戦を主導した1人とされる。 
(時事通信) - 11月5日17時0分更新
==============================
米国全軍の軍紙がラムズフェルド辞任要求の論説/サンフランシスコ
・クロニクル [アメリカ] 

サンフランシスコ・クロニクル 2006年11月3日
http://www.sfgate.com/cgi-bin/blogs/sfgate/indexn/detail?blogid=16&entry_id=10582

米四軍紙揃ってラムズフェルド辞任要求の社説

月曜日に陸海空軍および海兵隊の内部紙「アーミー・タイムズ」「
エアフォース・タイムズ」「ネイヴィ・タイムズ」「マリンコープ
ス・タイムズ」が揃ってラムズフェルド国防長官の辞任を要求する
論説を掲載することが決まった。
 
 タイトルは「ラムズフェルト去るべし」



コラム目次に戻る
トップページに戻る