2471.中国のメディア統制について



中国のメディア統制について

 昨年来よりの中国のメディア統制が、とうとう外国メディアまで
拡大した。2008年北京オリンピックを控えたこの時期にあえて
外国メディアまで統制した理由にについて、悪化する国内の治安対
策とする意見が多い。一面ではそうだろうが、治安対策は強力な公
安組織で対応可能であろう。中国には複数の公安組織と武装警察(
元人民解放軍)という力業がある。公然と外国メディアを敵にする
程、中国首脳達は国内統治に自信がないのだろうか。別の見方をし
てみたい。

 この時期にあえて行う背景は、権力闘争と思う。5年毎に行われ
る権力中枢の人事移動、つまり権力闘争に向け胡錦涛が仕掛けた施
策と思える。通常、中国では夏の避暑地で党幹部たちにより、今後
の人事を非公式に協議し、そのための施策が9月から実行してくる。

 中共における権力闘争において支配下に置かなければならない主
要な組織は、軍部・公安・広報だ。胡錦涛は昨年の将軍たちの大量
昇格で軍部と手を結び、昨春の反日暴動時の公安当局の失態を利用
して公安部を支配下に置いた。広報の元締めは中国共産党であり、
これも支配下(保守派が支配している。胡錦涛は保守派の推挙も得
て主席になった)にあるが、開放政策のため統制が効かず意味をな
していなかった。そこで、昨年より統制を開始し、記者の逮捕や雑
誌等の発行禁止処分、インターネット企業への検閲・情報提供の強
要と進み、外国メディアへの規制で仕上げと思われる。

 一党独裁政権での権力闘争は、相手陣営の失脚で完結する。最近
の中国の権力闘争は、汚職追及により失脚をはかる方法が常套手段
となっている。中国に於いて汚職は双方の陣営に存在する。反胡錦
涛陣営が外国メディアを使って、胡錦涛グループの李克強などの汚
職を追及されては困ることになる。それで、外国メディアまでの統
制となったのではないだろうか。

 中立者や反胡錦涛グループの協力者たちを徐々に胡錦涛側に取り
込むことに成功した現在、反胡錦涛グループへの汚職追及が最終段
階に近づいたと思う。反胡錦涛グループの失脚がそろそろ実現する
のだろう。相当のリスクを覚悟の上、外国メディアまで統制した事
態は、もしかしたら、江沢民元主席までも失脚する可能性があるの
だろうか。失脚すれば、日中間の外交の選択肢がかなり拡がるのだ
が。

佐藤俊二


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