2469.タイのクーデター



「タイのクーデター」再校。浅山
From: 浅山

アジアモンスーン文明の王政、日本の皇室、大航海時代以降にヨーロッパから移
入された立憲君主制、そして先の敗戦後に米国からの民主主義、決して悪いこと
だと言っているわけでは有りません、特に民主主義の導入は主権在民、個人尊重
の考え方を広めました。

しかし、何かしら民主主義を守るシステムの整備は12歳で止まっているのかも知
れません。どんどん弱者切捨ての流れが法制化されていくようです、もっと深い
ところで復古主義が日本では、皇室など含め起きているのではないでしょうか。

本当に国民に相応しい制度は、権力を眠らす制度は必ず、不安な社会を招来して
しまう、為政者は何とかして、馬鹿な民衆、もの言わぬ市民、レジャーにお笑い
にサッカーに気分をそがれて、意味も無く皇室に、男の子が生まれたと祝う人々
の愚かさを歓迎しているのでは。

その内また北一輝の苛立ちと同じものを日本に招来して「新・国体改造法案」の
作成とはなりませんでしょうか、今回のタイのクーデターを貴重な機会として大
いに学びたいものです、タイの王権の国民の尊敬の強さ、タクシン政権の問題点
はこの春、既に顕在化していました、メディアは他所の国のこととして「タイ民
主主義の未熟さ」と書きました、このブログの何処かにこのメディア批判を書き
ましたが。

日本こそ、今日の安倍政権誕生の曙光から、次へと監視して行きましょう、保守
主義の権化ともなりかねませんし、目くらましの陰謀は小泉の比では無いのでは
ないでしょうか。

薩摩の人間解放の明るさと、長州の読みの深さは陰謀そのものの巧みさを喜ぶ質
の違いがありますから。

それから仏教徒の信仰との関連も大いに観察、もの言わず、自分の中で解放を問
題とする宗教の質も時代柄、生かせるもの、生かせないものを検証する機会で
は、今イスラム、キリストの新たな宗教紛争に立ち入ろうとしている時代の中で
も、関心大いにあります。加えて個人尊重、平等、自由を守る幸福は普段の抽象
性の社会を読み解くことを学ぶこと無しには実現が難しいと思います。

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タイのクーデター関連
From: Kumon Tokumaru 

浅山さん、

タイに住んでいる友人から今回のクーデターについて、手紙がきました。
ご参考までお届けします。感想あれば、頂ければ転送します。

この友人は、クーデターに対して、どちらかというと好意的だと思います。

2・26事件との最大の違いは、国王のとった態度ですね。
昭和天皇と、タイ国王と、どちらの態度が正しいのでしょうか。

得丸

引用開始:

急遽私の所見を書きました。まだ較正はして居りません。コメントいただけます
か。

法律はいろいろな側面を持ちます。法は執行されて始めて法の意味を持ちます。
執行されない法律もおおくあります。その法は制定当時の背景に大きく依存しま
す。背景の進展とともに時代に合わなくなることも普通です。そして法は執行す
る政権の法解釈に大きく依存します。逆に法解釈が必要のない法律は法律でない
かもしれません。

さて今回のタイのクーデターの背景となったタクシン元首相の批判に金権政治が
あげられています。世界の金持ちのリストににあがる大金持ちである。主要な蓄
財は通信事業だという。通常なやり方で蓄財はままならぬことは誰でも知ってい
とおもいます。日本では田中角栄が金権の代表格に上げられております。多分彼
にすれば合法的に蓄財をしたのに何が悪いそしてコレをどのように使おうと勝手
だという気持ちだと思います。タクシンにしても然りでしょう。彼の通信会社の
持ち株を無税でシンガポールの会社に売り飛ばしたというのがことの発端です。
通信事業の国家機密の問題も絡んで国民の批判に立たされました。しかし何も非
合法なことはしていないはづです。この点はヤクザの非合法な活動とは異なるで
しょう。しかし市民団体は言う。金権政治だ。そしていま政権が変わったとたん
に彼の財産は没収されるかもしれません。そこで上記の法律の側面が出てくるわ
けです。しかし合法がたちまち非合法に替わるのは法の安定性からして困ること
です。

しかし政治でなく行政の面になると話は別になります。市民団体がタクシンを追
い出した。タクシンは暫定内閣を組成して政権を引き続き担当した。そして一定
のプログラムで次の政権担当者を選ぶ行政的な措置をとることが義務付けられ
た。選挙が行われた。腐敗は始から見えていた。しかし腐敗を腐敗とするために
は一定の法的手順により認定が必要である。時間がかかる。うやむやにすること
は難しくない。もっと大きく憲法裁判所から選挙そのものが無効である判決が出
た。誰がどのように現行規定に基づき次の選挙を執行するかが大問題でした。タ
クシンはもてる政治力・金力を最大限に利用して、自己に都合のいいような選挙
管理体制を作ろうとする。それに対して野党・市民団体は法的な手続きを持って
対抗する。裁判に訴えたらそれだけで長い時間がかかる。判決が出たら振り出し
に戻る。国民はウンザリする。タイの社会の安定性はこのようなときでも安定し
た官僚機構が働いて超法規的な行動はできないようになっている。市民団体がタ
クシンを追い出したところで、市民団体は行政に超法規的な要求は出来ない。出
来るとすれば、非常に限られた権限で王か、今回のような軍によるクーデター。

このような行政のループホールは特に災害などのときに危険である。嘗て地震予
知に関連して大規模地震対策基本法が論議された折、国会解散中に首都で大規模
な地震が発生して意思決定者が見つからないときはどうするか、など議論された
ことがあります。タイ人はあまり綿密な考察には不向きなように思えます。嘗て
ある法律案が参照されている法律の箇条の番号が間違ったまま王に発効の承認を
求めたことがあります。これは王により差し戻されました。今回のループホール
もタイの法体系が少し粗雑過ぎる事によったことも大きいとにらんでいいます。
今度の軍の政権はこのような面で憲法に手を入れるといっています。有識者は
黙ってうなずいてい居るようです。この作業は一年ぐらいかかるから次の総選挙
は200710月ごろになるという予測です。日本ではこのようなことは発生し
ないとは思いますが、社会が高度のシステムを形成するとき、複合脱線的な事態
が起こらないとは限りません。なおタイの憲法は軟構造で憲法改正は難しいこと
ではありません。それに対して日本の憲法は世界でも名だたる剛構造を持ってい
ます。

しかしこの中にあって国民の中にはタクシンの狂信的な支持グループが存在しま
す。誤解をいとわづ一言にいうと農民と低所得者層です。タクシンの選挙地盤は
ここにありここに金をばら撒き、迎合的な政策も繰り広げております。タイは世
界の中でも都市化率が非常に低い部類に属します。食えるからです。大きな都市
はバンコクだけです。人工圧力も途上国では最低の部類に属します。タクシンに
あっては偉い先生やバンコクの市民が何を言おうと平気だと言う自負があったと
おもいます。次の選挙をやったところでタクシン人気は決して衰えないだろうと
と言う予測は大方の見方でした。

タイの不安定要素のひとつに、南部のイスラムの暴力があります。もちろんアメ
リカのイスラム対決政策のトバッチリです。タクシンの強権政治はこれにハード
な対決を取り続けていました。その結果、学校の先生、警察官、軍、市民の犠牲
者が多く出て暴動は収まる気配がない。麻薬対策でも同様、最近の人権グループ
のレポートでは掃討作戦で撃ち殺された人たちの多くは麻薬に関係ない市民で
あったと報告しています。軍にしろ警察にしろ自国民への対決を倫理的な説明な
しに喜ぶはづはありません。一方軍や警察はプロであるからそこは冷静に見てい
るようです。このクーを歓迎したひとつのグループは南部イスラム教徒であった
ようです。それに対してタクシンは自分の級友を軍のトップに挿げ替えるべく画
策するなど正気を失った行動をとっていたのです。多分このたびのクーの一因は
その怨念があったのかも知れません。

タイの現状を観察して居ますと、ある一面ではいわゆる近代化は日本より30年
くらい遅れているのではないかと思われることが多いみたいです。しかし国民の
メンタリティは日本国民と陰に陽にすかして見えるように思うことも多くありま
す。タクシンに限らずタイの人間は自己主張が強く人の意見を聞かないことがお
おいようです。国王は何度も公的な席でタクシンに人の意見を聞くように忠告し
ています。逆に日本人はNOえない人種であるとされていますが、ますます自信を
つけてきているこの国は今回のタイの出来事を対岸の火としてみてもらいたくあ
りません。日本国民の政治意識はタイのそれよりグッと上等かどうか私はなんと
もいえませんが、同じ日の新聞には安部氏の顔写真が大きく掲載されていました。

(2006年9月21日受領)
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Re: タイのクーデター関連
From: Kumon Tokumaru

浅山さん、

さきほどのメールですが、クーに「どちらかというと好意的」というところは訂
正いたします。ご本人から、そのようなメールが届きました。
得丸

以下引用:

私の言いたかったのはクーの弁護ではさらさらありません。日本の論調でひとご
とのような記事にすこし引っかかっただけです。このような法体系のループホー
ルは日本に絶対無いといえるか。現代社会であると科学技術が絡むでしょう。古
典的な話ですと何かの間違いで大統領が核のボタンを押すことになります。気に
なるところです。またバンコクで酒を飲みながら話しましょう。

引用終わり:


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