2437.次世代産業は江戸時代から探せ3



今回は日本の発酵技術を見てみたい。 Fより

・発酵技術の歴史
日本は微生物の活躍しやすい気候風土ということもあって、発酵技
術という意味では、歴史的に見ても世界の最先端をいっている。

微生物を1673年、レーウェンフックが発見しましたが、日本には
それより500年程前の平安時代末期から、灰を使って微生物を純粋分
離する技術があり、酒、味噌、醤油等を作る時に用いる麹カビの種
・種麹(たねこうじ)として売っていたようだ。このように世界の
どの民族よりも先に行っていた。

あの偉大なパスツールが酒の「低温殺菌法」を考案する300年も前に
、日本人はすでに「火入れ」と称する低温殺菌法を実践していた。

・菌を使った食品
このように日本では菌を使った食品が多い。日本の代表的な発酵食
品は酒、甘酒、しょうゆ、納豆やお味噌ですが、炊いただけの大豆
は、うまく消化されないけれど、納豆菌で発酵させて納豆にしたり
、麹菌で発酵させてお味噌にすれば、とても吸収しやすい食品にな
る。発酵食品は、私たち日本人の健康を支えてきた独自の食文化で
すね。

お味噌には抗ガン作用があるということは、昭和30年頃から研究
されていて、みそ汁を毎日飲む人と飲まない人では、ガンになる確
率がかなり違ってくる。研究の結果、分かってきたことは、麹によ
る発酵の最中に様々な有用物質が生まれているということだ。
 たとえばアスペラチンという物質には強い抗ガン作用があるとい
う。それだけでなく、発酵の過程で、生体防御酵素と言われる
SODや、活性型ビタミンなど、多くの有用物質が生まれている。
このように様々な酵素と栄養物質の宝庫になる。

・漬け物
 漬け物とは、塩、ぬか、味噌、醤油、お酢、香辛料などを使い、
野菜やくだもの、肉や魚を漬けて加工したものです。野菜の漬け物
に関して言えば、特に寒い地域で冬場の保存食として重要な役割を
果たしていました。

 日本においては、大和の時代には塩漬けによる食品の保存が行な
われていたと。奈良時代には、茄子、瓜、桃、などの塩漬け。平安
時代には味噌や醤油、酒などに漬ける習慣がうまれてた。室町時代
になると、漬け物は、「香物」と言われ、香りを重んじており、保
存食的なありかたから、食材としての存在になったことがうかがえ
る。さらに江戸時代になると、「一汁一菜」のことばのとおり、味
噌汁と漬け物が食の主役となったのでした。

・お酒
江戸時代初期頃までは、1年間に計5回仕込まれていましたが、中で
も冬期における「寒造り」が最も優れていることが明らかになり、
優秀な酒造りの技術集団の確保がしやすい時期であることと、低温
・長期発酵といった醸造条件の上からも重要視されるようになった。

また、保存性をさらに高めるための火入れ法(低温殺菌法)や、歩
留りを良くすると同時に香味をととのえ、火落ち酸敗の危険を低く
する柱焼酎の混和法(アルコール添加)など、当時ヨーロッパにさ
え見当たらない画期的な処理技術が開発された。

・酢
 お酢は日本では5世紀、中国から酒造りの技術と共に伝わりまし
た。奈良時代には製造が盛んになり、朝廷は酢を税として徴収しま
した。塩や、魚を塩づけにして発酵・熟成させて取る汁「魚醤」と
並ぶ数少ない貴重な調味料でした。

 平安時代になると、貴族は小皿に魚醤、塩、酢、酒を盛り、干し
物や生ものをつけて食べました。室町時代末期にはしょうゆとさと
うが登場、酢も工夫が進み、合わせ酢が使われました。

 江戸時代は、てんぷらをはじめ近代日本の食文化のもとが整いま
した。酢作りも全国に広がり、日本伝統料理の基礎となる味覚にな
りました。

 酢には、どんな効果があるのでしょうか。
 まず、「防腐・抗菌」があげられます。サバは鮮度の落ちやすい
魚ですが、暑い夏場でもすしダネにできるのは、酢が持つ抗菌力に
よって保存性が増すからです。さらに、生ぐささを消し、味を引き
立てます。

・鰹節
世界一硬い食べ物と言われる鰹節も、菌を使っている。燻して乾燥
させるだけでは何回やっても表面しか乾かない。燻して表面が乾い
たところで、鰹節をカビ桶に入れ、鰹節の表面にカビが発生するん
ですが、この時にカビはかなりの水分を必要とする。だから鰹節の
内部に残っていた水分を吸い上げてしまう。これを何回か繰り返せ
ば、内部の水分は完全に取り除かれ、硬く乾燥することになる。
しかも、この手法はほぼ江戸時代の初期に確立している。

・爆薬作り
微生物の力を活用した日本人の発想の中で一番すごいのは、富山県
五箇山地方の農家では、慶長10年(1605年)頃から、発酵によって
塩硝(硝酸カリウム)、すなわち爆薬を作っていた。

昔の農家には囲炉裏がありましたね。この床下2間(約3.6m)四方に
すり鉢状の大きな穴を2つ掘りまして、そこに稗穀、藁、枯草等を敷
き詰めて、肥沃な土と一緒に鶏や蚕の糞を入れます。それらを交互
に積み重ねた後、一番上から貯えておいた人間の小便を大量にかけ
、土をかぶせて発酵させるのです。5〜6年後には塩硝土というもの
ができますから、これを土桶という檜作りの桶に移し、上から水を
満遍なくふりかけ、一昼夜かけて出てきた濾水を釜で煮詰め、草木
灰を加えて濾過してまた煮詰め、木綿で濾し、自然乾燥させますと
灰汁煮塩硝(あくにえんしょう)というものができるわけです。こ
れを数度精製を繰り返し、できた塩硝を加賀藩へ納めた。

すなわちその生成メカニズムは、蚕糞や鶏糞、人尿に含まれている
尿素(CO(NH2)2)が土壌中の微生物の作用を受けて脱炭酸されて
アンモニア(NH3)となり、これが酸化されてまず一酸化窒素(NO)
となります。さらにこれが酸化されて過酸化窒素(NO3)となり、
これに水がついて硝酸(HNO3)になるんです。一方、植物や草木灰
には多量のカリウム(K)が含まれていますから、これが発酵によっ
て組織から離れると、硝酸と結合し硝酸カリウム(KNO3)ができる
という、実に綿密に計算された高度な化学です。

ノーベルという人が微生物でニトログリセリンを作り、ダイナマイ
トを発明したのが第1次世界大戦の終り頃ですが、それよりも400年
近く前に日本人は発酵によって爆薬を作っていたんです。


このように日本には発酵という技術を使って、いろいろな食品や物
を生み出した歴史がある。この発酵という技術は観察が重要なパー
トになっている。日本人は、理論的な解明はしないが、観察から作
り方を工夫したようである。

この成果がEM法でしょうね。比嘉先生が好酸素菌と嫌酸素菌のバ
ランスで土の中の有機物を分解する方法を発見したのですが、観察
が重要な要素ですね。理論は後から組み立てるのですが、最初に自
然の観察が重要なのですね。肥沃な土地にどうしてなるのかという
観察からの発想で、自然のバランスを見ている。

そして、今、石油が高騰してくると再度、発酵を使った材料革命や
エネルギー革命が求められている。ここにビジネス・チャンスがあ
るようですね。

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