2434.日本の金利政策



日本の金利政策

 国家(先進国では中央銀行)が政策的に決める金利は、短期金利
のみである。長期金利は市場が決める。現在の長期金利は、中央銀
行の金利政策の意思・目標が長期的にインフレ抑制的かどうかに左
右されるとされる。インフレターゲットによる金利政策とはこの事
を意味している。長期金利が低めになれば経済成長が促進される。
そして、現在では一国の経済を見て政策を実行するだけでは意味を
なさない。

 日本の金利は世界金融内でアンカーの立場にある。日本は20世
紀末の政策の失敗により21世紀初頭に経済恐慌の縁に至った。
この回避策として、効率が極端に落ちた国家による有効需要の提供
ではなく、1929年恐慌の教訓より経済恐慌手前の経済不況に対
し、資金ショートの連鎖を防ぐため、金融市場に資金を溢れさせる
政策を実施し一応の成果を見た。世界第二位の経済大国で、豊富な
外貨準備高をさらに積み上げ、自由金融市場がある日本のこの政策
は世界的な金融緩和をもたらした。つまり、グローバル金融におい
て、ゼロ金利の短期資金をいくらでも借りられる状況を招いた。

いつまでも続くゼロ金利政策は、短期のゼロ金利資金を元手に中長
期資金として安心して運用することができた。このようなことは歴
史上存在しなかった。この結果、世界経済は通常の金利が存在した
場合より、低金利の恩恵を受け、遙かに高い経済成長を達成した。
想定以上の経済成長は資源の逼迫をもたらすと同時に、ゼロ金利資
金は投機資金をふくらませ需給関係以上の一次産品の高騰を招いた。
また、低金利のため、付加価値の向上を伴わない量的拡大を中心と
した経済成長が主体になり、成長の質は相対的に低くなった。量的
拡大が主体の経済成長は生産者が同時に消費者にならなければ、将
来的にデフレを招く。

 現在の世界は持続可能な経済成長を超えている。人々の精神的満
足感を充当するはずの経済成長も、速すぎると成長に伴う社会制度
の改革が相対的に遅れ、社会的安定を損なう。また、新しい消費者
の出現が遅れことにもなる。今、高すぎる経済成長による歪で世界
が不安定になっている。質の低い成長は資源の浪費と環境破壊を促
進する。また、資源の高騰は資源国の腐敗や横暴、そして、資源の
獲得・支配を巡る争いを招く。中東の不安定化もその一つである。
また、日本にとって隣国の資源大国ロシアの優位性を過大にさせ、
中国はなりふり構わない資源獲得政策になっている。(中国にとっ
て、高すぎる経済成長は資源不足というガス欠と社会不安・環境破
壊というオーバーヒートをコントロールする事が難しいかじ取りに
なる)

 世界的に不安定化を招かない程度の経済成長にする必要がある。
日本はグローバル金融マーケットへのコストゼロ近くの資金の供給
を止めなければならない。そこで、日本の金融政策は低金利である
が、国内への有限の資金提供にする。また、金利が上がる可能性を
常に意識しなければならない情報操作を行い、ゼロ金利に近い短期
資金がグローバルマーケットに無制限に供給される事態を抑制する。
この状態が通常なのだから、金融政策面から世界経済の成長率を通
常モードまで下げる時を迎えたと思う。

佐藤 俊二

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