2430.ソクーロフの「太陽」



ソクーロフの「太陽」を見ました。浅山
From: 浅山

外国人が描くとこうなるなんていうものではなく、本当にフィクションがもうみ
んなの心に「天皇」を定着させそうな名作になっているのを感じました。

94年に彼の作品で感激していましたが、今回は身近な?昭和天皇でしたから、俳
優のイッセイ尾形の味のある演技と重ねて、生前の天皇と重なるところが錯覚は
承知でよい作品でした。

ソクーロフの簡略化と構成の作品つくりの妙は天才的です、私は天皇の人柄、戦
争責任を、追及できない世代ですから、今回の映画の描いた人間天皇に共感と、
強いて言えば詩心を思考の中心に置く大和魂というのか、東アジア文明圏に自然
にあった思考の作法を改めて考えさせられました、採り上げられた詩はなんでも
無い物でしたが、シンプルさゆえに、それ故に。

見落としていましたが、週刊誌の朝日や新潮にもページ割いた掲載があったよう
です、新潮にソクーロフの対談が館外に有りましたが「もし、天皇がシベリア侵
略を命じていたら、私はこの世に居なかった」のだと彼が語っていました。

歴史などいつの世もフィクションが先行して作られていくのかもしれません、そ
してリアルなものはほんのわずかな偶然にしか過ぎないのではないかと。

今の日本人のナショナリズムが誰かにより作られて居るものに、乗せられていく
とすれば、これも現実と認めねばなりませんが、成果主義の仕事に国民が軍事教
練並みのルーテインワークで疲れるか、スポーツや格闘技に熱中させられ、知性
の向上を自ら放棄するような若者の増大は。そして時間もお金もある若者が個体
維持の本能の歪められた商品に乗せられ、動く枕絵に、自動変速機付き宿屋でエ
ネルギーを消費しているなど、モッタイナイ、しかしそれらも為政者達には計算
済みの仕掛けかもしれません。

太田竜的には「イリュミナルティーの陰謀」と言われるかもしれませんが。

タイのタクシン首相がバンコクや都市部で身内の脱税のため、総選挙に勝利しな
がら、一時解散に追い込まれ、在位60年の国民尊崇の篤い王の仲介で生き延び
る、東アジアのモンスーン文明圏はまさに天皇や王政でもやっていけたはず、そ
れが西洋から来た民主主義でバランスをとる政治手法、を市場主義の現代社会に
とり入れないと、上手くいかないグローバル社会。

その世界的傾向に遅れまいとしていることから見れば「タイの民主主義のひ弱さ
が露呈した事件」と、日本の新聞が書いていましたが、日本にはそれほど民主主
義が定着しているのでしょうか、目くそ鼻くそを笑うの例えに感じるのは私の理
解不足でしょうか。

ソクーロフの「太陽」はあの歌舞伎座手前の地下の小映画館、足を運んで見てお
くのも損はしないと思います、着いた時間の近くの上映時間は立ち見です、1回
先送りした券で座って見られます。

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