2418.米国から見たレバノン情勢



色々な方面の、違ういくつかの思惑から、レバノンは犠牲にされる
ようじゃ                 虚風老

 レバノン問題の背景を読んでみるかの。

レバノンには、過去イスラエルが大規模に破壊、進駐し(シャロン
が軍を指揮して、大虐殺したとされるのもこの頃じゃな)2000
年?5月に撤退したという経緯がある。
そのころのレバノンで捕虜にした人が、今も多数あり、今までもヒ
ズボラはこれの奪還ということで、散発的に攻撃を仕掛けておった。

ところで、この時期2名のイスラエル兵が捕まって捕虜交換の形で
、それらの解放を求めたのに対し、大規模な侵攻をするというのは
なんとなく変じゃ。
以前からの対応にくらべ、規模が大きすぎるように思える。

これは、イラン問題についてのホワイトハウス内部で、の路線対立
がライス主導の国務省派とネオコン−イスラエル派で分かれたこと
の影響が現れたのではないかと思われるんじゃ。ライスはブッシュ
の外交の先生であるから、かなりの部分についてブッシュはライス
の路線の側に乗っておる。近年の国際協調をやや考慮しながら(み
せかけだけでも)外交を運営していくという手法にもあらわれてお
る。

これはネオコンの「力」によってすべてを支配できるだけの優位性
が米国にある、という考え方を修正しておった。(イラクの失敗で
、それが米国の利益の為には意外とマイナスであったということが
ある。実際イラク戦争はネオコンーイスラエル派という一部の利益
の為にはなったのではあるが、その利益が「アメリカ全体の利益」
と相反しているわけじゃ)

ここで、ネオコン−イスラエル派にとって「イラン問題」が外交を
通じて収まってしまうことが問題になる。
ネオコン−イスラエル派にとって重要なのは、イランの実質的な無
害化と中東の米国支配の確立にある。中東でシリア・イラク・イラ
ンを支配下に置くことは、カスピ海周辺を押えることであるし、中
央アジアを押えるという形をとる。民主化のドミノとは「アメリカ
支配」のドミノを言い換えたモノに過ぎないじゃろう。

現状からいえば、湾岸・カスピ海周辺・中央アジアを押えることは
エネルギー(石油)、地下資源を押えることであり、同時にロシア
・中国をその方面で牽制することになる。
(同時に古い地政学上の問題であるハートランドに楔を打ち込んで
、そこで軍事的な睨みをきかせることも可能になる)
ということは成功すれば、まさに「世界支配」を完成させることが
できる。(これが、にゅうわーるどおーだー=世界の新皇帝たるモ
ノの命令を聞くべき体制か)

逆に、米国内の産油量が枯渇化が目前に迫っている中でそこを放置
していることは米国の一極支配を危うくするといえるであろう。

金融を中心とする勢力は、金融など、より淫靡な方策で、世界を管
理し、そこから莫大な利益を吸い上げるほうが長持ちするシステム
であると考えておる。より直接的に(ハードな軍事的圧力の下に)
支配権を行使して利益システムを確立させるか、間接的に(ソフト
パワーともいうが)行使するかというのが米国内の権力抗争の路線
対立があるだけじゃろう。

で、ネオコン−イスラエル派は、ここでレバノンに大規模に侵攻す
ることによって、穏健路線を潰してしまう方策をとったとみるべき
じゃろう。
レバノンに撃って出れば、関係の深いシリアが乗り出してくる可能
性がある。
もし、シリアがイスラエルを攻撃すれは、大手を振ってイスラエル
−米国は、自衛の為という名目で、シリアへの大規模攻撃ができる
じゃろう。

米国としては、イスラエル戦略にのって、シリア侵攻せざるを得な
くなる。(なぜなら、米国は民主党はユダヤ勢力が押えておるし、
現政権の国防総省はネオコンの主導下にある。イスラエルの為とな
ればババと解かっておっても引かざるをえないじゃろう)
そういう意味では、ユダヤが米国を牛耳っているというのは、「陰
謀論」ではなく、まっとうな現実認識であろうな。もちとん、ユダ
ヤ内に2つの潮流と対立もあるが、エルサレムを人質(ユダヤ民族
の世界に対しての危機管理意識ということにつながる)にされては
反対はしにくいからの。

イスラエルとしてはどうしても直接的軍事脅威であるシリア・イラ
ンの軍事的無力化が最優先されており、イラク戦突入に際して情報
操作したのも彼等であったし、そのさなかにもシリア攻撃させるた
めの捏造情報をながしつづけた。(これは、米軍、制服組みによっ
て、その過大な負担をさける現実的な発想から退けられた)

ところで、その後の展開では、国際派遣軍にヒズボラとの闘いを肩
代わりさせたいようだが、それはうまくいかんじゃろう。
また、国連監視団を追い出したがって、攻撃したが、これも国際世
論を反イスラエル化する方に向っておる。
また、今日25人の子供を含む、45人の市民を爆殺したことで、
このイスラエルの攻撃が自衛の範疇を越えて、国家による軍事テロ
なのではないかという認識がひろまるであろうな。
ここにきて、イスラエルを支持してきたブッシュ政権も、「自政権
のイメージダウン」を恐れて、収拾にのりだそうとしているが、ネ
オコン−イスラエルの狙いは、中東の混乱化・戦闘の激化であるか
ら、(米国全体の利益に反するが、)シリア・イランも堪忍袋が切
れて介入させるように仕向けるであろうな。シリア・イランへのな
んらかの直接的な徴発アプローチも考えられる

まあ、ネオコンは確信犯じゃからねえ。

ところで、イラク側はどうであろう。
これは、核問題で締め付けがきそうな今は、イスラエルーレバノン
での紛争は利益とうつるじゃろうな、反米的な国際感情が醸成され
るからの。(シリアは大変微妙な立場になるがの、、、)
で、ヒズボラへの支援(表立った協力はアメリカに直接攻撃の理由
をあたえるから、義勇兵の参加は止めたが)は続けられるであろう
な。

しかし、ネオコンの戦略は果たして成功をみるのであろうか?
その地域を長期に渡って強権的な支配化におくことはほとんどでき
ないもんなんじゃ。しかも大量にその地の人間を殺してその親族が
そこに残っている場合は。。
たいていは傀儡の現地支配層をつくって、その人間が強圧的にその
民を管理するという手法がとられる。(ほとんど、この手法は民主
化とは非なるものであろう)

彼等は日本支配をよく引き合いにだすが、日本が特殊事例であった
ことを理解していないようじゃ。
天皇がいたということ・仏教という基礎的宗教の性格の違い、島国
であること、戦後戦争のせいで、周辺に友邦が無かったこと、完全
に国全体が疲弊していたと、まだ国際社会が未成熟で、なんでも自
分達の思うように振舞えたこと、また、共産勢力との闘いがあった
ためにアメリカが日本に対したおおっぴらに利益を与えたこと、ア
メリカの国力が、世界が疲弊したために、比率として世界史上空前
の富と生産力を持っていたことなどがあげられるじゃろう。

そして、この戦略で失敗した場合のアメリカのダメージは、かなり
大きくなるであろうの。
その時一番利益を得そうなのは、ロシアじゃろうね。
戦争は、自国が参加しないでいるのが一番漁夫の利が稼げるからの。
米一極支配を面白くおもっておらん露中仏は、そのへんは読めてお
るから、米国が「一人勝ちの完勝」してしまうのは避けようとうご
くじゃろう。そのような陰からの支援もするじゃろう。もちろん、
アメリカが「負ける」ことはないが、「勝てない」というのも、政
治・経済力学的にはおおきな意味をもつことになる。軍事力で対抗
することはどこの国もできないが、経済的な支援や軍事物資の支援
がつづくかぎり紛争地での抵抗は可能じゃろう。

こうしてみれば、中東は米国がイランに直接軍事行動を起こせば、
湾岸地域からの石油危機で、世界が危機になる。
このまま、ぶすぶすと長期化すれば、米国の負担が大きくなりすぎ
て、米国の衰退の原因になってしまう。
米国内はほとんど情報操作下にあるとはいえ、実生活での切り下げ
が目に見えてくると、批判の矛先はどこを向くかわかったもんじゃ
ない。

ネオコンの机上のプランは、机上のプランでしかない。軍・制服組
みは、これが不可能なミッションであることは理解しておる。そろ
そろ、米・エスタブリッシュメントも、夢想から目が覚めて、本気
で出口戦略を死にもの狂いで模索することになるであろうな。

                       虚風老

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