2415.中国の海洋進出を防ぐ



中国の海洋進出を防ぐ

 中国が海洋進出するに当り、現状の方向性が古代文明からのくび
きを引きずり自己中心的で覇権を求めている様に見える。世界の海
洋を総て支配しないと意味をなさず、また、支配者は自由を保障し
なければならない。米国がその必要性がないと指摘する海洋進出す
るための軍事力増強を中国は推進している。説得だけでは困難に見
える。以下の方法も考慮する必要が出てきたように思う。

 中国は地続きで14カ国と接している。ロシア、北朝鮮、モンゴ
ル、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、パ
キスタン、インド、ブータン、ネパール、ミャンマー、ラオス、ベ
トナム。その他の近隣諸国に韓国、日本、タイ、カンボジア、フィ
リピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、米国となる。

 歴史的に見て、中国の安全保障上の脅威は、万里の長城に代表さ
れる北方と海洋からになる。南方の東南アジア諸国は中国を攻撃す
る国力も文化もなかった。どのような大国でも二正面からの攻撃に
は弱い。地上からの攻撃は、ゴビ砂漠とチベット高原とエベレスト
に守られているため、主に北方民族が脅威だった。海洋からの攻撃
は、古くは和冦であり、近代ではヨーロッパであった。この内、和
冦は商業海賊であり大陸深く進行しない。そのため、万里の長城か
らの脅威に対処することが国防の主体であった。

 そして、北方からの脅威がない時期にのみ海洋に進出してきた。
その時期は、元の元寇&インドシナへの攻撃、明初期の鄭和の遠征
、清初期の台湾進出である。その他の時期に海洋進出はなかった。
なお、航海技術が劣っていた元以前の時代の漢&唐では、北方脅威
が減じた時にインドシナへ進出した。現代に於いて、ソ連が弱体化
すると伴に海洋進出を開始した。南洋諸島を巡る争い(ベトナム、
マレーシア、フィリピン)であり、東シナ海での日本権益への侵略
である。

 中国が2005年にロシアに譲歩する形で国境線を画定した狙い
は、三つの目的と一つの策略がある。目的は1.北方の脅威をなくす。
2.ロシアとの戦略パートナーの関係を結び、ロシア&中央アジアの
資源の確保。3.余分な国防費の削減により国防資金を海洋進出に振
り向け、過去150年に及ぶ欧米からの脅威を直接受けない緩衝地
帯の確保。以上が目的だ。策略は一時の譲歩により、国境線を越え
て極東ロシア及び中央アジアへの中国人の入植を可能にし、同地域
の将来における実質支配または影響力の確保である。

 海洋国家である日本にとって安全保障上、日本の軍事力の向上も
必要だが、中国軍事力の分散も必要だ。中国の脅威を減らす最も効
果的な方法は現代の万里の長城を復活させることである。具体的に
は、1.ロシアの中立化と中国への潜在的脅威を現在よりさらに強く
意識させる。2.中央アジア諸国には、インドを含む西側諸国への資
源輸出ルートの確保による資源の輸出先の多元化。イスラム社会と
相容れない中国の脅威を宣伝する。また、資源の壁を克服する省資
源技術を安易に中国に与えず、資源確保の為に国力を浪費させるこ
とが、方法論として成立する。

 安全保障は友好では成立しない。価値観が違う相手にたいして、
友好関係にならざるを得ない状況にすることである。そうすれば、
中国政権自らが反日教育を中止する政策に転換することになる。

 佐藤俊二
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(Fのコメント)
佐藤俊二さんの視点は高いので、彼のコラムは面白い。しかし、今
回は少し、補足のコメントをさせていただきますね。

中国の海洋進出には戦略的な目的があると見ている。中東からの石
油が中国でも日本と同じように輸入の大半であり、かつ輸入石油に
依存する割合も高い。このため、日本と同じようにシーレーン防衛
が急務として浮かび上がっている。日本は昔からシーレーン防衛を
言いつつ、何もしていない。

この中東の石油のルート防衛は、日米と同目的であり、敵対関係に
なると、全ルートを米国の艦隊と張り合いことになり、現実的では
ない。

一番問題なのが、マカッラ海峡で、この地域はASEANと日米と
張り合うことになる。このため、マカッラ海峡を通らずに、石油を
中国に持ってくることと、インド洋に拠点を持つことを最優先で中
国は手を打っている。日本政府の役人や政治家のように議論してい
るだけで、何もしない国とは違う。戦略を立てると、その実行はス
ムーズである。日本の戦略立案過程は言葉遊びと見えるし、なおか
つ、戦略を立てても実行したことがない。

中国はミャンマーにココ諸島を借り受けて、大海軍の基地を建設し
ているし、ミャンマーから水路と道路で昆明までの輸送路を確保す
るために道路建設をしている。もう1つが、パキスタンのダワダル
港からパイプラインで中国に石油を持ってくる。この建設も始めて
いる。

中国のココ諸島基地の近くのアンダマン諸島にインドは対抗上、海
軍基地を作っている。このように中国海軍は着々と海外基地を建設
しているし、その対抗としてインドが重要になってきている。シー
レーンのほとんどはインド洋である。そこはインド海軍の作戦エリ
アでもあるので、インドとの友好関係は重要なことになる。中国は
ここでも手を打っている。上海協力機構のオブザーバーとしてイン
ドを参加してもらい、そこで友好関係を確立する。このように中国
の素早い行動に日本はついていけてない。これでは戦略的に機敏に
行動する中国に負けるような気がする。

日本はロシアとの北方領土問題で、友好な関係を構築しないし、東
南アジアとの関係でも、靖国問題などでASEAN諸国は急速に中
国へ傾斜している。日本の孤立化が明白になっている。タイ、シン
ガポール、ベトナムが傾斜しているし、ラオス、ミャンマーは既に
親中国である。中国は日本孤立戦略を実施しているが、それにまん
まと、日本は嵌められている。

米国への取り込みも中国は行っている。米国民主党、東部エスタブ
リッシュと西海岸のシアトルは中国ビジネスで利益を出している。
このため、民主党政権になると、親中派が力を持つことが予想でき
る。中国の戦略を研究して、その対応策を日本も検討しないと、ま
た、ジャパンバッシングになるし、日本は孤立する可能性もある。
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真珠の紐戦略   2006/7/2(日) 午前 9:12 
http://blogs.yahoo.co.jp/hiromichit1013/folder/1362838.html
昨年EAST-ASIA-INTEL.COMは、中国が、マラッカ海峡近くのインドネ
シア領小嶋に潜水艦基地を建設中であると報じた。外交筋によると
オーストラリアが、中国の潜水艦基地建設計画に抗議したと言われ
る。潜水艦基地ができれば、中国最初の海外基地となる。以後、こ
の関連情報に注目しているが、はっきりしたことは不明である。

 インドネシアの中国海軍潜水艦基地建設は、中国からのミサイル
開発の見返りかもしれない。
 インドネシアは、鉱区の管轄権を巡り隣国マレーシアと対立、昨
年2月相互に艦艇を出動させた際、軍事力を比較して圧倒的にマレ
ーシア海軍が優位にあると判断した。その結果、インドネシア国内
では、「外交交渉の裏付けとなる軍事力について、周辺国との格差
改称を急ぐべきだ」との声が強まった。

 これを受けてインドネシアは、中国やロシアから装備調達を図っ
た。昨年夏国営アンタラ通信等がクスマヤント研究技術担当国務相
の話として伝えたところでは、中国から研究用ミサイルを提供され
、中国人技術者の指導の下でミサイルを解体・分析して技術を九種
した後、当面、所定15〜30Kmの短距離ミサイルの自主開発を
目指すという。米国の軍事協力凍結が裏目になっていた。

 中国は、中東からパキスタン、バングラディシュ、ミャンマー、
カンボジア、タイと南シナ海の拠点を結ぶシーレーンを構築中であ
る。
 これを西側では、真珠の紐戦略(string of pearls strategy)と
呼んでいる。
 インドネシア領中国海軍潜水艦基地建設は、西パキスタン・グワ
ンダール海軍基地建設と相俟ってシーレーン保護戦略真珠の紐の拡
大を意味している。
 中国の経済発展は石油を必要とし、石油は輸入に頼らざるを得な
いため、積極的に資源外交を展開し、石油を守るシーレーンを防衛
しなければならないとする。しかも、中国の軍事力の拡張は、自ら
の大国化に繋がる。そのための外交及び海軍力増強は、地域の軍事
バランスに影響を与える。


 
 
 


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