2401.グッドナイト&グッドラック



こんばんは。

浅山さんから『グッドナイト&グッドラック』の話が出たので、
ちょうど書いていた感想文を便乗で送ってしまいます。思い違いや
誤りがあったらご教授ください。

ただし映画を観ていない人は、くれぐれも読まないように。ネタバ
レということもありますが、間違った印象を持たれてしまってはい
けませんので。


『グッドナイト&グッドラック』

ジョセフ・マッカーシー上院議員による赤狩りはいくつか映画にも
なっているし、最低限のことは知っているつもりでいたが、マッカ
ーシー批判の口火を切ったのが、この映画に描かれるエド・マロー
がホストを勤めていたドキュメンタリー番組の「See it Now」だっ
たということは初耳。じゃないかも。なにしろ私の記憶力はぼろぼ
ろだから。が、番組の内容にまで言及したものに接したのは、間違
いなく初めてだ。

最近では珍しいモノクロ画面に、舞台となるのがほとんど CBS(3大
テレビ・ネットワークの1つ)の局内という、一見、まったく地味な
映画。せいぜい出来てジャズの歌を度々流すことくらいだから。

カメラが制作室を飛び交い緊迫した画面を演出することもあるが、
観客が緊張するのは、静かに正面切ってエド・マロー(デヴィッド
・ストラザーン)を捉えるシーンだ。今からだと考えにくいが、こ
の静かに語りかけるスタイルが、テレビで放映される内容そのもの
なのである。当時のテレビが録画ではなくリアルタイムの進行であ
ることが緊張感を高める一因にもなっているのだが、こういう番組
製作の興味も含めて実にスリリングな画面に仕上がっている。

監督でもあるジョージ・クルーニーは、フレッド・フレンドリーと
いうプロデューサー役。マローと共に3000ドルの宣伝費を自分たち
で負担してまで番組を放映しようとする。が、彼も地味な役柄だ。
声高になるでなく、信念に基づいて粛々と事を進めていく。『シリ
アナ』への出演といい、クルーニーは、ブッシュ政権下のアメリカ
に相当危機感を持っていると見た。テレビで、アメリカは自国の自
由をないがしろにしていては世界の自由の旗手にはなれない、とい
うようなことをマローは言う。

もっともマッカーシー議員側の報復は、彼を当時の映像ですべてを
まかなったこともあって、冷静なマローたちの敵としては見劣りが
してしまう。というか、映画を観ていてすっかり実はその程度のも
のだったのかもしれないという気になってしまったのだ。
50年以上という時の流れがあるにしろ、マッカーシーが熱弁をふる
う実写はどう見ても異様にしか思えない。それなのに、あれだけ猛
威をふるっていたのだ……。

CBS 会長のペイリーとの対決(いたって紳士的なものだが、こちら
の方が裏がありそうで怖かった)やキャスター仲間の自殺(事情を
知らないこともありわかりにくい)などを織り込みながら、しかし
事態は、ニューヨーク・タイムズ紙の援護などもあって、急速に終
息へと向かう。

このあたりが物足りないのは、先に触れたように、マッカーシズム
が実体としては大したものではなかったということがあるだろう。
問題なのは、そういう風潮に押し流されたり片棒を担いでしまうこ
とで、だからこそマローたちのようであらねばならぬとクルーニー
は警鐘を鳴らしているのだ。

勝利(とは位置づけていなかったかもしれないが)は手中にしたも
のの、娯楽番組には勝てず、テレビの中でのマローの地位は下がっ
ていく。締めくくりは彼のテレビ論で、使うものの自覚が必要なテ
レビはただの箱だと、もうおなじみになった淡々とした口調で言う
。ただの箱論はPCについても散々言われてきたことで、マローのは
製作者側への警告もしくは自戒と思われるが、出典はもしかして
これだったとか。

話はそれるが、この映画でのタバコの消費量たるや、ものすごいも
のがある。番組内でさえマローが吸っていたのは、スポンサーがタ
バコ会社だからというわけでもなさそうだ。CMをまるごと映してい
たのはもちろん批判だろうけど、あー煙ったい。

ということで、「グッドナイト、グッドラック」。
私が言うと様になりませんね。

 盛
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盛様

有難うございます、記述の確かさで沢山の追認をさせて頂き感謝。
神山様の奥様が週刊「サンデイ毎日」に5月か6月ごろ書いておられ
ました、シャンテの掲示板にも採録されておりました。

映画の見方も多様で、社会的に見るか、俳優を好みで感じるか、最
もこれは年齢にも寄りますが。

我々は社会事象の一つとして、未来に良かれと思えるものを伝えた
く思います。

有難うございました。
浅山
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浅山 様

> 有難うございます、記述の確かさで沢山の追認をさせて頂き感謝。
>神山様の奥様が週刊「サンデイ毎日」に5月か6月ごろ書いておられ
>ました、シャンテの掲示板にも採録されておりました。

私もシャンテシネに行きましたが、掲示板は見ないで帰ってきてし
まいました。

感想文はたまたま書いたところでしたので、つい反応してしまった
のですが、そういう専門家の方が身近?にいるのでは、投稿は削除
したい気分です。

>映画の見方も多様で、社会的に見るか、俳優を好みで感じるか、最
>もこれは年齢にも寄りますが。

そうですよね。だから自分の物差しで観ればそれでいいんでしょう
けど、でもなんだか恥ずかしい。


昨日は木場109シネマズ木場で『バルトの楽園』、今日は高田馬
場に行って、早稲田松竹で『リトル・ダンサー』と『リトル・ラン
ナー』を観てきました。

早稲田松竹は30年?ぶりでしたが、ギンレイホールほどの混雑もな
くゆったりと鑑賞することができました。同じ2本立てですけど、
こちらの方が 200円安いですし(せこい!)。

そのあと早大の演劇博物館に寄って、さらに飯田橋まで歩いたので
、もうくたくた。最近運動不足がひどいので、まだ足の裏がじーん
としています。

今年は映画を観たら感想文くらいは書こうと思っていたのですが、
観るスピードに追いつかなくてもう挫折してしまいそうです。

 盛
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ロンドンだよりをお送りします。

 ロンドンの中心部から地下鉄で訳30分ほど北に向かった
ところにフィンチリーセントラルという駅があり、そこから
西に10分ほど歩いたところに4月に引っ越した私の仮住まい
があります。そしてその道すがらに地元図書館があり、土曜日
も、そして夜も曜日によっては夜8時まで開いているのでよく
利用します。ここからそう離れていないゴルダーズグリーン
にある地元図書館もそうでしたがここにも日本図書の書架が
ひとつ設けてあるのです。大きさは縦2メートル横1メートル
くらいの本棚2つ分の片側が全て日本語の書籍のスペースとして
割り当てられているのです。
 誰が図書選択の決定権を持つのかいつか聞いてみたいと思って
いますが、堅苦しい本は少なく、ロンドンに来ている日本人が
読みたそうな(1)イギリス関連本、(2)有名作家本、(3)
語学関連本が集められています。私の好きな宮部みゆきの本が
結構おいてありこの2ヶ月で置いてある本は読んでしまいました。
 イギリス関連本は著者のイギリス関連知識をひけらかしたもの
が多くなかなか読み応えがあるものに出会えなかったのですが
先日読んだ「ロンドンの負けない日々:高尾慶子著 文春文庫
2005年9月」は久々に背筋が寒くなる優れものでした。
 とくに天皇訪英の際に日の丸を燃やしてまで抗議するほど
日本が憎かった元英国軍人と対面し話をきき日本に連れて行く
ドラマは秀逸です。広島の原爆記念館前で日本人の子供に戦争
についてこの元英国軍人が意見を聞かれて答えるシーンにはしびれ
ました。
 ロンドンも夏に入り公園の緑がより一層青々としまぶしくなって
きました。

木野

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