2385.「国家の品格」から見える日本



「国家の品格」
論理の世界を拒否した「国家の品格」が売れている。  Fより

「国家の品格」の感想文を読むと、論理より情緒と形が重要である
という所で、評価が二分している。情緒と形は思考停止のキャッチ
フレーズであることも事実であるが、論理でどれほどのことが歴史
上できたかもまた事実である。

形としては「武士道精神」を上げ、情緒としては「もののあわれ」
でしょうが、日本文明は他国とは違うので、その面を維持しようと
しているのがベストセラーになる理由なのでしょうね。

この情緒や形は、どうしてできたかと言うと、日本は島国で外国か
らの侵略が無かったために、日本人たちは自分の島の内部の平和を
守れば良かった。この内部の平和を守るために、不遇な死者の霊が
生きている権力者に仕返しをするという形を作って、無用な戦争は
しないようにしたのでしょうね。このため、皆殺しという極端な戦
争は織田信長以外には、ほとんど無い。

狩猟民族が平和な農耕民族を征服した歴史が、世界の歴史であり、
英国などもアングロサクソンに征服されて、ケルトはアイルランド
に逃げるしかなかった。島国でも征服されている。狩猟民族は町全
体の皆殺しも多い。

縄文人は征服された民族であると思ってる方がいるかもしれないが
、網野さんの功績は、この縄文人は神の使いとして見られ、かつ山
の鉱山士や木地師などになって、平地の農耕民族の弥生人と山の縄
文人と平和な領域を設定していたために、日本は古代に戦乱が少な
い。それより朝鮮・中国からの弥生人同士の戦いはあったようであ
るが、縄文人が皆殺しにあったような気がしない。

それと縄文人の信仰を弥生人が受け入れて、縄文の天皇と弥生の権
力者の二重政権を当初から日本は志向していたのでしょうね。弥生
人は道教の神道派の信仰を持ち、縄文人は太陽崇拝の信仰であった
と思うが、その混在した新しい神道を作ったように思う。このため
論理で構築されていない。両者の主張の中間で収めるという文化を
持つことになる。このこと全体が「国の品格」になっている。

しかし、日本以外は論理構造の国であり、日本の情緒的な主張は通
らない。情緒的なことを論理的に説明しないといけない。この説明
ができる人が少ない。それをするのが国では外交でしょうね。

今後、平和な世界を作る論理や実践ができるのは日本の神道しかな
いが、その行動財源は日本だけでは無理で、ビル・ゲイツなどの大
金持ちを説得する必要がある。

ここに日本の神道の普遍化が必要になるのでしょうね。真のエリー
トもこの日本の神道を応用でき、かつ説明できる人のような気がす
る。
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黒田成彦の読書感想文集 
国家の品格
http://www2.ocn.ne.jp/~naruhiko/book2.htm
  私たち日本人、とりわけ長崎の人は、海の彼方への憧れが潜在
的にあるのでしょうか、とにかく『舶来モノ』を好み尊びます。「
上等舶来!」なんて慣用句もあったくらいでして、よそ様の食べ物
や装飾品や文化を後生大事にする傾向が強いですね。さらに「謙遜
」という美学があるものですから、自分の魅力などというものは卑
下してしまい、口に出すのもはばかれるという礼儀まで加わってい
るから情けないですね。「世界の舞台」とか「グローバル化」とい
う言葉の前には、ひれ伏してしまう精神構造をこの本が見事に打ち
砕いてくれます。

  筆者は、「日本は世界で唯一の『情緒と形の文明』である」と
打ち出し、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神が今、混迷
する世界を救世する価値であると訴えます。英語をペラペラ話せて
も、その話す中身が乏しくては国際人にはなれず、また民主主義の
限界は「赤信号みんなで渡れば怖くない」というような衆愚的な価
値観をも生み出してしまうことであると説きます。しかるに武士道
精神とは法律を超える価値であり「卑怯を憎む心」であると定義し
ています。さらに新渡戸稲造がかつてベルギーの法学者との対談の
中で、「日本には宗教教育がない」と話したところ、「宗教なしで
どうやって道徳教育ができるのですか?」と問われ、それに代わる
価値が「武士道精神」であったことを述べています。

  さらに、民主主義が衆愚政治を招かないためには「真のエリー
ト」が必要であると述べていますが、その「真のエリート」につい
て二つの条件を掲げています。その一つは、文学、哲学、歴史、芸
術、科学といった、何の役にも立たないような教養をたっぷりとつ
けていること。そうした教養を背景として、庶民とは比較にもなら
ないような圧倒的な大局観や総合判断力を持っていること。そして
もう一つは、「いざ」となれば国家、国民のために喜んで命を捨て
る気概があること。この二つの条件を有する「真のエリート」が日
本からいなくなってしまったと嘆いています。

  これには唸らされました。この二つの条件を自分自身は持って
いるだろうか自問自答しましたが、なかなか二つとも厳しい感じが
します。ただ、こうしたことを意識し続けなければならないと思い
ます。とにかく、日本に生まれて、こうした価値観を共有できる文
化・文明の中で育ってきたのですから、今こそ、日本の素晴らしさ
を再認識し、混迷する現代社会にきちんとした方向性を打ち出すべ
き時がきていると思います。本当に素晴らしい本でした。藤原正彦
氏は、今後注目に値する人です。
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阿部重夫編集長ブログ 
「国家の品格」の品格
http://facta.co.jp/blog/archives/20060329000114.html
「ならぬことはならぬものです」。藤原氏は会津藩藩校日新館の「
什(じゅう)の掟」を引く。このぞんざいだが、有無を言わさぬ「
問答無用」が喝采を呼ぶのだろう。よほど小言爺さんが懐かしいら
しい。しかし「王様の耳はロバの耳」と、地面に掘った穴に叫ぶ床
屋みたいな気分になる。そして「究極の競争社会はケダモノの社会
です」。おいおい、それじゃケダモノさまに失礼だろう。自然界は
弱肉強食だけではなく、共棲もある無限に複雑な構造を持っている。
それを一蹴して省みないなんて、どうして誰も苦言を呈さないのか。

彼の本は何冊も読んだ。「若き数学者のアメリカ」「遥かなるケン
ブリッジ」……英国渡航前に読んだし、「天才の栄光と挫折」に描
かれたインドの夭折した数学者ラマヌジャン(1887〜1920)には心
底あこがれた。いや、彼の父、新田次郎の本だって愛読した。でも
、「国家の品格」はいけない。ジョン・ロックもカルヴィニズムも
一緒くた、あげくに新渡戸稲造の「武士道」に帰れ、では情けなく
ないか。

「国際貢献など不要」「英語より国語と漢字」など、この本は随所
で思考停止のキャッチフレーズを用意する。皮肉なことに、ものを
考えない、という点では小泉首相とそっくりである。そしてグーグ
ルを「アメリカの権化」として礼賛している人々と「国家の品格」
は対極にいるように見えるが、前回書いたように「無知」をブラッ
クボックス化してしまう点で双方ともハイエクの手のひらを一歩も
出ていないのだ。

トンデモ本すれすれのこの本に品格はあるか。それが最大の逆説だ
ろう。もっとも、藤原氏には「メチャクチャなことを言う数学者は
たくさんいます。『お前が一番そうじゃないか』という声が多方面
から聞こえてきそうな気がしますが」と自分を笑う諧謔精神がまだ
ある。それが救いである。
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おれの買い物http://plaza.rakuten.co.jp/orenokaimono/diary/200606060000/
国家の品格

では、日本のすばらしさが主張されている。日本人は情緒力が優れ
ている。今はそうでもないが一昔前には高校、大学レベルで数学教
育が進んでいた。弱いものを憐れむことができる。田園の環境が美
しい。卑怯を憎む心がある。どれも、他の国にいけば尊敬される事
柄だそうだ。

日本人は日本語をもっとうまく使えるようにしなければならない。
日本のことを愛し、知らなければならない。そのことが国際人とし
て尊敬されるためには重要なのだ。

イギリスはそれほど裕福な国ではない。でも、世界中から尊敬され
ている。それはイギリスが美しい国であり、伝統を重んじる国であ
り、学問の重要な発見を生み出し続けてきた学問の先進国であるか
らだ。

この本には勇気付けられるところがたくさんあった。この本では若
いうちに文学の名作をたくさん読むことが重要だと主張されている
。それと、役に立たない学問がその国の底力だと主張されている。
日本人には世界に通用する強みがある。それをおれは明らかに持っ
ているのだ。この本を読んで『まずい』と思う人もいるだろう。逆
に『おれってすごい』と思う人もいるだろう。

もともとの目的は、画一化されていく世界に同調しようとする日本
に対する警告であったり、日本文化が失われていくことへの警告で
あったり、過去の日本人は立派だったという訴えであったはずなの
だが、おれには『お前はお前が思っているよりすごいかもしれない
ぞ』と言ってくれているような感じがした。

自分がこの本の主張とまったく反対のことをしていて凹んだり反感
を感じる人もいるかもしれない。そういう人は正論だけ身につけれ
ばいいのだと思う。確かにいいこと書いてある本だと思う。自分が
この本の主張に当てはまる人は自信を持てる本だと思う。どっちに
しろ画期的でオリジナリティのあることが主張されているので読む
価値はあると思う。大体、安いんだし、2時間で読める本なんだし
ベストセラーなんだから読んでみな。いい本だと思う。


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