2374.国家基盤と政権基盤



国家基盤と政権基盤

 小泉首相の指示により、国会が次期国会に重要法案を先送りした
。その重要法案とは、@教育基本法改正案 A国民投票法案(憲法
改正の具体的な手続きを規定) B組織的犯罪処罰法改正案 C社
会保険庁改革関連法案 D道州制特区推進法案 E防衛省昇格法案
 などである。これらを眺めれば、小泉首相の考えが透けて見える
と思う。全て国家基盤を左右する重要法案である。

 @教育基本法は「愛国心」をどのように位置づけるかが問われる。
愛国心を偏狭なナショナリズムと捉える見方は、偏っている。視野
を拡げる必要がある。「健全な愛国心」は社会の安定、安全保障、
経済成長、少子化対策の基本ベースなのだ。国家・国民を守る意味
合いは容易に理解できる。まともな人間は自己が存在する社会を守
ることに反対はしない。経済成長と少子化対策は判りにくいだろう。
経済成長のベースには適正な人口維持&増加が必要である。米国の
著名な経済学者たちは、米国の人口増加(白人の出生率は1.9で、他
の先進諸国とは明らかに違う)の基本は「愛国心」にあると発言し
ている。健全な愛国心が存在する故に国家の将来に希望を持ち、個
人の希望が重なることにより、国民が素朴に子供を生むと言ってい
る。私も同じ考えを持っている。決して経済的理由だけでは解明で
きない部分だ。

 その他、A国民投票法は憲法改正に必要な法案であり、B組織的
犯罪処罰法改正案は国際公約の対テロ法案で、世界での日本立場を
明確にする。C社会保険庁改革関連法案とD道州制特区推進法案は
国家の基本設計の変更である。E防衛省昇格法案は普通の国家とし
ての安全保障の確立に必要な事項だ。

 つまり、数十年単位を考慮した国家基盤の変更をする法案だ。次
期首相は国家に対する揺るぎない国家観の持ち主でなければならな
い。自己の政権基盤に囚われたり、近視眼的な指向で小手先の政策
をしていては務まらない。また、その国家観を国民にわかり易く説
明し、実行しなければならない。しっかりとした国家観の持ち主が
長期政権を維持しなければ、再び日本は混迷と停滞になってしまう
ことは、この15年間で実証されたと判断している。

 権力闘争である現在の自民党総裁選は、この判断基準を持って眺
める必要がある。当然に諸外国や海外投資家も理解している。誰が
強い日本を求めるか、混迷する日本を求めるかも判ろうというもの
だ。

佐藤俊二
==============================
小沢一郎代表と福田康夫元官房長官の政局観は同一

 二人とも来年の参議院選挙を見ている。今年の税制変更で、来年
に向け大多数の勤労者にとって増税になる。増税時の選挙は与党の
敗北が過去の経験則だ。さらに、前回選挙時の小泉効果の反動も加
わり、自民党が改選議員数より大きく減る。これを前提にし、小沢
代表は民主党議員の上乗せに政治信条を曲げても既得権益者にすり
寄っている。福田氏は来年の参議院選挙で自民党が負けた後の登板
を狙っている。福田氏は自民党総裁選のギリギリまで出馬表明をせ
ず、絶対的な第二候補としての立場を確立する事を目標としている。
参議院選挙で自民党が負け、安部氏が降板すると読んでいる。いず
れの立場も、来年の参議院選挙で自民党が敗北することを読み込ん
だ動きだ。

 以上に対し、多少のバブルの弊害には目をつむり、安部氏は増税
の痛みを薄めるべく、日銀に市場への資金供給を大量に行う金融緩
和政策の実質継続を迫っている。そして、現政権側は来年の参議院
選挙のテーマを景気や各種公約にせずに「国家のあり方」にしよう
としている。そのため、国家のあり方に関する重要法案が全て秋の
臨時国会に先送りさせた。。国会でもめることは必定であり、民主
党にとって内紛になる要素が多い。臨時国会で可決成立する必要は
無く、参議院選挙まで長引かせる作戦と思える。

 以上の考察は、今後の展開を考える上での一つの見方と考える。
なお、私自身は、規制緩和と効率的な行政による経済成長の上に立
ち、国家のあり方を問うことが参議院選挙対策と思う。

佐藤俊二

コラム目次に戻る
トップページに戻る