2297.「生ける屍、民主党と憲法改正の行方」



「生ける屍、民主党と憲法改正の行方」

◆にせメール騒動◆
堀江にせメール問題で、民主党がガタガタである。
送金指示メールによる追及と関係のなかった参院は衆院とは別だとは言え、少なくと
も今期国会は気勢を削がれ消化試合となってしまった。

それにしても元々脇の甘すぎる永田議員や野田国対委員長は論外として、若き軍学者
といった風情もあった前原代表の組織掌握、危機対応の余りの不手際振りは自民党と
の内通すら噂される始末だ。
曰く、「4点セットで追い込まれる小泉政権を見かねたホワイトハウスからのブッ
シュホンにより、前原は自爆テロを決行した」等々。
如何に忠米若衆組の松下政経塾出身者であっても流石にそこまでの大仕掛けはないと
は思うが、国会終了後も前原体制では党勢の切り返しは無理だろう。

◆憲法改正への道◆
さて、今期国会が終わったら、前原氏は本来会期中に行うはずだった安全保障政策の
取り纏めにいずれ取り掛る事になるが、前原氏が自己の主張を大幅に後退させない限
り纏る事はない。
前原氏は、先頃決まった自民党の憲法改正案に謳われた安全保障政策部分に全面的に
賛成であると繰り返し発言している。
自民党の憲法改正案は、国防と国際貢献を同じ条文に書き込むと共に、集団的自衛権
と集団安全保障が明記されず両概念が曖昧である上に、解釈により集団的自衛権の行
使を制限を付けず可能とし、別途定める安全保障基本法等で具体的に規定するとした
ものである。

筆者はこれでは、国際貢献イコール米国貢献になり、自在の法律改正、解釈変更で米
国の戦略に地球の果てまで付いて行く事になると考える。
中東や東アジアその他での無条件で徹底した対米協力に道を開き、自動参戦装置化し
てしまう可能性が極めて高い。

筆者は日米同盟維持と憲法改正は必要であるとの立場だが、同じ改正でも日本の米国
属国化を高めるものと主体性を取り戻すものの2つの方向があると思う。
憲法改正は、国益に加え国際世論の要請、国際的大義に適う場合には国連軍や多国籍
軍として海外に軍隊を出す事も辞さず、そうでない場合には出さない日本の主体的な
行動を保障し規定するものでなければならない。
即ち、筆者は自民党案の真逆を行くべきだと考える。

◆前原辞任とその後◆
さて、恐らく前原氏はこれまでの主張を大きく変えず、安全保障政策の取り纏めは失
敗に終わる。
前原氏は予てからの公約の通り、取り纏め失敗の責任を取る形で代表を辞任するだろ
う。
こうすれば、にせメール問題の責任での辞任とならず、向こう傷として政治家として
の履歴へのダメージを軽減できる。

民主党の次期代表は誰になるのか。
小沢氏との声もあるが、チルドレンはともかく本人は日本がガタガタになった時に満
を侍して登板をする事を考えており、民主党がガタガタになったぐらいでは動かない
だろう。
のこのこ出て行けばまた世論の集中砲火で潰される事は分かっており、平時に合わぬ
乱世の政治家との自覚がある。
自民が9月で任期が切れる小泉首相の後継に安倍氏を出してくるなら、対抗軸として
(四国行脚で禊を果した?)菅元代表の再登板に落ち着くのではないか。
舌鋒鋭い切りこみ隊長の菅氏は、答弁でアドリブの利かない安倍氏の敵役としては適
任である。
小沢氏は菅氏を表に立てて、幹事長として来夏の参院選を采配する狙いだろう。

前原氏の方は、手勢を連れての離党と自民党入りもしくは公明党に替わっての友党化
をカードとしてちらつかせ、反体制派として党内親自民勢力の結集を図るのではない
か。
民主党内がガタガタになればなるほど、遠心力で党内親自民勢力が増える事となる。

◆「トロイの木馬」として◆
米国に無条件で従って行くのも、一つの現実的な考え方である。
筆者も、少なくとも特に対中戦略として、米国の力も借りると共にアジア諸国を味方
に付け中国を囲い込みその牙を抜き安全な国になって貰うまでは、米国との同盟は強
化して行くべきだと考える。
しかし、米国の長期的に見た相対的な衰退を予想すると共に、世界民主化の大義は認
めるとしても、その裏の顔としての石油確保の為の恣意的な行動を考えれば、同時に
ある程度の距離を置く仕組みも用意して付き合うべきだと考える。
筆者は、この観点から主体性という面で前原氏や中曽根氏の対米観とは袂を分かつ。

前原氏は、己の信念に従って行動すれば良い。
安全保障政策について、民主党内を時間を掛けて親自民党化して行くのも政治目的実
現の手段としては有りだろう。
筆者は逆の考えに立つが、前原氏の「トロイの木馬」としての手腕が注目される。
憲法改正について、「護憲」対「改憲」の時代は過ぎた。
マスコミ、識者、政治家は、今後「従米的改憲」と「主体的改憲」を対立軸として国
民の前に明示する必要がある。

                                   以上
佐藤 鴻全

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