2280.財政論議について



 財政論議について

 政界の財政論議を見ていると、テクニック論に偏っていると思う
。歳出削減を実行し、それでも足りない為に増税で賄うと言う論理
が主体である。責任ある財政論議を行い、国民に理解を求めること
が政治家としての責務だとは一見正しい様に見える。また、、二つ
の意見で論争しているように見える。一つは、先に財源を確保する
と既得権益者が歳出削減をせず、結局はさらなる増税を招く。成長
率を高めれば税の増収となるので、成長率を高めることを主体にし
て財政再建をする。一方の論は、歳出削減を進めても社会保障等の
増加は人口構成上不可避である。今までも、高めの成長率を設定し
たために財源不足となり、国債の追加発行を余儀なくされ現在の財
政危機を招いたとする論だ。
 
 この論議、現在後者の成長率を低めに設定する方が優勢のようだ
。つまり財政とは安全側に設定するべきものとの考え方が多数意見
と思う。低めの成長率には無理が無く安全に見える。確かに、財政
は安全側・保守的にすべきものだが、低めの成長率も高めの成長率
も歳出削減への強制力がない。
 
 どうも、基本理念が見えない論議と思う。そもそも、豊で安全な
生活を国民に提供するように国家権力を行使することが政治家に求
められている。より豊で安全になるためには、より高い経済成長率
が求められる。わざと低い経済成長にする必要はない。高い成長率
は国民に将来への希望を抱かせる基本的要素でもある。多くの国民
が明るい未来を感じなくては、少子化も止まらないと思う。
 
 ルービン回顧録にあるように「経済成長を促進する1番の近道は
、財政の引き締めを継続すること」と考える。一国の投資・消費額
の総額に対し、官の投資・消費と民の投資・消費の高い効率性は、
現在の日本においては明らかに民にある。経済成長の初期段階では
インフラ投資等は高い投資効率を有するが、現在の日本はその段階
を過ぎて久しい。消費についても、官の提供するサービスと民の提
供するサービスの違いは誰の目にも明らかだ。ゆえに、消費・投資
効率の悪い官の割合を減らし、効率の良い民の割合を上げる政策の
継続、すなわち財政の引き締めという政策になる。
 
 財政の健全化と財政の引き締めは同一線上にある基本理念ではな
い。国家財政の論議は、国民を豊にする政策の観点からの論議にな
らなければならない。「財政健全化」を主テーマのように扱い、論
理のすり替えで既得権益を守ろうとする姿勢が見えてくる。財政再
建を声高に発言する政治家に信用をおいてはならないと思う。将来
ビジョンから語り始め、その方法論を語る政治家に期待したい。
 
佐藤 俊二

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