2274.イラン核問題続報



イラン核問題の進展を分析しよう。     Fより

シーア派全体の最高指導者はイラクのシスターニ師であり、イラン
最高指導者のハメネイ師ではない。そして、イラク国内でシーア派
とスンニ派が対決しているが、イラクのシーア派宗教政党を促進さ
せて、かつシーア派対スンニ派対決を止めようとしているのがシス
ターニ師である。

これと同じ構図が中東全体にある。イラン・イラク以外の国では主
流派のスンニ派と非主流派のシーア派という図式がある。このため
、イランの核問題は欧米との対決という側面と、スンニ派との対決
という側面がある。中東石油産出地域に多いシーア派としては、イ
ランが核武装すれば、中東諸国でのシーア派の地位が向上して、ス
ンニ派主導の王政を民主化で倒せると見ている。

民主化されると、産油地域にはシーア派が多く、イラクと同様に石
油の利権を確保できて、シーア派住民に金をばら撒まくことができ
る。そして、シーア派は宗教指導者を政治に関与される方向で、世
俗と宗教とが一致している。イラクのシーア派はシスターニ師が宗
教政党への支持声明を出したために、シーア派からの世俗政党は出
られなかった。

スンニ派はイランに核武装されると、イランや中東地域のシーア派
との対決ができなくなり、中東産油地域に多いシーア派住民の力が
増して、イラクからドミノ理論でスンニ派主導王政が崩壊すること
を恐れている。

そのシーア派対スンニ派の対決という側面を生かそうとして、ライ
ス米国務長官は動いている。ロシアのプーチンも、そのことに気が
ついている。このため、ロシアは欧米とイランの仲介という位置を
取っている。

しかし、ライス国務長官はパレスチナのハマス政権問題をイラン核
問題とペアーで議論しようとしているが、そのハマス政権への援助
を停止することはスンニ主導の中東諸国も拒否している。パレスチ
ナ地域はスンニ派地域であり、そのパレスチナに影響力を持とうと
してレバノンのシーア派ビスバラを使って、イランは金を出してい
る。それに対抗していたのが、イラク・スンニ派のフセイン大統領
であるが、この地域の力関係を理解しない米国は、そのスンニ派を
窮地に追い込んでいる。

パーレビ親米王朝を倒したイランのシーア派政権は基本的に反米で
あり、中東石油地域ではスンニ派は立場が弱いために米国を頼って
親米になっている。その親米派政権を米国は中東民主化というテー
ゼで倒して、反米のシーア派政権にしているのが現状であり、シー
ア派は米国によって、石油地域を占領できることになる。そして、
民主化の選挙で宗教政党が政権を取り、宗教と世俗の一致した反米
シーア派政権ができることになる。そのシーア派トップがシスター
ニ師である。中東地域のシーア派政権は連合体になり、益々、スン
ニ派政権を抑えることになる。スンニ派王政政権が恐れていること
が現実化し始めている。

そして、ここに中国が登場してきた。イランの完全サポートとして
そのホワイトナイト振りは、大きく情勢を変化させている。この地
域のシーア派、スンニ派の戦いを理解しないのは米国と同じである
が、違う動きをしている。中国は経済援助や技術支援を通して、イ
ランとの友好関係を積極的に推進する方向にある。

石油欲しさと反米という位置が同じという理由であろうが、そのこ
とで米国は友好関係にある中国に対応する方向を敵対関係に変化さ
せる可能性がある。中国のイランでの動きは世界情勢を一遍させる
可能性がある。

中国は恐らく、国連安保理でもイラン核問題での経済制裁に拒否権
を発動する可能性が高い。しかし、それでは、有志連合でのイラン
攻撃になってしまう。それとサウジなどスンニ派地域の石油を中国
は期待できなくなる。このため、中国もイランが有利な形で制裁回
避をするようである。

イランは戦争開始と共にペルシャ湾を封鎖するために、戦争期間は
サウジやクエートの石油を積み出すことができなくなり、石油危機
が来る事は間違いない。日本も中国も備蓄石油で当分我慢するしか
ないことになる。経済的にも大きな打撃になるでしょうね。

どちらにしてもイランの強気が続くと、欧米諸国、日豪イスラエル
スンニ派諸国は行動を起こすことになる。今は中国、ロシアの仲介
に期待するしかないが、悲観的な見通しである。
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イランと核妥協案協議へ 中ロ、制裁回避目指し

 【テヘラン24日共同】イラン核問題の解決に向けた協議のため
、ロシア原子力庁のキリエンコ長官が24日、イランを訪問した。
ウラン濃縮の共同事業をロシアで実施するとしたロシア妥協案をめ
ぐり、25日にイラン原子力庁のアガザデ長官らと会談する。
 中国が派遣した呂国増外務次官も24日、イランに入った。3月
の国際原子力機関(IAEA)定例理事会を前に、国連安全保障理
事会の常任理事国であり、イランと経済的つながりの深い中ロ両国
が、欧米による対イラン制裁に向けた圧力の回避など緊張緩和のた
めの動きを強めた。
 23日のタス通信によると、キリエンコ長官は「イラン核問題が
解決されれば、航空機製造などの産業で協力を進めることができる
だろう」と指摘。イランに対する経済協力の促進をちらつかせ、核
問題での譲歩を促した。
(共同通信) - 2月24日16時37分更新
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ライス米国務長官、湾岸6カ国外相と会談
(nikkei)
 【アブダビ=加賀谷和樹】ライス米国務長官は23日夜、アラブ首
長国連邦(UAE)の首都アブダビでUAE、サウジアラビアなど
ペルシャ湾岸6カ国の外相と会談した。会談後の声明で、双方は湾岸
地域での核拡散の可能性に「深刻な懸念」を表明したが、核開発を
進めるイランを名指しで批判することは避けた。湾岸から核爆弾な
ど大量破壊兵器を排除する方針も確認した。

 長官は24日朝、中東4カ国歴訪を終え、UAEを出発した。今回は
エジプト、サウジアラビア、レバノン、UAEの順で訪問。エジプ
ト、サウジではイスラム原理主義組織ハマスが主導するパレスチナ
自治政府への資金援助の停止要求を拒まれるなど、中東和平問題に
対するアラブ諸国と米国の姿勢の差が鮮明になった。 (07:01) 
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「最大の敵はイラン」31%で1位…米世論調査

 【ニューヨーク=大塚隆一】米ギャラップ社が23日発表した世
論調査で、米国人の31%がイランを「米国の最大の敵」とみなし
ていることがわかった。2位以下はイラク22%、北朝鮮15%、
中国10%の順だった。

 昨年の調査では、イラクと北朝鮮を「最大の敵」に挙げる人がと
もに22%で最も多く、イラン14%、中国10%と続いた。イラ
ンへの警戒感が倍増した背景には、核問題をめぐる強硬姿勢がある
とみられる。

 同時に行われた22か国・地域の好感度調査によると、トップは
カナダで、89%の人が好感を寄せていると答えた。これに英国
88%、日本81%、ドイツ79%が続いた。

 アジアの他の国・地域で好感を抱く人が多かったのは台湾とフィ
リピンで67%。インドも66%に達した。中国は44%、北朝鮮
は10%にとどまった。最下位はイランの7%だった。
(読売新聞) - 2月24日20時31分更新
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ロシア高官、イランに核問題の安保理議論不可避と警告
(nikkei)
 【モスクワ=古川英治】ロシア原子力庁高官は22日、イラン核問
題について日本経済新聞記者に、ウラン濃縮作業を停止してロシア
に委託する仲介案が「唯一の解決策だ」と言明、イランに妥協を促
した。国際原子力機関(IAEA)が理事会を開く3月6日までにイ
ランが応じない場合は「国連安全保障理事会での議論が不可避にな
る」と警告した。

 同高官はイランが自前のウラン濃縮活動の権利を主張、これまで
の協議に進展がないことを認めた。「イランはIAEA理事会のぎ
りぎりまで決断を延ばすだろう」と述べ、23日の交渉に悲観的な見
方を示した。経済制裁については「エネルギー価格の高騰を招き、
イランよりも他国に悪影響をもたらすだけだ」と述べ、否定的な見
方を改めて示した。 (07:01) 

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