2257.米国の国防方針



米国防総省が国防政策見直し(QDR)の報告書を発表した。Fより

イスラム過激派のテロ対策にシフトすることと、空母の半分、潜水
艦の6割を太平洋に配備して対中国の軍事拡張に備えることが大き
な変更点である。

このイスラム過激派地域はインド洋がメインであるが、米国はイン
ド洋に艦隊を置ける基地がデルガルシア島しかなく、空母や多数の
艦艇を常駐できない。このため、グアムなどの西太平洋の米国統治
領か横須賀・佐世保・呉・岩国などの日本に置くしかない。

対中国配備は、チェイニー副大統領を中心とした国防総省内タカ派
が主張しているが、ゼーリック国務省次官は中国との協調を提案し
ているなど、ブッシュ政権内で議論があったと思う。この国防方針
が発表された直後に、ペース米統合参謀本部議長がわざわざソウル
で「米中戦争」の危険は大幅に減少と中国への刺激を緩和する処置
をしている。このように国防総省内部でも意見が割れている可能性
が大いに或る。

そのような分裂があったとしても、本土防衛上から中国・ロシアの
弾道弾ミサイルの監視のために艦艇を配備する必要があると感じる。
もう1つが、対中国配備は多数の艦艇を日本に置く理由付けのよう
な気もするが。

イスラムの体制変更は米国としては本気のようです。イスラム圏の
民主化、市場化に対するシフトを米国は行う方針を固めたようであ
る。米国は国防費52兆円と日本の一般予算より大きい。日本と違
って、米国は福祉・教育・産業育成などに掛ける金がないのは国防
費が大きすぎることによるのでしょうね。

対して、中国も国防費を年率10%から20%の勢いで増額してい
る。とうとうロシアの空母を改修して、戦闘機発着の練習用に使用
することができるまでになっている。今後、この空後をどこまで整
備するかで配備可能な空母にする可能性もあり、見ている必要があ
る。中国国防軍自体は少なくしていると表明しているが、武装警察
の数は大幅に増強している。このため、国家全体の戦闘能力は飛躍
的に増強された状態になっている。

SU−27などのロシア最先端戦闘機も30機以上が稼動している
し、戦闘能力は向上している。中国の問題は、兵の連度が問題と、
軍がビジネスをしているために、効率が悪いことでしょうね。それ
と、中国の文人主義で軍幹部が現場を知らないで発言している。

この結果、ロシアと中国の共同演習で事故が多発して、ロシア軍幹
部は中国軍の現状を知って、中国離れを起こしているようだ。中国
自体が張子のトラの可能性もある。台湾紛争が中国だけで起こせる
としている中国の軍関係者は現場を見ているのでしょうかね。

イスラムとの戦いはゲリラ戦にならざるを得ない。通常戦力は米軍
がイスラムの反米国家より断然優位にある。このため、占領した後
でのゲリラ戦をイラクでもイランでもシリアでも行うことになる。

この場合、何が重要化というとゲリラ兵の発見とそのゲリラ兵だけ
を攻撃する戦闘マシンでしょうね。軍近代化(RMA)は非常に有
効であったが、ゲリラ戦の対応にはまだ問題があることを、イラク
のファルージャの戦闘で明らかになっている。このゲリラ戦をどう
戦うかでしょうね。これが今後の課題になる。
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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E8%BB%8D%E5%86%8D%E7%B7%A8
米軍再編
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米軍再編(べいぐんさいへん、The U.S. military transformation)
とは世界規模の米軍配置を再検討し、再編を図ることで今日の安全
保障環境とアメリカの国益に対応した世界戦略の転換を進めるもの
である。別名として軍機転換(フォース・トランスフォーメーション
)といわれるが、一般的にはトランスフォーメーションと略すことが
多い。

そもそも、太平洋戦争以後の米軍の世界戦略とは冷戦時代における
米ソ二極型の対立構造の中で資本主義陣営の盟主として、世界最大
の軍事力を誇る国として世界の警察を自負し西側社会ひいては世界
の安全保障をリードしてきた。1991年にソ連の崩壊により冷戦が終
焉を迎え、これまでのイデオロギー対立の下でくすぶっていた宗教
・民族紛争が一気に噴出し、安全保障環境はポスト冷戦期=民族・宗
教対立、グローバリゼーションの拡大と地域主義の台頭という新た
な構造が生じたことでアメリカはその世界戦略の見直しに迫られて
きた。とりわけ、アメリカがエネルギー供給において頼みとする中
東やアフリカ地域の石油資源の確保の上では中東地域の安定化が不
可欠な課題であった。それまで冷戦期を通じて自国の軍事力を世界
的に展開してきたアメリカは、その戦略地域として東西対立の最前
線であった東西ドイツ、朝鮮半島や日本といった地域に駐留軍を配
置してきており、新たな戦略地域としての中東への重点化が焦点と
なったのである。

また、これまでアメリカの拠点としてきた東アジア情勢においては
、ソ連の崩壊という最大の危機を克服しつつも、共産主義体制をと
る中国や北朝鮮といった国々が依然として強大な軍事力を保有し、
決定的な対立の回避に努める一方で、これらの国々の不当な拡大・
威嚇には依然とした抑止力が不可欠であった。よって、何とか東ア
ジアを安定化させ、アメリカと南アジアから中東かけてのシーレー
ンを確保したいアメリカにとっては、日本並びに韓国などの同盟国
の自主防衛力に一定の期待をすることで、アメリカ自身の軍事力は
南アジアに重点化を進め、さらに中東にかけての地域の安定化に努
めたい構えである。しかし、課題は近年のイスラム色の強い政権が
時として反米的な姿勢をとることであり、またテロの温床にもなっ
ていることへの懸念と、アメリカと中東を結ぶ極東地域では強大な
軍事力と強硬な反米姿勢をも辞さない北朝鮮、さらに市場経済への
歩み寄りはしつつも、強大な軍事力を背景に台湾領有への姿勢を崩
さない中国との間の一定の緊張関係もあり、米軍再編による世界戦
略の見直しには現実問題として立ちはだかる壁は大きい。まして中
東をとりまく環境として東欧や中央アジア、インド・パキスタン、
さらには極東にかけて個々に紛争課題を抱える地域も多く、こうし
た背景もあって 2001年に示された米国防見直し
(QDR:Quadrennial Defense Review)ではアメリカはこれらの紛争地
域を不安定の弧として定義し、今日アメリカがとるべき世界戦略の
ひとつとして、今後の動向が注目されるところである。

一方、こうした、米軍再編に向けた原動力の背景のひとつとしては
、軍事革命(RMA)の進展という驚異的な軍事技術の向上により、無人
兵器の開発に成功、兵員の生命を消耗することなく、ワシントンか
ら直接、戦闘指揮と戦略展開が可能となりつつあることで、大規模
な兵員や世界規模の駐留軍を置く必要がなくなりつつあることも大
きく再編を後押ししている。とりわけ、アメリカ本国から半日で世
界各地に軍事力を展開する能力を獲得しつつあることも、この米軍
のトランスフォーメーションの戦略を理解する上では重要な指標と
なろう。つまり、米軍再編とは冷戦構造型の世界戦略からポスト冷
戦型ひいてはポスト9.11型の安全保障環境に転換すること。同時に
現在世界に軍事力を展開させていることで、世界戦略の展開が図れ
る体制にある米軍が、有事の際に本国からの直接国際紛争への対処
をとれる体制に移行することを可能とすることにあるといえる。
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米国防総省、対中抑止戦略を始動・国防計画見直し
(nikkei)
 【ワシントン=秋田浩之】米国防総省は3日に発表した4年ごとの
国防計画見直し(QDR)で、あらゆる「地域覇権国」の出現も認
めない原則を掲げ、中国軍などの抑止戦略を本格化する路線を敷い
た。圧倒的な軍事力の格差を見せつけ、米国に敵対する意欲を減退
させる作戦だ。

 過去のQDRでも中国には触れているが、今回ほど鮮明に中国軍
への懸念を示したのは初めて。米中は経済の結びつきを強めている
が、軍事的にはあつれきが強まりそうだ。 (07:00) 
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米国防予算5%増の52兆円 拡大路線を継続

 【ワシントン3日共同】米国防総省は2007会計年度(06年
10月−07年9月)の国防予算案として、前年度比約5%増の約
4393億ドル(約52兆500億円)を要求する。ブッシュ政権
が6日、議会に提出する予算教書に盛り込まれる。米メディアが2
日報じた。
 01年の米中枢同時テロ後の軍事費拡大路線が継続。日本の06
年度予算案の一般歳出を大きく上回る巨額の国防予算案となり、長
引くイラク駐留の費用や超大型ハリケーン「カトリーナ」被害の復
興費などで財政赤字は増大、米政権の苦悩は続きそうだ。
 また、ブッシュ政権はこの国防予算案とは別に、イラクとアフガ
ニスタンでの米軍駐留費として近く700億ドル規模の補正予算と
、07会計年度分として約500億ドルを議会に要請する方針。
(共同通信) - 2月3日18時4分更新
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「米中戦争」の危険は大幅に減少=米統参議長
  【ソウル3日】ペース米統合参謀本部議長は3日、ソウルの米軍
基地で演説し、米国と中国の経済関係が強くなったのに伴い、両国
が戦火を交える危険は大幅に減ったとの見方を明らかにした。 

 ペース議長はこの中で、「中国に関しては将来を楽観している。
両国が共有する事柄の方が共有していない事よりはるかに多い」と
指摘した。 

 さらに、「われわれが経済的な架け橋を両国間で築き続け、両国
が繁栄のためにますます相互依存するようになっており、そういう
時は軍事的に面倒な事態になる可能性は大幅に低くなる」と述べた。 

 一方、ペース議長は北朝鮮について、戦闘能力を監視し、圧倒的
な力で対抗する準備を整えている必要があるとの方針を示した。 

 議長は、北朝鮮の意図を正確に把握するのは難しいとしながらも
、「われわれは今日、北朝鮮によるいかなる攻勢も打破する能力を
完全に備えており、今後もその能力を維持する」と強調した。
〔AFP=時事〕
2006年02月03日20時46分 
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 通巻1374号  

空母ヴァリヤーグ、大連港でまもなく「完成」へ
 米国の偵察衛星、台湾の情報機関が中国海軍の現況を確認

 ウクライナで“がらくた”と化していた空母ヴァリヤーグを買い
取り、ポスボラス海峡を越えて、えんえんと大連まで曳航してきた
“粗大ゴミ”は中国の軍港・大連で“空母まがい”となって、いよ
いよ中国海軍の「練習艦」に加わるという(ヘラルドトリビューン
、1月30日付け)。

 空母保有を企図し、ソ連留学時代から「海軍の近代化がなければ
、中国はグレート・パワーにはなれない」と主唱してきたのは劉華
清・元海軍提督(前軍事委員会副主任)である。
 劉は「台湾攻撃の際にも空母は絶対に欠かせない」とした。

 だが空母は高価にして、艦隊編成が必要であり、そのメインテナ
ンス費用だけでも膨大になる。
ちなみに英国海軍が現在、造船最終段階にはいっている空母二隻(
各五万噸)は合計50億ドル。これに駆逐艦、巡洋艦、潜水艦、補
給艦、偵察部隊などをともなう大編成となり、米国でさえ空母十二
隻態勢の維持に汲々としている。

 「中国が本格的な空母を保有するには、まだ数十年を必要とする
であろう」(リック・フィッシャーIASA副理事長)。

 台湾当局は1月19日に記者会見し、「大連で艤装中のヴァリヤ
ーグは(軍艦用の)灰色のペイントも終え、修理がほぼ最終段階に
入ったことを偵察衛星の写真などから確認した」と発表した。

中国側は「これは観光船に使用する」と、いまも嘯いている。
 中国は空母ヴァリヤーグを1998年にウクライナから購入した
とき「マカオに浮かべてカジノホテルにする」などと平然と嘯いて
いた。もっとも嘗てソ連から購入した対潜哨戒艦のミンスクは、訓
練目的を達したあとは廃船にして、広東省の深せんで軍事博物館に
転用、キエフは天津で観光用アトラクションに利用している。

 ヴァリヤーグは67500噸。98年にいったん買い取り契約を
交わしたが米国の反対で、がらんどうの鉄くずの固まりと化け、
2002年にポスポラス海峡を通過し、大連に曳航されていた。
 いま、この偉容は高速道路からも遠望できるが、いったい日本の
マスコミは何故この危険物のことを書かないのか?
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米国防報告、対テロは「長期戦争」 海軍、太平洋に比重(ASAHI)
2006年02月04日11時47分

 米国防総省は3日、米軍戦略の今後20年間の基本的な指針を示
す「4年ごとの国防政策見直し」(QDR)の報告書を発表した。
01年9月の同時多発テロ以来、米国がイスラム過激主義に対して
続けている戦いは、冷戦並みの労力と時間を要する「長期戦争」だ
と位置づけた。対テロなど、従来通りの戦力では十分に対応できな
い「非正規」な分野に軍事力の比重を移すことをうたっている。 

 台頭する中国は脅威ではないが「戦略的岐路にある国家」として
、軍事的な敵対の道を選ばないよう導く戦略が必要だと指摘した。
中国を意識するだけでなく、国際テロ組織の攻撃などによる混乱に
備える必要性もあるため、世界全体で11群を配置する方針の空母
攻撃群のうち6個群を太平洋に置き、潜水艦も6割の隻数を太平洋
に集中させる。経済活動や通商ルートとして太平洋地域の重要性が
高まっていることが、この地域での海軍力の増強の背景にある。 

 今回のQDRは、この種の作業としては初めて「戦時下」でまと
められた。5年目に入った対テロ戦争、イラク戦争の教訓を踏まえ
、米軍全体のあり方を総括し、今後の方向性を打ち出している。 

 イスラム過激主義との「長期戦争」は、アフガニスタンやイラク
での対テロ戦争にとどまらず、不確実で予測ができない形で今後何
年間も続くと予想した。かつて冷戦時は「国家対国家」の対立が軸
だったが、こうした従来型の思考から脱し、より機敏になってテロ
など不確実性への備えを保つことが不可欠とした。 

 米軍が能力を傾注すべき分野として(1)イスラム過激テロの撲
滅(2)大量破壊兵器(WMD)の拡散防止と使用の阻止(3)国
土防衛(4)中国やロシアなど「戦略的岐路にある国家群」に敵対
的な道を選ばないよう促しながら万一の事態にも備える、の4本柱
を挙げた。 

 イスラム過激テロに対しては、陸軍のグリーンベレーに代表され
るような特殊作戦部隊の要員を15%増やすほか、無人機飛行大隊
の新設、心理作戦と民政・復興部門に携わる要員の33%増などを
盛り込んだ。また、大量破壊兵器の捜索と確保に専念する特殊作戦
部隊の創設も提案した。 

 米軍の組織論としては、これまでの陸海空軍の縦割りを前提とし
た構造を変え、戦略的な必要に応じて実力を臨機応変に配分できる
ような「水平型」への全面的な改革の必要性をうたった。 

 「米国だけではこの戦争は勝てない」として、同盟国や友邦との
協力を増す重要さも強調した。日本を「米国の力のよりどころの一
つである同盟国」として、北大西洋条約機構(NATO)、豪州、
韓国と並ぶ形で挙げており、ミサイル防衛分野での共同開発にも触
れる形で協力関係に言及した。 

   ◇ 

 〈キーワード・4年ごとの国防政策見直し
(QDR:Quadrennial Defense Review
)〉 米国防総省の中長期的な戦略文書。国家安全保障戦略(NSS
)を受けた形で、兵力の構成、兵器計画などの米軍全体のあり方に
ついて、約20年後を視野に入れた青写真としてまとめる。法律で
4年ごとの議会への提出が定められている。97年と01年に続く
3回目で、イラク問題やテロとの戦いが長期化するなか、05年秋
の提出期限を過ぎても編成作業を続けていた。 

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