2235.中国の軍事動向



軍事評論家・高井三郎さんの講演を聞いたので、その報告。Fより

高井さんは、中学卒業後2等陸士で自衛隊に入隊して、その後定時
制高校、大学まで出て、かつ米士官学校を通信教育で卒業して、自
衛隊の幹部までなった自衛隊でも特異な存在です。そして、英語・
中国語の台湾や米国など資料を駆使して、講演されたのが印象的で
した。

1.国家目標
 中国の国家目標は先進超大国に成長して発展することであり、伝
統的な領土・地域を完全支配することが重要と見ている。この伝統
的な領土とは台湾、沖縄、ベトナム、ミャンマー、北朝鮮などを含
んでいる。次に国家社会の秩序ある統一、安定とあるように各地域
・各民族の分離独立を否定している。経済発展のために国際社会に
進出するしているが、世界各地域から膨大な資源を入手しないと
12億人を豊かにできない。

2.国防政策の基本
 国家目標の実現に寄与するために、ライバルの先進諸国の潜在的
な脅威に対抗するために、軍事力とその裏付けを持った外交力を維
持強化するとある。ライバルとしては米国、ロシア、インド、日本
、欧州を見ている。中華思想とは、世界で一番でないと気がすまな
いようである。その意味では米国とよく似た国家戦略である。

それと中国のエネルギーも中東からシーレーンで中国に運ばれるた
めに、そのシーレーン防衛を真剣に考えている。このため、海洋大
国を本気で考えている。この証拠に、ロシアからソブレメンヌイ級
駆逐艦を4隻導入している。戦略核ミサイルも導入している。潜水
艦の数も多いし、その行動範囲は第2列島ラインまで達する。グア
ムも中国の潜水艦の範囲である。

3.各軍区
 中国は4軍構成で陸軍(人民解放軍)、海軍、空軍、戦略ミサイ
ル軍がある。人民解放軍は7軍区があり、各軍区にはそれぞれの役
割がある。
東北区は北朝鮮(米韓の侵略)、ロシアへの防衛、北京区はロシア
モンゴルへの防衛、斉南区は山東半島での海からの侵略を防ぐ、南
京区は台湾への攻撃、広州区はベトナムへの防衛、成都区はインド
への防衛、蘭州区はイスラム圏への防衛となる。

常備軍の兵力は320万人で、民兵が1億人、武装警察などがあり
、現在常備軍の兵力を削減しているが、その相当数が武装警察にな
っているために、総兵力の削減にはなっていない。その上に予備兵
力を増強している。

4.列島線
 国防を有効に達成するための防衛ラインを設けている。中国領土
の外に防衛ラインがあり、第1列島ラインは前方展開中の米国に対
応したラインで、日本全体がそれに含まれる。第2列島ラインはグ
アムから豪州のラインでハワイや米本土の米軍に対応するための防
衛線になっている。この第1列島ラインまでのは東風3の中距離ミ
サイル20基で攻撃できる。この東風3は射程距離が2800KM
で旧満州にあり日本を標的にしているミサイルである。ICBMの
東風5・20基が米国本土を狙っている。東風15・非核短距離ミ
サイル600基が台湾を狙っている。このミサイルのほとんどが福
建省にある。

5.兵器の開発実用化
 ICBMは東風5、SRBMは東風15で600基以上配備され
ている。高空核爆発(HANE、HEMP)手法、台湾上空50K
Mで1KT級核弾頭を炸裂させて台湾の電子機器を無効化する計画
もある。また、放送波の撹乱を把握する方法で米のステルス機を探
知する技術も開発している。有人宇宙船も2回打ち上げている。

6.非正規戦、心理作戦
 電子機器を使えなくさせる攻撃や大規模テロ攻撃、中南米から米
国への麻薬密輸や移民流入促進などで米国社会を壊したり、価値を
低下させている。勿論、米国も中国の法輪功に資金援助をして、内
部から民主化を行う工作をしている。

7.外交戦略
 日米離反を仕掛けている。米国の弱体化ができれば、日本は中国
の属国になると思っている。現北朝鮮の体制崩壊後でも中国の影響
力が維持できることが重要と見ている。このため、中ロ共同演習を
山東半島で行ったという見解も出ている。山東省と北朝鮮を結ぶ線
地域が北京一帯の中枢部を守るためには重要地域と認識している。
当面、反米勢力の統合を目指して、上海機構を立ち上げている。

対沖縄工作を強化して、在留米軍を無くすように働きかけている。
また、台湾は中国の経済浸透、政治浸透が心配であるが、国民党を
親中派にするなど成功し始めている。

8.中国に対応する米国の軍事戦略の方向とは
 中国の軍備増強に対して、米国は北京の中枢に近いモンゴルに近
づいて、ウランバートルに米海兵隊を駐留させている。軍事援助も
している。米国は 次のような計画もしている。
 1.ミサイル防衛ではミサイル攻撃用衛星と監視衛星の2種類の衛
  星を打ち上げて、中国のミサイルの無効化をしている。
 2.短時間に1個軍団を世界の各地に移動させることができる航空
  能力を持ち、中国の台湾攻撃を阻止する。
 3.米本土から1時間以内に全世界のどこでも爆撃できる攻撃機や
  システムで、これも同様に中国の台湾攻撃を阻止する。
 4.浮きドックで、海に基地を作る。シーベーシング・コンセプト
  この基地に1連隊程度の部隊を配備できるようなシステムで、
  基地の候補として、ナイジェリア、沖縄、インドシナ、インド
  洋で基地を作り、地元民との接触をなくして、反米軍感情を無
  くするようである。

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