2200.東アジアサミットについて



東アジアサミットが行われた。その検討。   Fより

東アジアサミットを東アジア地域での日本と中国の主導権争いと見
ると、中国の方が影響を増していると感じる。中国は戦略を持って
対応しているが、日本には戦略性を感じない差がでていると思う。

中国は靖国神社参拝問題で韓国と組み、かつ東アジアでもタイ・ベ
トナム・ラオス・ミャンマーなど中国と国境を接する国との関係回
復や一層の友好関係を築いてきた。国境を越える高速道路やメコン
川の開発で中国は点数を稼いでいる。その地域に中国語を教える教
師を3万人も派遣するなど、大々的な取り組みをしている。

しかし、その割りにASEAN諸国は中国の覇権主義を恐れていて
、日本や米国を入れようとしている。マレーシアやインドネシアな
どには華僑問題もあり、中国に靡いていない。華僑国家のシンガポ
ールは中国での権益があり、中国の味方になる場合が多かった。

シンガポールのリー・シェンロン首相は中国・韓国以外で小泉首相
の靖国神社参拝に反対している。上海の浦東開発ではシンガポール
企業が中心で開発したが、どうも中国から金を支払われていないよ
うである。このため、シンガポールは懲りて、その後の開発をして
いないようであるが、部品類や中継貿易で中国との関係は非常に大
きい。

しかし、リー・シェンロン首相は日本との関係も重要視して、FTA
などを日本と結んでいる。リー首相は欧米に留学して、第2次大戦
は日本の侵略戦争と認識しているし、それもA級戦犯が起こした戦
争と欧米の普通の教育で教わっている。アジアの現在の政治指導者
は欧米に留学しているために、中国・韓国を日本の侵略戦争での犠
牲者と認めている。

このため、欧米や中国の歴史認識に近い歴史観をアジアの若い政治
指導者は持っている。そして、十分にアメリカナイズされ論理的な
理論で物を見る習慣がある。このため、戦争犠牲者を祭る靖国神社
に戦争責任者であるA級戦犯者が祭られていると聞くと、奇異な感
じを受けるようである。

日本の理論は日本の独自性が強いために共感を得られないことを肝
に銘じることである。この面から中国の論理に負けている。中国が
小泉首相の靖国神社参拝で反日デモを起こし、街中の日本料理店を
襲うなどの行為は、欧米・アジアの共感を得られないが、静かな抗
議には、それなりの共感を得ていると思うべきである。

東アジアサミットでも日本は、米国の代わりにインドやニュージー
ランド、オーストラリアを参加させた所までは順調であったが、そ
の後、中国の攻勢に会い、東アジア共同体構想はASEANプラス
3(日本、中国、韓国)で進める事になった。これは日本の意向で
はなくて、中国の意向が強い。中国の論理の方が普遍性が高くて、
ASEAN諸国の首脳達に伝わりやすいことが原因であると見える。

日本の論理に普遍性を付加しないと、中国のペースで今後も進む可
能性が高いように感じる。日中の問題点は多くあるのに、それを隠
すために中国は靖国問題を前面に立ててきている。この論理を中国
のペースで関わらずに、違う日中間の大きな問題を日本から提起す
る必要があると思うが。
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マレーシア外相「日中関係、東アジア共同体などに悪影響」
(nikkei)

 【クアラルンプール=石沢将門】「最近の日中関係が東アジア共
同体など地域協力に難しい影響を与えている」。マレーシアのサイ
ドハミド外相は、9日にクアラルンプールで開いた日本とASEAN
の外相会議で、小泉純一郎首相の靖国神社参拝などで悪化している
日中関係の改善を強く求めた。

 会議には日本の麻生太郎外相が出席。ASEAN議長国の発言が
加盟国全体の意見を反映しているかどうかは不明だが、中国の意向
が働いているとの見方が大勢。日本が関係強化を目指すASEAN
を通じて日本の譲歩を迫る中国の巧妙な外交手法が浮き上がった。
 (21:01) 
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「韓国民の心情重く受け止める」 日韓外相会談で麻生氏(ASAHI)
2005年12月10日13時16分

 クアラルンプールを訪問中の麻生外相は10日午前、韓国の潘基
文(パン・ギムン)外交通商相と韓国側の宿舎で約45分会談した。
麻生外相は「韓国民の過去をめぐる心情を重く受けとめ、真摯(し
んし)に対応していきたい」と述べ、小泉首相の靖国神社参拝を機
に冷え込む日韓関係の改善に意欲を見せた。潘氏は「日本の指導者
の発言により、外交責任者としての自分が困った状況におかれるこ
とを理解してほしい」とし、日本側の一層の努力を促した。 

 日本側の説明によると、日韓外相会談は10日朝、急きょ設定さ
れた。麻生外相は「韓国との関係を極めて重要視している。未来志
向の関係を築いていきたい。対話を続けることが重要だ」と強調し
た。潘氏は、東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓
)首脳会合にあわせて定例化してきた日中韓首脳会談について「開
催できないことは残念」だとしたうえで「12月の盧武鉉(ノ・ム
ヒョン)大統領の訪日が決まっていないことも残念だ」と述べた。
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「靖国」言及で食い違い=日韓

 【クアラルンプール10日時事】韓国外交通商省は10日、クアラル
ンプールで行われた日韓外相会談で、潘基文外交通商相が小泉純一
郎首相の靖国神社参拝問題に言及したことを明らかにした。日本の
外交筋は、会談の中で「靖国」という言葉は出なかったと説明して
おり、両国の説明に食い違いが出ている。
 日本の外交筋は会談後、両外相の発言内容を説明。その際、「(
会談の中で)靖国という単語はあったか」と記者団に問われ、「そ
ういう単語は出ていない」と明言した。 
(時事通信) - 12月10日17時1分更新
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<ASEANプラス3>中国、各国に日本批判への理解求める

 ASEANプラス3の一連の会議で中国が小泉首相の靖国参拝へ
の批判を強めている。日中関係の悪化を懸念するASEANなどに
日本側に原因があると訴え主導権を確保する狙いがありそうだ。日
本との決定的な関係悪化は望んでいないものの日本から柔軟姿勢を
引き出すためにASEAN諸国を中国側に引きつけたいとの狙い。
(毎日新聞) - 12月10日20時36分更新
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共同体の創設を補完 東アジアサミット外相了承

 【クアラルンプール10日共同】クアラルンプールで14日に初
めて開催される東アジアサミットに参加する16カ国の外相は10
日、昼食会を開き、東アジア共同体の創設でサミットは事実上補完
的役割にとどまるとしたサミット首脳の「クアラルンプール宣言」
案を了承した。共同体創設は東南アジア諸国連合(ASEAN)プ
ラス3(日中韓)が主導することが決定済み。宣言案はサミットよ
り自国の意見が通りやすいプラス3重視を訴えた中国の意向に沿う
形で決着した。
 宣言案は14日にサミット首脳が署名、採択する。
 昼食会はサミット参加国閣僚による初顔合わせの場。日本からは
麻生太郎外相が出席した。
(共同通信) - 12月10日21時3分更新
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中国、日中韓外相会談も拒否(ASAHI)
2005年12月09日01時09分

 中国外務省の秦剛(チン・カン)副報道局長は8日の定例会見で
、マレーシアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日
中韓)の際に開催が調整されていた日中韓3国外相会談に応じない
考えを表明した。 

 秦副局長は「近日内の3国外相会談開催の計画はない」と述べた。
理由について「原因はだれもが知っていること」とし、小泉首相の
靖国神社参拝への抗議の意を改めて示した。 

 秦副局長はさらに、麻生外相が記者会見で中国に「軍事予算や軍
事行動、社会や政治制度のあり方でも透明性を求めたい」と話した
ことに対し、「中国の軍事予算は透明であり、国防白書ではっきり
と状況を説明している」と反論した。 

 また、「日本は(自らの)軍事上の動向について国際社会と周辺
諸国に対し真剣に説明するべきだ」とも述べた。中国は3国首脳会
談についても、靖国問題を理由に延期を表明している。 
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東アジア共同体「プラス3」主導で ASEAN事務局長(ASAHI)
2005年12月06日07時54分

 東南アジア諸国連合(ASEAN)のオン・ケンヨン事務局長(
元シンガポール外交官)は5日、ジャカルタで朝日新聞記者のイン
タビューに応じ、14日にマレーシアで初めて開く東アジアサミッ
トについて、「各国首脳は自由な意見交換を望んでいる」と述べ、
まずは参加16カ国の信頼醸成の場にとどまるとの見通しを示した。
将来の「東アジア共同体」については、既存のASEANプラス3
(日中韓)の枠組みが土台になる、との見通しを示した。 

 オン事務局長は「ASEANプラス3では、すでに50近い分野
で実質的な協議が行われ、この枠組みが機能することが証明されて
いる。将来にわたっても、東アジアサミットがこの枠組みにとって
かわることはない」と語った。 

 ASEANプラス3の13カ国に加え、インド、オーストラリア
、ニュージーランドが参加する東アジアサミットについては、「各
国首脳と韓国・釜山でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)な
どの際に個別に話したが、多くが(宣言文などの文書を出すことよ
りも)活発な議論をすることに関心を持っていた」と話した。 

 東アジアサミットをめぐっては、サミットを将来の共同体構想の
基礎とするべきだという日本などと、ASEANプラス3を重視す
る中国、ASEAN議長国のマレーシアなどの対立が続いている。
オン事務局長の発言は、ASEAN諸国が内部分裂を嫌い、中国な
どの主張に傾いていることを示唆したものだ。 
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米政府にアジア重視促す・サミット不参加で米誌

 【ニューヨーク4日共同】クアラルンプールで14日に開かれる初
の東アジアサミットをめぐり、5日発売の米誌ニューズウィーク最新
号は「このように高いレベルの政治会議に米国が参加しないのは初
めて」と指摘、イラク情勢に足を取られるブッシュ政権にもっとア
ジアに目を向けるよう警鐘を鳴らした。

 同サミットについては、主導権確保を目指す中国が米国の参加に
強く抵抗した経緯がある。同誌はその教訓を踏まえ、どのような関
与の在り方が国益にかなうのかを真剣に探るよう米政府に促した。

 記事は著名コラムニスト、ファリード・ザカリア氏が執筆。アジ
ア諸国は中国の成長に期待しながらも覇権主義に反対しており「中
国的な価値観」が支配する世界に暮らしたいとも思っていないと強
調。日本も国連安全保障理事会常任理事国入りに向け援助拡大など
に努めたが「アジアでほとんど支持を得られなかった」と指摘して
いる。 (11:01) 
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首相「靖国はもう外交カードにならない」(ASAHI)
2005年12月05日12時58分

 小泉首相は5日午前、東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス
3(日中韓)の際に開催を調整していた日中韓の首脳会談の延期を
中国政府が発表したことについて「私はいつでもいいですけどね。
向こうが延期する。それでも結構です」と語った。自らの靖国神社
参拝が影響したかどうかについては「それはもう、中国の問題だ。
それは無理だ。批判する方がおかしいと思っている」と語った。 

 首相官邸で記者団に語った。さらに首相は「もう靖国は外交のカ
ードにはならない。中韓がいくら外交カードにしようとしても無理
だ。靖国以外、日中、日韓で良好な関係を重視していくべき問題は
たくさんある。一つの問題で他の関係も悪くしようという考えには
ならない。これは心の問題だ」と述べた。

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