2199.台湾の方向転換



米国の変化で台湾も変化する。その検討。   Fより

今回の台湾の選挙で、与党・民進党が国民の支持を受けていないこ
とが明確になってきた。国民党が地方選挙で勝利して、2008年
総統選挙で総統を奪還することも夢ではなくなった。

台湾には外省人と本省人がいる。外省人は、戦後国民党が中国本土
で共産党に負けて、国民党と逃げてきた人たちである。一方、本省人
は福建省から台湾に移り、住み着いた人たちである。

しかし、戦後外省人が台湾の幹部でいたために上流階級になり、子
弟を米国や英国に留学させて、英語・北京語・福建語の3ケ国語を
基本的にマスターさせている。その上に日本語ができる人が多い。

このため、今でもこの言語力を活かして、上流階級にいる人が多い。
台湾に行くと外省人がトップで、その下に本省人がいる。この本省
人は北京語を旨く話せないために、良い仕事に着けないと嘆いてい
る。しかし、不思議と日本語ができる。これはおじいさんが日本語
教育を受けていたために、孫に日本語を教えたためのようです。
外省人は本省人をバカにしているし、本省人は外省人をずるしてい
ると思っている。

外省人の活躍は中国本土でも目覚しい。中国本土の企業でも技師長
など、技術面の指導は台湾の外省人である。北京語ができるために
中国でも何も問題がなく、中国本土人と同じように振舞える。私も
中国で仕事をしていたが、多数の台湾人と仕事をした。そのほとん
どが外省人であった。その上に台湾企業も多数の工場を中国に立て
ている。この管理も外省人が中心であるが、本省人も多数いる。

特にアモイなど福建省にある台湾企業は本省人が中心である。この
ように本省人も外省人も、中国との関係でビジネスしている。どち
らかと言うと、経済進出とでも言える状況にある。勿論、中国人特
有のワイロも知っている。このため、進出企業トップは中国と敵対
関係になれない。

しかし、それでは外省人は中国本土と統一しようとしているかと言
うと違うようである。欧米に留学経験がある台湾の外省人は民主主
義の価値を知っている。このため、中国との統一は中国が民主化し
てからであると明言している。

しかし、台湾の独立を推進する民進党のように中国に敵対しないこ
とである。李総統時代は台湾の方が航空能力が中国より上であり、
中国との戦闘でも勝てたが、中国の軍備増強で、中距離ミサイルが
800基も台湾を狙い、かつSu−27が相当数配備された。一方
、台湾はイージス艦やF−16などの軍備増強を国民党の反対でで
きない状態にある。このため、戦闘能力的にも中国の攻撃を台湾一
国では守れない状態になっている。また、米空母を狙う中国軍潜水
艦能力も拡充されて、そう簡単に台湾を守れなくなっている。

その上、台湾の人たちは米国の動向を見ている。もし、台湾が独立
宣言をして、中国が攻撃しても米国は台湾をサポートしないことを
知っている。米国は中国と問題を起こさない。というより、米国は
中国のバブル崩壊での自滅を待っている。中国の自滅を台湾も待っ
ていればいいので、独立宣言などという問題を今起こすことはない
のです。それより、中国のバブル崩壊後の混乱が世界経済に大きな
影響を及ぼすので、その影響を少なくするために、米国は中国に早
く市場経済的なルールを浸透させようとしている。

このため、日本のように中国と敵対すると台湾は国を失うことにな
る。勿論、日本は台湾を助けることはできない。日本国を自ら守る
こともままならないのに、米国が守る意思がない台湾を守ることは
できない。このことも知っている。このため、現状維持の方向にな
る。そして、その現状維持を志向しているのが国民党であるために
、台湾の多くの人たちが国民党を支持するようになったようですね。
==============================
台湾の国民党主席「中台統一は天安門事件見直しが前提」
(nikkei)

 【台北=山田周平】台湾の最大野党・国民党の馬英九主席(台北
市長)は7日、台北駐在の海外メディアと会見し、中台関係について
「天安門事件を見直さなければ、統一を話し合う余地は無い」と述
べた。中国に融和的な国民党が政権に復帰しても、統一は中国の民
主化が前提との立場を確認したものだ。第2野党・親民党の宋楚瑜主
席と12日に会談し、両党の合併について話し合うことも明らかにし
た。

 国民党は3日の統一地方選挙で大勝し、馬主席は2008年の次期総統
選の最有力候補とみられている。

 馬主席は地方選の結果について「有権者が与党・民進党の腐敗を
嫌ったためで、(民意が)親中国に振れた結果だとは考えない。台
湾人民は現状維持を志向している」と指摘。国民党は「段階的な統
一の可能性は排除しないが、現在はタイムテーブルは無い」と語っ
た。 (23:00)
==============================
対中関係改善を呼び掛け 台湾・国民党の馬主席

 【台北7日共同】台湾の最大野党、国民党の馬英九主席(台北市
長)は7日、市庁舎で外国人記者団と会見し、先の統一地方選での
国民党大勝を受けて2008年総統選での政権奪還に意欲を示すと
ともに、民主進歩党(民進党)の陳水扁政権に、対中関係の改善に
踏み出すよう呼び掛けた。
 地方選勝利について「党の改革を推進する良いきっかけとなった
。政権奪還に向けて今後さらに党の競争力と清廉さを高めたい」と
述べたが、「来年末の台北、高雄市長選、07年末の立法委員(国
会議員)選にも勝たなければならない。容易ではなく努力が必要」
と慎重な姿勢をみせた。
 中台関係については「中台は経済的な協力パートナー。敵対関係
を終わらせ、対話に向かうことが重要だ」と述べ、陳政権に対し、
中台間で交渉中の(1)中台直行チャーター便拡大(2)大陸住民
の台湾観光の解禁(3)台湾産農産物の対中輸出促進−の実現を求
めた。
(共同通信) - 12月7日21時6分更新
==============================
米中は「利害共有者」 高官協議で協力確認

 【ワシントン8日共同】ワシントンで開かれていた米中定期高官
協議の第2回会合は8日、2日間の日程を終えて終了、ゼーリック
米国務副長官は「責任ある利害共有者」として今後、米中が広範囲
な分野で協力していく建設的な意見交換ができたとする声明を発表
した。
 米政府高官によると、副長官はブッシュ政権に「中国封じ込め」
の意図はなく、中国への関与政策を取っていると説明した上で「世
界の舞台でより責任ある行動」を中国側に求めた。
 双方はイラク、アフガニスタンの復興や北朝鮮、イランの核問題
で「共通の目標」を確認。北朝鮮については「世界への統合か、世
界からの孤立か、根本的な選択に直面している」との認識で一致。
「統合」を選択した中国の現在の繁栄を引き合いに、北朝鮮にも核
放棄の戦略的決断を行うよう呼び掛けた。
(共同通信) - 12月9日11時20分更新
==============================
米、中国と戦略対話を加速(nikkei)

 米中両政府は7、8両日、ワシントンで定例高官協議を開き、外交
・安保から経済に至る広範なテーマを巡って議論を交わす。同協議
は今夏に続いて3回目。米中は単なる意見交換会ではなく、「戦略
的協力関係に向けた布石」とする考えで、両国の政策調整が一段と
加速しそうだ。

 ゼーリック米国務副長官と戴秉国中国外務次官が首席代表を務め
る。ゼーリック氏は協議後の9日、戴氏と一緒にニューヨークに移動
。第二次大戦勝利の立役者であるルーズベルト大統領の記念図書館
を戴氏と訪れる。米中による「対日戦勝」を引き合いに連携を呼び
かける狙いとみられる。日中対立が激化しているさなかだけに、米
国としては異例の演出だ。(ワシントン=秋田浩之) (07:01) 
==============================
台湾民進党が地方選大敗 党主席が辞意表明(ASAHI)
2005年12月04日00時45分

 台湾の23県市の首長(任期4年)を選ぶ地方首長選挙は3日、
投票が行われ、即日開票の結果、陳水扁(チェン・ショイピエン)
政権を「無策」と批判し、中国との和解促進を主張した最大野党・
国民党が14県市を押さえ、現有ポストを大幅に上回った。全有権
者の約2割を抱える最大選挙区の台北県でも勝利した。陳総統らが
支援した与党・民進党候補の当選は6県市にとどまった。民進党の
蘇貞昌(スー・チェンチャン)主席は同日夜、記者会見で「大敗」
と認め、辞意を表明した。 

 直轄市の台北、高雄市を除く地域で、台湾の全有権者の8割近く
を対象として実施された。地方選とはいえ、最終盤では「対中政策
」が大きな争点になった。 

 中央選管によると、政党別の獲得首長ポストは、民進党6(現有
10)、国民党14(同8)、親民党1(同1)、新党1(同1)
、無所属1(同3)。全土を通じた投票率は前回と同じ66%。 

 民進党は、過去16年間、県長ポストを守ってきた台北県で敗退
したうえ、伝統的に同党支持層が多く「民主の聖地」と呼ばれた北
東部の宜蘭県、中部の嘉義市も失った。台南県・市、高雄県などの
南部の地盤をかろうじて守った。 

 一方、国民党候補は選挙結果が08年総統選挙のカギを握るとさ
れた台北県でも差をつけた。総統選有力候補の馬英九(マー・イン
チウ)主席を擁する同党支持者の間で、政権奪還に向けた動きに弾
みがつきそうだ。 

 今春に連戦(リエン・チャン)国民党主席(当時)ら野党首脳が
中国大陸を訪問し、胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席と会談して
以降初めての大型選挙で、同党側は選挙戦でも「対中和解の促進」
を訴えた。一方、対中政策などで手詰まりが続く民進党側は陳総統
に近い要人の汚職疑惑も不利に働いた。「国民党による対中交流は
統一への道」とも呼びかけたが、劣勢を挽回(ばんかい)できなか
った。 

 中国国営の新華社通信は3日夜、台湾の地方首長選の結果を速報
し、「特級の大型県」である台北県を失ったと伝えた。 
==============================
台湾の最大野党副主席、対中重視を強調・日本への配慮も
(nikkei)

 来日中の台湾・最大野党である国民党の江丙坤副主席が9日、都内
で記者会見し、中台関係について「協調こそが台湾経済に不可欠」
と述べ、与党・民進党との違いを強調した。次期総統選の有力候補
、馬英九同党主席が中国融和路線を打ち出し、日米との関係悪化が
懸念されているが、「日本とは密接な経済関係がある」と語り、対
日関係重視の姿勢を明らかにした。

 江副主席は、民進党の支持者に多い台湾独立の動きに反対する一
方、中国共産党が提唱する「1国2制度」による中台統一も拒否。当
面は中台の「現状維持を堅持する」との党の方針を示した。

 江副主席は政党外交の一環で来日。自民、民主など日本の与野党
と相次いで会談し、国民党が今月3日の台湾統一地方選挙で勝利した
要因や、同党の対外政策などを説明。今回の来日を機に、今後も政
党外交を活発に展開するとしている。 (20:01) 
==============================
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成17年(2005年)12月6日(火曜日)
     通巻第1321号 

  台湾地方統一選挙で与党が予想通りの惨敗
野党・国民党が北京との宥和を訴えて逆転大勝した背景にあるもの

 陳水扁政権はレイムダックに入った。
台湾政局、これからますまる荒れる。

 台湾の地方自治体(台北、高雄の両市を除く)の首長を選ぶ統一
地方選挙は与党の民進党がおおきく敗退し、最大野党の国民党が、
現有九首長を上回る14の県と市を制したのだ。

 新党(中華思想の固まりのような外省人二世が中心のミニ政党)
は現有一首長(金門知事)を守った。

 一部マスコミはこれを「国民党の大勝利」と伝え、さらに「08
年次期総統選挙で、馬英九候補(現国民党主席)の勝利は確実視さ
れる」などと先走った分析まででた。
 蘇貞昌・民進党主席は惨敗結果を受け、「すべての責任を取り辞
任する」と表明した。

 民進党は六つの県・市の首長をおさえるにとどまったが、とくに
過去十六年間、保持してきた最大票田である台北県さえ国民党に奪
われた。
  台北県における国民党との得票率の差は、じつに10%。この同
率での国民党勝利は、ほかに基隆と嘉義。また台中は胡志強(国民
党)の個人的人気で与党とのあいだに20%の開きが出た。

 民進党が満を持した宜蘭は、わずか3%差ながらも民進党の陳定
南が落選。陳は元法務大臣、次のホープと目された。

 また与党が盤石の地盤といわれた台南でも、民進党は国民党にわ
ずか3%差まで追い上げられた。

 それもこれも陳総統側近の元総統府副秘書長が汚職で起訴され、
マスコミの批判が集中、とくに国民党が影響力をもつテレビが非難
に明け暮れたため劣勢に立ったからだ。

 国民党は過去の自らの汚職、腐敗をすっかり棚に上げて、民進党
政権を激しく批判する戦術を行使、さらに連戦主席(当時)の訪中
成果を力説して、中国との融和路線を訴えた。
 守勢に立った民進党は、陳総統が「今回の選挙は中国化か、台湾
化かの選択だ」と強調し、本省人の「台湾意識」に訴えたが、追い
込みにはパワーとならなかった。

 陳水扁執行部に統御能力がうすく、台湾独立派からの支援がきわ
めて恬淡だったことも影響している。

 だが台湾の本土派、本省人らが、国民党の大陸宥和政策を全面的
に支持しているわけでもなく、いわば北京との宥和ムードと経済繁
栄のなかで、強いリーダーシップを打ち出せなかった陳水扁総統そ
のひとに多くの責任があると言えるだろう。

コラム目次に戻る
トップページに戻る