2166.適正な税制体系に



欧米諸国は税金を所得税や相続税から消費税にシフトさせている。
しかし、それには分けがある。日本の税金体系を考えよう。Fより

国際派日本人養成講座は、私Fも非常に良いと認めているメルマガ
ですが、「税高くして国滅ぶ」で相続税ゼロにするという政策を奨
励しているが、それには大反対である。それには国民サイドの気持
ちの問題がある。

欧米諸国や中国などでは、自国民は他国に移動できる。それは同じ
民族が多数の地域に分散して存在しているために、特に英語圏の国
民は、割りに気安く、米国からカナダやオーストラリアに移住する
ことができる。

1年前、ブッシュが大勝して、民主党的なリベラルな人たちがカナ
ダに移住するという記事が出ていたと思うが、それが簡単に行なえ
る素地がある。英語は英語圏諸国ではほとんど同じで文化も同じで
すから、移住しても仕事も生活もあまり変わらない。

このため、ブッシュ当選となり、イラク戦争を止めないと見て、多
数の米国市民がカナダ国籍を取ることになったようである。日本
でも小泉自民党が嫌いな人たちが多数いたようであるが、小泉さん
が勝ったので、失望して日本から他国に移住したという話はほとん
ど聞かない。これは日本と他国とは文化、言語が違うために、環境
変化が大きいことでそうなるのでしょうね。

このようなことがあるために、欧米諸国は、自国の税金を移住しや
すい知能労働者や資本家の意向に合う体系にしないと、逃げられる
のでそうする。この人たちが一番経済的に重要な人たちであり、そ
の人たちから税金を取らなくても、その人が経営する企業に勤める
平均的なサラリーマンや企業から税金が取れるので、逃げ出される
より国家にとっては有利なのです。このため、富裕層に優遇した税
金体系になっているのです。

しかし、日本は国家から逃げ出すことができない。日本でしか通用
しない文化や習慣があり、海外での生活と日本での生活では質のレ
ベルで大きく違うことになる。このため、日本から逃げだされるこ
とを考えなくてもいい。逃げる人もいるが、少数であるし、企業自
体を日本から出すことができない。

勿論、エレベータのフジミックのように本社をニューヨークに移し
た企業もあるが成功していない。日本人の木目細かさなどの資質が
米国人にはないために、良い製品が出来ないことになってしまった。

このため、どうすれば良い税金体系になるかを海外の例を参考する
必要がない。相続税や所得税を70%、80%にするのは考え物で
あるが、0%にすることもおかしいと思う。

私Fが見るに50%の現行税率はそのままでいい。それより、これ
からの高齢化社会の福祉目的税化して消費税をだんだん上げて16
%にすることの方が問題であると見る。

消費税自体が逆累進的な税金で、貧乏人がより困窮する税制体系で
もある。日本は古来からバランスを重んじてきた。キリスト教と違
って仏教には困窮者を保護するという考え方がないために、極端な
金持ちも作らず、極端な貧乏人も作らないというような政策をして
きた。江戸時代には、富は商人、権力は武士、権威は貴族というよ
うな配慮をしている。キリスト教は勝者が敗者を助けることが愛で
あると教えている。このため、国家が配慮する必要がないという考
え方である。

このような日本文化を見ないで議論して米国流な考え方をすること
に抵抗感があるし、猛烈に反対である。長い日本文化を大切にして
欲しい。戦後の日本文化を大切にする抵抗勢力には我慢がならない
が、長い日本文化を無視する親米文化主義勢力にも腹が立つ。

もう1つ、天皇跡継ぎ問題も、平安時代の女帝である持統系で、道
鏡の簒奪問題などが起きて、それ以後、女帝は天皇になる男子が幼
い子供である場合、それまでの世継ぎとしてしか存在しないように
してきた。

このような天皇制としての歴史を、欧米の女帝制をただ男女平等と
いう観点から導入しようとするのは反対である。どうも、日本の伝
統が欧米的な物になしくづし的に変えるように今の日本の有識者は
している。これには反対だ。

どうも、全体的な政治的な印象として、悪い欧米的な文化を推し進
めているように感じる。いい欧米文化は取り入れるべきであるが、
悪い文化を入れるべきではない。もう少し、日本が文化を入れる過
去からの伝統に沿って、政治をするような保守党らしいものの考え
方をするべきではないですか??
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Japan On the Globe(417)■ 国際派日本人養成講座 
Common Sense: 税高くして国滅ぶ
■1.身代をつぶす相続税■

     東京都千代田区麹町のある八百屋さんは近所の5軒の店とと
    もに52坪の土地に9階建ての共同ビルを建てていた。平成3
    (1991)年1月に店主が亡くなり、店舗部分に課せられた相続税
    1億数千万円が息子夫婦にふりかかってきた。共同ビルなので
    売ろうにも売れずに、やむなく税務署には延納を申請した。

    息子は「自分の残りの人生は20年間税金を払い続けること
    なのか」と悔やんでいたが、同年12月、くも膜下出血で突然、
    他界した。まだ58歳だったが、医者には「心労が重なったか
    らでしょう」と言われた。

     新たに1億8千万円の相続税が未亡人にかかってきた。第一
    回分の1800万円は保険金や預貯金を取り崩して、なんとか
    支払ったが、第2回分の支払いの目処は立っていない。未亡人
    はこう嘆く。

         義父は優良納税者で税務署から表彰された人です。八百
        屋という商売は、引っ越ししてできるものじゃないんです。
        税務署には同情してくれる人もいますが、「制度は制度だ
        から」というばかり。生活させていただいた残りで、相続
        税を払うということではいけないのでしょうか。[1,p126]

     現代の相続税は、優良納税者が一生かかって築き上げた店を
    一代で取りつぶし、息子の命を奪い、残された未亡人の住む家
    まで取り上げようとしている。江戸時代のいかな悪代官でもな
    しえなかった悪行である。

     悪知恵のある人なら、会社組織でも作って所得税も相続税も
    逃れたろう。この八百屋さん一家のようなまじめな納税者は身
    代をつぶしてしまい、悪知恵のある人は栄える。そういう国家
    で国民は幸せになれるだろうか。そもそもそういう国家が栄え
    うるのだろうか。

■2.近代世界を形成した税金問題■

     税金は国家の盛衰に大きな影響を及ぼしてきた。英国におけ
    る立憲政治、人権思想の始まりとされる大憲章(マグナ・カル
    タ、1215年)も、ジョン王がフランス内の領土を敗戦で失い、
    戦費調達のために苛斂誅求を行った事がきっかけであった。各
    地の諸侯が団結して「あらゆる課税は議会の賛成投票で決定さ
    れねばならない」と国王の徴税権に、議会の制約をかけたもの
    である。

     1776年のアメリカ独立も税金がきっかけだった。1767年イギ
    リスの議会で北米植民地に「茶その他に対する間接税」を課す
    法律が成立した。アメリカでは激しい反対運動が起こり、つい
    にはインディアンに変装した過激分子が、ボストンの港で東イ
    ンド会社の茶箱を海に投げ込むという「ボストン茶会事件」
    (1773年)を起こした。これに対抗して英本国はボストン港封鎖
    を行い、ここから独立戦争が始まった。

     当時のアメリカ側のスローガンが「代表なくして課税なし」、
    すなわち、植民地からは英本国議会に代表を送れないのに、な
    ぜ税金を払わねばならないのか、という主張である。王の勝手
    な徴税を拒否した大憲章の考え方と通じている。[a]

     1789年のフランス革命も重税が原因であったという説がある。
    当時のフランス人口の大半を占める農民は、それほど貧しくな
    かった。しかし、領民税(小作料)、10分の一教区税、人頭
    税、その他多くの間接税をかけられ、すべて合わせると40%
    も税金を取られていた。その怨嗟が「地主殺し」の革命という
    形をとったのが、フランス革命であった、と言われる。

     英国の大憲章、アメリカ独立、フランス革命。近代世界を形
    成したこれらの重大事件にはそれぞれ税金が絡んでいたのであ
    る。

■3.税金への歯止めが大英帝国発展の原動力■

     北米植民地は失ったが、その後のイギリスは世界帝国として
    発展を続ける。『大国の興亡』を書いたポール・ケネディは、
    近世におけるイギリス興隆の一つに、大憲章以来、議会が税金
    に対する歯止めになっていたため、国力が充実していたという
    説を述べている。

     もとはと言えば、ヨーロッパ大陸の西端の島国で、土地も資
    源も人口も限られた弱小混血民族が、地球上の面積の4分の1、
    人口の6分の1を支配し、なおかつ産業革命や議会制民主主義
    などの多くの経済的、文化的遺産を残したのは、世界史上の奇
    跡と言って良い。

     その大英帝国建設の原動力については、弊誌184号[a]で、国
    家公共のために尽くす「精神の貴族」たちにあった、と述べた。
    そうした「精神の貴族」たちを輩出できたのも、重税を排して、
    国民のエネルギーを活性化し、自助と国家発展に向けることが
    できたからだろう。

■4.「貧困の悲劇に対する宣戦布告」■

     しかし、1904年に転機が訪れた。時の蔵相ロイド・ジョージ
    が「貧困の悲劇に対する宣戦布告」と称して「人民の予算」を
    議会に提出したのである。19世紀から広まっていた社会主義
    思想に基づいて、富者には税率を重くする「累進課税」によっ
    て、社会福祉政策を進めようとしたのである。

     この「人民の予算」から始まった累進課税は、第一次・第二
    次大戦を通じて、徐々に高率になっていった。

     同時にイギリスでは19世紀から20世紀にかけて選挙法改
    正が進み、かつては一定以上の財産を持つ富裕層にのみ与えら
    れていた選挙権が、1918年には21歳以上のすべての男性と、
    30歳以上の一部の女性に与えられた。これは「代表なくして
    課税なし」という大憲章以来の原則を「課税なくても代表あり」
    に転換したものだった。貧しい大衆がその選挙権を利用して、
    富裕階級に課税する道が開かれた。

    「貧困の悲劇に対する宣戦布告」は現実には「富者に対する宣
    戦布告」であった。

■5.地代を集めない地主、流出する科学者・技術者■

     戦後のイギリスでは「福祉国家」を目指す社会主義政権によっ
    て、累進課税は高率化し、1970年代には最高所得税率は83%
    に達していた。株、金利、土地代、相続などの不労所得にかか
    る最高税率は98%だったという。

     ある大地主が小作料をとっていない。それでは税金が入らな
    くて困るから、税務署員が出かけて行って「地代を取ってくだ
    さい」と言った。その大地主は「あなたが好きなようにすれば
    いいでしょう」と答えたという。地代の2%しか残らないなら、
    地代を徴収する手間賃も出ない、というのだろう。こういう社
    会では、土地をもっと儲かる用途に有効活用しようという動機
    も失われ、国全体の経済的活力がそがれてしまう。

     また、有能で他国で稼げる人は、もっと税率の低い国へ逃げ
    出してしまう。1963年1月7日の『イブニング・スタンダード』
    紙はこう報じている。

         この数ヶ月の調査によれば、イギリスの最も優秀な若き
        科学者及び技術者の殆ど四分の一が、北アメリカの仕事に
        惹きつけられており、しかも10パーセントの人間はすで
        にそこに住みついている。これはイギリスからの "brain
        drain(頭脳流出)"である。[1,p112]

■6.高税率による「イギリス病」■

     また、家族の資産が根こそぎ、税金で取られてしまっうこと
    によって、社会の安定性と伝統が失われていった。

     かつて上層中流階級が住んでいた屋敷が売りに出される。庭
    にはテントが張られ、その下で、家具や絨毯、蔵書、絵画など
    が競売にかけられる。そんな光景を[1]の著者・渡部昇一氏は、
    1970年代にイギリスに留学した際に、何度も目にしたという。
    冒頭の八百屋さんの例とよく似ている。

     経済的活力の喪失と、優秀な頭脳の流出、さらには社会の安
    定性の崩壊によって、この時期のイギリスは、かつての植民地
    だったシンガポールよりも一人あたりの国民所得は低くなって
    いた。

    「ゆりかごから墓場まで」の「福祉国家」を標榜して、高税率
    の累進課税を行ったイギリスの社会主義政権が残したのは経済
    的活力を失い、停滞と不安定の支配する社会だった。「イギリ
    ス病」という言葉まで生まれた。

■7.金持ちを潰すことによって貧乏人を助けることはできない■

     こうした社会主義の過ちを徹底的に攻撃する政治家が、1970
    年代に現れた。保守党の女性議員マーガレット・サッチャーで
    ある。サッチャーは1978年に次のようなラジオ演説を行ってい
    る。

         昔は少なくとも労働党(社会主義政党)は理想を掲げた
        党であった。その党が腐って酸っぱくなってしまったので
        ある。今日、労働党は、その場しのぎ、貪欲、特権の代弁
        者となり、イギリス社会の半分を他の半分と喧嘩させるよ
        うな政策を支持している。その根本原因の一つは嫉妬であ
        る。この嫉妬の精神は、家系やら相続した遺産によって特
        権的に恵まれた人々・・・のみならず、自分の能力や努力
        で成功した人々に対しても向けられているのである。

         自分自身や自分の家族を向上させようという男女に対し
        て、労働党は偏見を持っている。中小企業者や自家営業者
        のような普通の人々が栄えることはけしからんというので
        ある。集団的に豊かになるか、みんな貧乏になるかにせよ、
        ということなのだ。質の向上、自立、創造性、天才、あら
        ゆる形の富、生活の多様性----こういったことに労働党は
        すべて反対なのである。

         こんな社会は進歩できるわけがない。われわれ文明は、
        何世代にもわたって、卓越しようという意思のある人々に
        よって築かれてきたのである。[1,p146]

    「給料を払う者を潰すことによって給料をもらう者を助けるこ
    とにはならない」「金持ちを潰すことによって貧乏人を助ける
    ことはできない」 社会主義の過ちを糾弾したサッチャー語録
    の一部である。

■8.サッチャーの減税革命■

     1979年の総選挙で、サッチャー率いる保守党はイギリス経済
    の復活と小さな政府の実現を公約として勝利し、イギリス初の
    女性首相が誕生した。

     今まで最低33%、最高83%だった個人所得の累進税率を
    次第に改めて、ついには25%と40%という2段階にしてし
    まった。当初は「金持ち優遇税制」と非難されていたが、イギ
    リスの最富裕階級5%の人々の納める税金は、減税前にくらべ
    て30%も増加したという。

     これは、過大な税率は、人々に勤労意欲を失わせ、かえって
    税収を減らしてしまうというラッファー理論の正しさを実証し
    たものである。適度な税率なら前述の地主も、しっかり地代を
    徴収してその中から税金を納めるようになり、有能な科学者や
    技術者も母国で働いて、税金を払う。

     サッチャーは1990年まで約12年間も首相を務め、さらに後
    継者メジャーが6年半も政権の座にあった。この間にイギリスの
    経済は再び活気を取り戻し、「英国病」は完全に過去の言葉と
    なった。その後は労働党のトニー・ブレアが政権を取り戻した
    が、経済政策の基本はサッチャーとは変わらず、労働党も社会
    主義の迷妄から目を覚ました。

     アメリカでも1年遅れて登場したレーガン政権によって、最
    高70%15段階の累進税率が、2回の改正を経て、15%、
    28%の2段階とされた。レーガンはソ連との冷戦に勝利して、
    人類を社会主義の夢想から完全に解放した。そのための巨大な
    軍事支出は巨額の財政赤字をもたらしたが、税収そのものは減
    税によって増加しており、ここでもラッファー理論の正しさが
    示されている。

■9.「相続税ゼロ」国家の衝撃■

     我が国でも近年は累進税率の低減・簡素化が進み、20年前
    には地方税を含めて最高70%、15段階あったものが、現在
    では50%、4段階にまで改訂されている。イギリスの40%
    にはかなわないが、アメリカの約47%とは比肩しうるレベル
    になっている。[2]

     一方、相続税はかつて70%が最高であったが、現在では
    50%と引き下げられた。しかし、アメリカでは今後、遺産税
    を段階的に引き下げて、2010年には廃止することになって
    いる。

     スイスではすでに相続税をゼロにしている州がある。「生き
    ている間に税金を払っているのに、死んだらその財産にまた税
    金がかかるのはおかしい」と考えが広まっているからだという。

     そういう州に世界的に有名な個人蔵書がある。ガリレオやニュ
    ートンの初版本、グーテンベルクの聖書など市価億単位の稀覯
    本を個人で蒐集しているのである。この蒐集家は以前、チュー
    リッヒにいたが、そこではこれらが相続税の対象になるので、
    相続税のないジュネーブに移住した。これに懲りたのか、今で
    はチューリッヒでも相続税はゼロになっているそうだ。[3]

     アメリカの相続税がゼロになったら、こうした資産家の移動
    がグローバルに起こるだろう。そうした資産家が様々な新規事
    業に投資をして、アメリカ経済にさらなる活況をもたらし、そ
    の恩恵は、一般の人々にも及ぶだろう。芸術家のパトロンをし
    たり、社会奉仕活動を援助する資産家も現れよう。さらに相続
    税の心配なく、自分の子供や孫のために一生懸命働くことで、
    勤勉と自助の精神が生まれ、家庭と社会の安定が増す。

     こういう国家は経済的にも文化的にも発展するに違いない。
    かつての大英帝国のように。逆に、八百屋の未亡人が住む家ま
    でも奪われる国家では、社会と家庭は荒廃する他はない。

     ちなみに、平成17年度の当初予算の中で、相続税・贈与税
    は44兆円の税収総額のわずか1.5%を占めるに過ぎないの
    である。
                                         (文責:伊勢雅臣)
==============================
2005.10.31 UPDATE(nikkei-bp)

「高齢化のコストは、消費税で…」納得しやすい理屈に潜む罠


  「うちの地区で寄り合いなんかあると平均年齢75歳。52の俺が
いつも一番若いんだ」。地方に住む叔父と話す機会があって、改め
て驚いた。高齢化と人口減はもうここまできているのか、と。

  山間部ではあったけれど、子供の頃、夏休みに欠かさず遊びに
行った思い出の中に残る町(集落)は、人も多く、子供も多く、商
店だって結構あった。

  でも三十数年…。若者が町を出て行くことを過疎化と呼ぶなら
、それはとっくに起きていて、今押し寄せているのは高齢化の波で
ある。そして恐らく、そんな片隅の町が日本のそこかしこにあるの
だろう。

  「ニッポンの20年後」は既に始まっている…。

▼2015年に消費税は12〜14%へ!?

  自民党の財政改革研究会(会長・与謝野馨政調会長)が消費税
を全額、社会保障目的税化し、年金や医療など社会保障の公費負担
に充てる方針を明記した中間報告をまとめた。

  少子高齢化で増大が確実な年金、医療、介護費など社会保障費
をすべて消費税で賄うとした初めての与党の意思表示であり、与党
の与党たる日本経済団体連合会(日本経団連)でさえ「完全目的税
化はまだ早いのでは」(藤原清明税制・会計グループ長)という驚
きの声を上げたほどだ。

  高齢化の費用負担は何らかの形で必要で、個人の懐を直撃する
年金や医療費など直接支払いの保険料引き上げよりも消費税の方が
負担感が薄くてよさそう、といったかすかな雰囲気が恐らく国民の
間にはある。

  そこを狙って衆院選挙で成功した「改革の党」の印象を一段と
強く打ち出した、とうがって見ることもできようが、考えなければ
ならないのは我々の方である。本当に消費税引き上げでよいのか−−。

  財政改革研究会自体は、引き上げで想定する税率の水準につい
て明示してはいないが、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の
試算によれば、経済成長の伸びに合わせて社会保障費を抑制した場
合でも2015年には12%程度、しなければ14%が必要になる。

  2025年になると抑制して12〜13%程度、しなければ16.5%とな
る。単純にこれだけ見ても、相当な増税となるが、問題はさらにあ
る。

  例えば、既に指摘されていることではあるが、消費税が第2の道
路特定財源化してしまう恐れがその1つ。もともと消費税は、法人税
など他の主要税目に比べ、景気の変動による影響が小さく“安定”
していることもあり、税収が確保されるとなると、社会保障費の歳
出削減が進みにくくなる。

  まして、高齢化社会で高齢者人口が増える時代に選挙を通じた
発言力を政治がコントロールできるか、疑問は残る。

▼食料品の軽減税率に効果はあるか

  実際に増税となる際に政治的取引の中で出てくるだろう一部商
品への軽減税率も、国民の側からすれば気をつけなければいけない
ものだ。

  よく言われるのが食料品の軽減税率。生活必需品でもあり、例
えば付加価値税率17.5%の英国はゼロ、同18.6%のフランスは5.5%
、同15%のドイツは7%と先進国でも実施例が多いといった理由はつ
きそうだが、実際の「軽減効果」はどうなのか。

  例えば、食料品を作るには様々な機械、商品が必要でそこには
消費税はかかる。となれば、食料品も軽減税率通りになるかどうか
。効果がないわけではないが、消費者(納税者)が軽減税率に期待
し、それをもって引き上げを許容するほどにはならない可能性はあ
る。

  消費税を社会保障目的の財源にする考え方はこれまでも折に触
れて出ているが、現在の自民党政権では1999年の自自公連立以来、
この考え方が有力になっている。皆が高齢化社会の費用を負担する
となれば説明しやすいし、取りやすいからである。

  しかし、実際には消費税は一般に「思われるほど」簡素でも公
平でもない税制である。

  かなり引き下げられたが、課税売上高1000万円以下の事業者は
非課税だし、同5000万円以下の事業者はみなし仕入れ率で消費税額
を計算する簡易課税を選択できる。

  非課税業者も仕入れで負担した消費税分は売価に転嫁している
だろうし、みなし仕入れ率を使えば、本来の負担税額よりも納付額
が低くなる益税が発生する可能性が出てくることは知られる通りだ。

▼納得しやすい理屈には裏がある

  さらに言えば、同じ商品の購入に際して同じ税負担をするため
、所得の低い人ほど、収入に対する税負担率が高くなる逆進性の問
題もある。世帯を年間収入の低い順から高い順へ順番に並べて5等分
して見た収入階級別税負担(財務省、2002年版)を見ると、最も収
入の低い層で実収入に対する消費税の比率は2.8%、逆に最も収入の
高い層では2.1%となっている。

  逆進性の問題で言うなら、所得税との兼ね合いの中で検討され
る必要があるだろうし、免税、簡易課税事業者の益税問題は、「ク
ロヨン」と言われる所得捕捉の低さを解消し、法人税、所得税を含
めた税負担の中で考えてもいいだろう。

  また、現在の消費税は、5%のうちの1%分は地方税であり、残
る国税分もその約3割は地方交付税交付金になっており、ここを改革
しなければ、引き上げたところで社会保障費にすべてが回るわけで
はない。

  高齢化ニッポンの問題は消費税だけでは解決しない。税制全体
の見直しであり、財政支出の抜本改革なしには難しい。分かりやす
く、納得しやすそうな理屈には何かがある。それを忘れてはなるま
い。

(田村賢司)
==============================
三笠宮寛仁さま、女性天皇容認に疑問   
   
  三笠宮寛仁さま(59)が、自身が会長を務める福祉団体の会報で
「女性天皇」に触れ、「歴史と伝統を平成の御世(みよ)でいとも簡単
に変更して良いのか」と、疑問を投げかけられていることがわかった。

 皇籍を離脱した元皇族の復帰や、元皇族を女性皇族の養子として皇位
継承権を与えるなどの方法により、男系継承を守るべきだとの考えを示さ
れている。小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」は
女性・女系天皇の容認を打ち出し、最終報告書の取りまとめに入ったが、
この問題について皇族が考えを明らかにしたのは初めて。

 寛仁さまの意見が掲載されているのは、福祉団体「柏朋(はくほう)
会」の会報。寛仁さまは「とどのおしゃべり―近況雑感」という題で
エッセーを連載しており、その最新号で「政治問題で口出し出来ない
のですが、会報は市販されておらず“身内”の小冊子と理解し『プライ
ヴェート』に語るという体裁を取ります」と断って「女帝問題」を論じ
られている。

 寛仁さまはまず、「万世一系、一二五代の天子様の皇統が貴重な理由
は、神話の時代の初代・神武天皇から連綿として一度の例外も無く、
『男系』で続いて来ているという厳然たる事実」と強調。〈1〉皇籍
離脱した元皇族の皇統復帰〈2〉女性皇族(内親王)に元皇族(男系)
から養子を取れるようにし、その方に皇位継承権を与える〈3〉廃絶に
なった秩父宮や高松宮の祭祀(さいし)を元皇族に継承してもらい、
宮家を再興する――などの方法を挙げられている。

 その上で、「陛下や皇太子様は、御自分達の家系の事ですから御自身
で、発言される事はお出来になりません」とし、「国民一人一人が、
我が国を形成する『民草』の一員として、二六六五年の歴史と伝統に
対しきちんと意見を持ち発言をして戴(いただ)かなければ、いつの日
か、『天皇』はいらないという議論に迄(まで)発展するでしょう」と
結ばれている。

 天皇や皇族は憲法上、政治的な権能を有しておらず、有識者会議は
その意見聴取をしていない。(2005年11月3日3時0分  読売新聞)
----------------------------------------
以上の記事から、三笠宮寛仁親王が男系男子擁護論者であることは明ら
かだけれど、彼は皇族の一人に過ぎず、皇族全体の意思を反映している
わけではない。

「ひげの殿下」で知られる寛仁さまは、皇位継承順位からすると第5位
であり、天皇の地位から遠い分(=傍系なので)、敗戦で皇籍離脱した
傍系の旧皇族に近く、それが故に旧皇族の皇籍復帰に肩入れしている/
男系男子に固執していると見るのが妥当。

とすれば、「女性天皇」問題の一番の、そして直接の当事者である天皇と
皇太子/皇太子と天皇(=直系)の思いや考えは全く異なるはず。

天皇陛下も皇太子殿下も21世紀に生きる日本人である以上、私達の価値
観とそれほど違うわけがなく、600年も前に枝分かれした遠い親戚
(それは私達の感覚からすれば赤の他人)に本家を継がせるよりも、娘
/孫娘が産んだ子供に跡目を継がせたい。そういうふうに考えるのでは
ないかと私は思うのだ。

寛仁殿下は「柏朋会」の会報で男系男子の維持のために「側室を置く」
オプションにまで言及しているけれど、江戸時代ではあるまいし、その
可能性はゼロと断言できる。

そんな「可能性ゼロ」を持ち出すくらいなら、なんで「クローン技術で
神武天皇のY染色体の維持/継承」を主張しないのだろう?と私は思う
わけです。
       Kenzo Yamaoka

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