2157.イラン問題を基点とした今後の動き



イランのアハマディネジャド大統領がイスラエルを「地図から消し
去るべきだ」と発言した問題の波紋と今後を見よう。 Fより

イラン大統領のイスラエル消去発言は、いろいろな波紋を投げてい
る。この検討をするが、その前に米国の現状を把握したいと思う。

米国は、ローブ次席補佐官とリビー副大統領主席補佐官がCIA要
員身元漏洩疑惑の対象になり、かつ裏でチェイニー副大統領が絡ん
でいるとの疑惑が起き、かつマイヤーズ大統領法律顧問の連邦最高
裁判事指名問題で米国保守勢力から非難されて、マイヤーズ氏が指
名辞退を申し出たというように国内の政治情勢が混沌として、イラ
ン不当発言問題で主導的な役割を果たせないでいる。

イラクの憲法制定の国民投票で憲法が確定したが、米軍死者が2000
人以上になり、国内では対テロ戦争より、ハリケーン「カトリーナ
」によるニューオリンズ災害で明確になった国内の貧困問題の方が
重要であるという世論が大勢を占めるようになっている。当分、米
国はイラク以外の海外問題に主導的な役割を果たせないように感じ
る。どうもブッシュ政権は早くもレイムダック状態になっているよ
うだ。

この米国の代わりに、英国が主導的な役割を果たそうとしているが
、イランには石油が出るために石油が欲しい中国が肩入れしている
のと、原子力発電所支援でロシアが肩入れするなど、イラン問題は
北朝鮮問題より非常に難しい状態にある。イランは北朝鮮より自主
外交がうまかったために、ロシアや中国などの強力な支持を得てい
る。

そして、イランは濃縮ウランや再処理のプルトニュームなど核開発
を推進していることで、国際原子力機関IAEA理事会で国連安保
理への非難決議付託を審議した。しかし、この決議に対してロシア
が拒否権を発動するとして、暗礁に乗り上げている。

しかし、今回のイラン大統領の発言は、欧米諸国を刺激して、一層
の非難を集める結果になっている。
英国やフランスなども政権の中枢にはユダヤ系の人たちがいるため
に、イラン大統領の発言に反発を感じている。イスラエルを守るこ
とでは米国のネオコンと同等な考えをしている。

英仏の金融系ユダヤ人たちは国際派のユダヤ系であるために、ネタ
ニエフ氏を中心としたネオコンのようなユダヤ国粋主義的な人たち
とは主義が違い、イスラムとの共存を支持しているが、イラン大統
領のような過激な意見には、イスラエルを守るという立場である。

英国は、もう1つイラク南部の石油が欲しいために、イランのシー
ア派とイラクのシーア派を分離した状態にしておきたいために、真
っ先に、イラン大統領を非難したが、この非難は仏政権でも同様で
ある。フランスはレバノンを支配していた関係からシリア非難をし
ている。この英仏は利害が一致している。ドイツはドイツ人政権で
ありユダヤ系の政権ではないために、イスラエル消去発言に対して
、感情的な反発を感じない。

中東の紛争で、米国が力を急速に失っているので、再度、英仏が乗
り出さなければいけないようであるが、2ケ国の兵力ではイランで
の軍事紛争を起こすことは無理である。しかし、ドイツは中東より
東欧やアフリカに目が行っている。このため、英仏と組んでNATO
軍や欧州軍を中東のイラン紛争に使用することを望まないし、反対
するはずである。

このため、ドイツと英仏では意見が異なることになる。これは政権
がユダヤ系か非ユダヤ系という違いによることである。ロシアもユ
ダヤ人を政権や財界から排除したために、非ユダヤ系になっている。

ロシアから追い出されたユダヤ人が米国やイスラエルに行って、ネ
オコンという過激な思想になっているので、世界はユダヤ人たちに
よって形造られているとも見える。世界的な戦略思想も、ほとんど
がユダヤ系の人たちが生み出したものである。このようにユダヤ対
イランの関係で、世界は動き、かつユダヤ政権か非ユダヤ政権で、
対応が異なることになる。

このため、今後イラン問題を基点として、欧州の再編が起こる可能
性が濃厚であると感じる。これがEUを分裂に向かわせる理由にな
ると見ている。

イランの今後であるが、イスラエルが単独でイランの原子力研究所
や再修理工場を爆撃することも視野に入れて見る必要がある。米国
ではなくて、英国の特殊部隊がイラン破壊工作をする可能性もある
と見る。またフランスの動きも注視する必要がある。欧州の動きが
面白い。
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イラン外務省、イスラエル攻撃の意図を否定・大統領発言火消し
(nikkei)
 【バーレーン=加賀谷和樹】イラン外務省は29日、「イランは国
連憲章を順守し、これまでも他国に対し武力を行使したり威嚇した
りしたことはない」との声明を発表、イスラエルに軍事攻撃を仕掛
ける意図はないと釈明した。イラン国営通信が伝えた。アハマディ
ネジャド大統領の反イスラエル発言に関し国連安全保障理事会が公
表した非難声明を受けた。

 欧米諸国は「イスラエルを地図から消し去るべき」と主張した26
日の大統領発言を批判。イラン外務省は、同国の核開発問題を国連
安保理に付託(報告)するかどうか協議する11月下旬の国際原子力
機関(IAEA)理事会で立場が悪くなることを恐れ、火消しを始
めたとみられる。 (20:42) 
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英首相、イランへの態度硬化=武力行使の可能性示唆

 【ロンドン28日時事】イランのアハマディネジャド大統領がイス
ラエルを「地図から消し去るべきだ」と発言した問題で、ブレア英
首相が態度を硬化させている。27日の記者会見では、武力行使の可
能性を示唆したとも受け取れる厳しい表現でイランを非難。核交渉
を独仏と共に主導する立場から、これまでイランには慎重な姿勢を
通してきた英政府だが、「堪忍袋の緒が切れた」(タイムズ紙)形
だ。 
(時事通信) - 10月28日23時1分更新
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イランの国連追放求める“抹消”発言にイスラエル猛反発[共同通信]

 イランのアハマディネジャド大統領は自身が26日に「イスラエ
ルは地図上から抹消されなければならない」と発言したことについ
て28日、国営イラン通信に対して「(発言は)全く正しい」と述
べ、あらためて反イスラエルの姿勢を鮮明にした。フランス公共ラ
ジオが同日伝えた。

 発言をめぐりイスラエルのシャロン首相は27日、同国訪問中の
ロシアのラブロフ外相との会談でイランを国連から追放すべきだと
の考えを表明、激しく反発した。

 アハマディネジャド大統領は自身の発言が米欧、ロシアなどを含
む国際社会から非難されたことについても28日「全く正しい発言
が反響を巻き起こすのは当然のことだ」と述べ、意に介さないこと
を強調した。

 インタファクス通信によると、イランのアンサリ駐ロシア大使は
同日、大統領の発言について「中東地域の緊張を高める意図はない
」とする声明を発表。「(パレスチナで)自由な選挙を実施すべき
だとのイランの基本的な立場を述べたものだ」と語るなど、大統領
発言の真意を釈明した。
(共同)
(10/29 01:46)
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イラン大統領「イスラエルを地図から消せ」と公言(nikkei)

 【バーレーン=加賀谷和樹】イランのアハマディネジャド大統領
は26日、テヘランで開かれた反イスラエル集会で3000人の学生を前
に演説し、イスラエルを「地図から消し去るべきだ」と訴えた。国
営イラン通信などが伝えた。改革派のハタミ前政権は対イスラエル
政策で柔軟な姿勢をみせたが、アハマディネジャド大統領は保守強
硬派の立場を鮮明にした。
 この集会は「シオニズム(ユダヤ主義)のない世界」と題され、
大統領は「パレスチナの地で何百年も続く戦争の結果は明らかだ」
と述べ、パレスチナを圧迫するイスラエルを批判。「イマーム(故
ホメイニ師)の教え通り、イスラエルは地図から消え去らなければ
ならない」と言明した。
 この間に学生は「イスラエルに死を」「米国に死を」と連呼した。
 イラン政府は国民統合の手段としてイスラム教の価値観と相いれ
ないイスラエル、米国を機会があるたびに批判してきたが、アハマ
ディネジャド大統領が公言するのは今年8月の就任以来初めて。
 (10:54) 
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強気貫くイラン新政権(tokyo-np)

 レバノン元首相暗殺事件へ関与が疑われ、米国が敵視するシリア
が国連調査委員会報告書で、状況から「クロ」とされる中、核兵器
開発疑惑を抱えるイランも、来月の国際原子力機関(IAEA)理
事会で、制裁の前提となる国連安全保障理事会への付託を受ける可
能性が高まってきた。しかし、こちらはシリアと違い意気軒高。発
足間もない保守派新政権は欧米との対決を辞さない構えだ。 
(田原拓治)

 二年前から、瀬戸際の攻防が続くイランの核兵器開発疑惑。新局
面は八月、イランがウラン濃縮の前段階となる「転換」の再開に踏
み切ったことで始まった。

 イランは原子力の平和利用を説き、ウラン濃縮を含む核燃料サイ
クルも権利の範囲内と主張。欧米諸国はそれを否定し、イラン中部
イスファハンのウラン精錬施設やナタンズのウラン濃縮施設などの
全面廃棄を含む措置を求めてきた。

 九月のIAEA定例理事会では従来、米国との緩衝役だった英仏
独もさじを投げた。とはいえ、国連安全保障理事会(安保理)への
付託では一致できず、欧米諸国は包囲網の強化とイランの翻身に望
みをかけ、安保理付託を先送りした。

 だが、イランの翻身は望み薄だ。なぜか。それは文明の対話を掲
げた改革派前政権と違い、アハマディネジャド新政権が徹底した「
欧米嫌い」だからだ。

 外交方針は対外関係だけでは決まらない。むしろ、内政が要因に
なりがちだ。六月の大統領選で当初、アハマディネジャド氏は下馬
評にも上らなかった。当選はポピュリズム(大衆迎合主義)の産物
だった。

 「開放改革」路線を掲げたハタミ前政権に国民は大きな期待を抱
いた。だが、その八年間の抵抗は結局、治安機関や司法当局を牛耳
る保守派に抑えられた。

■改革派政権下で汚職などまん延

 改革の成果が出ない一方で、経済成長に伴い汚職や腐敗は社会に
まん延。改革派が比較的裕福な知識人階層に支持が厚いこともあり
、保守的な多数の貧困層は腐敗一掃への熱望を同じ貧しい鍛冶(か
じ)屋の息子である「清貧の人」アハマディネジャド氏に託した。

 おそらく、この選択には外交など眼中になかったのだろう。一方
、この結果を何より歓迎したのは最高指導者のハメネイ師だ。ハメ
ネイ師は欧米との協調を「西側の文化侵略」と切って捨てる。改革
派をかねて苦々しく思っていた。そんな同師の意向からか、新政権
にはイスラム保守主義者たちがそろい踏みした。

 例えばプルモハンマディ内相は、一九九〇年代後半にイラン社会
に衝撃を与えたリベラル文化人連続殺害事件の黒幕とされるファラ
ヒアン元情報相の子飼い。情報相のモホセニエジェイ師も保守派の
牙城、聖職者特別法廷のボスとして改革派系のジャーナリストや文
化人を次々と投獄した。文化イスラム指導相のハランディ氏やアシ
ュリー教育相はともに「ケイハン」など保守系紙の編集長だ。

 イラン情勢に詳しい同志社大学一神教学際研究センターの松永泰
行客員研究員は「新政権は内相、外相、情報相を除くと未経験の新
人ばかり。外交に積極的な影響を与える要素はまったくない。新大
統領も先月の国連総会演説で明らかなようにイデオロギー的な世界
観に囚(とら)われ、外交センスを欠いている」とみる。

 「大統領の国連演説は国内の良識派などの間ではあまりに不評。
そのため、新政権は通常の外交スタイルに軌道修正しようとしてい
る気配もある」と松永氏は指摘する。が他方「大統領の経験不足や
イデオロギー的な姿勢と、彼の下での外交折衝団のタカ派的姿勢は
核兵器疑惑の外交的解決を今まで以上に困難にするのは確実」と悲
観する。

 ただ、イランには孤立しているシリアと異なり、前政権以来の独
自外交の蓄積がある。それが強気な姿勢を支えている節がある。

 中国、ロシア、中央アジア四カ国でつくる「上海協力機構」。中
ロ主導で、中央アジアから米国の影響を排除しようという地域共同
体だ。イランは七月の同機構首脳会議にオブザーバー参加が認めら
れた。ちなみに安保理で拒否権を持つ中ロは付託反対の立場だ。

 そして、経済大国への道を歩み始めたインド。イランの仇敵(き
ゅうてき)イスラエルと軍事面で協力関係があるにもかかわらず、
九月にはシン外相がイランを訪問。来年着工予定のパキスタン経由
の液化天然ガス(LNG)パイプライン事業に加えて、総額二百二十
億ドルに上るLNG五百万トンの巨大輸入事業の確約を得た。

 米国のけん制で、九月のIAEA定例理事会ではインドもイラン
非難決議に賛成した。しかし、これには国内で強い反発も。結果と
してイランのエネルギーを切り札にした外交攻勢は功を奏している。
さらに米国、イスラエルと関係が緊密なトルコにも「イスラム諸国
には核技術を移転する準備がある」と誘い水をかける。

 こうしたイランの動きに米国は今月十四日、ボルトン国連大使が
「イランは弾道ミサイルで運べる核兵器所有を決め、テロリストに
も供与しようとしている」と非難。さらにイスラエルは先月、シャ
ローム外相が「イランは六カ月以内に核兵器技術を確保する」と断
定し、それに先立つ二月にはシャケディ空軍司令官が「空軍はイラ
ン各地の核施設への爆撃に備えている」と緊張を高めている。

 イスラエルには八一年、イラクが建設中だったオシラク原発を空
爆した過去がある。国連の外交舞台を飛び越えた軍事衝突の危険は
あるのだろうか。

 米サンディエゴ大学の物理学者、ジョージ・ヒルシュ教授は「オ
シラク原発のケースでは核燃料が輸入される直前、空爆があった。
ロシアは今年終わりか、来年初め、イランのブシェール軽水炉に最
初の核燃料を届ける予定で、危険は高まっている」と懸念する。

 先月十七日付のサウジアラビアの英字紙アラブニュースは、イラ
ンが首都から約千キロの都市マシャドに堅固な指導部用地下ごうを
建設したと報じ、制裁発動を阻まれた米国の攻撃を予想。イランに
よる十五万人のイラク駐留米軍への報復ミサイル攻撃を含む戦況展
開の想定を掲載している。

 しかし、松永氏は「ブッシュ政権には、イランの封じ込めや攻撃
を実施する余裕は国内的にも国際的にもない」と分析する。「安保
理付託がせいぜいで、それも深刻な制裁を科す国際合意は得られな
いだろう」

■「ならず者国家」マイナスなのに
 ただ、全体状況は緊張増大へ向かうと指摘した。
 「安保理付託になれば『ならず者国家』扱いで、国益にはマイナ
スだが、イラン新政権がそれを理解しているのかは疑わしい」
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CIA漏洩、リビー補佐官辞任 偽証、司法妨害で起訴

 【ワシントン=樫山幸夫】米中央情報局(CIA)工作員氏名漏
洩(ろうえい)事件で、ワシントンの連邦大陪審は二十八日、チェ
イニー副大統領の首席補佐官、ルイス・リビー氏(55)を偽証、
司法妨害などの罪で起訴した。リビー氏はこれを受け直ちに補佐官
を辞任した。やはり訴追の可能性が取りざたされていたブッシュ大
統領の次席補佐官、カール・ローブ氏については継続捜査となった。
ホワイトハウス高官の起訴はブッシュ政権に大きな打撃となる。
 起訴事実は五項目。起訴状によると、リビー氏は昨年五月、二回
にわたり連邦大陪審で証言した際、工作員の氏名をめぐる取材記者
とのやり取りに関して虚偽の供述をした疑い。
 リビー氏は、「記者に対して『工作員名は他の記者から聞いたが
、私はそれが事実かどうか知らない』と話した」と証言したが、実
際にはそうした会話はなかった。同氏はそれ以前に、国務省高官か
ら工作員の氏名など詳しい身元情報を聞いており、記者の質問に対
してむしろ積極的に工作員名を認めていた。ただし、国家機密であ
る工作員名の漏洩という違法行為での起訴は見送られた。
 事件を捜査しているフィッツジェラルド特別検察官は訴追発表の
記者会見で、リビー氏について「外部の記者に工作員の身元を暴露
した最初の高官だ。それについて宣誓しながらうその供述をした」
と述べ、リビー氏こそ氏名漏洩の張本人であるとの見方を示した。
 一方、同検察官は漏洩に関与していた疑いがもたれているローブ
氏について、二十八日で任期が切れた陪審員に代わって、新たな陪
審員に起訴、不起訴の決定を要請する方針であることを示唆した。
(産経新聞) - 10月29日15時55分更新

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