2146.台北市ゴミ分別収集



   台北市ゴミ分別収集 第3報
           平成17年(2005)10月10日
             「地球に謙虚に」運動代表 仲津 英治 

1.	ゴミの先出し禁止
..ゴミを先に出すことを禁止、言い換えれば、予めごみを地面に置かな
い回収方法は「??不落地」という政策で、1997年4月1日から実施さ
れています。関心のある方は、オール漢字情報ですが、下記の台北市
環境保護局のホームページをご覧になって下さい。
http://www.tcgdep.taipei.gov.tw/epbforum/ReArticle.aspx?ArticleId=346&&TopicId=103

 この「??不落地」の政策を実行したのは、当時の台北市長で、現
在の陳 水扁総統(1998年まで台北市長在任 現台湾政府総統、民主進
歩党=民進党)です。以前の台北市ゴミ分別収集の続報(平成17年
(2005)9月12日発信)では、馬 英九台北市長(現国民党主席)が尽力
されたと報告しましたが、新制度を発足させたのは、陳 水扁前市長で
した。ここに追加訂正しておきます。
 何事も始めるときは多大な努力を要します。陳 水扁総統に敬意を表
するものです。

2.	受益者負担の原則
 台北市政府はごみの処理費用について、ゴミ処理費用は、ゴミを出す人
が負担するという「受益者負担」というポリシーを取っています。具体的
には「随袋徴収袋」というゴミ収集袋を)一般市民に売り、これによって
ゴミ処理費用を回収するのです(2000年7月から実施)。もちろんこの独
特のマークが付いてる専用ビニール袋=「随袋徴収袋」は普通のビニール
袋より高値だそうです(外観は添付写真参考)。

 つまり、もしゴミの先出しを許したままだと、ちゃんとこういう高価な
ビニール袋を使用しているかどうか確認できないので、先出しは禁止され
るわけです(きっちりごみ処理費用を払っているか否かを監視する)。ゴ
ミの分別についてもあらかじめゴミを出す側で行なっておき、先出しは禁
止されています。

「随袋徴収袋」制度のできる2000年7月までは、市民の納める税金でゴミ
を収集し、処理する費用を賄ってきました。この従来のやり方は、不公平
で悪平等というものです。ゴミを出しても出さなくても、市民の税金によ
ってゴミが処理されるからです。市民にゴミを出した方が得のような意識
を持たせます。
 受益者負担の原則は、ゴミの投棄する量によって(ゴミ専用袋は大きけれ
ば大きいほど、高くなる由)、自費で払う方法です。ゴミを出すとお金を払
う、多く出すと多くお金を払う、出さないとお金がかからない、合理的な方
法かと思います。

3.収集係員によるチェックと罰金
「エリーゼのため」など大きなチャイムを鳴らしながら、ゴミ収集車とと
もに定時にやってくる、収集係員は前述の専用ゴミ袋「随袋徴収袋」に入
れているか全部チェックするようです。チェックしないと違法投棄(専用
ビニール袋を使わずに)される可能性が大だからです。

 道路&公園などで違法投機を防ぐために、台北市内の道路脇、公園などに
ある公用ゴミ箱はみんなわざわざ投げ入れ口を小さめにされている事例も
あります。家庭用ゴミを入れられないよう、工夫されているそうです。私
はこれも見かけました。
 
 不法投棄するのを発見されると、1,200元から6,000元の罰金(1元=約3.0〜
3.5円)を取られるそうです。金額の幅は、事例によるのでしょう。一般に台
湾では罰金が高額ですね。地下鉄構内、車内ではチュウインガム、飲食は
禁止であり、違反者には7,500元の罰金が待っています。

4.処理業者と契約すれば、ゴミ先出しOK
 ゴミの先出しはOKの場合もあるようです。これは団地か地区の自治会等に
よって、専門のゴミ処理会社に委託するケースです。決まった場所に住民
達がゴミを出して、それらを受託した会社がゴミ処理をするとのことです。

 当然この住民達は、事前に経費を支払っています(台北市政府へゴミ処理
費を払うか、ゴミ処理会社へ支払うかの違いのみ)。容易に想像がつくよ
うに、共稼ぎの家庭とか単身者にとっては、決まった時間でのゴミ収集は
不便です。そこで業者契約方式なら、何時でもゴミを出すことができます。

5.マンション管理費とゴミ処理
 私どもが台北市内で住んでいたマンションは、前述の通り、ゴミを何時で
も出せました(ただし11種類に分類)。そして月額定額5,000元プラスアル
ファーの管理費を支払っていました。この管理費の一部を使ってゴミ処置
処理業者と契約していたはずです。4.と同類のシステムです。

 管理費は部屋の坪数によって、一坪いくらと決め、住民から徴収されます。
その中に守衛代、ゴミ処理代、施設メンテ費、管理委員会の会費などが含
まれます。さらに共用電気、水道料等は、使用量により変動します。前述
のプラスアルファーがこれらに該当したのでしょう。

 別に台北市は、大型のマンションなどにゴミの分別収集なり生ゴミの保管
を義務付けてはいないとの事でした。むしろ、近代化大型マンション(団地
型マンションも含む)は、高くても管理費を徴収してしっかり管理している
と、その不動産価値も上がります。つまり、セールスポイントになりうると
のことです。
                       以上
仲津英治
「地球に謙虚に」運動代表 
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公明党・創価学会に高まる中選挙区制の復活論に、異議あり。(伊勢より) 
 

公明党や創価学会の中に、中選挙区制復活論が台頭してきている。
これは、時計の針を、利権政治の時代に、押し戻す動きである。つ
よく反対する。
 
中選挙区制では、一つの選挙区から、3人〜5人を選出する。この
ため、議席の過半数をとるには、2人〜3人を立候補させねばなら
ない。おなじ自民から、最低でも、A、Bの二人が立候補するわけ
である。
 
二人は、いずれも同一政党であるため、政策は一緒である。したが
って、政策の違いでは争えない。このため、自身を差別化し、他候
補に勝つためには、選挙民への利益誘導を主張することになる。
 
ここに、派閥の力が大きな意味をもってくる。たとえば、道路に強
い橋本派に属しているA候補は、道路建設を、自分ならできると主
張して、他との差別化を図るだろう。これに対して、文教族の派閥
に属するB候補は、地元への大学誘致を、セールスポイントとして
戦うかもしれない。
 
このように、中選挙区制であると、利益誘導になり、なおかつ、派
閥の影響力が大きくなる。
 
そして、利益誘導であると、組織票が長期に渡って、固定されるこ
とである。父が土建屋で自民に投票すると、その跡をつぐ息子もま
た、自民に入れる。農家も、病院も、そうなる。
 
これとは対照的に、無党派層は、利益配分のカヤの外に置かれるた
め、棄権が多くなる。このため、ますます、組織票の政党が有利と
なり、利益誘導の政治が確立する。しかも与党の長期支配となる。
 
この傾向は、世界もおなじである。いま、中選挙区制をとっている
国は、アイルランドであるが、ここもやはり、利益誘導、与党の長
期支配、といった同じ問題を抱えている。
 
ではなぜ、いま公明党がこの中選挙区制を主張するのか? それには
、二つ理由がある。一つは、複数候補に対する、票の振り分けが、
創価学会は完璧であり、非常に有利に戦える。同一選挙区内の、A
候補に7万票、B候補に7万票と、無駄なく振り分けて、当選者数
を確保できる。
 
二つめの理由は、いまや与党になった公明党が、これからも与党で
あり続けるためである。中選挙区制は、既存の選挙制度のなかで、
いちばん政権交代のおこりにくい制度である。そのためである。 
 
しかし、現在の日本は、757兆円という膨大な財政赤字を抱えて
いる。さらに、高齢化による労働人口の減少と、それに伴う所得税
の減少、福祉費の増大が、すでに確定された未来として、目前に迫
ってきている。
 
今この局面で、税金を死金にしてしまう非効率な利益誘導の政治に
、日本を逆行させることは、許されないことである。それゆえ、中
選挙区制の復活を、受け入れることはできない。
 
そして、日本の競争力のためには、政権交代できる国であることが
必要である。二大政党の自民と民主が、互いに政策を競い合う。そ
の優れた政策の党を、国民が選挙で選んで、政権を与えればいい。
それには、小選挙区制が最適であると考える。
 
公明党のエゴによる、中選挙区復活の策動は、困ったものである。
国の将来を、党利党略で歪めてはいけませんよ、神崎さん。
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(産経新聞) - 10月6日
衆院選での自民党圧勝を受け、公明党や支持母体の創価学会の中に
、大政党に有利な小選挙区比例代表並立制を見直し、中小規模の政
党でも一定の議席が確保できる中選挙区制を復活させるべきだとの
意見が再び強まっている。同党は水面下で制度見直しを働きかけて
いく考えだが、衆院選圧勝で自民党側の動きは鈍い。
 
創価学会の原田光治中央社会協議会議長は五日の公明党・創価学会
連絡協議会後の会見で、「中選挙区にし、もっと民意を反映できる
方が分かりやすい」と述べた。公明党の魚住裕一郎選対委員長も四
日の参院予算委員会で、現行制度について「得票数と議席数との乖
離(かいり)があり、比例復活も非常に評判がよくない。民意が反
映できるような選挙制度にしていくべきだ」と訴えた。
 
衆院選で公明党が確保した三十一議席のうち選挙区での当選は八議
席にとどまり、中選挙区制復活は同党にとって「ぜひ実現したい悲
願」(幹部)。都市部の選挙区を中心に定数二−四の中選挙区を設
ける案をまとめたこともある。
 
ただ、自民党内での見直し論は衆院選の圧勝でなかなか高まらず、
小泉純一郎首相も魚住氏の訴えを「選挙制度はどれも一長一短があ
る。将来、改善すべき点があるのなら衆参一体で考えるべきだ」と
かわしている
name=伊勢
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「我が国の外交戦略の今後 −緊張する東アジアと多極化する世界−」

「日本は、米国の力を利用すると共にアジア諸国を味方に付けて中国の牙を抜き、ア
ジアの盟主としてやがて来る米国の没落と多極化世界に備える事を外交戦略のグラン
ドデザインとすべきである。」

世界は現在、冷戦終結から米国の一極支配を経て、多極化・流動化に向いその流れが
加速している。
日本もそれに応じて、統合的な中長期的外交戦略を持つ事が不可欠である。
しかし、個別的、対処療法的な外交政策は在れど戦略は不在といえるのが現状だろ
う。

戦略とは、勝つための、差別化された、決然とした覚悟を伴なう包括的シナリオであ
り概略作戦書でなければならない。
この観点から、以下に外交を中心とした国家戦略についての筆者の考えを述べる。

◆情況と趨勢および基本戦略◆
先ず、我が国と世界を取り巻く情況と趨勢を整理する必要がある。
筆者は、以下のように整理している。
−情況と趨勢−
◆北朝鮮の暴発可能性、中国の軍事力増強等の東アジアの不安定要素の増大
◆EU、中国、インド、ロシア、ブラジル等の勃興による中長期的な米国の相対的衰
退と一国支配の終焉、それに伴う世界の多極化と世界各地の地域紛争の増加
◆上記に歯止めを掛けるべく行われる、イラク戦争のような米国の単独行動傾向の増
大

これを受けて、我が国が採るべき基本戦略は次のようなものでなければならない。
−基本戦略−
◆日本は、米国と共同してその力を利用すると共に、国際社会なかんずくアジア諸国
を味方に付け、中国等を囲い込みその牙を抜くべきである。
◆日本は、再びアジアの盟主を目指すべきである。
ただし、今回は武力に拠らず、周囲から推される形でなければならない。
◆日本は、やがて来る多極化世界に向けて、新世界秩序建設を模索すべきである。

◆中国の囲い込み◆
中国は、領土領海については、台湾独立問題、チベット等の辺境民族の独立問題、南
沙諸島、尖閣列島等の周辺諸国との領有権問題等を抱え、明らかな領土拡張傾向を示
している。
また、バブル崩壊の危険、沿海部と内陸部の経済格差、エネルギー・食糧・水不足、
環境汚染、一党独裁体制の矛盾、人権問題、元切り上げの必要、知的所有権の遵守、
劣悪な労働条件の改善等々の様々な問題が指摘されている。
しかし、今後曲折を経ながらも、経済的、軍事的に強大な国家となって行く事はほぼ
間違いないだろう。

我が国にとって、中国の経済発展自体は、隣接する生産工場及び巨大マーケットの拡
大としてメリットをもたらすものである。
しかし、一党独裁体制の中国が経済力と軍事力によって我が国とアジア諸国を支配す
る事は大きな脅威でありデメリットである。

従って、日本の採るべき戦略としては、中国の経済発展を許容しつつ一党独裁体制を
終わらせ民主化させ、軍事的に突出させない事、即ち中国の牙を抜く事である。
民主化しても侵略戦争をしたり、反日である国は幾らでもあるが、民主体制では行き
過ぎた動きに対しては、やがて時間の経過と共にバランスが働き揺り戻しが起こる傾
向がある。

中国は現在発展途上にあり、貧富の格差についての不満が鬱積し各地で爆発している
が、政府が適切に対策を打つなら国民は経済発展を優先させ開発独裁体制を甘受し、
民主化要求が具体的なパワーとなるのは暫く先になるだろう。

従って当面は中国の軍事力の突出を押さえる事が主眼となる。
このためには、米国の軍事的プレゼンスが不可欠であるが、米軍は石油の出る中東と
西アジア世界以外から兵を引き始めており、その穴埋めは日本が中心になってやらざ
るを得ないし、そうすべきである。

また国際社会なかんずくアジア諸国を味方に付け、国際世論として、あるいは経済
的、軍事的に中国を囲い込み牽制する事が必要である。

なお、喫緊の課題として北朝鮮が核実験・核兵器保有へ向けて動いている。
米国による体制保障と引き換えにした北朝鮮の核兵器保有放棄が、現時点で我が国に
とって最善のオプションであり、これに向け各国を主体的に誘導すべきである。
また、拉致問題は、北朝鮮が核抜きに向かう中でないと実際の解決は難しい。

◆アジアの盟主◆
世界の各地域にとって、その全体の利益と安全保障について主体的・中心的に責任を
負う盟主(リーダー)は不可欠である。
日本がアジアの盟主とならない場合、中国が盟主の地位につく事になるが、少なくと
も一党独裁体制のままの中国にそれを許すわけには行かない。
従って、日本はアジアの盟主を目指すべきだし、目指さざるを得ない。
ただし、今回は武力に拠らず、周囲から推される形でなければならない。

そのためには、先ず歴史認識問題を整理する必要がある。
明治の開国から太平洋戦争敗戦に到る時代を総括をした確固たる歴史観の確立と、そ
れに対して国際社会なかんずくアジア諸国の理解を得る事が不可欠である。
先の戦争は、弱肉強食の植民地争奪戦の中で欧米に対しては覇権を掛けた普通の戦
争、アジアに対しては侵略戦争の要素が強かったとした中曽根元首相等の歴史観は概
ね妥当なものである。
東京裁判とサンフランシスコ講和条約については、歴史的経緯から見て不当な面があ
り、何れは国際社会に対し正式に見直しを求めるべきだが、少なくとも当時の記憶の
ある世代が存命する今後20年間は声高に行う時期ではない。
さもなくば、国際社会から孤立する恐れがある。

次に、安全保障面であるが米国の軍事的プレゼンスが減る中で、日本がその穴を埋め
アジアの安全保障に責任を持つためには、集団的自衛権の行使を可能にすべく憲法改
正をする必要があるだろう。

◆米国の衰退と多極化◆
9・11同時多発テロを契機に米国は、アフガン攻撃とイラク戦争を起こした。
アフガン攻撃については、タリバン政権とアルカイダの関係があったが、イラク戦争
については、フセイン政権とアルカイダとの関係、大量破壊兵器の保有は何れも無
かった事が現在実証されており、大量破壊兵器開発の危険性もほぼ否定されている。
国民を戦争に導くためには、どの国、どの時代でも危機感を煽る必要があり、大量破
壊兵器の危険性はそのための方便として使われた。

イラク戦争は、米国が石油ドル決済体制を揺るがすサダムフセイン退治と石油資源と
石油、軍事、復興利権獲得のために始めた戦争である。
大きく観れば、EU等の勃興により米国が相対的に衰退する事に歯止めを掛ける必要
に迫られたのが戦争目的だった。
これに多分に後付けながら、開戦直前に唱えられ始めた中東民主化の大義が加わる。

イラク戦争と今後予想されるイラン攻撃等、これらを含む中東強制民主化とも言うべ
き「拡大中東構想」は、かつての大日本帝国による大東亜共栄圏に似ている。
新興工業国としての生存のため資源と市場を獲得するために始められた満州事変以降
の戦争は、「八紘一宇」やアジア諸国を欧米の植民地状態から解放すると言う大義が
掲げられ、これらが表裏一体となっていた。
日本は、太平洋戦争で緒戦の勝利に引き続き敗戦し、その結果、欧米列強のアジアか
らの撤退 → 日本の撤退 → 欧米列強のアジア復帰に抗した独立戦争 → アジ
アの独立という弁証法的展開が起こった。

米国は、「拡大中東構想」により軍事力の行使やそれを背景にした米国スタンダード
・ルールの押し付けにより、自国の衰退に歯止めを掛ける事を図っている。
また、中東の石油を押さえれば、石油を輸入に頼る中国の増長を戦わずして制する事
が出来、一石二鳥であるとも考えている。
しかし、拡大中東構想は軍事費の面やテロ等の安全保障面で持続的なシステムとは成
り難く、冷戦後続いた米国の一極支配に代って世界は次第に多極化して行くと見るの
が自然である。

◆新しい世界秩序と日本◆
さて、このような中で新しい世界秩序の仕組みが打ち立てられなければならない。
世界が多極化して行く中では、国連等の超国家機構の機能強化が求められるようにな
るだろう。
中長期的な課題としては、国際紛争への予防的介入や国連常備軍の設置等の権限・実
力強化の面と、安保理常任理事国の増席や総会での圧倒的多数が反対する場合の拒否
権の制限等の加盟国の納得性の向上の2つが大きな柱になる。

こうした中で、日本は常任理事国に加わる事を本気で成就させ、安保理が決議した場
合の集団的安全保障では武力行使、部隊の供出等に積極的に協力すべきである。

一方それと並行して、防衛力を強化し米国への過度の依存から脱却し、主体性を持っ
た自主防衛をすると共に、安保理が決議するまでの間、アジアで集団的自衛権の行使
も可能とすべく法整備をしておくべきである。
さもなくば、中国等の増長を許し、アジアの盟主足り得ない。
ただし、イラク戦争のような米国の戦争に自動参戦させられないように、憲法改正に
於いては国際貢献と集団的自衛権の行使を条文を変えて書き分けて置くと共に、集団
的自衛権の適用条件を明記して置くべきである。

核兵器に関しては、現状のNPT(核不拡散条約)体制は心許ないが、日本はこれを
遵守して核保有を放棄し、核への防御としては米国の核の傘とミサイル防衛の充実に
よるのが適当である。
さもなくば、世界の核拡散は更に進む事になり日本は倫理的に非難され、唯一の被爆
国という使い方によっては強力な切り札となり得る外交プロパティを失う。
一方同時に、 NPT体制の許す範囲で比較的短期間で核兵器に転用可能な原子力技
術とミサイルに転用可能なロケット技術を確保して置き、場合によっては核武装出来
るが敢えてそれをしないというスタンスを取るのが、現状最も国際的発言力を高め国
益に適うだろう。

米国が何時までも、またどんな条件でも日本に核の傘を提供する保障は無い。
また、スーツケースで持ち運べるような「使える核」は世界に拡散する方向にある。
国際機関による核管理の強化、核を無力化する監視・破壊システムの開発、核廃絶へ
の具体的道筋作りが今後の国際社会の課題である。

前述したように、日本はアジアの盟主を目指すべきだが、国連の強化に加えて、横の
連携、即ち東南アジア諸国に加えてイギリス、米国、オーストラリア等の海洋国家群
と結んで、中国、ロシア、大陸ヨーロッパ等の大陸国家を牽制する事も必要である。
古来、大陸国家は、海洋への出口を確保しようとして海洋国家と利益が対立する傾向
がある。
明から様な対立構造は、双方にとってマイナスだが、暗黙の牽制によって住み分けを
図るべきである。
日本の安全保障は、このようにアジアの連携、国連、海洋国家連合の3つによって担
保されるべきであろう。

以上縷縷述べてきたが、国際情勢は予測し難くまた理屈通りには進まないものであ
る。
特にたとえ大まかな傾向が予想できたとしても、事態の起こる時期や規模、前後関係
を予測する事はほぼ不可能である。
しかし、仮定を立てて基本戦略を練って置く事は国家にとって不可欠である。
事態が変われば、戦略を修正すればよい。
戦略無く行く事は、海図無き航海に等しく、流れに身を任せる主体制の欠如した態度
に他ならない。
戦後60年は米国依存でこれでも通用したが、歴史的に観れば異常な情況である。
日本は、経済規模、人口及び総合的な国力で大国であり、自立して戦略を携えて自国
の生存と繁栄を確保すると共に、周辺諸国や国際社会に対して応分の責任を果たす義
務がより一層高まろう。

                                   以上
佐藤 鴻全
==============================
果たして日本は法治国家か   
   
 「法務死」立法無視するな/不可解な首相ら「戦犯」発言
(社)日本国際青年文化協会会長 中條 高徳
全会一致で採決した「法務死」  世界日報掲載許可

 昭和二十八年、社会党右派の堤ツルヨ代議士の提案に始まって、与野党すべてが賛同し、
 戦犯として処刑された方々を「法務死」となし、その後五回にわたり国会で、遺族法、
 恩給法等を立法していった。

 そして現在でも、その時の法律に依って遺族年金が支払われ、恩給が支給されている。

 罪を犯すと恩給は停止される。今も支給されているという事はその時の立法された法律
 は生きているのだ。

 法治国家は法を遵守する心で保全される。

 法哲学の権威であった尾高朝雄氏(東大教授・当時)はその著「法哲学概論」(日本評
 論社刊)の中で、「正義と秩序とは、法が仕えるべき二つの根本理念である」と強調し
 ておられるし、また、「法がそれ自身正しい法であるためには、何よりもまず、立法の
 権力を国民の手に委ねることを要する。国民の総意によって、あるいは、国民の意志を
 代表する機関(国会、著者註)によって作られた法のみが、国家統治の方針を正当に定
 立することができる。

 しかも国民の意志に則って制定された法の原則を、厳正、的確に行政の上に実現して行
 くためには、一方では、国家の法を周密な成文法の体系に組織立てることが大切であり、
 (筆者註、昭和二十八年の諸法律の成文化)他方では、国家の機能を立法・行政・司法
 の三部に分掌せしめ、特に司法権の独立を確保することが必要である(筆者註、わが国
 は全くこの通り三権分立の体制)と論じられている。

「日本に戦犯いない」が正しい

 前述したように、昭和二十八年の国会で立法された法律は、正しい立法手続きを経て立
 法されたものであり、法概念で説く正義なのである。それを平成のいま、ましてや立法
 府の責任ある立場にある者が平然とそれを否定する発言をするなど絶対許されない。

 法の理念の一方の「秩序」の破壊を意味するからである。具体的に言えば、森岡正宏前
 衆院議員の「日本には戦犯はいない」が正しく、これを細田官房長官が否定するが如き
 は、如何なる根拠に基づいての発言なのか。

 筆者の尊敬していた後藤田正晴氏も東大法学部で尾高教授に学んだれっきとした法学徒
 ではなかったのか。

 靖国神社に詣でる小泉首相も、たかが(失礼)郵政法の立法が意の如くならなかったと
 言って国会を解散する挙にでながら、平気でA級戦犯を口にするのは昭和二十八年代の
 「法務死」立法を無視しているのか、それとも知らないのか。

 あげたら切りがないが、立法府にある者たちが、立法されている法律を遵守しないこと
 は法治国家として秩序崩壊であり絶対許すことが出来ない。法は根本理念である正義と
 秩序のどちらを欠いても、法たるの資格を喪失する。正しさを目ざさない法は法でない
 し、秩序を守りえない法も法たるに値しない。

 或る社会が或る時代に置かれている具体的な歴史的条件の下で何が最も正しいかを決定
 することは人々の判断をもってしては、しばしば不可能に近い。そこで民主国家は多数
 決の論理で「時の正義」を発見していく。

 この問題の発生も、韓国、中国から或る時、突然A級戦犯を激しく攻撃材料に使うよう
 になってきてからである。A級戦犯なる存在は極東軍事法廷で発生したものであり、両
 国は法律的に全く関係していなかった。昭和二十七年連合軍が占領を終わり、引き揚げ
 る時のサンフランシスコ条約十一条(この課題は次号で詳細に論ずる)の後半部分の規
 定に基づいて、戦犯を指定した国々と交渉を重ねて了解を得た上、わが国会で戦犯なる
 呼称をやめ「法務死」と呼び、恩給、遺族年金まで支払うよう堂々と立法されたもので
 あり、立法手続きになんらの欠格条項もない。

 近代諸国の例を見ると不磨の大典といわれる憲法ですら再々改正の手が打たれている。

 法は国民の幸せのために立法される。その法が存在することが、国民に不幸をもたらす
 場合は、憲法と雖(いえど)も改め変える方が国民にとって正義と思う。「時の正義」
 とは時の変化経過によって国民をめぐる与件が変わる。その与件の変化に適応する法体
 系を発見するのが立法府の重要な任務である。

立法府の筋を通さぬ発言慎め

 だから終戦後たどった昭和二十八年の数次にわたる立法を絶対だと言っているのではな
 い。

 中国、韓国には前述したように戦場にしたり精神的支配など謙虚な対応が必要ではある
 が無理難題には凛とした対応が必要である。

 しかし、どうしてもA級戦犯をわが国が認めない限り対中国対韓国の外交上の解決が絶
 対ないと信ずるならば(そのような事は絶対ありえない)昭和二十八年代の立法を廃案
 にする手続きをしてからでなければ、少なくとも立法府にある者はA級戦犯など一切口
 にしてはならない。司法にある者たちも、三権分立の立場から、後藤田、細田、小泉発
 言に対して、法秩序破壊だと注意する義務があるのではなかろうか。日本は果たして法
 治国家なのか。
     Kenzo Yamaoka
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外交 安保で首相に期待する   
   
 新政権は任重く、道遠し/靖国参拝と防衛基本法整備を
軍事評論家 竹田 五郎
自公調整に時間の余裕はない  世界日報掲載許可

 九月二十一日、小泉第三次内閣が発足した。第四十四回総選挙で自民党は単独でも過半
 数二百九十四を、自、公連立政権は衆議院の三分の二以上を占めた。選挙の争点は郵政
 民営化を旗印とし「官から民へ」との構造改革の賛否を問うものであった。選挙民は郵
 政改革の内容について十分に理解のうえ投票したとは思えない。従来の政治が変化する
 内外の情勢に対応する能力を欠き、現状に閉塞感を抱いていたため、総理の不退転の姿
 勢を通じて政治改革を期待した結果であろう。自民党圧勝により小泉政権の基盤は強化
 されたが、その責任はますます重く、前途は苦難の道である。

 本選挙が今後四年間の政治の行方を決めるだけに、重要な外交、安全保障、および年金、
 憲法、教育等の内政問題を無視できるものではない。各党の選挙公約も国政全般につい
 て一応は示しており、当然、それぞれには差異がある。総理はまずは最大の公約である
 郵政改革の実現を図るべきであろう。さらに、前述の重要諸問題を解決しなければなら
 ないが、自民党は参議院では依然として劣勢であるため、公明党の協力が不可欠である。
 長年、自公連立で政権を担当してはきたし、選挙公約によれば、政策について表面的に
 はそれほど大差はないように見える。しかし、底流にある政治姿勢、特に安全保障、靖
 国問題に関しては差異がある。その調整は容易ではなく、しかも内外の情勢は厳しく、
 そのための時間的余裕は多くはない。

 自民党は、今回の選挙で郵政改革反対派の切り捨ては非情との批判も受け、また結果的
 に有能な党友を失ったことも否定できない。

山積する内政、外交上の難問

 総理も自認されるように、郵政民営化を実現しても内政、外交ともに難問山積である。
 外交、防衛に限って一瞥(いちべつ)しても次のような問題に直面する。

 @外交 野党も日米関係の重要性を認めてはいるが、中、韓両国との改善をより強く主
 張しており、自民党内でさえも温度差がある。台湾海峡および朝鮮半島における情勢の
 緊迫化については先月も述べたが、日本の安全保障にとって日米同盟の重要性は益々増
 大し、その強化が緊要であり、早急に解決すべき懸案は多い。自衛隊の海外派遣につい
 ては、十一月一日、テロ対策特別措置法(インド洋における米英等の艦艇に対する給油
 活動)、続いて十二月十四日、イラク派遣法が期限切れとなる。在日米軍基地の再編問
 題、特に沖縄基地や米軍駐留費負担に関する特別協定の改定などは内政と密接に絡み、
 複雑であり、対応を誤れば米国の対日信頼低下は必至である。それにつけても、民主党
 が選挙公約として十二月までに自衛隊をイラクから撤退すると決めたことは、あまりに
 も実情を知らず、世論への安易な迎合としか思えない。

 六カ国協議も一応の成果を上げたようだが、北朝鮮の核装備廃絶の検証、さらにミサイ
 ル開発、拉致問題の解決も急を要する。靖国神社参拝は対中・韓国外交の重要問題とな
 っているが、この不当な干渉に屈して中止すれば、両国との関係は一時的には改善され
 よう。しかし、将来に禍根を残すのみならず、公約違反として多くの国民の期待を裏切
 り、自国の伝統、歴史を汚し、国民の誇りを失わせ、ひいては愛国心の劣化をも来すで
 あろう。総理は秋季例大祭には毅然として参拝し、先例を残すべきである。

 A安全保障 わが国の安全保障体制は脆弱である。最近の読売新聞世論調査でも外敵の
 侵略に抗戦する者は17%と防衛意欲は低い。総理は、戦後、武力行使を拒否してきた
 ことを他国に誇るだけでなく、むしろ、日本が平和を維持できたのは米国の抑止力、自
 衛隊の存在によることを国民に強調し、自国の防衛および世界の平和と安全に積極的に
 協力するため、義勇奉公の必要性を訴えるべきである。

自衛隊の武器使用制限見直せ

 有事法制も一応整備されたが、国民防護法の細部や、自衛隊の行動を規制するいわゆる
 防衛基本法等は未整備である。自公民三党は、憲法改正について必要な国民投票法の整
 備を進めようとしているが、憲法改正は当面望めまい。ともあれ集団的自衛権および武
 力の行使に関する政府憲法解釈の是正を急ぐべきである。現状では、周辺事態において、
 米軍が死闘を展開しているのに、同盟国日本の自衛隊は安全地域での限定された後方支
 援にとどめ、あるいは領域保全、対テロ活動、PKO等に参加をしても、その武器使用
 を「警職法」以下に厳しく制限せざるを得ない。幸いに前原民主党新代表は理解があり、
 改善の好機である。

 国家財政は七百九十五兆円の負債を抱える窮状にある。が、国民の社会保障に対する要
 望に応えようとして、安易な防衛費削減は避けるべきである。

 改革には痛みを伴い、常に反対はある。強力であればあるほど批判には謙虚に対応すべ
 きだが、民主政治は多数決を原則とする。既に「右傾化」「独裁」などの無責任な批判
 も散見されるが、総理は、国民の期待に応えるべく、戦後政治からの脱却を目指し、強
 力なリーダーシップを発揮し、改革を推進されんことを切望する。
       Kenzo Yamaoka


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