2143.イラク戦争の出口



英米が共同でイラク戦争を仕掛けたことは知られている。この2国
はどうイラクから撤退しようとしているのかを検討しよう。Fより

英軍特殊部隊隊員2名が、イラクのシーア派をターゲットにした爆
弾テロを仕掛けたとして、イラク警察に逮捕された。それを英軍が
拘置所に押し入って奪還するという荒業に出て、その英国のテロ全
容が世界に知れ渡ってしまった。英国は大失敗を犯した。

この裏の戦略的な意味を解説する記事が日本や米英の新聞に出ない。
このコラムでは善悪を論議したいと思っていない。しかし、その意
味を明確化しないといけないと思う。

そして、米世論がブッシュ政権のイラク戦争政策を否定している現
状から米国務長官がイラク撤退の作戦を検討している。その機会と
して、イラク新憲法制定が行われることを利用しようとしている。

このような事実を集めると、英米の作戦が見えてくる。それを検討
しよう。

このためには、イラク戦争の目的は何かを明らかにしておく必要が
ある。英米ともに石油の確保が第一の目的で、英国は石油の出る南
部シーア派地域を支配して、米国は石油の出る北部クルド人地域と
石油が出ないスンニ派地域を支配している。

イラクが連邦制度になることは民族や宗教が違うことから見通しが
つく。そして、米国はクルド人地域は親米派が多数を占めているた
めに、確実に石油が手に入ることになる。スンニ地域は石油が出な
いので、反感を買うような民間人を多数殺す過激な戦闘ができる。
英国はシーア派地域であり、このシーア派を親英派にする必要があ
り、比較的紳士的な軍事支配をしていた。

しかし、反米英派のイラクのシーア派とスンニ派が結託し、闘争に
持ち込まれると親英派がシーア派地域にいなくなり、英国のシーア
派地域の石油支配が無理になる。そして、反英米派が優勢になると
イランの影響力が大きくなり、この戦争の目的が英国では達成でき
ないことになる。英国でも恐らく10兆円以上のコストをこの戦争
で掛けているはずであるから、そのコストに見合う石油が欲しいは
ずである。

このため、米国特殊部隊ではなく、英国特殊部隊がシーア派とスン
ニ派分離のための爆弾テロを仕掛けたのでしょうね。最近あったシ
ーア派をターゲットにした多数の爆弾テロは恐らく、この英国軍2
名の仕業であった可能性が高い。

このような見方をすると、戦争での利益を求める英国が、石油確保
という目的を実現できない戦争をするはずがないので、シーア派地
域での親英派がいなくなったことで、英国でも早期撤退という世論
が起きるのはしかたがないことである。英国特殊部隊の爆弾テロ活
動が事前にイスラムテロリストに知られて、ロンドン地下鉄の同時
爆発テロに結びついた可能性もあるように感じる。

このため、そのテロ時点から英国の世論がイラク撤退へと傾いてい
る。

米国はクルド人地域に基地を設けて、そのクルド人地域を守ること
でイラク最大のキルクーク油田が手に入るために、英国のような完
全撤退は必要が無い。しかし、クルド人の部隊がトルコやイランの
クルド人独立を支援することになると、トルコは親米国家であり、
米国としては悩ましい問題になるはずである。

どちらにしても、英国はイラク戦争で獲る物がない状態になったこ
とは確かである。中国はこのシーア派地域の石油を狙って、イラン
に近づくことになる。さあ、第1幕が終わり、第2幕が立ち上がる
ことになる。サマワの自衛隊も英国が引き上げると同時に引き上げ
るしかない。そして、日本は幕外から見物するしかないですね。
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米国務長官がイラク撤退への作戦を検討 人的損失増大に懸念深め
る

 【東京13日=齊藤力二朗】コンドリーザ・ライス米国務長官は
約1カ月前、自身の顧問団と、大きな危機に見舞われた時の知恵袋
になってきた一部の米国人専門家たちを会議に招いた。議題は、イ
ラクの現状分析とその泥沼からの脱出法だ。パリ在住で出版社を経
営するレバノン人の政治論客アリー・ナーフィズ・マルアビー氏が
12日付のバスラ・ネットで会議の内容などを報告した。 

URL http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200510132035194
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<米世論調査>「悪い方向」66%で最高、保守層の支持低下

 【ワシントン及川正也】AP通信が7日発表した世論調査による
と、米国が「良い方向」に向かっていると答えた人は28%とこの
1年では最低となる一方、「悪い方向」と回答したのは66%で最
高となった。中でもキリスト教右派や共和党支持の女性、南部居住
者らブッシュ政権を支える最も保守的とされる層の支持が昨年11
月と比べ30〜26ポイントも低下した。
 同通信は政権からの「保守派離れ」について、同派内に批判があ
るハリエット・マイアーズ氏の最高裁判事指名やハリケーン災害へ
の巨額財政拠出などが背景にあると指摘。「保守派がブッシュ大統
領に失望している」と分析している。
 一方、ブッシュ大統領の支持率は9月と同じ39%にとどまる一
方、不支持率も前月(59%)と同水準の58%と高く、ブッシュ
政権に対する厳しい世論が改めて浮き彫りとなった。
(毎日新聞) - 10月8日10時49分
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米、スンニ派排除懸念 イラク新憲法、15日に国民投票(ASAHI)
2005年10月14日22時46分

 15日に実施されるイラク憲法案の国民投票を前に、米国がスン
ニ派政党に投票への参加を促す一方、スンニ派地域で米軍による武
装勢力の掃討を強めるといった、硬軟両面の作戦を進めている。こ
れを機にスンニ派の市民と武装勢力を切り離し、投票後の治安を安
定させようと狙ってのことだ。ただ、結果次第では逆効果となる可
能性も指摘されている。 

 米戦略国際問題研究所(CSIS)のコーデスマン研究員ら軍事
専門家によると、武装勢力は推定1万5千〜6万人。イラク・アル
カイダ機構など外国人はうち1割程度で、大半は旧バース党関係者
らイラク人とみる。中部スンニ派地域を拠点にしているが、地域の
住民が必ずしも武装勢力を支持しているわけではない。 

 国民投票の結果について、米ブッシュ政権は(1)スンニ派を含
む圧倒的多数で承認(2)スンニ派の反対を押し切って承認(3)
スンニ派の反対で否決――のシナリオを想定する。 

 スンニ派の有力政党「イラク・イスラム党」が賛成へと転じたこ
とから、同政権は「(1)の可能性が高まりつつある」との楽観的
な見通しに立つ。もっとも、憲法案は自治の拡大などシーア派やク
ルド人勢力の要求に基づく連邦制を盛り込んでおり、スンニ派に魅
力的な内容ではないのが現実だ。スンニ派の投票率が上がっても憲
法案への支持が増えるとは限らず、同政権の思惑通りに進むかどう
か、不透明だ。 

 (1)のシナリオが成立しない場合、ブッシュ政権に近い保守系
シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所」
(AEI)のマイケル・ルービン研究員は「憲法案否決が望ましい
」と(3)に言及した。「憲法案が通るか通らないかが問題ではな
い」という。 

 憲法案が否決されれば、12月に再び国民議会選挙が実施され、
新たな憲法草案の起草も求められる。手続き的には振り出しに戻る
が、逆にスンニ派の政治参加が勢いづくことにもなり、米国として
は「健全な民主主義が育っている」と主張できる。 

 米側が「最悪のシナリオ」と考えるのが(2)のケース。スンニ
派各州で「6割程度の反対を集めたものの承認される」といった場
合だ。スンニ派の投票が「死票」になるため、住民の間で「投票し
ても意味がない」とのあきらめ感が広がり、武装勢力との連携を促
しかねないとみられている。 
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イラク拘置施設突入 怒るバスラ 荒れる治安─「東京新聞」
市民が大規模デモ 英軍協力拒否決議(9/23)

  サマワの陸自に影響も

 【カイロ=萩文明】イラク南部バスラで英軍が拘置施設に突入し
、英兵2人を奪還した事件で、現地の反英感情が急速に高まってい
る。地元行政当局は、英軍への協力拒否を決議した。「比較的安全
」とされたバスラの治安が崩れれば、同じ南部で活動する日本の陸
上自衛隊にも影響を与えかねない。

 バスラでは21日、警官が先導して、事件に対する大規模な抗議
デモが繰り広げられた。武装した市民らが英軍の「侵略」を非難。
奪還された英兵を「テロリスト」として、イラクの法廷で裁くよう
求めた。24日にも抗議行動が予定されており、英軍と衝突する懸
念もある。

 さらにバスラ州評議会は緊急会合で、英政府の公的謝罪と、計5
人となったイラク人犠牲者の遺族への補償を要求。今後、英軍への
協力を拒否することを全会一致で決めた。ワイリ知事は、AP通信
に対し「英軍は野蛮な違法行為を中止すべきだ。要求が受け入れら
れるまで協力を拒む」と言明した。

 南部バスラは、旧フセイン政権に抑圧されたシーア派が多く、英
軍は米軍と違い、住民や行政当局と比較的良好な関係を築いてきた。
それだけに協力拒否は、活動に大きな支障を与えかねない。陸自が
展開するサマワはバスラの北西約250キロにあり、英軍が治安維
持を担当している。

 また、英軍は突入正当化の理由として「拘束された兵士が民兵に
引き渡された」と指摘。しかし、ジャビル内相は「2人は施設内に
いた」と話し、突入は不確実な「うわさ」に惑わされた結果と批判
した。ワイリ知事は「突入の情報を得たため、民兵を兼ねた警官が
2人を移送した」と説明。英軍側に非があると強調した。

 イラク移行政府は英軍との関係を重視し、事態悪化を避けたい意
向だ。英国内では、民兵が支配するイラク治安当局への今後の権限
移譲を不安視する声も強まっている。

http://www.chunichi.co.jp/iraq/050923T1015001.html


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