2135.日米安保の形について



徐々に日米安保の姿が見え始めた。その検討。   Fより

米国のイラク戦争経費は毎月57億ドルで年間684億ドルで7兆
円になる。軍事予算は年間約20兆円になるはず。日本の国家予算
は、国債費を除くと32兆円程度であり、日本の国家予算の2/3
を米国は軍事費に当てていることが分かる。

軍事予算は国家の消費経済であり、新しい生産設備や研究という国
家経済の生産的な方面ではないために、米国自体の国力も弱めてい
る。この結果、航空機ではEUのエアバス社に主導権を取られ、自
動車では日本のトヨタ社に主導権を取られている。電子部品では台
湾や中国に取られ、米国が目指す次の経済が見えないようだ。

このような状態で、米国が誇れるのは軍事産業で、その舞台が東ア
ジアの冷戦構造とテロ戦争になっている。東アジアの冷戦構造は日
中の亀裂であろう。しかし、その冷戦には米国はバランスを取って
いる。米民主党は中国に味方して、米共和党は日本に肩入れすると
いう構造になっている。米国全体としては中国とは完全な敵対関係
になっていない。米民主党は経済中心、米共和党は安保中心という
政策面でも違う色を帯びている。基本は中国で米国企業は大きく儲
けていることによる。というより中国政府が米国企業を優遇してい
る。

もう1つ、米国の財政赤字は中国が外貨準備高を積み増して、ドル
暴落しないようにしている。ここにも米国の弱さがある。そして、
とうとう中国が日本を外貨準備高で抜かした。

民主党は米金融機関やグローバル企業が支援するし、米共和党は石
油産業と軍事産業、国内産業が支援している。このため、中国の見
方が大きく違う。国務省と国防省の見解の相違も軍事産業に力点を
置くか、民間産業に力点を置くかで中国に対する見方が変化するよ
うだ。軍事関係者は将来、米中は激突するとしているが、米民間人
は今、中国で儲けているために中国に寛容である。

親共和党の石油企業がクルド人地域の石油産出権を持っている。
このクルド地域を完全に親米で掌握する必要がある。ライス国務長
官のようなリアリストはクルド人の自治が確立してイラク戦争が終
結しない今の段階で中国を敵にするようなことをしない。徐々に中
国を民主化する方向に持っていくことを考える。今優先しているの
は東アジアより石油のある中東やカピス海沿岸地域である。その石
油地域に中国が手を出すと中米の紛争は拡大する。

このような米国と日本の日米安保が新しくなるが、米国はアジアや
欧州から軍事力を削減する必要がある。逆に日本は対中国への警戒
感から軍事力の使用範囲を広げる必要がある。ここに日米の利害が
一致するポイントがある。米国は東アジアから手を引かない代わり
に、日本が世界で米軍の代わりに手を貸すということである。交換
条件が示され、相互対等の任務が課せられることになる。兵器開発
でも日米は対等の条件になる。その分開発費負担が日本にのしかか
ってくる。

これは本当の集団安保体制で日米が対等な関係で任務を行い、それ
ぞれが得た情報を一元的に管理し、指令する統合司令部ができるこ
とで、東アジアの安全保障を担保することになるのでしょうね。

これの意味する所は、日本が米国に変わって東アジアの安全保障を
見ていくことになる第一歩ではないかと感じる。その意味では日本
国民にも覚悟が必要になっている。普通の国家として、自分の身は
自分で守ることである。それと今以上に軍事関係費が必要になる。
その分、日本の国際政治上でも立場が強くなる。

国連経費は中国以下にするべきである。その分を軍事費に積みまし
たほうがいい。金と権利はバランスさせるべきである。安保常任理
事国より多くの金は出してはいけない。外交と軍事は国を守る2つ
の手段であり、その効率を重視するべきなのである。日本の赤字財
政下ではムダな経費を出す余裕は無い。

しかし、日米安保で気がかりなのは、米国の政権が共和党から民主
党になると下記記事にあるようなエドワード・リンカーン氏のよう
な反日的な人物がアジア担当になり、親中国になることも想定でき
ることである。経済的な利益を考えると日本より中国の方が良いと
なる可能性がある。この時、日本は米国と袂を分かれることになる
可能性も少しではあるがあると見ている。民主党のヒラリー・クリ
ントン政権が3年後になる可能性も高いためで、その時までに中国
と米国が大きな紛争を起こし、米人の親中派が政権内部に参加でき
なくなることを期待したい。

1460.シーパワーとランドパワー
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k5/151201.htm
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自衛隊、対テロ・災害復興支援で米軍任務の一部代替へ
 【ワシントン=秋田浩之】日米が在日米軍再編協議で検討してい
る米軍と自衛隊の新たな「役割分担」の概要が明らかになった。世
界的な対テロ戦や大災害、紛争後の復興支援で自衛隊の役割を大幅
に拡充し、情報収集や人員・物資の輸送などで米軍の任務を一部肩
代わりする。米側は日本に柔軟な対応を求めており、自衛隊を円滑
に海外派遣できるようにするための一般法(恒久法)の整備をめぐ
る論議が加速しそうだ。

 米国防総省高官と日本政府当局者が明らかにした。日米が月内に
も取りまとめる在日米軍再編の中間報告に盛り込み、個別の基地再
編策と合わせ来年春までに最終合意する運びだ。 (07:02) 
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日米関係:蜜月揺らぎ…日本外しの再来警戒も [毎日新聞]

 良好な「小泉−ブッシュ」関係を軸にした日米政府間の蜜月が揺
らいでいる。在日米軍再編協議が普天間飛行場の移設先をめぐって
対立し、米国産牛肉の輸入再開問題と並ぶ日米間の重大懸案に浮上
した。米政府内には日本へのいら立ちが募り、ラムズフェルド国防
長官が今月後半に中韓両国を訪問する際の来日を見送る事態に発展
。中国重視路線をとったクリントン前政権の「ジャパン・パッシン
グ(日本外し)」が苦い記憶として残る日本政府・与党内には懸念
の声も出始めた。

 「日本政府でものを決めているのはだれなんだ」。政府内の意見
対立や地元調整の難航で再編協議が停滞していた8月中旬、永田町
をローレス国防副次官がひそかに訪れ、不満をぶちまけた。応対し
た自民党幹部は「首相官邸だ」と答えるしかなかった。

 衆院選で自民党が圧勝し、政権基盤を固めた小泉純一郎首相が米
軍再編や牛肉問題で指導力を発揮することへの期待感が米側に高ま
った。しかし、9月下旬にワシントンで行われた審議官級協議で日
本側は地元の同意を得ないまま普天間飛行場を米軍キャンプ・シュ
ワブ内に移設する案を提示。反発した米側は、再編協議の本来の目
的だった自衛隊と米軍の役割分担強化に対する小泉政権の姿勢にも
疑念を呈した。

 ラムズフェルド長官の訪日見送りについて6日夜、小泉首相は記
者団に「ラムズフェルドさんの都合じゃないですか」と語るにとど
めたが、米政府内に芽生えた対日不信が見送りにつながったといえ
そうだ。

 日米のぎくしゃくぶりと対照的に、ラムズフェルド長官が国防長
官就任後、初めて訪中するのに象徴されるように、最近は米国の中
国重視路線が目立つ。ゼーリック国務副長官は9月21日にニュー
ヨークで行った講演で、中国の台頭を警戒するのでなく、国際シス
テムに責任を持って参画するよう促すべきだと、対中協力拡大の姿
勢を強調。中国の王毅駐日大使は同月30日の都内での講演で「真
っ正面から中国の台頭を受け止めた印象だ」とこの対中政策演説を
高く評価してみせた。

 米通商代表部(USTR)代表などを務めたゼーリック氏は対日
強硬論者とみられ、知日派のアーミテージ前副長官の後任に就任し
た当初から日本側には「米政権の心変わり」を心配する見方がくす
ぶってきた。

 現時点では「個別の問題はあっても日米関係全体は良好」(外務
省幹部)との見方が日本政府内の大勢。ただ、11月中旬に予定さ
れているブッシュ大統領の来日までに懸案を解決しなければならな
いとの危機感は日増しに強まっている。
【平田崇浩】
毎日新聞 2005年10月6日 21時28分
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中国と香港の合計が日本抜く 6月末外貨準備(共同)

 財務省が7日発表した主要国外貨準備高によると、国際通貨基金
(IMF)公表の6月末の国際比較ベースで、中国と香港の合計が
8379億ドルとなり、日本(8340億ドル)を抜いて世界1位
となったことが分かった。財務省によると1999年10月以降、
日本は首位。中国と香港の合計が日本を抜いたのは初めてとみられ
る。これ以前の国際比較はIMFなどの統計が明確でないため不明。

 中国当局が人民元レート維持のため、頻繁にドル買いの市場介入
した結果を反映したもようだ。
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日中険悪化、責任は日本 クリントン政権時の対日要職経験者が見
解

領海侵犯…公表して挑発した/ガス田…控えめに対応せよ/暴力デ
モ…和解的態度が欠落

 【ワシントン=古森義久】日中関係の悪化は日本側の挑発が原因
だとの見解がクリントン前米民主党政権の対日関係の要職にあった
学者から三十日、表明された。
 米国の国防大学と大手研究機関のAEIが共催した「アジアにお
ける中国」というタイトルのセミナーでパネリストとして意見を発
表した外交評議会の上級研究員、エドワード・リンカーン氏は「東
アジア共同体」への障壁の一つとして日中関係の悪化を挙げ、原因
について「ほとんどが日本側によって取られた挑発行為による」と
述べた。
 リンカーン氏は挑発の実例として、「小泉首相の靖国神社参拝と
右翼の歴史教科書の採択」を挙げ、ここ一年半ほど日本側が中国側
に明確に反論をするようになったことが、「中国を悪者にする言辞
」だと指摘した。
 質疑応答で、「中国側の潜水艦の日本領海侵入、東シナ海の紛争
海域でのガス田の一方的開発、日本大使館などを破壊した反日暴力
デモなどは挑発ではないのか」という質問に対し、同氏は「潜水艦
の領海侵入を日本政府は公表すべきでなかった」と述べ、情報公表
が中国への挑発となったという見解を示した。
 同氏は中国のガス田開発にも日本側はもっと控えめな態度で応じ
るべきだと述べ、反日暴力デモについては、「中国が自国への挑発
とみなす外国の行動にはあの種のデモで対応することはすでに分か
っていたのだから、日本側はデモの前からもっと和解的な態度をみ
せるべきだった」と答え、日中関係の悪化や摩擦は事実上、みな日
本側の「挑発」に原因があるとする見方を繰り返した。
 同氏はクリントン政権時代に三年間ほどモンデール駐日米大使の
特別補佐官として勤務した民主党リベラル派。リベラル派には、中
国側の日本非難をすべて「靖国」や「教科書」のせいにする傾向が
強く、中国共産党の統治の正当性誇示のための反日宣伝が原因だと
するブッシュ政権寄りの識者たちとは激しいコントラストを描いて
いる。
(産経新聞) - 10月2日2時40分更新
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普天間移設、辺野古沖縮小を本格検討 シュワブ案困難視(ASAHI)
2005年10月08日06時01分

 在日米軍の再編協議で最大の焦点となっている海兵隊普天間飛行
場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、防衛庁はこれまで主張してき
たキャンプ・シュワブ(同県名護市など)の陸上部分に代替施設を
建設する「シュワブ陸上案」に固執せず、米国側が推す「辺野古沖
縮小案」について本格的な検討に入る方針を固めた。同庁が従来の
姿勢を転じたのは、「陸上案」に反発する米側との対立が深刻化し
、同案の実現は困難との見方が同庁内でも強まったためだ。 

 政府が「辺野古沖縮小案」の容認を決めれば、普天間移設は決着
に向け大きく動き出す。ただ、同庁内では当面の間は「陸上案」を
断念せず、移設先の決定を先送りする考えもある。 

 「辺野古沖縮小案」は、名護市辺野古沖の海上に長さ2500メ
ートルの軍民共用空港を建設する現行の計画を、1500メートル
に縮小して沿岸のリーフ内にヘリポートを造る案で、地元の経済人
らが作成した。名護市の岸本建男市長も容認する姿勢を示している。 

 米国側は地元の支持があるほか、事故が起きても住民に被害を与
える恐れが少ないため「実現可能性が高い」(国防総省高官)と見
ていた。 

 これに対し、防衛庁は海上で建設に入れば、(1)環境への影響
が懸念される(2)反対派による妨害行為を抑えにくい――などと
理由を挙げ、陸上案が望ましいとの考えを米側に繰り返し伝えた。 

 しかし、9月中旬に東京で行われた大野防衛庁長官とローレス米
国防副次官との会談で、米側は建設予定地内にある実弾射撃訓練場
での訓練が制約を受けるなどとして同案を拒否。その後の日米協議
でも米側は譲る姿勢を見せず、ラムズフェルド米国防長官の訪日も
中止されるなど、日米の対立が深刻化している。 

 防衛庁では「陸上案が最善」との基本的立場は変えず、来週予定
しているローレス副次官との会談でも、さらに理解を求める方向だ。
だが、同庁内でも陸上案を困難視する見方が強まり、海上で建設す
る際の反対運動への対処や環境破壊の防止策を考慮しながら「辺野
古沖縮小案」も並行して検討することにした。 

 大野長官は5日、防衛庁や制服組幹部らで構成する「米軍再編検
討チーム」の立ち上げを指示。地元調整にあたる防衛施設庁も交え
情報を共有する態勢をつくり、環境への影響やコスト、地元の意向
などを総合的に見極める作業に着手する。 

 ただ、同庁は移設先の決定には時間が必要だとしており、4日に
訪米した大古和雄防衛局長も「普天間問題は今後、4カ月間に集中
的に議論して結論を得たい」と米側に打診した。庁内には、今月29
日にも外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラ
ス2)を開き、移設先を明記しないまま、再編全体についての「中
間報告」をまとめることを模索する動きもある。 

 これに対し米側は「普天間移設先が決まらないまま中間報告を出
すことはあり得ない」としており、早期に結論を出すよう日本側に
促している。 
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米のイラク・アフガン戦費、2010年までに5700億ドル・議会試算
(nikkei)

 米同時テロ以降に米政府がアフガニスタンとイラクでの軍事作戦
に投じる費用が、2010年まで米軍が駐留を継続した場合に総額で5700
億ドルにのぼる可能性があるとの試算を、米議会の調査部門がまと
めた。イラク駐留米軍の撤退時期とも絡んで議論を呼びそうだ。

 現在のイラク駐留経費は月間で59億ドルに達し、前年度に比べ約
2割膨らんでいるという。装備調達費などが増えたためとみられてい
る。

 01年の同時テロから05会計年度までに米政府がイラクとアフガニ
スタンの軍事作戦や米軍基地の警備費などに投じた費用は合計3110
億ドル。今後5年間で2590億ドルがさらに必要になる計算だ。
(ワシントン=加藤秀央) (23:56) 
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ミサイル先端部分は日本 米、独自の分離技術評価

【ワシントン21日共同】日米両政府は次世代ミサイル防衛の海上
配備型迎撃ミサイル(SM3)の共同開発で、空気の摩擦熱から赤
外線センサーなどを保護するミサイル先端部分の「ノーズコーン」
と呼ばれる覆いについて、独自技術を持つ日本が開発することで合
意する見通しとなった。ノーズコーンは迎撃の最終段階で外れる必
要があり、米側が日本の分離技術を評価した。日米関係筋が21日
明らかにした。
 日本の独自技術が採用されることは、北朝鮮や中国を刺激する可
能性があるほか、共同開発した次世代SM3の第三国への供与につ
いても、武器輸出三原則に照らし今後議論を呼びそうだ。
(共同通信)
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日米同盟の課題   
  
 包括的な舵取りが必要/「郵政民営化」に落とし穴も
 日米関係を基軸とする小泉首相の外交姿勢は正しい。ただ、二国間関係は外交・安保に
 とどまらず、通商問題などもかかわっている。従って、日米同盟関係を強化し安定化さ
 せるためには、国内政局に対する以上に、首相の力量が問われよう。
 「自由民主」(同)の論壇で森本敏・拓殖大研究所長は「国益や外交とは本来見えにく
 いものであり、他方、一度失ったら取り返しがつかないものでもある。それを国家の利
 益という観点から追求するためにこそ、政治家がいるのである」と指摘。その上で、小
 泉新政権が対処すべき日米関係の七つの懸案に関し、見通しを含めて論じている。

 それは、(1)テロ特別措置法改正(2)イラク特別措置法に基づく自衛隊の活動(3)
 米軍再編(4)日米地位協定に関する特別協定の改正(5)北朝鮮の核問題(6)対中
 政策(7)国連安保理問題――だ。

 森本氏はそれぞれの課題を挙げ、「難しい問題を抱える日米関係を良好なものにするた
 めあらゆるレベルで協議を緊密化することが緊急の課題である」と提案している。それ
 はそれでよい。日本もアジアなど対外関係を築くには、米国との協調が何よりも大切だ
 からだ。

 ただ、森本氏のいう「日米関係を健全な状態に維持する」ためには、通商・経済問題で
 も十分な意思疎通を図り、米国の主張を鵜呑(うの)みにするような姿勢は避けねばな
 らない。

 例えば、小泉首相にとっての最大のテーマである郵政民営化にしても、懸念材料がある。
 簡易保険や郵便事業に集まる三百四十兆円に対し、米政府・業界が狙いを定めているの
 は間違いない。日本側が、この点で十数回も米側の“陳情”を受け、昨年九月の民営化
 の政府基本方針を一部修正し、一方的に閣議決定した背景にも、その一カ月前の日米保
 険協定に基づく東京協議があったといわれる。

 かつて米大手投資会社でハゲタカファンドといわれるリップルウッド社が、八兆円近い
 公的資金を投入して不良債権を処理した破綻銀行・長期信用銀行を十億円で買収し、新
 生銀行として再スタートさせ、二千億円以上のキャピタルゲイン(資産価格の値上がり
 による利益)を得た。

 米企業だけでなく、中国も国策として外国企業の買収に乗り出しているが、民営化され
 た郵貯と簡保の会社の経営が悪化した際、米中の外資などによる乗っ取りを防ぐ策を竹
 中郵政担当相は提示していない。長銀の二の舞は絶対に避けねばならない。

 対米関係を良好に維持するためには、外交・安保政策で共同歩調を取ることが何より大
 切だが、経済関係でも、歯止めを利かせ信頼関係を壊すことのない賢明な政策が求めら
 れる。その抑制策を取っていないことも含め、郵政民営化策には疑惑や欠点が多い。二
 国間関係の将来にもかかわる重大な落とし穴が潜んでいると言わざるを得ない。

 前通常国会に提出されたのと同じ内容の郵政法案が提出され審議がスタートしたが、修
 正しない理由が、首相の個人的な“意地”や米国への“義理”であってはならない。国
 益がベースにあるべきだ。国益は「一度失ったら取り返しがつかないもの」(森本氏)
 だからである。政治評論家 山岡 尽忠  世界日報掲載許可

     Kenzo Yamaoka
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国防長官来日見送り 日米同盟に陰り 「普天間」停滞 首相丸投げ状態   
   
  日米両政府が今月下旬で調整していたラムズフェルド米国防長官の訪日が見送られた。
 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題が暗礁に乗り上げていることへの
 「不満の表れ」(政府筋)とみられる。十一月中旬で調整されている日米首脳会談への
 影響が懸念されるだけでなく、緊密な同盟関係に陰りがみえている。
 ◆強い危機感

 「日米双方が好機を逃したくないと考えていると信じるが、障害に直面している」

 米国のローレス国防副次官は九月下旬の上院外交委員会東アジア太平洋小委員会の公聴
 会でこう明言し、日本側の対応に強い不満を表明した。そして、ラムズフェルド国防長
 官の来日見送り−。

 外務省は米側の対応について「日本が基地負担の軽減にばかり固執していることにいら
 だっている」(幹部)と解説しつつ、「在日米軍の再編協議だけでなく、今後の日米関
 係そのものに大きな影響が出かねない」と危機感を強めている。

 日米両政府は当初、十月中に基地再編案を盛り込んだ「中間報告」を策定する方針だっ
 たが、普天間問題で日米双方の主張が平行線をたどり、膠着(こうちゃく)状態に。日
 本側が名護市辺野古沖での現行計画を見直し、米軍キャンプ・シュワブ(名護市など)
 内の代替施設建設を主張しているのに対し、米側はシュワブ寄りの浅瀬に施設を建設す
 ることを求めているためだ。

 普天間問題の前面に立つ防衛庁は、十月二十九日にワシントンで外務・防衛担当閣僚に
 よる日米安全保障協議委員会(2プラス2)の開催に何とかこぎつけ、普天間を除外し
 たまま中間報告で早期に合意したいとの期待感が強い。

 だが、普天間飛行場の移設問題は一部地元の反対運動や首相自身が今年三月に計画見直
 しを表明したため、外務・防衛両当局も「うかつには扱えない」と及び腰だ。

 外務省は在日米軍再編問題が、地球規模の米軍の変革・再編(トランスフォーメーショ
 ン)の一環であることを考慮。「米案を軸に検討を進めた方がいい」(別の幹部)との
 考えに傾いており、「地元の説得も含めて、防衛庁の対応を見守った方が得策だ」(幹
 部)と後ろ向きの声が出ている。

 普天間問題が決着しなければ2プラス2の開催は実現が難しく、「そうなれば、十一月
 十六日で調整中の首脳会談も流れる」(政府関係者)可能性が出ている。

 ◆司令塔不在

 「米国がかなりキレているのに、それが官邸にきちんと伝わっていないようだ。官邸で
 は、だれも真剣に取り組んでいないのではないか」

 自民党の閣僚経験者は六日、司令塔不在の現状をこう嘆いた。2プラス2の開催を急ぐ
 防衛庁内にも「普天間はもう、政治決着しかない」(幹部)と、首相の高度な政治決断
 への期待感が高まっている。

 在日米軍基地問題に関する基本方針は「地元の基地負担軽減」と「抑止力の維持」の二
 本柱。だが、東シナ海で中国海軍がガス田採掘をめぐって軍事的な示威行動をして緊張
 感が高まる中、日米関係がぎくしゃくし始めたことで、負担軽減どころか抑止力の維持
 も危うくなりかねない。

 この問題に関する小泉首相の発言は少なく、今月三日、「地元と全体の状況を考えなが
 ら判断しなければいけない」と述べた程度。外務・防衛の担当者らにも「『負担軽減と
 抑止力維持だぞ』としか言わない」(政府関係者)と丸投げ状態だ。

 こうした首相の対応については「大統領との個人的な信頼関係にあぐらをかいている」
 (別の閣僚経験者)との批判がある。また、「衆院選前まで小泉首相の関心は郵政民営
 化だけ」(政府関係者)との政治姿勢も、外務・防衛当局や沖縄県に微妙に影響したよ
 うだ。

 日本の安全に直結する東アジアの国際情勢は中国の軍拡や北朝鮮、ロシアの動向など、
 不透明感が漂っている。それだけに、国家の専管事項である外交、安全保障問題での首
 相の決断は不可欠だが、自民党内には「首相は任期中の決着をあきらめたのではないか」
 との悲観的な見方もある。

 一方、政府を支える立場の自民党では、日米安保・基地再編合同調査会の額賀福志郎座
 長が中心となり再編案を策定する方針。かつては小渕恵三元首相や梶山静六元官房長官
 らが沖縄問題に尽力したが、自民党の旧橋本派の政治力の低下が著しく、額賀氏らが影
 響力を行使できるか未知数だ。産経新聞
       Kenzo Yamaoka
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米国が陸上案に反対−普天間移設問題   
   
 抑止力維持が大前提 
 日本政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として、米軍キャンプ・シュ
 ワブ(同県名護市など)陸上を提案しているが、米側は訓練に支障が出るとの理由で反
 対している。米政府がこうした態度を示す背景には、中国の急速な軍拡やテロの脅威な
 どアジアの安保情勢が激変する中、基地機能の低下を招く提案は簡単には受け入れられ
 ないとの判断があるものとみられる。
(ワシントン・早川俊行・世界日報掲載許可) 
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 日本政府がシュワブ陸上案を新たに提示したのは、(1)シュワブ沖合を埋め立てる現
 行計画に比べ、工期、工費を大幅に短縮できる(2)埋め立てによる環境破壊がなく、
 また既存施設への統合であるため、地元の負担軽減感が大きい――などの理由からだ。
 これに対し、米側は陸上案を「受け入れられない」(ローレス国防副次官)と反発。代
 案として、シュワブ近くの浅瀬に現行計画より滑走路を短縮した飛行場を建設する案を
 示している。

 だが、両案とも決め手に欠けるのが実情だ。陸上案だと滑走路が住宅地に近くなり、地
 元の理解が得にくい。一方、浅瀬案は地元市長が容認姿勢を示しているものの、反対派
 による海上阻止行動によって再び行き詰まる可能性が高い。まさに「帯に短し、たすき
 に長し」の状況だ。

 そもそも普天間飛行場の移設は、日米両政府が一九九六年に合意した内容。九年が経過
 しても一歩も進んでおらず、米国は日本政府の調整能力に不信感を募らせている。今回
 日本が提示した陸上案についても、どこまで実現性があるのか、懐疑的に見ているのは
 間違いない。

 また、米国にとって地元の負担軽減は重要なテーマではあるが、あくまで抑止力を維持
 することが大前提だ。米国は中国の急速な軍拡に警戒を強めており、国防総省が発表し
 た中国の軍事力に関する年次報告書は「台湾海峡の軍事バランスは中国側に傾いている」
 と警告している。こうした中で、台湾海峡に近い沖縄の戦略的価値はむしろ高まってい
 るといえ、米側は普天間飛行場の移設先に関して安易な妥協はできないとのスタンスだ。

 日米両政府はブッシュ大統領が来日する予定の十一月中旬までに移設先を決定し、在日
 米軍再編に関する中間報告にも盛り込みたい考え。だが、米軍の戦略的ニーズを満たし
 つつ、地元の負担軽減につながる妙案を見いだすのは容易ではなく、調整は難航必至だ。
       Kenzo Yamaoka

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