2090.高貴な嘘



ニューヨークタイム紙の靖国報道に接して

 8月16日のニューヨークタイム紙の記事で気になることがあっ
た。靖国問題の文中において日本の歴史教科書問題を取り上げ、扶
桑社の歴史教科書は第二次世界大戦を何も記述していない(whitewash)
と書かれていた。これは事実に反する。1番に扶桑社の教科書にも
第二次世界大戦はきっちりと書かれている。2番目に日本の教科書
制度は、米国と同様に各自治体の教育委員会での投票による複数の
教科書からの選択制である。つまり、国家統制ではなく、地方自治
と民主主義が機能している事を証明している。中国&韓国と日本の
左翼及び朝日新聞の宣伝にまんまと嵌められた結果である。

 私自身、ニューヨークタイム紙にメールするが個人のメールでは
役に立たないだろう。これは、日本にいる海外特派員の不勉強と片
づける問題ではない。日本政府が日本の民主主義を説明することを
怠り、一部の政治家が抗議(日本国内の新聞には取り上げられるが
、外交上は役立たない)しての憂さ晴らしですませてきたことが
もともとの原因だ。政府が官房長官の声明として、その都度はっき
りと抗議しなければならないことだ。説明とは声が強く・続ける方
が正しいと認識される要素を多分に含んだものだ。事なかれ主義は
、日本を自滅へと導くだけであるという見本を提示している。

 靖国に関する報道は、米国人にどう捉えられるか私には分からな
い内容だった。しかし、事実に大きく反する事はなかったと思う。
佐藤 俊二
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イラン核問題

>米国は、当面隣国のイラクに展開する米軍の13万人規模の軍を維
>持して、イランとの紛争に備えることになる。しかし、今回の交渉
>は欧州であり、米国主導で戦争に突入したイラクとは違うことにな
>るでしょうね。国連の安保理決議で中国の拒否権が、行使されなけ
>れば、イランは悪党国家の汚名で駆除されることになる。

上記の点については、ロシアが拒否権行使する可能性について
言及されておりませんが、ロシアは間違いなく拒否権行使するでし
ょう。

また英独仏は軍事的にイランを制裁するような行為に入るとは
とても思えない。
現在は、イラクから撤退というのが全体的なベクトルの方向であり
、既に何ヶ月も前に、英国の外務大臣もイラン攻撃を英国がやると
思わないでくれ、とブッシュ大統領にクギを指していたはずです。

従って、イランを「駆除」など、とてもできないでしょう。

>英仏独の欧州軍をイランに送り、その後米軍が、国連の要請でイラ
>ンに入ることになり、欧米の亀裂は今回は回避されることになる。

従って上記のシナリオはまずありえないと思います。

>イランの裏には中国とロシアの影が見える。しかし、欧米軍がイラ
>ン侵略になった時でも中国軍、ロシア軍が動くかどうかは分からな
>い。米軍はアゼルバイジャンにも大兵力を展開しているようであり
>、欧州との共同歩調が取れれば、迅速にイランの中核部に軍を送る
>ことができる。

中国はどう動くかどうか、わかりませんが、ロシアは強烈にイランを
支援するでしょう。
またその場合、核兵器使用についての言及がなされ、簡単にはイラン
攻撃することのできない情況が醸成されるはずです。

またイランからペルシャ湾の米軍艦船へのミサイル攻撃などを考える
と、米軍でさえとてもイラン攻撃などやりたがらないはずですから、
どこかのサイトで言われているように、ブッシュ政権(チェニー副大
統領?)があくまでイラン攻撃を推し進めれば、アメリカで内紛が起
こりかねないでしょう。

もしそれでもアメリカ政府がイラン攻撃を行った場合には、これは本
物の中東戦争に拡大することになるので、石油価格は今の数倍にもな
りかねません。またイラクを平定できないように、イランもアメリカ
は平定することは出来ないから、アメリカがイラン攻撃するメリット
は何もないでしょう。
全般的に考えれば、少なくとも今現在、アメリカはイラン攻撃はでき
ないでしょう。

できることは、イラン内部での工作、そこから「民主化」運動の教唆
、そして時間をかけての体制崩壊ということではないでしょうか?

もし、どうしてもイラン攻撃をするとすれば、9・11並の「テロ攻撃
」がアメリカ本土で実際に起きることが再度必要になるということ
で、それが起きれば、もう一度ブッシュ政権はイラン攻撃の口実を
見つけることが出来るかもしれない。

イランの核兵器を一番心配しているのはイスラエルだから、もしイ
ランに対する攻撃ということであれば、それはイスラエルで、従っ
て上記の「9・11並のテロ攻撃」をイスラエルがアメリカ本土で
起こす可能性が存在し(勿論下手人はアルカイダ系とかイラン系と
言われる)、その件について言及しているサイトがいくつかある。

従ってアメリカでそのような大規模テロ攻撃などの突発事件が起き
なければ、イランに対しては今暫く何も起きないと見ます。

ただ、イスラエルの単独攻撃はあるかもしれませんが・・・

岩大路邦夫
日本国家戦略研究所スタッフ
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(Fのコメント)
岩大路さん、コメントありがとうございます。その通りですね。
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<独総選挙>「米国によるイラン軍事攻撃」が争点に浮上

 【ベルリン斎藤義彦】前倒し総選挙戦が始まっているドイツで「
米国によるイランの軍事攻撃」が争点に浮上している。シュレーダ
ー首相は米国に「軍事的な選択肢を取るな」と度々批判しているが
、親米の野党はこれに反発している。首相は02年の前回総選挙で
、米国のイラク攻撃に反対して勝利しており、反米世論を再び喚起
し、人気低迷に活路を見いだす作戦のようだ。
 首相はイラン情勢について、ブッシュ米大統領が最近のインタビ
ューで「すべての選択肢がテーブルの上にある。軍事力の行使はい
かなる大統領にとっても最後の選択肢だ」と述べたのに猛反発。

独紙のインタビューなどで「軍事攻撃の選択肢は非常に危険。私が
首相でいる限り攻撃に参加することはない」と述べた。さらに集会
などで「軍事攻撃の選択肢をなくそう」と呼び掛け、観衆の拍手を
浴びた。
 02年の総選挙の時点では、イラク攻撃があるかどうか明確では
なかったが、首相は「攻撃反対」を前面に出したことで劣勢をばん
回、辛勝した。このため、ブッシュ大統領の怒りを買い、しばらく
会談を断られ続けたという経緯がある。
 イラク戦争に反対したため「独米関係が傷つけられた」と批判し
てきた親米の野党側は今回、「ありもしない(イラン)攻撃の可能
性を強調する無責任な発言。外交を選挙に悪用している」と非難し
ている。
 しかし、独国内では反米世論が根強い。野党側の首相候補メルケ
ル・キリスト教民主同盟党首も、軍事攻撃より外交的解決を優先す
るという点では「政府と一致している」と言わざるを得なくなった。
 イランは、核兵器につながる核開発を断念する代わりに経済協力
を行う独英仏の提案を拒否するなど、強硬姿勢を強めている。今後
の交渉の行方次第では、独総選挙の結果を左右しかねない状況にな
っている。
(毎日新聞) - 8月20日19時19分更新
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高貴な嘘について          アルルの男・ヒロシ
   
BBCドキュメンタリー : シュトラウシアンの「高貴な嘘」 
アルルです。
昨日、NHKのBS−1でBBC(英国)で2004年に制作され
た、ドキュメンタリー番組「テロとの戦いの幻想」 The Power of 
Nightmares (3回シリーズ)が放送された。イギリスのテロ事件直
後の再放送を延期したか、放送中止になったが、再放送の要請が多
かったので再放送したのだろう。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/3755686.stm

この番組の主題は「アルカイダなどという組織が体系立ってテロを
実施することはない」(ただし、ネオコンとイスラミストは存在す
る)という視点で制作されている。

理想主義というものに対する現実主義の視点である。
ネオコンとイスラム原理主義は一つの点で共通している、とこの番
組は言う。過ぎ去った日への理想である。まあ、これがファンダメ
ンタリズムというものの姿だと思う。現実の妥協ではなく、あくな
き理想の追求、これがまた悲劇を生むというのだ。このことは、『
神々の軍隊』で描かれた、2・26事件の皇道派の青年将校の悲劇
を考えてみれば分かる。彼らは原理に正しかったかも知れないが、
魑魅魍魎の戦間期の国際政治の現実に叩きつぶされた。三島由紀夫
氏の割腹自殺も正しいが故に根本的に間違っている行為であった。


その点でイスラム原理主義とアメリカのネオコン派は同じなのだが
、違うのはアメリカのネオコンが、「嘘でも良いから民衆の信じる
ことが出来る大義をでっち上げろ」と考えていたことだ。

この考え方の主導を行ったのが、アメリカの政治哲学者のレオ・シ
ュトラウスであったというのだ。この番組では、シュトラウスが、
勧善懲悪の西部劇テレビ番組をこよなく愛好していたこと、弁護士
ペリー・メイスンを愛好していたことなどを例に挙げながら、「シ
ュトラウスは政治的なコメンタリーもほとんど一切残さなかったが
、堕落したアメリカの大衆に対して、今一度“神話”を作り出す必
要がある、と考えていた、と主張する。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0312217838/kokusaisenrya-22
ネオコンとシュトラウスの思想的つながりを詳述した書

このシュトラウシアンのネオコン源流説をここまで判りやすく解説
したのは今回の番組が初めてであろう。このシュトラウスの“神話
“のことを、「高貴な嘘」(ノーブル)・ライという。昔、オウム
真理教という宗教集団が、「真理のための嘘」といって、地下鉄テ
ロを実行したことがあるが、意味合いとしては一緒だと思う。

大学院生の小山みつね氏はこの「高貴な嘘」について極めて冷酷に
このように解説してくれた。

(引用開始)

「高貴な嘘」(ノーブル・ライ)といふ概念はプラトンに発するも
のです。悪意で解釈すれば、「ウソも100回言へば真実だ」(ゲ
ッペルス)といふことです。善意で解釈すれば「子供には神話を最
初に教える必要がある。ある程度物が分かるやうになつてから科学
を教えても遅くはない。それが教育的な配慮だ」といふものです。
ちなみに、仏教で言ふ「ウソも方便」(相手のレベルに応じて説明
の仕方を変へる。時には反対のことを教へる)といふのも、いい意
味での「高貴なウソ」なのです。

>人民を騙すのは権力者にとって必要なのである、という必要悪的
>な考え方のようです。

権力者が人民を騙すのは、政治の世界では、いつの時代でも当たり
前の話です。少なくともさういふ悲惨な(当たり前?)ことが起こ
ることは覚悟していなければなりません。一種の人間性悪説を前提
として持つておかなければなりません。ですから、政治家の評価は
その政治家の人格を基準にするべきではありません。結果として
どれだけ国を豊かにしたか、それを基準とするべきであります。例
へば、韓国の全斗煥元大統領は不合法な軍事クーデターで政権につ
いて大統領を名乗りました。当時全斗煥は少将だつたのに大将を拘
束したりしてゐます。厳しい見方をすれば、軍人としての規範に逸
脱してゐます。しかし、全斗煥の独裁政権下で韓国は経済が大発展
しました。ですから、「結果としてどれだけ国を豊かにしたか」と
いふ基準に基づいて、全斗煥は再評価されなければならないと私は
考へます。

(引用終わり)

要するに、アメリカ人にとって、キリスト教原理主義者やネオコン
にとって真理だと思えるものがすなわち真理である、ということだ。
しかし、それは他の人にとっては真理ではない。妄想である。アメ
リカの市場原理主義もこのような「高貴な嘘」に基づいている。サ
プライサイダー経済主義も、ケインズ主義も多かれ少なかれそうな
っているかもしれない。

念のために言っておくと、小山氏は、「シュトラウス=ネオコン論
」には反対の立場である。日本の国益のために、日本はアメリカを
支持すべきと言う立場であり、私とは正反対の立場である。
しかし、彼の上の分析についてはその通りであると考える。

このように政治家が国民を騙すのはいつも当たり前の話である、と
いうのがこのBBC番組のテーマでもある。そして、この番組はア
ルカイダなんて言う組織は幻想だ、と主張して、イギリスのドキュ
メンタリー賞を受賞したのだ。

そして、この番組の中ではイギリス国内でも「裁判無しにテロリス
トと思われる人を処罰することは疑問だ」というイギリスの法曹関
係者の発言を考えている。

ところが、7月7日に「ロンドン地下鉄」で爆破事件が起きた。こ
れで、BBCの「幻想論」は無効だということになる。単純にそう
言えるのかとなると疑問である。

ロンドン爆破テロも「ノーブル・ライ」であるかもしれないと言う
ことなのである。

(引用開始)

●テロとの戦い≠フ「真相」●

この番組は以下のように証拠(証言)を挙げて主張する:

#01: オサマ・ビンラディンは確固とした組織を持たない(PRビデオ
に映った、彼を取り巻く大勢の兵士は、臨時雇いのエキストラ)

#02: 98年8月7日の「在ケニア/在タンザニア米大使館同時爆破事件
」の犯人として、実行犯でないビンラディンを起訴する(欠席裁判
にかける)ために、01年1月、米司法当局は、昔ビンラディンと行動
をともにしていたスーダン人ジャマル・アルファドルの「ビンラデ
ィンを頂点とする、彼が名付けたアルカイダという強固な組織があ
る」という証言を採用

#03: アルファドルの証言を根拠に、米司法当局はアルカイダをマフ
ィアのような犯罪組織と認定。「以後、ビンラディンが声明を出し
た事件にかかわった者はだれでも簡単に起訴できるようになった」(
大使館爆破事件弁護人サム・シュミット)

#04: しかしアルファドルは莫大な報酬と引き換えに偽証していた(
『アルカイダ』の著者ジェイソン・バーク)

#05: ビンラディンが01年の米中枢同時テロ(9.11)以前に、大使館爆
破事件の犯行グループをアルカイダと呼んだ証拠はない

#06: 「9.11」はビンラディンではなく、パキスタン系クウェート人
ハリド・シェイク・ムハンマドが立てた作戦(ビンラディンは資金提
供と実行犯の人選のみ)

#07: しかし9.11のせいで「アルカイダは強大」という神話が生まれ
、以前からそう主張していたネオコンが米政権内で権力を掌握

#08: しかし「9.11以後にテロ容疑で起訴されたグループが米国内で
テロを計画していたという証拠は一切挙がっていない」(デビッド・
コール米ジョージタウン大教授)

#09: 英国でも、9.11以後テロ取り締まりで逮捕された664人のうち
、アルカイダのメンバーとして有罪判決を受けた者はいない(テロ対
策法で有罪となった者の多くは、北アイルランドのアルスター義勇
軍やアイルランド共和軍IRAのメンバー)

#10: 「テロネットワークは存在しない。それはわれわれの幻想が生
み出したもの。社会全体が大騒ぎするほど根拠のある話ではない」
(英キングズカレッジ安全保障分析センターの研究者ビル・デュロデ
ィ)

#11: 英エジンバラ爆破計画の「証拠の地図」は、観光名所をマーキ
ングした旅行者の忘れ物

#12: 英国内で「テロリスト訓練学校を経営」の容疑者は、スーパー
の警備員1人に護身術を教えていただけ

#13: 毒ガスを使った「ロンドン地下鉄テロ計画」も杞憂

#14: ゆえにブレア現英政権が「予防原則」(証拠がないからといっ
て脅威がないことにはならないので、容疑立証の前でもテロ予防行
動をとる)を掲げて、疑わしい外国人を予防拘禁しているのは無駄だ
し、英上院の判断では欧州人権条約違反

#15: しかし予防原則は証拠を必要としないので、国民からは異論が
出ない

#16: 予防原則のもとでは、もっとも恐ろしい幻想を示した者(ネオ
コン、米英現政権)がもっとも大きな影響力(権力)を持つことになる

(貼り付け終わり)

http://news.independent.co.uk/uk/crime/article305548.ece

http://news.independent.co.uk/uk/crime/article305547.ece
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ガザ撤退/中東和平への道を開く契機に   
   
  イスラエルがガザ地区からの撤退を始めた。四十年近くにわたって同地区を占領してき
 たイスラエルの撤退は、もつれにもつれてきたイスラエル・パレスチナ関係にとって重
 要な転機となるはずだ。
両者が協力し撤退監視  世界日報掲載許可

 右派政党リクード(与党)の中でもタカ派のシャロン首相が、ガザ撤退を打ち出したの
 は、泥沼化したインティファーダ(パレスチナの反イスラエル民衆蜂起)から脱却し、
 イスラエルの安全を確保する道は、「パレスチナ分離」しかないと判断したためだ。

 ガザ地区の入植地を撤去し、もう一つの占領地、ヨルダン川西岸では分離壁を設けて、
 入植地やイスラエル領へのパレスチナ人の出入りを厳しく制限した。壁は、テロの抑止
 という意味では有効とみられている。しかし、パレスチナ人に、移動の制限という犠牲
 を強いたことは、非難されるべきだ。

 シャロン首相は、ガザ撤退と引き換えに西岸の支配を強化することをもくろんでいると
 みられている。西岸には二十万人以上の入植者が住むが、入植地存続の是非は、両者の
 交渉によって決めるべき問題であり、一方的な措置で支配の既成事実を積み上げる方法
 は、信頼関係構築にとって障害にしかならない。

 イスラエルでは、ガザ撤退支持が多数派だ。撤退が将来のイスラエルの安全につながる
 とみているからだろう。

 一方、リクード内では、撤退反対派が多数派を占めている。同党のネタニヤフ財務相
 (元首相)は七日、ガザ撤退に反対し辞任したが、辞任後のリクード内の支持は、ネタ
 ニヤフ元首相がシャロン首相を上回るなど、ガザ撤退をめぐり党内は大きく揺れている。

 各地で撤退反対の抗議行動が行われ、住民の転出が進められているガザ地区の入植地に
 侵入し、撤退を妨害する入植支持者もいるなど、反対は激化している。

 撤退をめぐって、イスラエル政府とパレスチナ自治政府の間で協議が進められ、懸念さ
 れていた「一方的撤退」は避けられた。十日には、撤退を監視するためのオペレーショ
 ンルームが両者の協力で設置された。

 アッバス自治政府議長は、議会に当たる評議会で、撤退がスムーズに進められるよう、
 協力することをパレスチナ住民に要求、イスラム過激組織による入植者やイスラエル軍
 への攻撃を非難した。

 議長は、「(撤退後の入植地の)土地と資産を守る責任はわれわれ全員にある。そうす
 ることで、パレスチナ人が文化的であり、国家樹立に値するとの印象を世界に与えるこ
 とができる」と、略奪などを行わないようクギを刺した。

 パレスチナ人が目指すものは、国家の樹立だ。それが、国家のない被占領民としての苦
 難から逃れる唯一の道だからである。それには、パレスチナ人自身が「イスラエルとの
 平和共存」への意思を明確にすることだ。「イスラエルの破壊」を訴え、和平交渉に反
 対してきたイスラム過激組織などによる、暴力路線との決別をはっきりさせる必要があ
 る。

 イスラエルでも、パレスチナとの平和共存を求める国民が多数派だ。しかし、パレスチ
 ナ独立がイスラエルにとって脅威とならないことを、イスラエル国民が確信しない限り、
 独立は難しいだろう。

誠意もって信頼醸成を

 ガザ撤退は、イスラエルにとっても、パレスチナにとっても歴史的な一歩だ。双方が誠
 意をもって臨めば、和平への道を開く契機となる。これを、両者の信頼醸成と平和構築
 への足掛かりとすべきだ。

    Kenzo Yamaoka


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