2083.解散総選挙、妥当な選択だ



官僚天国打破の総選挙だ   
   
 郵政改革反対は現状維持の攘夷論  《改革の意義忘れた反対論》
 ついに参議院は政策を論ずる良識の府ではなくなった。法案反対論者の否決多数時の喚
 声は義理と人情の板挟みしか考えていない声だ。こうなった以上、国民に問うしかない。
 参院の否決を衆院選挙で問うのはおかしいというが、両院の声が逆になったら衆院に問
 うのは当然だ。今回の解散は官僚天国(天下り、談合、隠蔽(いんぺい))打破の選挙
 だ。

 義経物語に、屋島に逃れた平家追討のくだりがある。逆櫓(さかろ)を舟につけて、舟
 の戦いに巧みな平家と戦えば、舟の進退に容易なりと主張する梶原景時に義経は、「戦
 に臨む将たる者に退くなど考えるべきに非ず」と。

 あえて歴史に重ねていえば、郵政民営化案否決なら衆議院解散をと主張する小泉総理に、
 森前総理が自重を求めたところ、小泉総理は「おれは死んでもいい」と答えたという。
 竹中大臣を任ずるにあたり、「これからおれは戦場に行く。一緒に死んでくれるか」と
 いった小泉総理の言葉に「退却」はない。自民党改革は総理の公約であった。

 なぜこれほどまでに小泉総理は郵政民営化に固執するのかわからないと解散慎重を進言
 した人たちはいう。実は、年金改革も外交打開も官僚主導を変えなければ不可能であり、
 郵政改革はその本丸であると総理は気づいている。もしこの改革が挫折するなら日本は
 どうなるのか。

 ある人はいう。いま慌てて決着しなくても継続審議にして郵政公社の動向をあと二年待
 ってはどうかと。とてもそんな余裕はない。民営化をいくら急いでも十年はかかる。そ
 の間郵政公社は生き残れるのだろうか。

《公社も求める民営化推進》

 世界はいま金融デリバティブの時代に入っている。そんな時代に、資産運用もできない
 郵貯・簡保にいくら安定金利だからといって誰が貯金するだろうか。零細な金融サービ
 スができなくなると声高にいう反対論者がいるが、いままで財投保証で資産運用もして
 こなかった郵貯が金融サービスを零細利用者向けにやってきたとどうしていえるのだろ
 うか。

 過疎地にいる住民にとって最寄りの郵便局が頼りだったというが、国民の資産を守ると
 まで総理の答弁を引き出しておきながら、不安をあおっているだけではないか。現に安
 定金利を保証できなくなれば、郵貯に頼らなくなる。

 郵便配達にしても航空貨物便を利用しなければFEDEXやDHLに敗北するだけであ
 る。だから生田総裁は「当面はともかく、将来はもっと民営化してくれなければ、やっ
 ていけない」と国会で明言したではないか。航空貨物便でさえ、公社ではできなかった。
 手足をしばっておいて、やりたいならやれるようにするからといわれて、経営の創造力
 がでてくるだろうか。民営化してこの立ち遅れを直し、郵政のネットワークという国民
 の資産を守りたいと小泉総理は答弁しているのに、全く聞く耳持たぬ反対者であった。

 またある人はいう。アメリカの要求に従っているだけの民営化案だと。冗談ではない。
 日本は外圧に屈したのではなく、いつでもそれを乗り越えてきた。今、郵政改革だけを
 なぜハゲタカと、アメリカに屈したようにいうのか分からない。それなのに、外圧に従
 うなとかハゲタカに屈するなというのであれば、民営化案以上の案を出してはどうか。
 反対論はただ現状維持しかいえない攘夷論者にすぎない。

 この民営化案が否決された以上、その展望は暗い。第一に、日本の改革ならずというこ
 とから株価は下降する。第二に、景気も沈滞。第三に、財政赤字は減少せずインフレ懸
 念が強まる。第四に賃上げによるスタグフレーションに突入する。第五に国民の意欲が
 薄れる。そして世界から締め出され孤立化していく。小泉総理はその兆候をみているの
 だろう。だから、わがままといわれようが、独断的・変人といわれようが、総理は自分
 を捨てて日本の危機を救おうとしているのではないか。

《小泉嫌いで日本救えるか》

 反対論者にはその気概がない。小泉がけしからん、竹中が嫌いだというだけで日本の危
 機を救えるのか。日本を再び敗戦状態に落としこんでもいいというのも選択の一つであ
 る。政治の空白を作るなと反対論者はいうが、それなら日本をどん底に陥れるような郵
 政民営化反対は間違っている。

 郵政こそが明治維新以来、日本が創り上げた官僚社会主義の原動力であり、これを民営
 化できなければ日本はまた官僚天国になる。民主党もその道を選んでしまった。
 (【正論】千葉商科大学学長・加藤寛・産経新聞)
       Kenzo Yamaoka
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首相の賭け 当初から解散一本ヤリ   
   
 政界再編か保保連合狙いか
 ひょうたんから駒が出た。「変人の小泉首相のことだから、解散はあり得ないことでは
 ない」。敵も味方もそう思っていた。ところが八日の参院本会議で郵政民営化法案が否
 決されるや否や、小泉首相は躊躇(ちゅうちょ)することなく伝家の宝刀を抜き放って
 しまった。変人小泉首相いや怪物小泉首相には永田町の常識は通用しない。
 いまさら四の五の言っても始まらない。解散、総選挙は現実のものとなった以上、与野
 党それぞれ勝ち残ることが当面の最大課題だ。しかし正直のところ各党各人途方に暮れ
 ている。口では大きなことをいいながら、ハトが豆鉄砲を食らったように、慌てて飛び
 立つ有様だ。

 中でも、自民党は目も当てられない。先の衆院段階で大量の造反者を出した。党議違反
 者には懲罰をもって臨む。これが小泉首相の決意、執行部の方針だ。総選挙を前にして
 党公認取り消しは免れない。

 それなら事実上の分裂選挙になる。総選挙の争点が郵政民営化の是非では自民党には有
 利とはいえない。国民は郵政選挙には無関心だ。分裂選挙に加えて無関心選挙では二重
 のマイナスだ。「政権を手放しかねない」自民党に危機感がみなぎっている。

 しかし、この中にあっていささかのブレも見せないのが小泉首相だ。いまにして思えば
 小泉首相は初めから解散一本ヤリだった。党執行部が待ったをかけたが、友党の公明党
 がクレームをつけようが、小泉改革反対はすなわち小泉政権打倒とみなすとの認識はた
 じろがない。こと面倒と見れば伝家の宝刀の柄(つか)に手を掛ける。その姿勢で押し
 通してきた。

 おどしなら分かる。しかし本当にそう思い込んでいたとすれば、それは賭けだ。国民と
 国益を巻き込んでの壮大な賭けだ。成功すればいいが、しくじったら元も子もない。御
 執心の民営化も雲散霧消だ。

 参院で民営化法案否決の瞬間、参院自民党のボス青木議員会長はガックリと肩を落とし
 た。顔面蒼白(そうはく)、顔の肉もめっきり落ちている。見ていて痛々しい。一方、
 小泉首相は細田官房長官に解散手続きを取るようテキパキと指示するとともに、自民党
 役員会に臨んではっきり決意表明した。記者会見では会心の微笑さえ浮かべていた。

 この差はどこから来るのか。よく分からない。しかし、小泉首相の立ち居振る舞いは乱
 心の結果でもなく、やけのやんぱちの捨て鉢とも違う。小泉首相なりの成算あってのこ
 とに違いない。

 少なくとも、現行の小選挙区比例代表並立制ではいくら総選挙を繰り返しても過半数を
 制する政党は現れない。せいぜい比較第一党を争うにとどまる。小泉首相の殺し文句
 「自民党をぶっ壊す」の狙いはここにありそうだ。「そして新しい自民党をつくる」そ
 の余地は十分にある。永田町用語でいえば「政界再編成」か「保保連合」だ。小泉首相
 は怪物か天才か、九月十一日には証明される。世界日報掲載許可

    Kenzo Yamaoka
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解散総選挙、妥当な選択だ!   

 約1ヶ月前わずか5票差で衆議院で可決した郵政民営化法案が今週末恐れていた事態にな
ってしまった、8日はお昼から国会中継を見ていたが、小泉政権がこれまで進めてきた構
造改革の総仕上げである郵政民営化法案が自民とのからも多くの造反者が出て否決されて
しまった。

これまで衆議院での議論とこの1ヶ月の参議院での議論は全く無駄になってしまった。国
際関係も色々難しい局面にある中で1ヶ月かけて郵政民営化問題だけをやってきた国会は
なんのためだったんだろう?

これから1ヶ月政治的な空白が出来てしまうが、今まで小泉政権の公約であった郵政民営
化が否決されてしまったからには内閣不信任となったに全く等しい。強引に見えるが、彼
が解散総選挙ということを選択したことは妥当であると思う。この法案を廃案にして構造
改革の根幹を未来永劫葬ってしまわないように国民の意見を聞くための解散である、私は
彼の執った手段には全く異論がない。

今回参議院での否決で衆議院を解散させたのは筋違いだという意見があるがそれは間違い
だ。そもそも良識の府である参議院には解散はなく任期も長い。問題は衆議院で可決した
法案を参議院で否決したらば、衆議院で再議決できるということになっているが、それは
2/3の賛成が必要である。憲法で定められたこの条文は今回矛盾を示したことになる、
すなわち衆議院の方の議決が重いはずなのに現実は同等くらいの重さを参議院議決が持っ
たことになってしまった。

こういう問題も含めて自民党では憲法改正草案が先日示されたので議論を深めて欲しいと
思っているが、この解散総選挙で小泉さんが敗れて退陣ということになると構造改革も憲
法改正もその道が閉ざされてしまうことになるかも知れない。

先週末に森前総理が小泉さんを訪ね、自民党が負けるようなことが判っているので解散は
やめろと説得したそうだが、あきれかえってしまった。自分達の保身のために解散を思い
とどまらせるなんて何を考えているんだ。国民のことが全く頭にない馬鹿な奴であんな奴
が総理大臣をごく短期間でもやっていたのは国民として恥ずかしい。小泉さんをその説得
をキッパリと拒否したそうだから彼の見識には敬意を表したい。

法案に反対したものを後任しないというのも当然の措置だと思う、内閣の重要な課題に異
を唱えやとうに与するような奴は自民党の資金を使って選挙活動などやらせるべきではな
い。自民党分裂になるかも知れないが、この際は日本の将来を考え構造改革を進めてくれ
るものを選びたい。 高橋 成典  掲載許可済み
    Kenzo Yamaoka
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郵政改革法案の成立を支持する   
   
 解散に追い込めば国益損うだけ 《もっと重要な問題がある》 
 真っ先にお断りしなければならないのは、私は郵政問題のことは何にも分からない。色
 々な人に説明をしてもらったが、賛成反対にそれぞれ言い分があるということしか分か
 らなかった。

 一番分かりやすかったのは、これだけ莫大(ばくだい)な時間と労力を費やして、実際
 はほとんど同じことだという反対論であった。

 それなら私は同じ理由の上に立って賛成論である。

 あえて理屈をつければ、新しいことなどは、そうしばしばできるわけではないのだから、
 せっかくここまで時間と労力を費やしてしまった以上、改革によって良い点は伸ばし、
 悪い点は抑える良いチャンスだというくらいであろう。

 ただし、本当は、私はそんな理由で成立を支持しているわけではない。

 私としては、早くこの問題に決着をつけて、もっと重要な問題に取り組んでほしいので
 ある。

 日本の政治にとって、今から来年の九月までの一年間ほど大事な時期はない。

 参院選も衆院選も予定されていないし、来年九月の自民党総裁選でも小泉総理の再再選
 は予定されていないのだから、思い切った政策を断行できる時期である。

 こんなチャンスは、あと何年後に来るかわからない。

《向こう一年の好機逃すな》

 もう一つ重要なことがある。それは、日本にとって近来まれな親日政権であるブッシュ
 政権が、まだ健在であることである。しかも、小泉総理との間には固い信頼関係がある。

 近年の国際情勢の大きな地殻的変動によって、日本という国家にとって極めて重大なこ
 と、たとえば、憲法の改正、集団的自衛権行使の容認、米軍再編成による日米同盟強化
 について、日本と中国の長期的な国益が必ずしも一致しない状況も生じている。

 その場合、現在のブッシュ政権と小泉・ブッシュ関係ならば、米国の支持を完全にあて
 にできる状態にある。

 こんなチャンスもまた、何時訪れるか分からない。私はこのチャンスを逸してほしくな
 いのである。

 もし法案が通過しないで総選挙にでもなれば、自民党が勝っても、また数カ月は郵政に
 費やさねばならない。

 負ければ、小泉・ブッシュ関係はおしまいになってしまう。

 そうなれば日本は千載一遇のチャンスを逃してしまうことになる。

 私の議論の弱いところは、もし郵政が片付いても、小泉総理がこういう大きな問題に取
 り組むかどうか分からないではないか、ということである。

 しかし、それは自民党全部の問題でもある。自民党が、その総意として、集団的自衛権
 の解釈の変更、憲法の改正、消費税の値上げなどを実施する気持ちになるとすれば、小
 泉総理がそれに反対することはあり得ない。

 実は、あまり気が付かれていないことであるが、小泉総理は、昨年九月の新内閣発足以
 来、集団的自衛権の行使の問題とか、消費税の値上げの問題について、それまでの内閣
 ではしばしば言ってきたように、「この内閣ではこの問題に決着をつけない」とは一言
 も言っていない。

 すでに述べたように、私は反対派の方々の言い分も分かるし、それが悪いとも言ってい
 ない。

 ただ、あと一年、小泉内閣にフリー・ハンドを持たして温存することに、日本民族のあ
 と何十年かにわたる国益がかかっているかもしれないという大きな利益の前に、従来の
 行きがかりを捨てて一致協力してほしいのである。

《靖国も堂々と公式参拝を》

 ついでに申し上げれば、この問題を乗り切ったあと、小泉総理には堂々と靖国神社に公
 式参拝して頂きたい。

 中国は、もう反日デモはできない。今までの反日愛国運動があまりに成功しているため
 に、それが全国的大衆運動になる惧(おそ)れがあり、自縄自縛になっている。

 厳戒態勢の小さなデモでは意味が無い。せいぜい、日本、外国も含めて言論による批判
 を動員するぐらいであろう。日本は敗戦国として、ある程度はこれに耐えねばならない
 だろうが、そこまでである。今後毎年ということはあり得ない。

 むしろ希望的観測としては、かつてのガイドライン関連法にしても、今回の米国のユノ
 カル石油会社買収問題にしても、中国はいくら言ってもダメということになると、あっ
 さり言わなくなる国内統制力を持つ国でもあるということである。
 (【正論】元駐タイ大使・岡崎久彦・産経新聞 )
       Kenzo Yamaoka
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衆院解散総選挙/国造りの青写真を争点にせよ   
   
  郵政民営化法案が参院本会議で否決されたことを受け、小泉純一郎首相は衆院解散の断
 行を表明した。選挙日程は八月三十日公示―九月十一日投票と決まった。解散は、長期
 の政治空白を生じさせる意味でも望ましくない。
 だが、国民に国政の信を問う以上、郵政民営化の一点に絞らず、小泉政治全般の評価お
 よび国造りの青写真を最大の争点にして競うべきである。世界日報掲載許可

議会制民主主義に反した

 参院本会議の採決で、自民党議員から三十人の造反者が出た。その背景には、法案その
 ものへの反対だけでなく、小泉首相の政治手法に対する反発があった。

 法案の再修正に一切応じず、否決されれば衆院を解散するといった強引な手法は、参議
 院の自由な審議権や独自性を無視し、侵害するものであり、議会制民主主義に反してい
 る。それが良識の府・参院では通用しなかったわけだ。

 その結果、郵政法案は廃案となり、小泉首相は解散に踏み切ることになった。しかし、
 「反対派は公認しない。古い自民党はぶっ壊す」といった首相の姿勢は賢明でない。も
 っと時間をかけて説得する作業を積み重ねることが必要だし、少なくとも反対派を「古
 い自民党」と突き放すような分裂選挙は避けるべきだ。

 小泉首相は国民を味方に付けて選挙に勝ち、国会で反転攻勢に出たい考えのようだが、
 結局は構成の変わらない参院の反対派議員を賛成に回す説得を繰り返さなければ法案は
 成立しない。

 総選挙の行方は予断を許さない。しかし、自民党の内紛が引き金となったことから、自
 民党にとって厳しい選挙であることは間違いないだろう。

 自民党は、解散の大義名分を国民の関心度の極めて低い「郵政」に特化せず、憲法改正
 や教育基本法改正などをテーマに、世界に貢献できる日本を造るにはどうあるべきかと
 いったより高い次元の論争で戦うべきだ。

 自民党は、結党五十年の今年十一月十五日に発表する新憲法案の草案条文案を公表した
 ばかりではないか。本来なら、今こそ立党の精神に立ち返り、自主憲法制定の原点を定
 めて同案を掲げて戦える党再生の好機のはずだ。

 一方の民主党は、政権交代へのチャンスとして意気込んでいる。だが、これまでの国政
 選挙で過半数の議席を獲得できないのは、国民が党内の労組を中心とした旧社会党議員
 らの存在に不安を抱き続けているからである。

 自民党の内紛という“敵失”に勢いづいているようでは、「政権準備政党」と自称する
 には不合格だ。民主党も党としての改憲案を提示して戦い、それが認知されなければ、
 国民が政権を委ねることは難しいだろう。

 公明党も与党としての実績が問われる。憲法改正、教育基本法改正にこれまで以上に先
 に進んだ見解を示して信を問うべきだ。共産党も時代遅れで誤ったマルクス・レーニン
 主義から決別し、真の「国民が主人公」の政党に生まれ変わる必要がある。

 解散となったことで、「選挙管理内閣」になった小泉政権では、本格的な二〇〇六年度
 予算編成作業に着手できず、暫定シーリングを決めて予算編成をしなければならない事
 態に陥っている。

政界混乱の入口にするな

 九月中ごろまで政治空白が続く損失は大きい。今回の総選挙を政界混乱の入り口にする
 のでなく、大局的な観点で新たな国家造り案を競う前向きの実りある戦いにすべきであ
 る。
       Kenzo Yamaoka

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