2081.イラン核問題



欧州各国と交渉していたイランがウラン転換活動再開を示唆してい
る。各国が緊張している。その考察。   Fより

6ケ国協議や郵政民営化で世界の情勢に日本の評論家が目を向けな
い間に、世界的にも激動の様相が出てきている。

イランが英仏独のEU案を拒否して、ウラン転換活動再開を示唆し
ている。このため、国際原子力機関(IAEA)の理事会は全会一
致で非難決議を出したが、イランは応じる様子が無い。

このため、国連に米国が決議を付託しようとしたら、安保理の常任
理事国である中国の王光亜国連大使は、イラン問題を討議するため
の「適切な場所は安保理ではなくIAEAだ」と、このように反米
国家イランを中国は支援するようである。

しかし、米国はイランとの交渉を欧州に任せているために、目立っ
た動きをしていない。それより、イランが英仏独の言うことを聞か
ない場合、どうするのか米国は欧州の出方を待っている。

米国はイラク武装勢力にイラン製の高性能指向爆弾がイランから補
給されているとイランを非難していたが、イランとの激突はイラク
・シーア派を味方にするために避けてきた。

米国は、当面隣国のイラクに展開する米軍の13万人規模の軍を維
持して、イランとの紛争に備えることになる。しかし、今回の交渉
は欧州であり、米国主導で戦争に突入したイラクとは違うことにな
るでしょうね。国連の安保理決議で中国の拒否権が、行使されなけ
れば、イランは悪党国家の汚名で駆除されることになる。

英仏独の欧州軍をイランに送り、その後米軍が、国連の要請でイラ
ンに入ることになり、欧米の亀裂は今回は回避されることになる。

イランの裏には中国とロシアの影が見える。しかし、欧米軍がイラ
ン侵略になった時でも中国軍、ロシア軍が動くかどうかは分からな
い。米軍はアゼルバイジャンにも大兵力を展開しているようであり
、欧州との共同歩調が取れれば、迅速にイランの中核部に軍を送る
ことができる。

このために、米国は北朝鮮の核平和利用でも折れることが出来ない。
韓国は北朝鮮の主張が認めているが、米国は韓国を説得する意向で
ある。
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北朝鮮の核平和利用に難色・ヒル米国務次官補が言明
 【ワシントン=秋田浩之】ヒル米国務次官補(東アジア・太平洋
担当)は10日、北朝鮮問題を巡る6カ国協議で北朝鮮側が核平和利用
の権利を要求していることについて、認めることは難しいとの立場
を改めて示した。朝鮮半島非核化をうたった共同文書を9月中に採択
し、直ちに具体策の交渉に入りたい意向を示した。

 ワシントン市内の外国人記者クラブで記者会見し、語った。北朝
鮮の核平和利用に反対する理由に関し「我々は(北朝鮮の)過去の
行動に注意しなければならない」と指摘。北朝鮮がエネルギー目的
と説明していた原子炉を突然、軍事用に転用した経緯などに触れた。

 同時に、韓国が北朝鮮への電力供給支援を提示していることなど
から、北朝鮮は核エネルギーの平和利用を進めなくても、エネルギ
ー不足に対応できるようになるとの認識を示した。 (10:12) 
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「核平和利用の権利ある」 韓国統一相が北朝鮮擁護発言(ASAHI)
2005年08月11日21時06分

 北京で開かれた6者協議で対立点となっていた「北朝鮮による核
の平和利用」について、韓国の鄭東泳(チョン・ドンヨン)・統一
相が「北朝鮮にも平和利用の権利が認められるべきだ。韓国の考え
は米国とは違う」と発言した。夕刊紙・文化日報が11日付1面で
「韓米が衝突」と報じるなど、協議休会中の関係国の協調を危ぶむ
声も出ている。 

 11日に配信されたインターネットニュース「メディアダウム」
の単独インタビューの中で、鄭統一相は「一般的な権利としての核
利用、つまり医療や発電など平和目的の核利用の権利は当然持って
いる、というのが私たちの立場だ」と述べた。「軽水炉建設は北朝
鮮の権利だ。これは、平和利用を認めない米国の立場とは違う。私
たちは米国と考え方が違う」とも語った。 

 北朝鮮との対話・協調を進める韓国は、北朝鮮の核利用について
、ほかの6者協議参加国に比べると寛容な一方で、日米との協調関
係を重視する姿勢も強いため、こうした「北朝鮮擁護発言」は最近
は表面化していなかった。 
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IAEA、イラン非難決議採択 ウラン転換即時中止要求(ASAHI)
2005年08月11日23時57分

 イランのウラン転換活動再開への対応を検討してきた国際原子力
機関(IAEA)の理事会は11日午後(日本時間同日夜)、公式
協議を再開し、転換再開に「深刻な懸念」を表明、転換活動の即時
中止を求める対イラン非難決議を全会一致で採択した。 

 決議によると、理事会は今後のイランの転換活動の推移とイラン
の保障措置(核査察)協定の順守状況について、9月3日までに理
事会に報告するよう、エルバラダイ事務局長に要請。イランの対応
次第では、9月19日からの定例理事会を待たず、再度緊急理事会
を開く構えだ。 

 決議案を提出した英独仏は「転換活動の再開は04年11月の英
独仏とのパリ合意や過去のIAEA理事会決議に反し、信頼関係を
損ねるものだ」と主張。イランが10日、IAEAの封印を解除し
て転換施設を本格稼働させる構えを見せたことから、イランに明確
なメッセージを送る必要があると判断した。しかし、イラン寄りの
立場を取る非同盟諸国の一部は「決議は、核不拡散条約(NPT)
が非核国に認めた核の平和利用の権利を侵害する恐れがある」など
と難色を示していた。 
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イラン安保理付託、アナン事務総長が消極姿勢
 【ニューヨーク=鈴木哲也】国連のアナン事務総長は10日、イラ
ンのウラン転換作業着手について記者団に「現状の行き詰まりを打
開する最善の策は欧州3カ国(英仏独)とイランが協議を続けること
だ」と述べ、同問題を安全保障理事会に付託(報告)することには
消極的な姿勢を示した。

 アナン氏は現在、国際原子力機関(IAEA)が同問題に対する
非難決議の調整を進めていることに言及。「まずそのプロセスを経
る必要がある」として協議を見守る考えを示した。

 安保理付託には米国が前向きとされるが、同じく安保理の常任理
事国である中国の王光亜国連大使は同日、イラン問題を討議するた
めの「適切な場所は安保理ではなくIAEAだ」と述べた。
 (11:52) 
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欧州の核提案「拒否」 イラン、状況緊迫も

 【テヘラン6日共同】イラン外務省のアセフィ報道官は6日、国
営イラン通信に対し、英国、フランス、ドイツの欧州3カ国が5日
に提示したイランの核問題解決に向けた包括提案は「受け入れられ
ない」と述べ、拒否する方針を示した。3カ国との核交渉がこじれ
、イランが中部イスファハンの施設でウラン濃縮の前段階に当たる
転換作業を再開した場合、欧州側や、イランの原子力平和利用を初
めて明確に認めた米国が態度を硬化させ、核問題の国連安全保障理
事会付託など緊迫した状況となる恐れがある。
 アハマディネジャド大統領も6日、国会での宣誓式で「イランの
権利を侵害しようとする大国の不法な決定には屈服しない」と、核
開発を放棄しない方針を示唆した。
 一方で報道官は「7日までに3カ国に回答する。協議継続には依
然として関心を持っている」とも言明。欧州に圧力をかけ、提案の
修正を狙った可能性もある。
(共同通信) - 8月6日23時32分更新
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<イラン>核開発問題めぐる英仏独EU案を拒絶

 イラン外務省のアセフィ報道官は6日、核開発問題をめぐり英独
仏と欧州連合が提示した包括提案について「イランが有するウラン
濃縮の権利を含んでおらず、受け入れることはできない」と、拒絶
する方針を示した。同報道官は数日中に提案への公式な拒絶を通告
するだろうと述べた。国営イラン通信など現地メディアが報じた。
(毎日新聞) - 8月6日19時9分更新
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13日間の攻防、進展なし−不透明さ増す6カ国協議   
   
 攻めの米国、守る北朝鮮
 北朝鮮の核問題を話し合う第四回六カ国協議は、目標だった共同文書の採択に至らず、
 七日休会し、いったん水入りとなった。「すべての核の放棄」を優先する米国と「核の
 平和利用」に固執する北朝鮮。十三日間にわたった攻防戦でも対立点は解けず、目に見
 える進展がないまま、決着は先送りされた。米朝両国相互の不信感を解くのは容易では
 なく、協議の終着点は見えない。
 ◇先手打つ米首席代表

 「九月にも北朝鮮の核放棄を検証するための査察措置を話し合いたい」――。米首席代
 表のヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は休会が決まった七日、核放棄に向けた
 「入り口」とも言うべき共同文書採択の見通しも不透明な中で、早くも北朝鮮が核放棄
 を決断した場合の次のステップをにらんだ発言に踏み込んだ。

 こうした発言は「休会明け後の会合で共同文書で合意するかどうか保証できない」と既
 に弱気な本音を吐露する議長の武大偉中国外務次官とは対照的だ。攻めの姿勢で先手を
 打つことで、北朝鮮を一気に追い込んでいく「タフネゴシエーター(手ごわい交渉人)」
 の戦略が見え隠れする。

 これに対し、北朝鮮の金桂冠外務次官は同日の記者会見などで「休会期間中に、すべて
 の核を認めないという米国の政策が転換されることを望む」「世界のすべての国は平和
 的核活動の権利を持っている」などと平和利用の放棄には応じない立場を改めて強調し
 た。

 確実に「包囲網」が狭められている北朝鮮としては、米国側に協議の進展がないことの
 責任を押し付けるしか手だてはない。形勢逆転を狙うのは難しい状況になりつつある。

 ◇「決裂」の可能性も

 ヒル次官補によれば、今回の協議で共同文書採択に至らなかった大きな要因は、北朝鮮
 側が一九九四年の米朝枠組み合意に基づき、日米韓などが参加する朝鮮半島エネルギー
 開発機構(KEDO)が着工したものの建設を中断している軽水炉事業の再開を求めた
 ためだ。

 北朝鮮の高濃縮ウラン開発疑惑発覚を受け、二○○三年十二月に中断した軽水炉建設事
 業は、日米韓三国とも事業に将来性がないと判断、終わらせたいとの立場で、北朝鮮の
 主張が受け入れられる余地は小さい。

 「協議が再開すればまた会いましょう」――。休会が決まった七日の記者会見の最後に
 笑顔でこう語った金次官だが、越えるべきハードルは高い。本国との調整も難航すると
 みられ、北朝鮮の出方次第では、合意した三週間後の六カ国協議再開約束が履行される
 かどうかさえ不透明だ。

 再開しても、北朝鮮が核放棄という「戦略的判断」を留保し続ければ、「決裂」に至る
 可能性も排除できない。核問題をめぐる「暑い夏」は当面続きそうだ。
(世界日報掲載許可)
       Kenzo Yamaoka
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6カ国協議休会/北朝鮮は「核放棄」で決断を   
   
  北朝鮮の核をめぐる六カ国協議は、二十九日からの週に再開することにして休会した。
 現在の状況に変化がない場合、北朝鮮が協議再開に応じるかどうか不明だ。協議復帰自
 体を北朝鮮が「カード」に使う可能性もある。協議は正念場を迎えたわけで、五カ国は
 核の完全放棄へ金正日総書記の決断を促すよう最大限の外交努力を傾注すべきだ。
共同文書作成で米朝対立

 協議が行き詰まったのは、共同文書の作成段階で「核の平和利用」をめぐり米朝が真っ
 向から対立したためだ。第四次草案は、核放棄の対象を「核兵器と核計画」とし、北の
 平和利用を認めないものだ。北が平和利用を名目にした原子力施設を核兵器製造に利用
 した前歴があったことから米国が強く主張したのである。

 日米韓ロの四カ国が同草案に同意したのは前進だが、北は頑強に拒否したのは残念だ。

 北の主張は放棄の対象を「核兵器と核兵器計画」にとどめようとするものである。土壇
 場になって朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)による軽水炉型原発の供与を要求
 したのも、平和目的の核計画を進める権利を絶対に手放さない姿勢を示すためだろう。

 北の核拡散防止条約(NPT)への復帰を条件に平和利用を認めるという案も出たが、
 北への不信感の強い米国は普通のNPT加盟国と同じに扱えないと同案に懐疑的だ。北
 が平和利用の権利に固執したのは、その存在を否定しているウラン濃縮計画まで放棄さ
 せられることを恐れたためとみてよい。このような態度では、北は核の全面放棄を真剣
 に考えていないと見られても仕方がない。

 協議は「朝鮮半島非核化」の最終目標や北への「安全の保証」で合意したが、手順は先
 送りにされた。北の核放棄を先決とする米国と、米国の核の脅威除去や米朝関係正常化
 との同時進行を求める北は原則確認にとどまった。協議が再開されても難航は必至だ。

 日本にとり残念だったのは、ミサイルと拉致問題が共同文書で扱われなかったことだ。
 しかし「日朝平壌宣言」の趣旨の尊重という形で、拉致やミサイル問題などの懸案解決
 を間接的に北に促すことで合意したことと、最終日に北との接触ができたことについて
 は、日本代表の努力を多としたい。

 今回注目されたのは、米朝の真剣な交渉姿勢だ。北は従来のように自国の原則的立場を
 声高に主張したり、脅迫じみた言葉は使わず、核についても従来の「凍結」から「放棄」
 に応じた。

 北の一応の柔軟姿勢の背景にあるのは、食糧事情とエネルギー事情の悪化だろう。米政
 府はイラク情勢の行き詰まりやイランの核疑惑という重荷を抱えており、何としても目
 に見える成果を上げようと交渉の決裂は避けた。

 米国が共同文書の作成にこだわったのは、従来の議長声明では拘束力はないからだ。そ
 れだけに北は共同文書の作成で平和利用の名目で「核カード」を温存しようとしたのだ
 ろう。

引き延ばし作戦を避けよ

 だが、北が協議再開に応じず、時間稼ぎの引き延ばし作戦に出た場合、北の狙いは核保
 有国になることだとして、協議自体の有効性が問われよう。北の核問題は国連安保理で
 の制裁論議や大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)といった強硬措置の検討段階に移
 ることになろう。体制存続が北朝鮮の念願だろう。このままでは国内の窮乏と国際孤立
 が深まるだけだ。金総書記にとり決断の時が来たといえよう。世界日報掲載許可
    Kenzo Yamaoka


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