2054.米中関係に暗雲



米国と中国の関係は友好的な関係を維持していたが、台湾軍事占領
を目指す中国と米国が難しくなる。    Fより

米国のイラクからの撤退が、近々話題になっている。下院・上院と
もに、イラク撤退期限を示せと言い始めている。しかし、ブッシュ
政権は、イラクからの撤退時期は示せないとしているが、イラク政
府と交渉で、イラクの主権が確立したら、米駐留軍を削減するシナ
リオを示している。これに危機感を抱いたイラク・シーア派政府は
イランに軍事援助を頼んでいる。理想主義のネオコンを切ったブッ
シュ外交がライスの冷徹な現実主義(リアリスト)になってきてい
る。

イラクには大量破壊兵器がないことを知って、米国はイラク戦争を
始めたという英国からの暴露が明らかになり、かつイラクでのゲリ
ラの抵抗が一向に収まらないことで、米国民はブッシュのイラク戦
争に疑問を持ち始めている。そして、肝心の新規軍人募集も停滞し
て集まらない。このため、イラク駐在米軍の死者数を小さくする工
作をしているが、インターネットで実態が明らかにされている。
そして、脱走兵も多く、今後のイラクでの展望も開けない。当然の
ように撤退が選択肢に上がることになる。しかも、イラク政権はシ
ーア派が握っている。イランと同根である。将来は反米政権になる
と見ている。

その結果がブッシュ支持の大幅な下落になっている。しかし、この
対応として大統領の演説をしても、支持が高まらない状態になって
いる。加えて、ブッシュが一番頼りにしているローブ主席補佐官が
CIA要員暴露事件の張本人との疑いが出て、益々政権の信頼性を
低下させている。ブッシュとしてはライスの外交で挽回したいよう
です。

英国の同時テロで米国も同様なテロの可能性があり、国内のテロ対
策にも資金がいるために、米軍の海外基地を縮小する方向であり、
この米軍がいなくなることで、欧州はNATO軍に替わり欧州軍を
創設する必要が出ている。

それと、欧州にも米製戦闘機を売っていたが、EU製の戦闘機にな
るために、それもできなくなる。このため、米国が考えたことは、
テロ用対策機器を欧州に売ることである。このためには、テロを起
こして危機を作る必要があったのだ。アルカイダ要員と見なす被疑
者を米国内では監視して、英国外では泳がすことを意図的にしてい
るように見える。しかし、アジアでは違う論理で米国は商売をして
いる。それがアジアの冷戦構造である。

アジアでは冷戦構造が持続しているために、この冷戦構造を利用し
て、米軍経費をアジア同盟諸国に押すつけることができるために、
米軍は駐留を維持できるようである。日本の米軍基地の設備は米国
内より断然良いために、日本への転勤を希望する米海兵隊員は多い
ようである。

この冷戦構造を維持するために、北朝鮮の存在は重要であった。中
国と米国は友好関係を維持して経済的な利益を取れたのも、北朝鮮
を敵として見せて、日本や韓国にイージス艦を売ったり、日本に高
額のMD研究を押し付けるためである。

しかし、韓国は北朝鮮との戦争や統一の両方を回避するために、親
北朝鮮や親中国の姿勢になり、米政権の冷戦維持という意向とは違
う行動を取るようになって、困惑していた。しかし、韓国が核廃棄
後の北朝鮮の支援金のほとんどを出すと言うことで、今までの冷戦
構造を維持できないことがハッキリした。韓国としては北朝鮮を統
一したり戦争するより、支援の方が断然にコストが安い。

この韓国の行動を米国は止められないと理解して、米国はアジアの
構造を変化させることが必要になった。6ケ国協議で核廃絶させて
、韓国と北朝鮮を米国の味方にして、反対に中国を敵にすることで
冷戦構造を維持する方向に変化させるようである。特に台湾と中国
の紛争は重要で、このことで危機的な状況を作れると見ている。

しかし、中国は米国がそのような戦略の変更を促進するような反米
同盟戦略を仕掛け始めている。上海機構で中央アジアから米軍の撤
退を宣言したり、イランを機構に入れて米国を刺激している。

現時点ではまだ、北朝鮮との問題があるために米国はあまり反発し
ていないが、イラクからの米軍撤退や6ケ国協議で北朝鮮が核廃絶
すると、今後は米国が中国を刺激することになる。中国の民主化促
進という刺激材料も法輪功と使って準備している。それが九評とい
う共産党を批判する大紀行時報や新唐人TVである。

このため、中国は北朝鮮に核開発継続を支援することになるような
気がする。中国としては今の状態を維持したいのである。しかし、
米国は6ケ国協議で成果がなかったら、戦争であると脅しを北朝鮮
にしている。これは中国の工作を防止するためである。中国は元を
切り上げると、日本企業が中国から撤退して、ベトナムに行くこと
を知っている。このため、米国もベトナムと友好関係を確立してい
る。

ロシアは中国に兵器を売るために同盟関係を樹立したが、日本とも
友好関係を確立する方向である。真に中国との同盟を志向している
わけではないのですよ。ロシアとしては商売のためにやっているの
です。

同様に日本も中国と敵対関係になるなら、ロシアとは友好関係を確
立することが必要である。中国を孤立すさせることを、日本も考え
る必要がある。米国はインドとの戦略的な関係を確立して、徐々に
中国の孤立政策を採っている。
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米国、6者協議の打ち切りに言及 「今回成果なければ」(ASAHI)
2005年07月18日06時02分

 北朝鮮の核問題をめぐり、今月下旬に再開される6者協議につい
て、米政府が日韓両政府に対し、「今回成果を得られなければ、協
議を継続することは許されない」との意向を伝えていたことがわか
った。日米韓3国は今回、前進があるまで断続的に協議を開きたい
考えだが、北朝鮮が応じるかはわからない。米国としては、成果が
なければ協議を打ち切り、6者協議に代わる「圧力」を検討する構
えだ。 

 日本政府関係者によると、米国は14日にソウルで開かれた日米
韓の6者協議首席代表による協議でこうした方針を表明。日韓両国
も、今回の協議で具体的な前進が必要との考えで一致した。 

 また韓国政府関係者によると、ライス米国務長官は今月、日中韓
3国を訪問した際、今年末までに核問題の最終的な解決を目指す考
えを示唆したという。
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台湾軍事介入なら米を核攻撃の用意…中国軍幹部が発言

 【中国総局】15日付の英紙フィナンシャル・タイムズによると
、中国人民解放軍の朱成虎・国防大学教授(少将)は、外国人記者
との会見で、米国が台湾に関する紛争に軍事介入するなら中国は米
国に対し核攻撃する用意があると語った。北京発の特派員電で伝え
た。

 これによると、同教授は個人的な見方とした上で、「米国が中国
の領土にミサイルや誘導弾を発射すれば、われわれは核兵器で対応
しなければならないだろう」と発言。さらに、「中国は西安(陝西
省)以東の全都市の破壊に備える」とする一方で、「米国は数百の
都市が破壊されることに備えねばならないだろう」と述べた。

 中国は核兵器を先制使用しない立場を公式には取っている。ただ
、同紙によると、台湾問題に関連した核兵器の使用に言及したのは
朱教授が初めてではない。朱教授は以前にも、中国は長距離ミサイ
ルで米国を攻撃できると述べたことがあるタカ派軍人で、今回の発
言は米国をけん制したものと見られる。
(2005年7月15日22時2分 読売新聞)
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中露が大規模演習 来月 台湾武力侵攻を想定か

 【モスクワ=内藤泰朗】中露両国の国防当局者は一日、初の大規
模合同軍事演習を来月実施する合意文書に調印した。中露は台湾の
独立阻止でも連携強化を確認しており、モスクワの軍事筋の間では
、戦略爆撃機などを投入する演習が中国による台湾武力侵攻を想定
したものとなる懸念が強まっている。
 インタファクス通信によると、「平和の使命2005」と命名さ
れた合同演習は、八月十八−二十六日の九日間、ロシアの陸海空の
各軍から兵力三千人、中国側からは五千人以上が参加して行われる。
 指揮所演習が中心となる第一段階はロシア極東軍管区で行われる
が、実戦的な内容が中心となる第二段階は、黄海に面した中国の遼
東半島で実施され、ロシア空軍の戦略爆撃機ツポレフ(Tu)95
による巡航ミサイル発射訓練のほか、空挺(くうてい)部隊の降下
訓練などの上陸を想定した演習が予定される。
 ロシアと中国のほか、中央アジア四カ国でつくる上海協力機構六
カ国の国防相が、演習の最終段階を視察するという。
 ロシアのインターネット通信レンタ・ルがロシア国防省筋の話と
して伝えたところによると、中国側は当初、日本や台湾に近い東シ
ナ海沿岸の浙江省で演習実施を求めていた。これに対し、ロシア参
謀本部が反発して協議の末、演習地は変えることができたが、演習
内容は変更できなかった。
 ロシア国防省は、今回の演習が、中露の信頼醸成を深め、反テロ
戦争での連携強化の一環だと説明している。中露は二〇〇一年ごろ
から軍事演習を模索していた。
(産経新聞) - 7月3日3時2分更新
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米と友邦になりたい 金総書記がと韓国統一相

 【ソウル14日共同】韓国の鄭東泳統一相は14日、韓国マスコ
ミ幹部との懇談で「金正日総書記のメッセージの核心は米国と友邦
になりたいということだ」と述べた。
 先月、金総書記と会談した鄭統一相は、その後の訪米でチェイニ
ー副大統領と会談した際、時間の半分は金総書記との会談内容を、
残り半分は朝鮮半島情勢や統一問題に関する自分の考えを説明した
と語った。
 また、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)による北朝鮮に
対する重油供給中断決定は「深刻な問題であり、あまりに性急だっ
た」とし、北朝鮮が南北首脳会談以降に何度も電力供給を求めてき
たと指摘。北朝鮮が協議を通じ核問題を解決する意思を持っている
との見方を示した。
(共同通信) - 7月14日22時18分更新
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駐留軍削減、イラク政府と協議へ=規模と時期は明示せず−米大使

 【ワシントン13日時事】米国のハリルザド新駐イラク大使は13日
、赴任を前に外国人記者と会見し、「われわれは駐留米軍を減らし
たいと思っている。配置や規模は状況に応じて変わり得る」と述べ
、治安の改善状況やイラク人部隊への権限移譲の進ちょくを見なが
ら、イラク政府と米軍削減の協議を進める意向を表明した。
 ハリルザド大使は「われわれの目的はイラク人が自分の足で立て
るように支援することだ。恒久的な米軍駐留は求めていない」と強
調した。ただ、「どのくらいの割合で、いつ削減を始めるかは状況
次第であり、イラク政府の同意を得なければならない」と指摘し、
具体的な削減の規模や時期は明示しなかった。 
(時事通信) - 7月14日7時1分更新
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「二正面戦略」を見直し テロ対策重視で米軍

 【ワシントン5日共同】米国防総省のディリタ報道官は5日、国
防総省が現在進めている「4年ごとの国防戦略見直し」の中で、ほ
ぼ同時期に2つの海外での戦争に勝利するとした現在の米軍の「二
正面戦略」を維持するかどうかの検討を進めていることを明らかに
した。
 海外での戦争は中東と朝鮮半島を想定しているとされ、米軍戦略
が変わった場合は、日本を含む地域情勢にも影響が出る可能性があ
る。
 5日付の米紙ニューヨーク・タイムズによると、大規模テロ対策
など米本土防衛を重視する狙いから、米軍内では2つの海外での戦
争に勝利するとのこれまでの戦略維持が可能かどうか疑問が浮上し
ていた。
(共同通信) - 7月6日10時43分更新
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英当局、警戒怠る=米で監視されていた自爆犯−タイムズ紙

 【ロンドン16日時事】16日付の英紙タイムズによると、ロンドン
同時テロの自爆犯の一人とされるジャマイカ生まれの英国人リンジ
ー・ジャーメイン容疑者が訪米した際に、米当局が同容疑者をテロ
警戒リストに載せて行動を監視していたにもかかわらず、英当局は
警戒を怠っていたことが分かった。 
(時事通信) - 7月16日13時0分更新
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米上院議員「人民元改革は近いと米政府から情報」(nikkei)

 【ワシントン=小竹洋之】「中国政府はまもなく人民元の変動幅
を拡大するという報告を受けている」――。米民主党のシューマー
上院議員は15日、米政府から人民元改革の時期が近いとの情報を得
ていると語った。AP通信が報じた。

 15日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、スノー米財務長官が
6月末にシューマー、グラム両上院議員と会談した際に、中国政府が
8月中にも人民元改革に動くとの見通しを示していたと報じた。シュ
ーマー議員は8月という時期には言及しなかったが、米政府が今後数
カ月以内に中国の人民元改革が実現すると報告したことが、対中報
復関税法案の採決延期を決断する理由になったと説明した。

 ただ「確証ではなく見込みだ。米政府もそう信じている」と語り
、米国側の感触にすぎないとの見方を示した。 (18:52) 
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中国―体制内改革派を自任していた香港人ジャーナリスト   
   
 中国―体制内改革派を自任していた香港人ジャーナリスト程翔氏の逮捕に秘める悲劇性
威圧的言論統制続く
 中国では「境外華人」(中国籍以外の華人)のスパイ事件が少なくない。その中で冤罪
 (えんざい)が明らかになったのは、文化大革命の研究者で在米華人の宋永毅氏、ハー
 バード大学法学博士で香港人の黄賢氏、英オックスフォード大学博士の徐沢栄氏の三人
 のケースだ。いずれも海外組織に国家機密を漏洩(ろうえい)したスパイ罪で逮捕、懲
 役刑の満期を終えたころに冤罪が確定しており、スパイ罪の濡れ衣は華人知識人の半生
 を台無しにするばかりか、中国政府は華人知識人に対して「一罰百戒」の威圧的言論統
 制を続けている。

 四月二十二日、シンガポール英字紙ストレーツ・タイムズの東アジア担当特派員で香港
 人ジャーナリストの程翔氏(56)が、中国広州市内でスパイ罪容疑で逮捕された事件
 も香港では同様の冤罪事件ではないかとの観測が強まり、各メディアは逮捕の内幕を胡
 錦濤派と江沢民派の権力闘争の巻き添えとの観点で詳細に報じている。

 香港大学経済学部卒のエリートだった程翔氏は中国系香港紙「文匯報」で香港の大学生
 工作の担当記者を経て一九八〇年代初期、北京に文匯報が中国最初の海外プレスセンタ
 ーを設置して以降、その責任者となり、北京駐在七年のベテラン中国専門記者となった。

 当時、自由主義知識人や民主活動家との交流が密接となり、八九年の天安門事件が起こ
 ると、文匯報は社説「痛心疾首」で武力鎮圧した中国政府に抗議し、創業者の李子誦社
 長と共に副編集長だった程氏を含む四十人の編集記者は辞職して中立系政治誌「当代」
 (程翔編集長)を創刊した。

 だが、九五年、経営が行き詰まり、休刊。程氏はその後、ストレーツ・タイムズの東ア
 ジア特派員として年俸百万香港j(千五百万円)で採用され、台湾、香港、シンガポー
 ルを拠点に中国政治のスクープ報道を続けた。程氏は愛国、愛港(香港を愛する)、台
 湾独立反対、中台統一推進という立場では中国指導部と完全に一致している。

数少ない親中愛国者

 一点、決定的に違うのは天安門事件での趙紫陽氏失脚に対する見方で、行き過ぎた強権
 政治として中国政府を非難している点だ。程氏は一月二十一日、香港で行われた趙紫陽
 氏死去の追悼大会に参加し、哀悼の意を示している数少ない親中愛国ジャーナリストと
 も言える。

 中国外務省は程翔氏の逮捕について、台湾情報機関から巨額を受け取って国家機密情報
 を漏洩させたことを理由に挙げたが、程氏の妻、劉敏儀夫人の証言などによると、趙紫
 陽氏が今年一月に死亡するまで軟禁生活を強いられた時期、気功の指導をした宗鳳鳴氏
 が趙氏から直接聞き取った内容を新たにまとめた第二弾の原稿を仲介者から入手しよう
 として逮捕されたという。

 拘束時、程氏のパソコンには胡錦濤国家主席のブレーンである陸建華中国社会科学院研
 究員から提供された胡国家主席の内部講話が入っており、陸氏も四月に逮捕されている。
 陸氏の逮捕は、胡錦濤政権が江沢民派を中央紀律委員から追い落とした人事への報復と
 して、江氏の懐刀である曽慶紅国家副主席の旧友、周永康公安相が動いて陸氏を拘束し
 たのが真相(香港誌「前哨」七月号)という。

 陸氏は〇三年七月一日に香港で発生した五十万人規模の大規模民主化要求デモ以降、香
 港入りして情報収集活動を行い、その時、協力したのが程氏。それ以来、親密な情報交
 換を行っていることは中国政府は百も承知で、権力闘争に利用する形で程氏の逮捕に踏
 み切ったというのだ。

悲劇性は白樺と共通

 文革後、幹部の腐敗と利権を風刺した作品を次々と発表した作家の白樺(はくか)は映
 画化された脚本「苦恋」の中で「私は祖国を愛する。祖国は私を愛するか」と訴え掛け
 る名言を残している。

 当時、★(★=登ヘンにオオザト)小平は脚本内容を「祖国に否定的」と批判し、白樺
 は自己批判に追いやられて「苦恋事件」は決着したが、「体制内改革派を自任していた
 程翔氏の逮捕劇は愛国の理想主義者だった白樺と共通する悲劇性を秘めている」(香港
 誌「動向」六月号)との論評は言い得て妙。祖国愛を惹起(じゃっき)させながらも言
 論統制と権力闘争に翻弄(ほんろう)される中国知識人や華人の悲哀は、一党独裁の新
 中国建国以降、変わりようがない。(香港・深川耕治・世界日報掲載許可)
    Kenzo Yamaoka
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6ヵ国協議再開/今度こそ北は非核化の決断を   
   
  北朝鮮の核開発問題をめぐる六カ国協議が、一年一カ月ぶりに再開されることになった。
 歓迎される展開だ。しかし、核保有を宣言した北朝鮮との交渉は今まで以上に前途多難
 だろう。
 北朝鮮に時間稼ぎとして利用されないよう日韓中三国は、同三国を歴訪中のライス米国
 務長官を中心に対北説得のための戦略を固め共同歩調を取ることが必要だ。日本は当然、
 拉致問題をも提起すべきである。(世界日報掲載許可)

楽観は禁物の対北交渉

 六カ国協議は過去三回開催されたが、ブッシュ米政権が「北への敵視政策を強めた」と
 して、北は二月十日に同協議参加への無期限中断と核兵器製造を宣言した。

 北が同協議復帰に踏み切った背景として、北のメンツが立ったことが挙げられる。米国
 が北を交渉相手として認めて尊重すれば協議復帰は可能と言明していた。

 ブッシュ米大統領は同総書記を「ミスター・キムジョンイル」と呼ぶなど、北への配慮
 を示した。北京を訪れたライス長官は「米国は北の主権を尊重する。北攻撃の計画はな
 い」と語った。自国を「圧政の拠点」と述べていた同長官の発言の撤回を求めた北は、
 今回の言明を事実上の発言撤回と受け止めた。

 英国で開催された主要国首脳会議(サミット)での議長総括が北の六カ国協議復帰を求
 めたことや、これ以上復帰を拒めば米政府が柔軟路線に見切りをつけ、日本が議長国に
 なる八月に照準を合わせて北の核問題を国連安保理に持ち出す可能性があることが北を
 動かしたとみてよい。

 しかし楽観は禁物だ。第一に前回の協議と異なるのは北が核保有宣言を行っており自国
 を米、中、ロシアと同等の立場に位置付けて、同協議を「軍縮会議」に変え、核放棄に
 より高い代価を要求する可能性があることだ。

 第二に五カ国の歩調が必ずしも一致していないことだ。

 中ロ両国首脳は一日のモスクワ会談で米国の一極支配反対の共同宣言に調印した。ロシ
 アは北に同情的だ。米中は台湾、人民元問題でぎくしゃくしている。米国は北に対する
 中国の影響力行使は不十分として不満を抱いている。韓国政府の北への急接近も不安材
 料だ。ライス長官の中韓訪問で足並み調整がどこまでうまくいくかが注目される。

 第三に根本的な問題は北が核放棄をしたとしても、それに耐えられるかどうかだ。

 核保有は金体制の支柱であり、核を放棄すれば軍部の反対などから体制がもたないとの
 予測もある。米政府はプルトニウム型の核計画の「全面査察を伴う後戻りできない完全
 放棄」を要求している。

 しかし、北が生き残るには、今度こそ核放棄で決断すべきだ。同協議を失敗に終わらせ
 ないためには、同協議の枠組み内での米朝両国間による高密度の接触が重要となろう。

 北へのアメとムチのレベルを上げることが重要だ。北が求める安全保障や経済支援で米
 側のより大胆な新提案が必要であり、そのために北の自由化、人権、拉致問題など討議
 の拡大が望ましい。

求められる大胆な米提案

 北朝鮮がせめてベトナム型の改革に乗り出す意思があれば、世銀や国際通貨基金(IM
 F)による開発援助も可能との議論も米側にある。

 米提案が大胆であればあるほど、拒否すれば北朝鮮は孤立化し、国連安保理提訴を含め
 た、より強硬な米側の制裁措置が各国から受け入れやすくなろう。
    Kenzo Yamaoka
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力増すキリスト教右派−三浦 祐一郎

米現政権に大きな影響/成熟した行動様式で慎重に
 『エコノミスト』6月25日号は、依然混迷の続くイラク情勢に象徴されるように、こ
 の夏はブッシュ大統領にとって「長く、熱い」ものになる、という特集を組んでいるが、
 その一方で、ブッシュ再選に大きく貢献したアメリカのキリスト教右派勢力について詳
 しい分析記事を掲載している。(世界日報掲載許可)

 六月半ばに開催されたアメリカ最大のキリスト教宗派の一つ、南部バプティスト会議の
 年次総会にブッシュ大統領はメッセージを寄せ、千六百万人を超える同派の信徒たちに
 対して、同性婚や妊娠中絶を非合法化するために努めることを約束するとともに、「家
 庭の価値」についてブッシュ大統領自身も尊重していることを改めて確認したという。

 一九二五年のいわゆる「モンキートライアル」以後、アメリカでも「神が人をはじめ万
 物を造った」とする「創造論」は、信用できないものとされ、アメリカの南部諸州の聖
 書を文字通り信じようとする根本主義者の考えはばからしいと考えられてきた。六〇年
 代に入ると、左翼的な自由主義者たちは学校や政治といった公共の空間から宗教や信仰
 を排除することは良いことだとして、そのような施策を推し進めてきた。

 ところがいまや、大統領をはじめ国務長官、さらに下院議長までもが、福音主義的な信
 条の持ち主だと決めつけられても、それを認めるということになっており、毎週木曜日
 に国会議事堂で開かれる朝食祈祷会は、満席の盛況を呈しているという。

 このような状況について、二〇〇四年の民主党の大統領予備選挙で当初リードし、現在
 同党の全国委員長を務めるハワード・ディーン氏は、共和党を「白人キリスト教徒」の
 政党と決めつけ、共和党内でも穏健キリスト教徒を自任するジョン・ダンフォース元上
 院議員は、過去十年の間に生じた二つの大きな政治的な出来事として、キリスト教右派
 の隆盛と共和・民主両党派間の厳しい対立を挙げている。そして、ダンフォース氏はこ
 の二つの出来事は相互に密接に関連していると述べている。

 このような批判にもかかわらず、政界ばかりでなくアメリカ社会全般におけるキリスト
 教右派の影響力は、今後しばらくの間大きくなることはあっても、衰えることはないだ
 ろうというのが『エコノミスト』誌の結論だが、その理由の一つとして同誌は、キリス
 ト教右派の側の行動様式が成熟し、自分たちの宗教的な信条を政治や社会政策の中で実
 現するために、知恵を使い慎重に事を運ぶようになったと指摘している。
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ネオコン世銀総裁−三浦 祐一郎
疑念払拭し信頼勝ち取る 

 四月の当欄で、第一期ブッシュ政権でラムズフェルド国防長官の側近として、9・11
 以後の対テロ戦争を推進したポール・ウォルフォウィッツ国防副長官の世界銀行総裁就
 任についての懸念と期待に関する、「ウォルフォウィッツの教育」と題する『ニューズ
 ウィーク』誌の記事を紹介した。(世界日報掲載許可)

 ボルトン国務次官の国連大使転出とともに、ネオコンサーバティブの代表的な論客の一
 人であるウォルフォウィッツ氏の世界銀行総裁就任は、ブッシュ大統領の単独行動主義
 的な外交姿勢と相まって、国連や世界銀行という組織を破壊するためではないかと疑心
 暗鬼を生んでいた。

 いまだに議会で承認を得られないボルトン氏の場合は、国連をアメリカの外交政策を進
 めるために活用するために送り込もうとしたと考えられるが、ブッシュ政権の外交政策
 推進の手法が、他の常任理事国をはじめ他の多くの国連加盟国の反発を呼んできたこと
 を考えると、その原因の一つともいえる人物が所期の目的を果たすことを期待すること
 はもとより無理があったかもしれない。

 これに対してウォルフォウィッツ氏の場合も同様に、同氏はこれまでの世界銀行の融資
 や開発援助の手法が何ら効果を果たしていないことを立証するために世界銀行に送り込
 まれたのではないかと疑われたという。

 このような疑念の中で世銀総裁に就任したウォルフォウィッツ氏は、着任して数カ月の
 うちに世銀幹部や職員たちの信頼を勝ち取り始めたばかりか、開発援助の対象国である
 アフリカや南アメリカ諸国を訪問し、貧困の現状につぶさに接し、効果的な援助のあり
 方についての施策を立案しているという。

 9・11に代表される大規模なテロや、アルカイダなどのテロ組織が根だやしにならな
 いのは、宗教や民族対立とともに、富の偏在や貧困の問題が指摘されてきた。そのよう
 な観点から、軍事面に重点を置くブッシュ政権のテロとの戦いの手法は、テロ問題の解
 決につながらないと批判されてきた。

 かつて、世界銀行は第二次世界大戦の復興に大きな役割を果たしたが、最近の世界銀行
 の援助の多くは発展途上国などの貧困を解決するために向けられているという。そのよ
 うな世界銀行総裁としてブッシュ政権の外交政策を立案・指導してきた主要メンバーの
 一人が、対テロ戦争で最終的な勝利を収めるため、テロの温床として指摘される世界的
 規模の貧困根絶のために、自ら望んで、あるいはブッシュ大統領の強い要請に沿って赴
 いたとしたら、これは、「世界民主化計画」を推進するブッシュ政権にとって画期的な
 人事ということになろう。


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