2051.不安な勝利者



       不安な勝利者             S子

どんな勝負事においても同じ土俵に立つ両者がいてこそ、はじめて
勝者と敗者に分かれ、相対する立場が成立する。場合によっては両
者引き分けに終わることもあるだろうが、勝者が成立するためには
同じ土俵に立ち、戦ってくれる明白な相手(敗者)という存在が
あればこそであるということを、私たちは案外忘れてしまっている。

「勝てば官軍」という諺もあり、その心理もわからないわけではな
いが、同じ土俵に立つことを快諾し、戦ってくれた相手(敗者)に
こそ、実は勝者は感謝の念を抱かねばならない。それほど私たち人
間は驕ってはならず、常に謙虚であらねば己を見失ってしまい、
やがては全てを失ってしまうということだろう。

さて、二期目に入ったブッシュ大統領の支持率が45%と低下し、
一期目の9・11事件以降の支持率が90%であったことを考える
と、やはり「ブッシュの危機」は相当なものだろうと察せられる。
出口なき終わりの見えないイラク戦争の感の強い中、米国兵士の死
者も増加の一途であり、いくら傭兵を雇ったところでイラク戦争が
完全に終結しない限り、米国兵士の死者は着実に増え続け、減るこ
とはまずないだろう。

ブッシュ大統領の久しぶりのTV演説では「セプテンバー・イレブン
ス」をことさらに強調したようだが、インターネットの情報高速時
代にもはや「セプテンバー・イレブンス」は既にセピア色に褪せて
おり、その効力を失している。米国民の優位性を鼓舞するために利
用された「セプテンバー・イレブンス」の響きは、ブッシュ大統領
の国威発揚演説とは裏腹に、米国民には空しく聞こえたに違いない。

その空しい「セプテンバー・イレブンス」の響きは、身内や友人、
知人等の身近な死を目の当たりにするたびに、米国民のイラク戦争
への意味を新たに深く問う契機となったはずである。米国への本土
攻撃から始まったイラクへの先制攻撃は正しかったのかどうか。
米国に正当性があったのかどうか。こじつけた無謀な論理の中で遂
行された先制攻撃は、果たして良かったのかどうか。そして、米国
民の心に去来するだろう過去と現在、そしてまだ見ぬ未来へと続く
「何かすっきりとしないもの」は一体何なのか。

イラク戦争開戦から44日目、ブッシュ大統領は突然の戦闘終結宣言
を出し、米国の勝利を世界に、また米国民に大きくアピールした。
国連決議1483の採択(米英によるイラク統治の承認、経済制裁
の解除等)により、イラクに連合国暫定当局を発足、そしてイラク
暫定政権への主権移譲、国民議会選挙の実施、選出議員による国民
議会の開幕、それに伴う移行政府への権限委譲とイラク全土統治。

ブッシュ大統領の戦闘終結宣言を受けて、イラクは表面的には遅々
としながらも終戦体制下に向けて動いているように見える。しかし
、その間には日本も含む各国の人質事件やその犠牲が相次いでいる
。日本の陸上自衛隊イラク派遣があった反面、ハンガリーやポルト
ガルの多国籍軍のイラク撤退もみられた。ますます荒れるテロ集団
の攻撃もずっと止むことはなく、むしろ最近のテロ戦闘は激化して
いるようにさえ感じる。

このような現況の中で、勝者であるはずの米国民、特にイラクで戦
っている米国兵士に厭戦ムードや不安が広がっているのは確かなよ
うだし、米国自身に何だかいつもの元気がない。米国は勝者の側で
あるはずなのにそれを素直に喜べないどころか、「何かすっきりと
しないもの」を抱え込んだまま、勝者という意識もどこか曖昧なま
ま今日まできているように見受けられる。一体どうしたことか。

米国は先制攻撃という形でイラクを戦いの土俵に無理やり乗せるこ
とにはとりあえず成功した。が、フセインを拘束しても結局大量破
壊兵器は存在しなかったことがわかり、戦うべき明白な相手の見え
ないテロ戦争に向かうことで、米国は自ら不利な状況を招いてしま
ったようだ。

どんな勝負事においても同じ土俵に立つ明白な両者が存在しなけれ
ば、それは勝敗を分ける戦いにはならないと私は思う。明白な勝者
、明白な敗者が存在してこそ、完全な終戦を迎えることができ、勝
者は勝者としての明白な意識を強く抱くことができるのである。

米国が今イラクの土俵で戦っている相手は、目に見えない、国家概
念のないテロ集団であり、それはまるでゾンビと戦っているような
ものだろう。倒しても倒しても、殺しても殺しても何度でも甦って
くるあのゾンビである。ゾンビ相手に勝利宣言をしてもそれは雲か
霞でもつかむような手ごたえのない空虚なものでしかない。だから
米国という勝者は不安なままでいるしかないのである。

今後もこのような情勢が続くのであれば、不安な勝者である米国は
、テロ集団というゾンビとともに己を見失ってしまい、やがては全
てを失ってしまうのではないかと思われるが、どうか。
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(Fのコメント)
どうも、米軍の犠牲者1400人という数は、実際にイラクで死亡
している米軍人の数より大幅に少ないようである。実際は9000
名以上がイラク戦争犠牲者であり、そのほとんどはイラクからドイ
ツの病院に送られる途中や病院で亡くなっているようだ。それと脱
走兵も大量になってきている。1万人以上がイラク駐留地からトル
コやシリアに逃れている。

米軍の危機的な状態で、英国は半分の兵力をイラクから撤退させる
と宣言した途端に、ロンドンでも同時多発テロが起きている。米国
ブッシュ大統領は反米と騒ぐ中国にも北朝鮮説得を頼むように、イ
ラク戦争を抱えていて、かつ米国での支持率低下で窮地に落ちいっ
ている。米軍の兵員募集に、米国民はそっぽを向いている。このた
め、米軍の要員から雇用兵にどんどん切り替わっている。米国とし
ては自国兵も必要なので徴兵制にしたが、この支持率では無理でし
ょうね。

英国は、より安全なアルガニスタンの派遣に切り替えると言う。
そして、日本はどうするかだ。どんどん自衛隊の基地に危機が迫っ
ている。
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ロシア政府、酒製造販売も国営化か?!
まったく何から何まで統制されてくるで・・・

と関西人がぼやいても、しゃあないけど、
最近のロシア人の気の毒さというのは、
なんか、口に輪っかはめられて、芸を仕込まれる
ボリショイサーカス辺りの熊みたいにも見える。
それくらい、手荒く国民が仕込まれているのは
一体なんなのか、よく分からんところがまた怖いが。

ついに、ロシアのプーチン大統領が
アルコール類の製造から販売までを国営化することで、
偽造アルコールの飲酒によって、毎年ロシア国内で
死亡しているという4万人の命を救うことにもなるとの
触れ込みで動き出したらしい!

それにしても、見事な言い訳でもある。
たしかに、4万人も可笑しな酒を飲んで死ぬことはないし、
そういうことはあってはならないというのは、もっともな
話なわけだが、ロシア人と切っても切れない酒の製造から
販売まで国家が統制することの意味は、かなりそれとは
違う意味で、大きな金ヅルを握るということでもあるし、
ロシア国民の喉元までも支配するような感じが
しなくもないねんけど。

しかも、3日はロシアの飛び地(ちょうどロシアから
この土地まで他の国を挟んでいるが、なぜかいまだに
ロシア領な場所)カリニングラードで欧州の要人を
招いて、百何十周年かの式典をやったとか。
スペイン大統領は出席できなかったらしいが、もう、
ここでも、エネルギーという大きな切り札を持った
ロシアの偉そうな態度が、EU諸国にも通用するところを
見せ付けるプーチン。

(このカリニングラードとは、昔のプロイセン王国の
首都ケーニスヒブルクが旧ソ連領になってからの
名前らしい。また、ここは哲学者のカントの出身地と
しても知られ、多くのドイツ人が住んでた家のままの
ところにいまだロシア人が住み続けている状態らしい。

なんか、シャラポワがウインブルドンで負けようと、
ロシア人の世界での偉そばり方は、そう簡単に変わりそうも
なく、かなり横柄な態度な気がする関西人なのだが。
それでもやっぱり、そんなロシアが嫌いになれない
というのも困ったもんである。

CHOCO
http://blog.melma.com/00010124/20050703214549

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Re:イラン戦争はもうすでに始まっている アルルの男・ヒロシ
   
 REAL INSIDERS
by JEFFREY GOLDBERG
A pro-Israel lobby and an F.B.I. sting. 
Issue of 2005-07-04
Posted 2005-06-27

http://www.newyorker.com/printables/fact/050704fa_fact

チャラビみたいにインストールするのは、Manucher Ghorbanifarで
、脚本演出は、マイケル・レディーンかな?

http://www.nybooks.com/articles/4049

イラン戦争モードで情報収集しないといけないですね。
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巨大資本とイスラム社会        とら丸
   
  巨大資本にとっては、一つの国も(米国も)単なる金儲けの道具
にすぎない。

 巨大資本の行動原理はおそらく単純でありその行動原理は「商売
」であろう。ただ、情報の操作及び独占が行えるので、いったん
このシステムを構築すると、半永久的に世界の金をかき集めること
が可能なのだろう。

 彼らにとっては戦争や国家間の緊張関係も単なる商売の一ステー
ジにすぎない。わが国も彼らの台所の片隅にあるひとつのなべの中
身だろう。彼らは適当に火をとおしてかき混ぜるのだ。

 いや、今まではそう考えていた。しかし昨今のイラク及びイスラ
ム社会との摩擦は、今後、巨大資本の予想外の展開になる可能性が
ある。

 イスラム社会の理念とグローバル化の進展による貧富の拡大が複
合し、新しい社会変革の芽を感じる。

 イスラム社会では、貧しいものに施しを与えて、社会の安定を図
る社会安定化システムが作用しているが、かたや米国の主張するグ
ローバル社会で見られるごく一部の人間に富が集中する社会システ
ムと、激しく対立しているのだ。 
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[アラブの声]およそ9千人の米軍兵士が死亡? 生存者の方々から
情報を求める全国的呼びかけ

ピース・シーカー(平和の探求者)著

「死」の概念を定義しなおすことで、ブッシュ政権は、米軍の死者
数を劇的に少なく申告していたのだろうが? 下記の記事は、そうで
あったことを示しており、名前を挙げて、数えることで死亡した軍
人に敬意を払うという全国的キャンペーンを呼びかけている。

記事によれば:「現在ごく内密に回覧されている国防総省のリスト
では、およそ9千人[米軍兵士]が死んでいる。これは「公式」死
亡者数の1,831人をはるかに上回る。どうしてこんなことになるのだ
ろう? それは、基本的に「ドイツの病院で、あるいは、ドイツの
病院に向かう途中で亡くなった米軍兵士は計上されてこなかった、
ためだ。」

言い換えれば、「死亡」は定義しなおされていたのだ。

あなたが今すぐできること:

1. ブッシュの戦争で亡くなった軍人を直接(あるいは人から聞いて
)知っている場合は、http://www.tbrnews.org/Archives/list.htmで
、その人の名を"公式"国防総省のアルファベット順死者リストで調べ
てください。もしそうした人々の名前が掲載されていなければ、
tbrnews@hotmail.comにお知らせください。地元の国会議員、地元の
新聞、或いは他の関係する団体にもお知らせください。

2. このウエブ・ページを亡くなった軍人を知っているかも知れない
方に転送してください。

3. このウエブ・ページを退役軍人のグループ、他の組織、信頼でき
るジャーナリストや、まともな議員の方々に転送してください。

虐殺者ブッシュの勘定書:公式には、2005年5月1日から21日
間のイラクでの米軍兵士死者数は80人、今日までの米軍死者の公式
総計は1831人(そして増加中)

(以下の文章は http://www.tbrnews.org/Archives/a1682.htm からのものである。)

ドイツの病院で、あるいは、ドイツの病院に向かう途中で亡くなっ
た米軍兵士は、これまで数えられていなかった。2005年1月1日の
時点で、その数は6,210人にのぼる。イラクにおける死者の現在の
過小報告は正確ではない。国防総省は意図的に数値を少なくしてい
る。多くの海外ニュース・ウェブ・サイトを検討すると、実際の死
者は、最近の少なく表示されているものよりずっと多いことが分か
る。イラク人民間人死傷者はこれまで決して報告されていないが、
2005年1月1日現在の国際赤十字、赤新月及び国連の数値は
10万人をわずかに下回る。

ブライアン・ハリング、国内情報レポーター

注:イラクにおける膨大な死者の数を、国防省は意図的に報告して
いないと信じるべきれっきとした理由がある。公式に報告されてい
る数よりもずっと多くの死体がドーヴァー空軍基地に送られている
ことを示す米軍航空輸送部の送り状の写しを我々は入手している。
知識に基づいた噂によれば、実際の死者数は7,000人を超えるという。
公式に15,000人以上の重傷者が認められていることからすれば、格
段に多いこの死亡者数の方が、現行の公式発表の1400+人より
、はるかに現実的だ。我々の調査が完成明らかな死亡者数の変造に
加えて、最少5,500人のアメリカ軍人が多くはアイルランドへ、
しかしより多くはカナダや他のヨーロッパ諸国に脱走しており、
その誰も執念深いアメリカ当局に協力したいなど考えてもいない。
これはつまり、イラクに派遣された158,000人の米軍兵士のうち、
26,000人は、脱走したか、殺されたか、重傷を負っていることを意
味している。

公式の国防総省の死傷者リストの写しを私は持っている。私はこれ
をアルファベット順に並べ、亡くなった日として報告されている日
をつけている。TBRはこのリストを掲載するので、これは広く退役軍
人グループや他の関連サイトに周知されるが、亡くなられたご家族
の方のお名前をそこで見つけられない場合は、地元国会議員、地方
紙、私ども、そして他の関係した人々に、早急にお知らせ下さい。

偽ってイラクの現場で実際に殺された兵士だけ報告して、政府は途
方もない嘘で切り抜けてきている。死にかけている者、或いは致命
傷を負った者は、イラクから陸軍病院への移送途上として計上され
、日々の更新には反映されない。バグダッド空港からの輸送機が離
陸する時に亡くなった人もアメリカ陸軍病院で亡くなった人も、リ
ストには載らない。こうした人々の家族は確実に、息子、夫、兄弟
或いは恋人が亡くなったという知らせを受け、その遺体或いは、残
されたその一部は、祖国のドーヴァー空軍基地へと送られる。ブッ
シュ大統領が、納棺され、国旗に覆われた個人を撮影してはならな
いと、個人的に命令したことを理解しておくことが必要だ。ブッシ
ュ大統領は、これは親類遺族を慰めるためだと主張しているが、
その実、到着する死体の膨大な数を秘密にしておく為のものだ。
いかなる民間人あるいは軍関係者でも、それを撮影したものは、即
座に収監され起訴される。

このリスト行動は終了している点ご了承請う。万一、実際に例えば
、名100人以上違えば、それは嘘をついているという有力な徴候
だろう。6月16日現在、TBRは32人のリストに掲載されていな新
たな名前を受け取っている。

*負傷者についての最新情報:「150床を有する病院、ドイツの
ランドシュトゥール地域医療センターは、開戦以来、イラクとアフ
ガニスタンから、すでに2万4千人以上の軍人負傷者を収容してい
る」ナイト・リッダー・ニュースペーパー、2005年6月6日(
注:国防総省は、いかなる負傷者のリストも公表することを拒否し
ている。編集部)

「公式」アルファベット順のリストの リンク:
http://www.tbrnews.org/Archives/list.htm
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刑務所の元ロシア石油王   
  
 政権による政治的懲罰/ホドルコフスキー判決の波紋
時事総研客員研究員 中澤 孝之
ユコス裁判は検察の全面勝利   世界日報掲載許可

 全世界的に注目されていたユコス裁判にひとまず決着がついた。五月末、ロシア最富豪
 といわれたミハイル・ホドルコフスキー被告(元ユコス社長・四十一歳)に判決が下っ
 たのである。禁固(自由剥奪)九年。共謀者のプラトン・レベジェフ被告(元メナテッ
 プ会長・四十五歳)にも同じ量刑の有罪判決が言い渡された。いずれも、脱税、詐欺、
 横領、虚偽申告など六つの罪状によるもので、「組織犯罪グループ」(起訴状)を摘発
 した検察側(十年を求刑)の全面勝利だった。ホドルコフスキーは一昨年十月逮捕され、
 レベジェフはその三カ月前に捕まったから、判決までの約一年七カ月間、約一年十カ月
 間それぞれ拘禁されていた。西側では考えられないことだが、その間、保釈は一切認め
 られなかった。

 ユコスといえば、ロシア最大の民間石油会社であり、その持ち株会社がメナテップだ。
 ホドルコフスキーはメナテップ創始者(レベジェフも)で、九五年ユコスの民営化に際
 して株を格別安い値段で手に入れて同社のオーナーに。石油王となり「ホドルコフスキ
 ー帝国」を築く。もともとはソ連時代末期、つまりゴルバチョフ時代に、コムソモール
 (共産青年同盟)の幹部として頭角を現し、ソ連解体後実業界に身を投じた才覚のある
 人物だ。ユダヤ系である。エリツィン時代の「国家資産の略奪」を理由に、今なお国民
 から嫌われている新興成金、オリガルヒ(政商)の一人にも数え上げられている。

 実は、外国の報道でほとんど伝えられていないが、もう一人、同じ日に判決を受けた被
 告がいる。アンドレイ・クライノフで、肥料会社アパチトの違法民営化に関与したバル
 ナ社社長だった。九四年アパチト民営化の際にホドルコフスキーらは不正にその株を取
 得したといわれる。彼は執行猶予付き禁固五年半の判決で、釈放された。ホドルコフス
 キー、レベジェフ両人とも当然ながら控訴した。控訴審の最終判断までには約一年かか
 ると見られている。ホドルコフスキーの場合、今後、政治的判断により恩赦で釈放され
 る可能性が全くないわけではないが、引き続き拘禁されたままとなる。拘禁期間を差し
 引いたとしても、釈放されるのは、〇七年末の下院選挙、〇八年春の大統領選挙以後と
 なる計算だ。それが政権側の真の狙いだったと思われる。現在のプーチン政権にとって
 ホドルコフスキーは危険人物なのだ。

政治に野心を抱き返り討ちに

 ホドルコフスキーはなぜあの時点で逮捕されたのか。一つには、彼が政治的な野心を明
 らかにし始めたことだ。プーチンは〇〇年五月大統領就任早々オリガルヒに対して政治
 への関与を禁じる旨言い渡した。エリツィン時代にはオリガルヒの政権との癒着が目に
 余るほどだったからだ。この警告に逆らったのが、現在国外亡命中のベレゾフスキーで
 あり、グシンスキーである。ホドルコフスキーは首相権限の強化や議会制民主主義の必
 要性を説いたり、野党勢力に資金援助までした。彼は首相の座を狙っているといった噂
 まで飛んだ。これがプーチンとその周辺の大きな反感を買った。

 第二に、〇三年十二月の下院選挙と〇四年三月の大統領選挙を控え、国民の反オリガル
 ヒ感情を利用してユコス裁判をクローズアップし、プーチン与党である「統一ロシア」
 の勝利と、プーチン再選の追い風にするためでもあった。選挙結果は政権側の目論み通
 りだった。民主勢力といわれた野党は軒並み惨敗し、プーチンは再選された。この作戦
 は、エリツィン政権の末期、九九年の下院選挙、〇〇年の大統領選挙の直前に、「第二
 次チェチェン戦争」が始まり、プーチン与党が勝ち、プーチンがエリツィン後継大統領
 として選出された前例を思い起こさせる。次の選挙でプーチン政権は、何を利用するつ
 もりだろうか。

 ユコス事件の「陰の仕掛け人」(指揮官)は、プーチンの信任の厚いセーチン大統領府
 副長官(四十四歳)といわれている。昨年七月に、副長官職を兼任しながら、国営石油
 会社ロスネフチ会長に就任した人物だ。ホドルコフスキー逮捕の直後に、このセーチン
 の娘が何と、ユコス事件の総指揮をとっているウスチノフ検事総長の息子と結婚したこ
 とが判明している。政権周辺でのこうした姻戚関係では、ユマシェフ(元大統領府長官
 でエリツィンのゴーストライター)が離婚して、エリツィンの二女で大統領顧問を務め
 たタチヤナ(彼女も離婚)と再婚し、そのユマシェフと前妻との娘を著名なオリガルヒ
 でアルミ王のジェリパスカが娶ったといった例がある。

イスラエル亡命中の元副社長

 ところで、ロシアの刑務所(牢屋と言った方がいいかもしれない)に二種類あることは
 あまり知られていない。「黒い牢屋」と「赤い牢屋」である。前者の場合、長期刑に服
 している牢名主がすべてを取り仕切り、看守には干渉させないという。牢名主のさじ加
 減一つで、労働を免れたり、携帯電話の使用が黙認されたり、アルコールを好きなだけ
 買えたりするようだ。後者は看守がすべてをチェックし、それも密告者のネットワーク
 で、牢屋内での特定の服役者の言動を厳重に監視する。誰が密告者か分かるはずもない
 が、その密告者が不審な言動を逐一、刑務所当局に報告するのだ。数のうえでは、「黒
 い牢屋」よりも過ごしにくい「赤い牢屋」の方が多く、ホドルコフスキーは恐らくそこ
 に入れられるだろうと見られている。

 ユコス元副社長にレオニード・ネブズリン(四十五歳)という人物がいる。脱税、殺人
 教唆などの容疑で指名手配され、現在、イスラエルに亡命中だ。テルアビブからホドル
 コフスキー援護の発言を繰り返しているが、最近面白いエピソードを明かした。九九年、
 当時連邦保安局長官だったプーチンが直接彼に、「他のオリガルヒは週一度は挨拶に来
 るのに、君やホドルコフスキーの行動は奇妙だな」と迎合しない態度を暗に皮肉ったと
 いうのだ。「ユコス裁判はホドルコフスキーはじめユコス幹部への政治的懲罰」との説
 を裏付ける話だ。(敬称略)

     Kenzo Yamaoka


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