2048.ジョージ・ルーカスという天才



2005.07.01MN
ジョージ・ルーカスという天才
〜スターウォーズシリーズの永遠性〜

 さて、この7月9日より日本でも多くのファンが待ちわびた「
スターウォーズ エピソード3 〜シスの復讐〜」が上映スタ
ートとなる。幸運には、私は、アメリカで先にエピソード3を
観ることができた。実にいい映画だ。

1.	スターウォーズの特性
「A long time ago, a galaxy far, far away...」の名フ
レーズで始まるこの映画は、アナキン.スカイウォーカーとい
う一人のジェダイ騎士の「選ばれしもの」としての苦悩の物語
であり、また彼が後に演ずることとなるダース.ベイダーとい
うダークサイドに落ちたジェダイとその息子ルークとの因縁の
物語でもある。 ルーカスがこの世に放った名画「スターウォ
ーズシリーズ」は、6つのエピソードによって構成され、今回
のエピソード3で完成することとなる。因みに、私のお気に入
り映画の一つでもある。
  では、その最大の特性とは何か?アナキンの誕生がイエス
・キリストの誕生になぞられていた点だろうか? いいや違う
。スターウォーズという映画は単に優れた映画というだけでな
く、「不完全性を有した完璧な作品」としての価値を持ってい
るということだ。これにはまったユーザーは、正に「生殺し」
のような状態になってしまうだろう。ユーザーを虜にするとは
まさにこのことだ。

2.	「不完全性を有した完璧な作品」
エピソード3の最後は、実に歯切れが悪い。当然の話で、最後
はダースベイダーの誕生の瞬間と帝国の誕生という「バッドエ
ンド」であり、かつルークとレイアの誕生という「新しい物語
の幕開け」でもあるからだ。日頃、「ハッピーエンド」のハリ
ウッド映画を見慣れている僕らにとっては、実に特異な展開だ
。ルーカスの考えたこの作品展開は、実に優れている。エピソ
ード4〜6は、80年代よりの作品だから、当然画質も悪く演出
もぎこちない。比べて、エピソード1〜3は、デジタル技術が
駆使され演出も壮大であり、展開に勢いもある。エピソード3
を観終わったユーザーは、エピソード4〜6の謎解きに満足す
るだけでなく、最後の歯切れの悪さに当然もう1度4〜6を観
るだろう。ところが、4〜6は、その展開の質に不満が出てし
まう。これこそが、「不完全性を有した完璧な作品」というも
のだと感じている。ユーザーはこの「不満のサイクル」なるも
のをただひたすら追い続ける。ルーカスがこの構想を練った時
点ではその意図はなかったかもしれない。ただ、結果的には多
くのユーザーがそのような感覚を覚えるのではないかと感じて
いる。皮肉だが、SFアニメの人気作品ガンダムシリーズもこの
展開方法を取ればまた別の人気を持つにいたっていたかもしれ
ない。

3.	トヨタに見る別の「生殺し」という戦略
 もう一つの興味深いエピソードがある。自動車業界の雄トヨ
タ自動車が、先日、低迷するGMに燃料電池の技術供与のニュー
スが流れて久しい。更に、先週末には、北米市場でのトヨタ車
種の値上げを実施するという報道まで流れた。彼らの取る市場
戦略は、多くの企業が学ぶに値する。それは、「バランス」と
いうものである。80年代の米国の貿易摩擦で学んだ教訓を活か
し、決して敵を最後まで追い詰めるということをしない。それ
がもたらす不利益を理解しているからだろう。歴史が教える大
国の変遷を見ても明らかで、「帝国は必ず滅びる」というわけ
である。現在、ソフトウェア業界で、マイクロソフトがまった
く逆の戦略を取っているが、この業界の将来を見れば、マイク
ロソフトがトヨタから学ぶべき点は多いにあるだろう。

4.	優れた市場戦略のあり方
スターウォーズとトヨタのこの2つのエピソードは、優れた市
場戦略というもののあり方を私たちに教えてくれていると思う
。ユーザーに何かを提供するときそれは「所有願望」を刺激し
つつも「所有によってすべてが満たされない状態」を持たせる
ことであり、また競合との争いにおいては、シェアの確保を優
先しながらも「決して敵を最後まで追い詰めない」ということ
だろう。このバランスを見出すという能力こそ、これからの時
代は優位に立つフォースになるかもしれない。
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禅は、不立文字といいます。
言葉を使わずにものを考えよ、というのが禅です。

言葉を使うなという点では、現代芸術も、禅に近い。

既成概念から自由になって、あるがままの現実を向き合う
(既成概念とは、実はわれわれの生まれてこのかたの
言語活動すべてを指すのですが)
これが現代芸術の目指すこと

原爆投下直後の広島の町の惨状をみた原民喜が、
「夏の花」の中で、超現実主義の画のような世界は
カタカナで書きなぐるほかはないといって

 ギラギラノ破片ヤ
 灰白色ノ燃エガラガ
 ヒロビロトシタ パノラマノヨウニ
 アカクヤケタダレタ ニンゲンノ死体ノキミョウナリズム
 スベテアッタコトカ アリエタコトナノカ
 パット剥ギトッテシマッタ アトノセカイ
 テンプクシタ電車ノワキノ
 馬ノ胴ナンカノ フクラミカタハ
 プスプストケムル電線ノニオイ

と書いたのも、言語(既成概念)を超越した世界と
対峙した詩人ならではの表現技法でありました。

禅=現代芸術=原爆による被害=環境破壊

浜辺にプラスチックのゴミが散乱しているのも、
原爆なみの不条理ではないでしょうか。
どれもこれも人間の起こしたことですが。

「はじめに言葉ありき」と聖書にいうことの意味は、
言葉によって我々は不安になり、神を求めるようになった
という意味かもしれません

あれもこれも問題は、人類が言葉を身につけたことに由来する

どうして人間は言葉を身につけたのか、
どうして人間は家をつくり、火を燃やすのか
どうして人間には毛皮がないのか、、、

この疑問に答えてくれる本に出会いました。
島泰三「はだかの起原」(木楽舎)がそれです。

きっかけは、西原克成先生の「ネオテニーは進化の袋小路」
という言葉でした。

どうして人間はハダカなのか
ハダカの動物にはどのような動物がいるのか

野外での自然観察と、幅広い動物に関する知識と、
自然をあるがままに受け入れる客観精神と、
進化論や神学の教義にだまされない思考能力と、
それらの賜物として生まれたのが本書です。

                                                  得丸久文
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ルックウエスト政策顕著に−東南アジア   
   
 中東・インドと関係強化へ
 東南アジアでインドや中東を重視する「ルックウエスト」政策が顕著になってきた。タ
 イとインドは自由貿易協定(FTA)前倒しに踏み切り、シンガポールとインドは来月
 一日、インドとの包括的経済協力協定(CECA)を発効させる。またマレーシアやシ
 ンガポールでは、金融や観光産業振興のため、中東の観光客やオイルマネー取り込みに
 余念がない。 
(バンコク・池永達夫・世界日報掲載許可) 
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 インドとシンガポールは先月下旬、ニューデリーでFTAを主軸としたCECAに調印
 した。インドにとっては工業規格の統一や学位の相互認証、電子商取引、知的財産権な
 どに関する保護や協力を盛り込んだ初めてのCECA締結で、八月一日に発効する。タ
 イとインドはFTA前倒しに踏み切った。
 また、タイやインド、バングラデシュなど、ベンガル湾を囲んだ東南・南アジア七カ国
 による経済協力機構「BIMST」首脳会議が昨年七月、バンコクで開催され、二〇一
 七年までのFTAを軸とした自由貿易圏の創設や域内インフラ整備推進などを盛り込ん
 だ共同宣言を採択した。FTA創設に向けた各国の交渉は既に始まっており、年末まで
 の妥結を目指す。

 さらに、シンガポールやマレーシアはオイルマネー獲得のためシャリア(イスラム法)
 に基づくイスラム金融の育成にも本腰を入れている。国内のイスラム教徒の金融資産を
 取り込むだけでなく、米同時テロやイラク戦争を契機に米国から中東に還流するオイル
 マネーを、イスラム金融を受け皿として自国へ呼び込もうという金融戦略を発動させて
 いるのだ。

 シンガポール、タイ、マレーシアが東南アジアの医療ハブ(拠点)獲得競争に走り出し、
 三つ巴(どもえ)の様相を呈しているが、富裕層が厚い中東は主要なターゲット地域と
 なってもいる。

 東南アジアは十五世紀、実に世界最大の貿易センターであった。当時のタイ南部にはア
 ユタヤ王朝があり、マレー半島にはマラッカ王国があった。インド洋とシナ海の中間に
 位置するアユタヤやマラッカは、地の利を生かし海上ネットワークの中心地となり、貿
 易立国として繁栄した。

 グローバル化が進行する中で、単に東西を結ぶという地政学的メリットだけで流通の中
 心になったり、経済のハブ機能を持つことはあり得ない。東南アジの「ルックウエスト」
 政策には、日韓中といった東アジアを牽制(けんせい)すると同時に東アジア、南アジ
 ア、西アジアのバランサー役として政治的求心力を高めようという思惑が潜んでいる。 
       Kenzo Yamaoka
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米軍改編と本物の軍事同盟   
   
 日米安保改定で対等に/チャンス逃しかねない日本
評論家 高橋 正 
従来の安保条約に「瓶の蓋」論 世界日報掲載許可

 イラクのサマーワで自衛隊を狙ったと見られる爆弾事件が発生したというので、日本の
 マスコミが騒いでいるが、自衛隊員やその家族を含めて一般国民は至って冷静である。
 イラクは今なお「戦場」だし、戦場へは文民でなく軍人が行くのは当たり前であり、自
 衛隊がイラクにいるのはアメリカに「義理」があるからで、日本がアメリカに「義理立
 て」しているのは、万一の場合、北朝鮮(や共産中国)の核兵器の脅威からアメリカの
 核の傘で丸腰の日本を守ってもらうためであることぐらい、七つの子にも判る理屈だか
 らである。

 しかしである。確かに戦後この方、日米安保体制はソ連を筆頭とする共産勢力の脅威か
 ら日本を守るのに絶大な効果を発揮してきたが、米ソ冷戦が終結した今、従来の安保体
 制は時代遅れになってしまった。そうでなくとも、冷戦当時から今日まで安保体制はソ
 連から北方領土を、韓国から竹島を取り戻すのに少しも役に立っていないし、最近では、
 中国人の尖閣諸島領土要求や海底油田開発を抑える力もない。この調子で果たして日米
 同盟は平壌や北京の核の脅しや行使から日本を守ることができるのだろうか。故ドゴー
 ル仏大統領の言い草ではないが、「アメリカは東京を守るために、果たしてニューヨー
 クを犠牲にするだろうか」である。

 もともと、日米安保条約には、日本が共産主義の勢力下に入るのを防ぐという目的の他、
 日本の軍事的台頭を二度と許さぬというもう一つの陰の狙い(「瓶の蓋」論)があった
 が、冷戦の終結で第一の目的は不要となり、端なくも第二の陰の目的が表面化するに至
 った。アメリカの民主党やマスコミの多くは今も日米安保を「瓶の蓋」視している。日
 本にも左翼や「平和主義者」をはじめ、日米安保体制を非難しながら、安保体制が日本
 の軍事大国化、とりわけ核武装の抑止力になっている側面を暗に評価する偽善者が少な
 くない。

同時テロ以降の変化を心得よ

 しかし、このように日本人が右も左も押し並べて頼りにするアメリカが実は9・11の
 同時多発テロ事件以降、自国の安全保障に動揺を来して自信を失い、更にイラク戦争以
 来、国際的孤立に悩まされて、「本気で<苦しい時の(本当の)友達>を求める」(カ
 ーチス・コロンビア大学教授)ようになった。先のモスクワでの対独戦勝六十周年記念
 式典の折、ブッシュ米大統領が並みいる各国首脳を尻目にわが小泉総理と手を取り合っ
 たのが良い例である。ラムズフェルド国防長官の下で進められているRMA(軍事革命)
 とそれに基づく米軍の世界的トランスフォーメーション(改編)は、軍事技術の飛躍的
 発展、組織の効率化、経済的合理性を勘案したものであることもさることながら、自国
 の安全保障と国際的地位についての深刻な危機感に根差したものであることを見落とし
 てはならない。

 その点、日本がイラク派兵を継続し、日米外交・安保閣僚会議(2×2)で台湾有事の
 際の後方支援に踏み込んだことはアメリカの多とするところであり、その表れが安保理
 常任理事国の拡大問題で、「日本ともう一つくらいの常任理事国増に賛成する」という
 アメリカ政府の発言となっているのだ。「やる気」を見せることこそ信頼の基である。

 問題はこうした9・11以降のアメリカと世界の変化を日本自身が何処まで心得て振る
 舞っているかである。残念ながら、日本政府も国民もこうした変化を十分認識している
 とは言い難い。むしろ従来の安保体制に寄り掛かったまま、在日米軍とその基地の改編
 ・統廃合に惰性的、消極的に付き合っているに過ぎない。軍事評論家の江畑謙介さんは
 近著「米軍再編」の中で、米軍再編の今こそ日米同盟を真に対等なものにするチャンス
 なのにと、日本側の対応の遅さ、鈍さを嘆じているが、筆者も同感である。

憲法改正と核武装が国際常識

 ブッシュのアメリカは今や自国の利益のために「瓶の蓋」を取り、力強く頼りになる日
 本を求め始めている。戦後ようやくにして訪れたこのチャンスを逃すなら日本は軍事的、
 政治的ばかりでなく、精神的にも真に独立する絶好の機会を失い、引き続きアメリカに
 隷属して中国や韓国・朝鮮、ロシアから侮られ、第三世界からコケにされ、欧米から冷
 笑されるのが落ちである。敗戦以来本当の独立と独立心を失った日本のこうした宿痾
 (しゅくあ)を断ち切るためにも、日本は速やかに憲法を改正し、核武装を含む独自の
 RMAを推進する必要がある。

 「唯一の被爆国」日本には、一方的に核廃絶を唱える義務があるわけではないし、むし
 ろ積極的に核武装する理由があると考える方が国際常識に適っている。素直に言えば、
 核武装した日本は核武装したイギリス同様、決してアメリカを攻撃することはないし、
 アメリカも日本を二度と攻撃しないという本物の軍事同盟が日米間に望まれているので
 ある。それを実現するチャンスが今、目の前にある。
    Kenzo Yamaoka
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起死回生狙うシラク仏大統領   
   
 対英政策で得点を挙げられるか
 欧州憲法の批准否決で国民の支持率が急落しているフランスのシラク大統領は、支持率
 回復のための対EU活動や外交活動に余念がない。欧州連合(EU)首脳会議で決裂し
 た中期予算編成の立て直しで、新加盟国の中・東欧諸国と関係を強化する一方、仏独関
 係の強化で、対立する英国との関係で激しい綱引きを行っている。果たしてシラク大統
 領の起死回生はなるのか。(パリ・安倍雅信・世界日報掲載許可)
 五月二十九日の国民投票でEU憲法を否決したフランスで、その三週間後に行われた世
 論調査によると、シラク大統領の支持率は21%にまで急落した。この数字は、フランス
 で三十年前に世論調査が始まって以来、フランスの大統領としては最低の支持率を記録、
 シラク政権の指導力の衰えが明白になっている。

 実は、二〇〇二年に行われた大統領選挙の決選投票で、シラク氏は、右派・国民戦線
 (FN)のルペン候補者に対して、80%以上の得票率で再選された。この数字は民主主
 義先進国では例のない数字だったが、ルペン氏当選阻止のため、左右両陣営が結束した
 ことの結果だったことも否定できない。

 イラク戦争反対で人気を高め、一時は50%を超える支持率を獲得したシラク大統領だっ
 たが、〇四年四月時点で、32%とやや低調な支持率が続いていた。歴代大統領のミッテ
 ラン大統領が、低迷期に31%、ジスカールデスタン大統領が辞任時、41%だったという
 数字から見ても、今回の21%という数字は手痛いと言える。

 そのため、シラク大統領は、内政の立て直しのために、右腕といわれたドビルパン前内
 相を首相に指名したほか、政敵として知られ、次期大統領最有力候補といわれるサルコ
 ジ国民運動(UMP)総裁を副首相格の内相に任命、国民の理解を求めている。一方、
 シラク大統領の優先事項である外交問題で得点を稼ぐため、積極的な外交を展開してい
 る。

 EUは、欧州憲法批准問題とともに、先月十六、十七日に開催されたEU首相会議で、
 EUの中期予算編成を話し合ったが、決裂した。争点の一つは、英国提案のフランスが
 大きな恩恵を受ける共通農業政策(CAP)の改革だったが、フランスの強い抵抗でま
 とまらなかった。この問題で、フランスは新加盟国の中・東欧に急接近、フランス支持
 取り付けに余念がない。

 先月二十七日、シラク大統領はドストブラジ仏外相をポーランドに派遣する一方、今月
 一日には、コロナ仏欧州問題相をハンガリーに送り、新予算編成交渉で、フランスへの
 理解を求めた。コロナ欧州問題相はブダペストでの記者会見で、改めて、英国が提案す
 るEU農業政策の見直しについて拒否する考えを表明した。

 一方、英国も同時期に、ポーランドへアレクサンダー英欧州問題相を送り、英国の提案
 を説明、さらに新加盟国の中・東欧諸国を積極的に訪問し、七月からEU議長国となっ
 た立場を最大限利用しながら、英国への理解を求めていく計画だ。英国としては議長国
 として、〇七年以降の予算編成で、中・東欧諸国での足固めを急ぐ必要がある。

 フランスは、農業国である中・東欧新加盟国が、CAPを支える重要な位置にいると判
 断、英国の攻撃に対して、彼らを味方に引き寄せることで、英国を黙らせたい考えだ。
 この背後には、補助金削減を恐れるフランス国内の農業団体の強い圧力がある。

 シラク大統領としては、是が非でも国内の支持を取り付けたい考えだ。

 ポーランドは新加盟十カ国として、EUの分担金について、既存の加盟国、特にフラン
 スやドイツとの話し合いの席を持ち、分担金のバランスなどについて詰めたい考えだ。
 「EU拡大では積極的だった英国が、予算の話となると、貧しい新加盟国に冷たい」
 (仏外交筋)との見方から、新加盟国を引き寄せるチャンスとみている。

 だが、ブリュッセルの欧州政策センターのデュラン氏は、フランスが、イラク戦争で、
 米国を支持するポーランドなどに対して「欧州の価値観が分からない国は、EU加盟で
 きないと脅迫したことを忘れていない」と指摘する。同時に、欧州憲法を否決したフラ
 ンスが、拡大欧州で理解を得ることは至難の業とも言えそうだ。

 一方、欧州統合を推進してきた仏独の連携強化にも余念がない。実は国内で支持率が落
 ちているのはシラク大統領だけではない。ドイツではシュレーダー首相の不人気、さら
 には野党保守党が勢力を盛り返し、次期政権は保守への流れもある。そのため、仏独コ
 ンビも不人気の指導者同士では説得力がなく、両国連携も危ういとの声もある。

 メルケル駐英ドイツ大使は、英国でのテレビインタビューに応え、「たとえ政権が交代
 するようなことがあっても、EU内での仏独関係に変化はない」ことを強調、引き続き
 仏独が欧州統合で、重要なパートナーとしての役割を演じる用意があると述べた。

 そのほかにもフランスは、英国との対立点が多い。一二年の夏期五輪誘致でも、ロンド
 ンとパリが正面衝突、シラク大統領もブレア首相も、自らシンガポールで行われるオリ
 ンピック委員会(IOC)総会に乗り込み、激しい誘致合戦を繰り広げている。

 シラク大統領にとって、唯一明るい話題は、日本とEUの激しい誘致合戦の末、フラン
 ス南部への建設が決まった核融合の国際実験炉ITER(イーター)の建設だ。自ら建
 設予定地のカダラッシュを訪問、「ヨーロッパの結束の勝利だ」とアピールした。また、
 同実験炉建設で三千人の雇用が創出されることも強調した。

 いずれにしても、シラク大統領が外交得点を稼ぎ、内政でも支持を得ていくことは容易
 ではない。実際、足元のドビルパン首相の支持率は二割を割っており、国民の理解が得
 られていないことが表面化している。シラク大統領の内憂外患は今後、長く続く可能性
 もあり、前途は多難と言えそうだ。
       Kenzo Yamaoka
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治安回復まで米軍必要   
   
  駐オーストリアイラク全権大使
 アカラウィ氏に聞く
 連合国暫定当局(CPA)からイラク人に主権が移譲されて先月二十八日で一年目を迎
 えた。イラクでは依然、テロが多発、治安は不安定であり、社会インフラ復旧も遅れ気
 味だ。そこで駐オーストリアのイラク全権大使、タリク・アカラウィ氏と会見、主権移
 譲一年目のイラクの現状、今後の政治日程などについて質問した。同大使は「イラクで
 治安が回復するまでは米軍のプレゼンスは必要」と強調する一方、「憲法草案や本格政
 権発足の政治日程に変更はない」と主張した。 
(聞き手=ウィーン・小川 敏・世界日報掲載許可) 
憲法起草・本格政権発足、政治日程に変更なし

タリク・アカラウィ氏  
 ――主権移譲から一年間の歩みに対する評価はどうか。
 多くの困難に直面した一年だったが、総括するならば多くの目標が実現された期間だ。
 民主的機関の創設から議会選挙の実施まで多くが実現された。特に、議会選挙は大きな
 出来事だった。国民のほぼ60%が選挙に参加したのだ。選挙後は少々時間がかかった
 が、移行政権が発足した。同政権はこれまでの政権より多くの支援と権限を有している。
 国民議会も開催された。スンニ派で一部ボイコットがあったが、イラク全分野から代表
 が結集した。政府は選挙に参加しなかったスンニ派も組閣に参加させる民族統合の政策
 を行ってきた。新憲法起草作業も既に始まっている。

 ――治安状況は依然悪化している。その背景には、スンニ派とシーア派の対立や政権内
 のヘゲモニー争いも関係しているのではないか。

 イラクの復興が前進すればするほど、それを妨害する勢力の蛮行も激化するわけだ。テ
 ロリストは反民主主義者だ。彼らは国民経済も破壊する反国家勢力だ。彼らは宗派間の
 対立を利用、破壊行為を繰り返している。彼らの多くは外国勢力であり、国内のフセイ
 ン前政権の残党と結び付いて破壊活動を展開している。新生イラクを受け入れたくない
 のだ。

 ――ジャファリ首相は二年間で治安を回復すると表明している。少々、楽観的な見通し
 ではないか。

 われわれは過去、多くを実現してきた。その意味で、首相だけではなく、多くのイラク
 人は楽観的だ。イラク人警察官、軍隊の教育を強化してきた。彼らは治安管理の責任を
 負うまでに発展してきた。すべては一定の時間が必要だ。同時に、治安維持のためには
 国際支援も欠かせない。先日開催されたイラク支援会議は、新生イラクにとって大きな
 手助けだ。治安問題から復興まで多方面にわたるものだった。国際社会は多くを約束し
 てくれた。即実行とはいかないだろうが、約束だけでもイラク国民にとって心強いもの
 だ。

 ――ブッシュ米大統領は米軍の撤退時期については明言しなかったが、米中央軍のアビ
 ザイド司令官は「来年夏までにはイラク治安部隊に主導権を移管する」と発言している。

 すべては治安状況次第だ。新生イラクにとって米軍だけでなく、多国籍軍の支援も重要
 だ。残念ながら、イラクは現在、自力で治安を回復させる能力を有していない。治安状
 況が回復し次第、政府は米国と撤退時期について協議することになる。米中央軍司令官
 の発言は知っているが、イラクの治安状況は非常に悪い。米軍の撤退時期を協議する時
 ではない。

 ――日本の自衛隊が駐留するイラク南部サマワでも、治安状況の悪化が伝えられてきた。
 日本国民に本当に感謝していることを伝えてほしい。日本人がしていることは、純粋に
 イラク国民生活の復旧活動だ。それはイラク国民に大きな支援となっている。全土でテ
 ロが発生、深刻な状況だが、サマワ周辺で日本の自衛隊がテロに巻き込まれる事態は生
 じていない。政府としては、自衛隊の安全確保に全力を尽くしていく考えだ。

 ――八月十五日までに憲法起草、年末に本格政権発足の政治日程に変更はないか。

 多方面から多数が参加しているだけに、憲法議論も時にはホットとなる。しかし、それ
 は避けることができないプロセスだ。相互理解と尊重が要求される。新憲法は、新生イ
 ラクの将来を決定するものだから当然だろう。最大の問題は連邦制についてだ。連邦制
 を具体的にどのように憲法で明記、実践していくかで議論が分かれている。具体的には、
 キルクークの帰属問題だ。フセイン前政権がクルド人から奪っていった地域だ。だから、
 クルド人はキルクークがクルド側に戻ってくると確信している。連邦制自体は世界の各
 地で見られる国体だ。ドイツ、オーストリア、スイスなど欧州でも連邦制は多い。政治
 日程の変更はない。

 ――イラクではシーア派が約60%を占めているが、シーア派の拠点はイランだ。その
 イランで超保守派のアハマディネジャド氏が新大統領に選出された。イラク情勢にも影
 響が考えられるか。

 イラクとしては、イランと隣国同士として友好関係を願っている。私はイラン次期大統
 領と面識がないから、その影響などについてはコメントできない。いずれにしても、イ
 ランの影響について、大きな懸念は持っていない。
       Kenzo Yamaoka
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日本と在米ユダヤ人社会   
   
 友好と恩義の一世紀/日露戦争戦費調達の支援者
獨協大学教授 佐藤 唯行
売れない日本国債を請け負う   世界日報掲載許可

 日本と在米ユダヤ人社会、両者の相互関係が、かつて一九八〇年代後半から九〇年代に
 かけて、日本の職業的反ユダヤ論者の手になる「反ユダヤ本」出版ブームの中で大きく
 損なわれたことは我々の記憶にあたらしいことである。こうした事態の再発を許さぬた
 めにも、今日、我々は友誼と親善に満ちた在米ユダヤ人社会との交流の足跡をふり返り、
 彼等から受けた恩義の数々を記すことは時宜にかなったことといえよう。

 なぜならば、今年、二〇〇五年は、日本人が在米ユダヤ人社会の存在を「発見」し、彼
 等より大きな援助を受けてから丁度、一世紀の節目にあたる記念すべき年だからである。

 「発見」の立役者となったのは当時、日銀副総裁を務めた高橋是清であった。彼は未曾
 有の国難、日露戦争のさなか、戦費不足に苦しむ日本政府のために、日本国債を欧米で
 販売し、それにより資金調達を行うという大任を帯びていたのである。

 しかし、国際社会では大国ロシアがこの戦争に勝つであろうから、日本に金を貸しても
 金を回収できないと考える人々が多く、高橋は国債の販売に大変苦労していた。そんな
 折、高橋のもとを訪れ、自分が国債を売りさばいてあげようと約束してくれる人物が登
 場する。それが、ユダヤ系投資銀行、クーン・ローブ社の重鎮、ジェイコブ・シフであ
 った。

 在米ユダヤ人社会のリーダーでもあるシフは当時、ユダヤ人を酷く迫害していたロシア
 を憎み、そのロシアを倒そうとしていた日本に援助の手を差しのべたのである。

 このシフのお蔭で、日本は国債を売ることができ、その金で英国から軍艦を購入し、こ
 の戦争に勝つことができたのである。

 この一件は「国際経済を動かすユダヤ人」というフィクションに何がしかの真実味を与
 えてしまうきっかけにもなったが、しかし、結果として、日本を助けてくれたシフの行
 動が、第二次世界大戦中の日本政府の対ユダヤ人政策に影響を与えたのも事実である。
 なぜなら日本政府はシフへの恩義を忘れず、日本軍占領下に逃げ込んだユダヤ難民たち
 をナチス・ドイツに逆らってまで、公正に処遇したからである。

戦後米市場でも日本側を擁護

 彼我の結びつきはビジネス面でも顕著であった。戦後復興期から高度経済成長期にかけ
 て、「安かろう。悪かろう」の悪評だけが付きまとっていた敗戦国日本の輸出製品を、
 いち早く、アメリカ市場に紹介してくれたのが、アメリカ流通業界の主流から外れた周
 辺的な地位にあったユダヤ商人たちであった。やがて品質も向上し、日本製品を売りさ
 ばくことが多大な利益を生むようになると、やっかみをこめて、他のアメリカ人から両
 者の頭文字をとった「J・J関係」の親密さが取り沙汰されるようになった。一九七〇
 年代初め、日本からアメリカへ輸出される製品の実に四割が、ユダヤ系業者により取り
 扱われたと推測されている。

 その後、わが国が「経済大国」になってからは、知の最先端をリードするアメリカの名
 門大学に留学中の多くの日本人学生がユダヤ系の指導教授のもとで薫陶を受けるケース
 が増えている。全米トップ三十の大学では教授陣のおよそ三割がユダヤ系で占められて
 いるからである。

 そればかりではない。八〇年代以後のアメリカでは日米経済摩擦の結果として、在米日
 本人、日系人に対する人種差別犯罪や日本叩き(ジャパン・バッシング)が増加してい
 った。こうした現象に対して常に監視の目を光らせ、時に抗議の声をあげてくれる頼も
 しい存在が在米ユダヤ人の諸団体なのである。

 在米ユダヤ人はマイノリティーとしての共通の立場から、在米日本人や日系人の人権擁
 護に尽力しているのである。彼等の行動の背後にあるのは「他のマイノリティーの敵は
 ユダヤ人の敵でもある」という論理である。

 アメリカのような多人種・多民族社会においては、全てのマイノリティーの権利が保障
 されない限り、個々のマイノリティーの立場は決して安泰とはならないからである。

苦境から苦境にある者に同情

 草の根交流のレベルでも忘れ難いエピソードがある。それは一九五二年、白井義男を日
 本人初のボクシング世界王者に育てあげ、敗戦で自信を喪失していた日本人に勇気を与
 えてくれたトレーナー兼マネージャー、アルビン・カーン博士である。シカゴの裕福な
 ユダヤ人家庭の出身であった博士は一切の報酬を受け取らなかったばかりでなく、物心
 両面で白井を支え続けたのである。

 歴史上、少数派として常に孤立を強いられてきたからこそ、ユダヤ人たちは他の白人よ
 りも我々有色人種に対して差別意識を抱かず、同情を感じ取ることができたのであろう。
 それ故にこそ、苦境にあった日本人に助力の手を差しのべることができたとはいえまい
 か。
 次の一世紀は過去の恩義に対して、我々が報いる番にしなければならない。
       Kenzo Yamaoka


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