2032.靖国問題の見解



No.2026 死生観から考える靖国問題 について
 みなさんお久しぶりです。やまなかです。
 先日配信された世界日報転載記事についてひとこと。
 高瀬さんは「日中の間に横たわる死生観の違いを理解して靖国問
題に対処し、東アジアの『和』を築く使命を果たせ」とおっしゃり
たいようですが、「東アジアの『和』を築かなければいけない責任
」などというものがそもそも日本にあるのでしょうか? 

中国は日本を自分たちの支配下に置きたいだけで、東アジアの『和
』を望んでいるわけではない、と私には思えます。中国が望んでい
るのはアジア果ては全世界の中華支配であって日本と対等な仲間に
なろうとしているのではない。『和』の大切さを訴えること自体、
人生観の違い、日中間の認識の違いに思い至らない日本人の偏狭な
理想主義ではないでしょうか。

 私たち日本人は、日本が無用な戦禍に巻き込まれたり、国益を損
なったりしないために東アジアの中で上手く立ち回らなければいけ
ないのは確かですが、周辺諸国との『和』を目標にしたところで
それは実現不可能な夢物語でしかないように思えます。

 日本の安全・日本の利益等を守るために周辺諸国と戦争を起こさ
ない智恵と努力は必要であるけれども、なにもそれがイコール『和
』を築くことではないでしょう。
 Fさんのコラムは常にそう語っておられると思うのですが、違う
でしょうか? 
やまなか
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(Fのコメント)
日本国民の合意で政治を行う必要があり、それには中国や韓国との
交渉だけでなく経済界や遺族会などへの配慮も、近隣外交では重要
視することである。国民の一部の見解で政治をすることはできない
。それが民主主義の原則である。勿論、伝統・文化の保護も必要で
あるが、それも現代人にマッチした変化はしかたがない。諸外国か
らの干渉ではなく、自発的な変化は政治家は配慮しなければならな
い。

という視点から見ると、遺族会も靖国神社への参拝を近隣諸国への
配慮が必要と決議している。それと国民世論も靖国神社への参拝を
自粛するべきとしている。という結論が出ている。結論は見えてい
るが、交渉上、中国の譲歩を引き出す必要もある。

靖国神社としてはA級戦犯の分祀には反対との見解であり、中国や
韓国も反対しているし、天皇もA級戦犯を祀った時から参拝を遠慮
されていらっしゃる。ここでも明らかですよね。

日本の死生観は中国や韓国とは違うので、その意味では靖国神社サ
イドの意見も否定できないし、中国と敵対関係にある時は、中国へ
の配慮も必要がないために、小泉首相の参拝には賛成であった。

しかし、中国との経済関係がここまで深くなると中国への配慮も必
要でしょうね。勿論、無原則な中国への賛成ではなくて、中国も反
日教育を是正して、民主主義的な体制にすることが必要であり、そ
の面では、小泉首相の靖国神社参拝を中止する代わりに、中国も反
日教育の是正を約束してもらう必要があると思う。

勿論、親中派ではないので、中国と無原則な友好はしないことであ
るし、戦争を起こさないためには、中国への配慮も必要である。
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<靖国参拝>遺族会「近隣諸国への配慮」求める異例の見解
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050611-00000097-mai-pol

 日本遺族会(会長・古賀誠自民党元幹事長)は11日、東京都内
で幹部会を開き、小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「遺族会
の悲願としてありがたいが、英霊が静かに休まることが大事だ。
近隣諸国に配慮し、理解してもらうことが必要だ」との見解をまと
めた。遺族会はこれまで、首相の靖国参拝実現を活動の最重点項目
に掲げてきたが、これと同時に中国、韓国などへの配慮を求める異
例の見解となった。
 幹部会ではこのほか、(1)A級戦犯の分祀(ぶんし)問題に政
治は介入すべきでない(2)靖国神社に代わる追悼施設の建設には
引き続き反対する――ことも確認した。関係者によると、幹部会は
靖国参拝問題が政治・外交問題に発展したことを受け、古賀氏が呼
びかけたという。

 小泉首相は01年の自民党総裁選で、遺族会に対し「首相に就任
すれば靖国神社を公式参拝する」との意向を示し、その後「公約」
になった。遺族会が近隣諸国への配慮を求めたことで、首相の参拝
継続方針に影響を与える可能性もある。
 古賀氏は2日の自民党堀内派総会などで、首相の靖国参拝が遺族
会の活動目標との認識を強調しつつ「単に『(中国側の)内政干渉
だ』というだけで議論を進めていくのは危険。お互いの国の立場に
対する思いやりを必要としている」などと述べていた。
 日本遺族会は戦没者遺族の全国組織で、1947年に創設された
。会員は約100万世帯で、自民党の有力支持団体の一つでもある
。【平元英治】
 ◇解説 遺族の苦渋の思い反映、「首相包囲網」狭まる
 小泉純一郎首相の靖国神社参拝をめぐり、日本遺族会が中国や韓
国など近隣諸国への配慮を求める見解をまとめたことにより、首相
の参拝継続は一段と厳しさを増すことになった。これが首相の参拝
にどう影響するか即断はできないが、戦没者遺族でつくる遺族会は
靖国参拝問題の「当事者」でもあり、参拝自粛を求める「首相包囲
網」が狭まったのは確かだ。
 戦後60年が経過し、日本遺族会も戦没者の親の世代が亡くなり
、活動の主体は兄弟や子供の世代に移りつつある。国の内外で波紋
を投げかける首相の靖国参拝に対し慎重論も出始めており、遺族会
は近年、首相参拝について、参拝する日や参拝方式など形式には
こだわらない方針で運動を展開してきてもいた。
 今回の見解は首相の参拝に感謝の意を表明しつつも、「英霊が静
かに休まることが大事」と鎮魂に力点が置かれたのが特徴だ。
遺族会内には「小泉首相の参拝は英霊のためになるのかとの疑問も
出ている」(幹部)との指摘もあり、外交問題に発展した参拝問題
に対する遺族の苦渋の思いを反映したものになった。
 小泉首相は01年4月の自民党総裁選出馬の際、遺族会幹部に電
話し「総裁になったら、必ず8月15日に靖国神社を参拝します」
と伝えた。これまで首相の靖国参拝を心情面から「二人三脚」で支
えてきた遺族会の変化だけに、首相はより重い判断を迫られること
になった。【中村篤志】
(毎日新聞) - 6月12日1時48分更新 
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岡田代表が党首討論で靖国参拝中止を要求   
   
 日韓会談後初の党首討論で岡田代表が靖国参拝中止を要求

小泉純一郎首相と民主党の岡田克也代表は6月22日の衆院決算行政
監視委員会で、靖国神社問題をめぐって火花を散らした。

歴史問題の溝が埋まらなかった20日の日韓首脳会談後初めての「党首
討論」とあって、岡田氏は首相の発言を捕らえ、「靖国神社参拝が日中
関係、日韓関係の核心とは思っていない」とは何事!韓国大統領自身が
靖国こそ「歴史問題の核心」と言っている以上、核心的な問題であり、
「行かないと決断しても変節漢と批判するつもりはない」と首相の靖国
参拝中止を強く迫った。

しかし小泉首相は「人に言われて行けとか行くなとかいう問題ではない」、
「韓国や中国の言う通りに全部しろ、という考えを私はとっていない。
日本には日本の考え方がある。違いを認めて友好増進を図ることが国と国
として大切だ」と持論を展開し、両者の議論はかみ合わなかった。

岡田代表は24日に告示される東京都議選を意識し、近隣諸国との友好関係
を重視する姿勢を強調して首相との違いを際立たせる狙いがあったようで
あるが、果たして彼の思惑通りに有権者が受け止めたかどうか疑問がある。

「近隣諸国と仲良く」と言われても、中華思想に凝り固まった中韓、特に、
経済発展が著しくて、アジアの盟主意識/日本とのライバル意識を燃やす
中国との仲は、今後悪くなることがあっても良くなることなど期待できない。
それにもかかわらず、敢えて仲良くしろと言うことは、彼らの属国になれと
言うに等しい理不尽な要求で、岡田も、まあ、東大を出た割には頭が悪い。

日本人の嫌中/反中感情が高まる一方の将来を見据え、それでも尚、彼らと
仲良くせざるを得ないと感じる/信じる親中派の政治家としては、「自分は
首相になっても靖国に参拝しません」程度にとどめておくのが賢明なのに、
正面切って時の首相に「参拝をやめろ!」なんて、岡田は政権を取る意志が
ないのかとさえ思ってしまう。
       Kenzo Yamaoka
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冷徹で理知的営みこそ外交の基本   
   
 目を逸らしてならぬ戦略的利益   《中核的利益は地域の安定》
 靖国参拝や歴史、領土問題をめぐって中国や韓国との摩擦が続いている。こうした問題
 は、宗教観、戦争の記憶、法的議論が複雑に入り組んでいる上に、関係国のメンツや国
 民感情といった要素までが絡んで、メディアの関心を占領している感がある。

 しかし忘れてならないのは、国際関係はそもそも冷徹で理知によって営まれるもので、
 感情のぶつけ合いをしていても生産的ではないという原則である。もちろん人間のこと
 だから時にメンツや感情が絡むこともある。しかしそれは基本ではない。

 アジアでは関係が比較的よい時に友好や友情が強調されすぎるきらいがあるが、その反
 動か、悪くなると怒りや憎悪が前面に出てしまう。あくまで外交は好悪の感情を抑制す
 るところから始まる。

 日本の東アジアにおける中核的利益は、言うまでもなく、この地域の平和の安定にある。
 この利益からして日本が注意を払うべきは、喫緊の脅威として北朝鮮の核開発問題であ
 り、より中期的な問題として日本周辺海域の安全保障問題があり、さらに中長期的な問
 題として中国の台頭への対応がある。

 第一の北朝鮮の核問題では六カ国協議の再開が取りざたされる。再開される方が望まし
 いが、再開されても問題解決にはほど遠いという現実は否定できない。

 北朝鮮がおそらく求めている体制保証の内容とアメリカが容認できる内容とをつき合わ
 せると、両者が妥協点を見いだすのは不可能に近いであろう。かといって北朝鮮に対す
 る武力行使はアメリカがイラクなどで手いっぱいであり、また韓国が否定的な現在、現
 実的な選択肢ではない。

 結局のところ、平和的手段によって北朝鮮の体制変革を誘導していくのが、朝鮮半島の
 非核化という目標を達成する道であろう。しかしこのシナリオを考えるには、北朝鮮の
 変革がもたらすリスクやコストをいかに極小化するか、周辺諸国で協議しておくことが
 求められる。

 日本としては、日米間でこの問題について適宜協議し、可能な限り中韓とも意見交換を
 しておくことが望ましい。さもなくば、事態が大きく動いた後に後始末を押しつけられ
 ることになりかねない。

 《一枚岩ならぬ中国の内部》

 第二の海洋の安全保障については、周辺海域の警備・監視能力を高め、日本の領海およ
 び経済水域に不法な侵入を防ぐことがまず重要である。他面、偶発的な対立が制御でき
 ない軍事対立に至る危険を避けるための危機管理も準備しておかねばならない。このよ
 うな備えをした後、日本は近隣諸国との交渉に臨むことができよう。

 たとえば東シナ海の海底資源開発については、日中両国にとってメリットのある開発方
 式を見いだすことは不可能ではないだろう。現に日中間で交渉が始まっているが、日本
 が取引材料をもち、一定の圧力手段をもって初めて中国側にも妥協のインセンティブが
 生まれてくるだろう。

 第三の中国の台頭にいかに対処するかという問題は、中長期的に日本にとって最も戦略
 的判断を要する問題である。この点でまず日本は、中国内部を一枚岩とみなす考えをと
 るべきではない。

 中国には多様な利害が存在しており、共産党一党独裁下とはいえ、水面下でそれら利害
 の競争が存在する。そのことを認識した上で、国際協調的、親日的勢力が影響力を拡大
 するよう行動すべきである。

 特に重要なのは、中国の政軍関係である。中国軍は現在でも共産党の軍隊であり、政府
 の軍隊には完全にはなりきっていない。この曖昧さゆえに、その掌握が中国指導部にと
 っては重要問題となっている。

 《批判より知らせる努力を》

 しかし市場経済化と共産党体制の矛盾が深刻化していけば、政軍関係が不安定化する可
 能性がある。また軍内も必ずしも一枚岩でなく、様々な考え方があると思われる。軍内
 の強硬派が力を伸ばす口実を与えてはならない。

 さらに、歴史問題についても中国の非難と日本の弁解という受け身から、そろそろ脱却
 してもよいのではないか。中国が日本政府の歴史認識を問うならば、毛沢東時代の文化
 大革命やトウ小平期の天安門事件に対する歴史認識が問われてしかるべきであろう。

 中国の愛国教育を批判するだけでなく、将来に向けて中国民衆を日本の味方につけるた
 めに、日本を積極的に知らせる方策を考えるべきだ。冷徹な外交の論理の上に立って初
 めて、着実な友好感情が根づくのである。
 (【正論】京都大学教授・中西寛・産経)
       Kenzo Yamaoka

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