1990.石油価格UPとは



石油価格が上昇して、米国の中産以下の消費者が購買を絞っている。
               Fより

米国は自動車の国で、自動車がないと移動が困難である。このため
、ガソリンが1ガロンで1ドル程度と非常に安くしていた。このガ
ソリン価格が2ドル以上に急騰して、米国の一般的な消費者たちが
食料品以外の消費を落としている。圧倒的に多い消費者がAV製品
や衣料品を買わないために、売り上げが落ちている。この影響で中
国の衣料品がダンピングして米国に輸入され、日本の部品を使った
中国製AV家電品の販売も落ちている。

一方、石油会社や中東産油国は景気が良い。上流階級を相手にする
デパートの消費拡大が続いている。それとブッシュ政権を支援する
のは石油会社であるから、ブッシュ政権もいい状態にある。
企業は利益を次の利益の創出に利用することであるが、米国石油会
社は新しい油田の開発をしていない。この儲けをロシア周辺諸国の
民主化や中国の民主化に利用している。油田開発より確実に儲けを
生む公算が高いと見越している。

イラクでの移行政府が立ち上がり、新しい段階になったが斉藤さん
のように毎日、イラク全土でゲリラ活動が続いている。米軍が苦戦
している状況が斉藤さんの問題で日本にも伝えられているようだ。
イラン移行政府の要人には外国警備会社が警備しているが、旧イラ
ク軍の組織はまだ強硬で、イラクの混乱は当分続くようである。資
金も石油の値上がりで潤沢である。

しかし、米国以外の有志連合国は徐々にイラクから撤退する方向で
ある。米軍もこれ以上は増員できないために、外国人傭兵や警備会
社要員を使うしかないようだ。このため、当分米国の軍事予算は、
イラク対応で相当の資金が出ることになる。この資金を得るために
石油価格を高騰させることが必要になる。イラク石油は潤沢にある
ため、その石油資金でイラク統治を行いたいのでしょうね。

斉藤さんの件では、自己責任がハッキリしているために、あまり大
きな政治的な話題にもならなく、日本もようやく世界の標準的な国
民意識になってきたように感じる。日本人を特別扱いにすることが
、今までの報道では異常な感じであった。傭兵や特別警備員に日本
人も多く活躍すればいいのである。それを決めるのは個人の責任で
自由にすればいい。ところが日本人ということで政府や報道機関が
警備兵になることを縛ろうとするのはおかしい。命がけで仕事をす
る自由が日本人にはないというのは、常々おかしいと感じていた。
斉藤さんは死んでいると思うが、日本人の新しい生き方を示してい
ると思う。また、横に逸れた。

米国の次の目標は、ロシア周辺諸国の民主化、特に中央アジアとカ
スピ海沿岸地域でしょうね。そこの石油とパイプラインが狙いであ
ることは、キルギスの次にウズベキスタンで民主化要求が出ている
ことでも分かる。ロシアは防戦しているが、今のところ米国の民主
化に対抗できないようである。

ロシアは中東のシリアやイランなどで細々と抵抗することしかでき
ない。中国も日本が権利を取得したアザデガン油田を狙っている。

ベネズエラ石油でチャベス大統領は資金を得て、反米的な動きをし
ているが、米国は同じ南米のブラジルのルラ大統領にチャベス大統
領の説得を依頼したが、ブラジルもベネジエラから石油を低価格で
仕入れるために、米国の要請を拒絶したようだ。米国の同盟国チリ
も、チャベス大統領に対して強硬なアプローチを取ることにはほと
んど関心を見せていない。ここでも徐々に米国は嫌われ始めて、元
宗主国であるスペインとの関係が深まっているようだ。EUの影が
見える。

中国の米国石油資本との石油争奪戦の対抗として、米国は本気で中
国の民主化を支援し始めている。中国本土に衛星を通じて情報を提
供する新唐人TVを支援するようである。逆に南米では米国の影響
力が落ちている。

このように米国の活動を円滑にするために、石油価格を上昇させて
いるが、それでまた米国の活動を阻害しているということを日本人
は知る必要がある。米国は阻害より利益が大きいと石油価格を上昇
させている。
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NY原油、再び52ドル台に上昇(nikkei)
 【シカゴ=山下真一】9日のニューヨーク・マーカンタイル取引所
(NYMEX)で原油先物相場は4日続伸し、WTI(ウエスト・テ
キサス・インターミディエート)で期近の6月物は前週末に比べ1.07
ドル高い1バレル52.03ドルで取引を終えた。終値としてはほぼ2週間
ぶりの高値水準。石油輸出国機構(OPEC)幹部が、10―12月の
需要期に供給が追いつかない可能性があると発言したことから、先
行きの需給懸念が再び強まった。 (11:02) 
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石油代替エネルギー開発強化を首相指示・対策閣僚会議(nikkei)
 政府は15日、首相官邸で総合エネルギー対策推進閣僚会議を開い
た。エネルギーの石油依存度を下げるための対策を進めることを確
認。小泉純一郎首相が「太陽光や燃料電池、風力などの代替エネル
ギーの開発に力を入れ、石油依存度を低くすることに各省庁が取り
組むように」と指示した。

 会議では中川昭一経済産業相が足元で原油価格が高騰しているこ
とや、省エネルギーを進める必要性などを説明。参加した国土交通
相や環境相らが省庁ごとの省エネへの取り組みや姿勢などを説明し
た。 (20:28) 
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ウズベク、軍が反政府暴動を武力制圧・多数の死傷者か(nikkei)

 【モスクワ=古川英治】中央アジア・ウズベキスタンの治安部隊
は、東部アンディジャンで13日に起きた反政府暴動を、同日夜まで
にほぼ制圧した。部隊はカリモフ大統領の辞任を要求する武装グル
ープが占拠していた州政府庁舎に突入した際に、女性、子供を含む
デモ隊にも発砲し、多数の死傷者が出たもようだ。

 武装グループは13日未明に刑務所を襲撃して政治・宗教犯などを
含む囚人を解放し、警官らを人質にとって州政府庁舎に立てこもっ
た。付近では武装グループを支持する1万人規模の市民による反政府
デモも広がっていた。

 これに対し、治安部隊は同日夕に庁舎に突入。市街でなお散発的
な衝突が起きているとの報道もあるが、暴動をほぼ制圧したもよう
だ。現地に入っていたカリモフ大統領は同日夜、首都タシケントに
引き返したという。 (11:22)
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天然ガスを中印に売り込み イラン外交戦略、米は懸念

 核開発の中止を米英などから迫られているイランが、天然ガスな
ど豊富なエネルギー資源を武器に、インドや中国など急激な経済成
長を続けるアジア諸国との関係を強化している。
 米国は、イランの資源輸出の収益が核兵器開発に使われる恐れが
あるとして、同国とインドを結ぶガスパイプラインの建設計画に懸
念を示すなど、こうした動きをけん制。しかし、インドなどは「エ
ネルギーは国家安全保障の一部」(アイヤル石油・天然ガス相)と
主張し、米国の対イラン政策とは一線を画している。
 イラン南部アサルエで四月十六日開かれた天然ガス精製施設の完
工式典。ハタミ大統領は「ガスは神から授かった大きな宝物」と強
調した。
 イランは原油、天然ガスともに確認埋蔵量世界第二位を誇る資源
大国。今回の精製施設は主に国内消費向けだが、将来はアサルエで
液化天然ガス(LNG)を生産し、本格的に海外に輸出する計画だ
。
 インドは今年一月、総額四百億ドル(約四兆二千億円)で年七百
五十万トン、中国は昨年十月、総額千億ドルで年千万トンのLNG
を、それぞれ二十五年間輸入する覚書に調印した。
 エネルギー消費量が拡大の一途をたどる両国は、ともにイラン南
西部にあるヤダバラン油田の一部権益も獲得。中国は覚書に調印し
た直後、米国が主張するイランの核問題の国連安全保障理事会付託
に反対するなど、イラン外交は一定の成果を挙げている。
 一方、欧州の石油大手は、「環境にやさしい化石燃料」としての
天然ガスに注目。米政府の対イラン経済制裁下で本格進出できない
米企業を尻目に、ペルシャ湾内に位置する大規模ガス田、南パルス
・ガス田の開発参入に躍起だ。フランスのトタルやイタリアのEN
Iなどが既に権益を獲得している。
 イランは、欧州へのガス輸出に向け、同国とトルコ間のパイプラ
イン延長も計画。ニューヨーク市場の原油先物相場が一バレル=五
〇ドル前後で高止まりする中、米企業にもガス開発事業への参加を
呼び掛けるなど、米企業の取り込みすら図っている。(イラン南部
アサルエ共同=宇田川謙)
20050507 1553
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武装組織沈黙、安否なお不明=斎藤さん拘束からあすで1週間−イラク

 【カイロ14日時事】イラク西部アンバル州で、英警備会社ハー
ト・セキュリティー勤務の斎藤昭彦さん(44)がイスラム教スン
ニ派武装勢力アンサール・スンナ軍に拘束されたとみられる事件が
発生してから、15日で1週間。9日に同組織の犯行声明が出て以
来、日本政府は情報収集に全力を挙げてきたが、同組織はその後沈
黙を続け、斎藤さんの安否や行方は依然として分かっていない。 
(時事通信) - 5月14日15時1分更新
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「危険を感じたら、即銃撃」   
   
  【カイロ高橋宗男】バグダッドで要人警護を担当する民間軍事会社
(PMC)に勤務するイラク人が10日、毎日新聞のバグダッドの助手の
インタビューに応じた。「ほんの少しでも危険を感じたら、ためらわずに
撃つこと」と内規に定められているといい、危険と隣り合わせの緊迫した
業務の実態が浮かび上がった。

 PMCは「プライベート・ミリタリー・カンパニー」の略。このイラク
人は、米国系PMC「グローバル・セキュリティー」に勤務する男性。
同社はバグダッド国際空港で爆発物チェックなどの警備を担当しているほか、
イラク人政治家ら要人の車列警護も行っている。

 男性によると、実際に現場で警備に当たるのはイラク人やネパール人、
南アフリカ人。要人の車列警護の場合、ネパール人と南ア人は米国製自動
小銃M16を、イラク人は扱いに慣れていることからロシア製カラシニコフ
を携行するという。

 同社の内規では、車列警護で危険を感じた場合、「その大小にかかわらず
小銃を撃たねばならない」と規定されている。また後続車が、最後尾の車
から20メートル以内に近づいた場合、「問答無用で銃撃する」よう命じ
られているという。

 このルールは他の警備会社も適用しており、まれに民間人の車を銃撃
するケースもあるという。男性は「仕掛け爆弾やロケット砲で狙われる
こともある。後続車が民間人かどうかをいちいち確認していたら、
こちらがやられてしまう」と話している。(毎日新聞 2005年5月11日)
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軍事作戦の手順としては、まず誰何(すいか)して敵味方の区別をつけ、
敵と分かったら引き金を引く。

それが建前なのではあるが、実戦の場ではそんなこと言ってられない。

一瞬の判断の遅れが文字通りに生死を分けるわけで、現実には「Shoot
first. Ask later.」になる。つまり、何かあったら、まず引き金を引き、
「誰か?」と訊くのはその後。だから同士討ちが避けられない/同士討ち
が多くなる。

「同士討ち」って、英語では"friendly fire"(フレンドリーファイア)と
いうのだけれど、日本人的感覚からすると、どこがフレンドリーやねん!
という気がする。

劇画や西部劇では、敵に「拳銃を抜け!」と声を掛け、相手が抜くと同時に
一瞬の早業で倒すシーンが出てくる。中には、わざわざピストルを敵に投げ
与えたりする。淀川長治的に言えば、「これこそ西部劇ですね〜」、「正々
堂々の一騎討ちですね〜」となるが、そんなことを本当にやっていたら、
命なんて幾つあっても足りない。

男と男が正面切って勝負するハリウッド西部劇では、「男の美学」のため
には死んでも構わないかのようであるが、西部劇の実際がどうだったかと
いうと、相手が武器を持っていれば不意打ちもOKだったし、相手の人数
に倍する助太刀があっても"fair game"だったのだ。

正面から向き合う1対1の決闘などやっていた日には、やられる確率は
2分の1。これでは、決闘を5回もやると、生き残る確率は3%台に
なってしまい、伝説のヒーローになるなんて、絶対に無理。

ということは、西部劇に名前が残っているような連中は結構ずるいこと
/卑怯なことをやって生き延びたということである。

と西部劇の真実/真相を振り返ったところで、現在に話題を移しましょう。

イラクのバグダッドで武装勢力に拉致されたイタリア人の女性記者が解放
された直後、車で移動中に米軍兵士に銃撃され、同乗していたイタリア
情報部員が死亡した事件がありましたが、ご記憶の読者も多いでしょう。

あの事件に関してはアメリカとイタリアが合同調査を行ったのであるが、
双方の結論は正反対になった。

アメリカ側の報告書によれば、車列が近づいた時点で強い照明を当てて
警告。次に警告射撃。それでも車が停まらないのでエンジンに向けて発砲。
つまり、米兵は手順通りに行動したので職務上の過失はないとされた。

しかしながら、イタリアの報告書によれば、事件現場の検問所へ車両が接近
した際に米兵らは緊張しており、投光器による警告とほぼ同時に銃撃を始め
たと断罪する。

銃撃した米兵も「接近してくる車両に恐怖を感じた。自分の娘達のことが
頭に浮かんだ」と証言。

そうした証言や他の客観証拠を勘案してイタリアは「経験不足とストレス
から(米兵は)自己制御できず、本能的に反応した」と結論づける。

この2つの報告書を見比べれば、イタリアの報告書が正しいとの心証を禁じ
えない。ただ「経験不足から自己制御できず」とのくだりは違う。

たとえ経験豊富な兵士であったとしても、自爆テロリストの車が迫って
きているかもしれないのに、まずは照明で警告、何秒たったら警告射撃、
更に何秒たったらエンジンに向けて発砲なんて悠長なことをやっていら
れるわけがない。そんな手順を馬鹿正直に踏んでいたら、イラクの危険
地帯では絶対に生き残れない。これは断言できる。だから、照明を当てる
とほぼ同時に銃撃したのである。そして、米軍はそんな兵士の行動を責め
られない。

そんなことをしてごらん。反乱が起きるって!

反乱とまでは行かなくても、兵士の拒否反応が強くてアメリカはイラク
戦争を継続できなくなる。

    Kenzo Yamaoka
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中東問題専門家アミール・ベアティ氏に聞く   
   
 及第点のイラク移行政府
イスラム一色望まぬ国民
 イラクで三日、移行政府が発足した。同政府の主要課題は新憲法の作成だ。そこでイラ
 ク出身の中東問題専門家、アミール・ベアティ氏に移行政府発足の背景とその課題など
 について質問した。(聞き手=ウィーン・小川 敏・世界日報)掲載許可

 ――一月末の国民議会選挙後、三カ月ぶりに移行政府が発足した。移行政府をどのよう
 に評価するか。

 移行政府は多くの未解決の問題を抱えているが、民族の統合を目標に掲げて発足までこ
 ぎつけた点で及第点は取れるだろう。 移行政府発足までに多くの時間がかかった背景
 には、@選挙をボイコットしたスンニ派が選挙で圧勝したシーア派主導の政府づくりを
 妨害Aシーア派政党がクルド派の民兵組織の解体を要求、クルド派政党と舞台裏で激し
 い戦いを展開Bクルド派政党間でも「クルド愛国同盟」(PUK)のタラバニ議長と
 「クルド民主党」(KDP)バルザニ議長との間で利権争いがあった――からだ。閣僚
 ポスト争いの状況は一種のバザールだ。単に政党間の対立だけではなく、政党内でも争
 いが行われた。

 ――スンニ派はフセイン政権時代には厚遇を受けた一方、シーア派は激しい迫害を受け
 てきた。両派間で宗派対立は激化しているのか。

 スンニ派の主要勢力が移行政府に参加しなかった場合、政情不安の要因となっただろう。
 軍部や内務省には多くのスンニ派がいる。彼らは大きな影響力を有しているからだ。看
 過できない点は、首相に任命された「アッダワ」党首ジャアファリ氏、ハキム師が率い
 る「イラク・イスラム革命最高評議会」(SCIRI)らイスラム派と、米国が支援す
 るアラウィ氏の「イラク人のリスト」の世俗派グループ間で路線争いが激化しているこ
 とだ。ただし、イラク国民の多くは世俗イスラム教徒であり、イランのようなイスラム
 教国体には距離を置いている。

 ――アラウィ氏が率いる統一会派「イラク人のリスト」は政権参加を拒否している。

 アラウィ氏が利権争いを回避、野党の道を選択したとすれば、賢明な判断だ。民主政権
 では健全な野党勢力の存在が欠かせないからだ。年末実施予定の国民議会選挙ではアラ
 ウィ氏が大躍進する可能性が考えられる。

 ――移行政府の主要課題は八月十五日までに新憲法を作成することだが、スムーズに草
 案作成が運ぶと予想できるか。

 新憲法草案まで三カ月半余りしかない。時間は十分ではない。政党間で利権争いに明け
 暮れている時ではない。国体は明確だ。イスラム教を主要宗教と明記したイスラム国家
 だ。憲法作成で最も難しい点はクルド自治区の立場だ。シーア派政党派はキルクークを
 クルド側に渡すことに反対、クルドの民兵組織(バシュマルガ)の解体も要求している。
 もちろん、クルド側は強く反発、ハキム・グループの民兵旅団「アルバダ」の解体を逆
 に要求している、といった具合だ。政党間の争いが続けば、憲法草案作成が難しくなる
 ことは十分予想できる。

 ――移行政権に対するイランの影響はどうか。シーア派の拠点はイランにあり、イラン
 と密接な関係が噂(うわさ)されてきたチャラビ氏が今回、移行政府の副首相に就任し
 ている。

 米国がチャラビ氏の閣僚入りを歓迎していないことは間違いない。チャラビ氏は米国か
 ら好ましくない人物として新生イラクの中核から追い払われた後、シーア派に接近、権
 力奪回を目指している人物だ。一方、西側世界との接触を模索してきたシーア派はチャ
 ラビ氏の人脈を利用したいのだ。ところで、「アッダワ」党もハキム・グループもイラ
 ンを拠点としている勢力だ。特にハキム・グループはイランの代行役を演じている。そ
 の意味で、移行政府に対するイランの影響は厳然として存在する。ただし、先述したよ
 うに、イラク国民は基本的には世俗的であり、イランのようなイスラム一色の社会を望
 んでいないことは明らかだ。

 ――米軍の撤退問題は大きな政治課題となるか。

 シスタニ師が国民選挙で米軍の早期撤退を要求、有権者を投票に動員して成功したが、
 治安状況は依然悪く、インフラ再建も不十分な段階で米軍の撤退は賢明ではない。米軍
 の一部撤退は考えられるが、完全撤退は当分は政治課題ではない。移行政府関係者の多
 くが利権、ポスト争いで血眼となっている有様だ。三十五年間、独裁者の下で生活を余
 儀なくされたイラクでは、民主主義を学ぶためにはまだ多くの時間がかかることだろう。
 外国軍(米軍)の駐留は望ましくはないが、必要だ。
    Kenzo Yamaoka
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『「リンカーンの党」再建へ』−三浦 祐一郎   
  
共和党の支持拡大戦略/黒人保守派と連携
 ブッシュ再選の立役者であるカール・ローブ上級顧問は、外交・内政全般を担当する大
 統領補佐官に就任した。ローブ氏にとってブッシュ政権の成功は、自身の目指す向こう
 数十年にわたる輝かしい「共和党の時代」を築くことができるか否かの試金石でもある
 だけに、周到な準備と気配りを利かせた施策を行うものと思われる。

 二〇〇〇年の大統領選挙でブッシュ氏に一票を投じた人々の支持を固め、さらにその時
 投票に行かなかったキリスト教右派の支持を獲得できれば再選は確実、とにらんだロー
 ブ戦略は見事に成功した。

 この戦略は対テロ戦争で生まれ、イラク戦争で深まったアメリカ国内の対立を決定的な
 ものとしたともいえるが、ブッシュ再選を当面の目標としていたローブ氏にとっては当
 然の選択であった。とはいえ、同氏の描く共和党常勝の時代を可能にするためには、
 「分裂したアメリカ」という現状は決して好ましいものではない。

 『エコノミスト』4月23日号は、ローブ氏の次の一手ともいえる戦略について、「リ
 ンカーンの党の再建」と題する興味深い記事を掲載している。この記事は、最近のブッ
 シュ大統領の演説に「リンカーン」の名前が頻繁に登場することを指摘し、共和党がレ
 ーガン大統領によって獲得した南部の白人票、いわゆるレーガン・デモクラットに加え、
 公民権運動によって民主党の強固な基盤となった黒人票の切り崩しに着手したと分析し
 ている。

 信仰心の篤い黒人の多くは、同性婚について道徳的な観点から反発しており、多様性を
 掲げ広範な国民の支持を得ようと、ゲイ団体の主張に沿った極端な政権公約を掲げてき
 た最近の民主党は、黒人層内のキリスト教・イスラム教系の支持を失いかねないとみら
 れている。

 ブッシュ陣営はすでに黒人内の教会指導者層との連携を強めつつあり、コウリン・パウ
 エル氏に続いてコンドリーサ・ライス女史を国務長官に起用したことに象徴される黒人
 ・有色人種重視の姿勢と相まって、政権の対黒人層への働き掛けは確実に進んでいる。

 一九五六年の大統領選挙では、故キング牧師はアイゼンハワー候補に投票していたと言
 われ、民主党が公民権運動によって黒人層の支持を取り付けるまでは、共和党は奴隷解
 放を実現した「リンカーンの党」として一定の支持を得ていたという。

 今後、道徳面での共闘と有力官僚への登用によって黒人層の共和党支持への転換が成功
 するかは予断を許さないが、富裕黒人層のブッシュ・デモクラット化の成否が共和党の
 未来を左右することは間違いない。
  (世界日報)掲載許可
 
    Kenzo Yamaoka
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ブラジル、米国の反チャベス圧力要請を拒絶

 【サンパウロ、ブラジル】ブッシュ米政権は、ウゴ・チャベス大統領のベネズエラ政府
 を非難するOAS(米州機構)決議を提案するよう、南米の一国に協力を求めている。
 しかし、同地域への政権高官2人の訪問も成果なく終わった。

 決議提案へ最大の圧力が掛かっているのはブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシル
 バ大統領だ。同大統領は、チャベス大統領に同調することはあるものの、同大統領の米
 国に対する遠慮のない敵意については非常に批判的だ。

 しかし、ルラ・ダシルバ氏は、ブラジル・ベネズエラ関係はかつてないほど接近してい
 る、と指摘し、ドナルド・H・ラムズフェルド国防長官とコンドリーザ・ライス国務長
 官が同国を訪問した際、米国の要請を拒絶したようだ。

 チャベス大統領は、フィデル・カストロのキューバの主要な支持者となり、いつも米国
 にあざけりの言葉を浴びせているが、もう一つの米国の同盟国チリも、チャベス大統領
 に対して強硬なアプローチを取ることにはほとんど関心を見せていない。

 「ブラジルやその他の諸国とともに、われわれが、ベネズエラに関して推進している政
 策は、情勢の悪化を避けるために適切と考えている」とチリのリカルド・ラゴス大統領
 は4月28日、ライス氏に語った。「また時には、ベネズエラに対する言葉遣いをトー
 ンダウンさせるのも有効だ」

 ブッシュ政権高官は、3月23日のラムズフェルド氏訪問の2週間前に行った背景説明
 で、ブラジルの記者に対し、OASでチャベス氏が忠告を受けることをブッシュ政権は
 目指していると語った。

 ラムズフェルド氏は3月の訪問の際、ロシアからの兵器購入についてチャベス氏を厳し
 く批判したものの、同氏を非難するよう公的に要請することはしなかった。ライス氏が
 4月末の訪問の際に出した公的声明はさらに慎重だったが、OASでの対処を示唆した。

 ライス氏は25日、ブラジリアで、「われわれは、ベネズエラとの良い関係を希望して
 いる」と述べた。「われわれは、ベネズエラ国内の動向とOASの民主的憲章の順守に
 関して、ベネズエラの現政権の振る舞いに懸念を抱いてきた」

 米国にしてみれば、チャベス氏を非難するという仕事をブラジルにしてほしいと思うの
 は当然だ。

 ルラ・ダシルバ氏は、米国との30年軍事協定を無効にするチャベス氏の最近の決断に
 ついて公然と異論を唱え、チャベス氏はワシントンを相手に「限界を試している」と述
 べた。

 それ以外にも相違点がある。ルラ・ダシルバ氏は、当然のことながら、西半球全体の自
 由貿易協定に賛成しているが、チャベス氏はそれに断固反対している。

 しかしながら、ルラ・ダシルバ氏が2003年1月の就任後進めてきた主要な構想の一
 つに、南米の経済的統合があるが、それはチャベス氏も熱望しているものだ。

 ブラジルは2月、エネルギー、採鉱、輸送、航空宇宙、防衛に関する20の協定をベネ
 ズエラと締結した。(5月10日付)世界日報l 掲載許可
    Kenzo Yamaoka

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