1972.イスラエル事情3



27日も休日であり、皆が我々のために出社してきている。特にイ
スラエルの企業をセットアップしていただいたIAIの営業マンに
は感謝しなければいけないようだ。家族サービスを犠牲にして、我
々に付き合ってくれている。

このIAIの営業担当者は元インテリジェンスの将校であったよう
で、太ってはいるが筋肉質のがっちりした体をしている。25日の
ベンチャー企業の経営者も軍人として研究していた物の発展系であ
ると言うし、26日の夜に一緒に食事した元パイロットの人は繊維
系企業の経営者をしている。

このように軍人の多くが企業を起こしている。それも18歳で4年
間、軍に所属して、2年目に選択されてインテリジェンス分野にな
る。この軍の情報系部門はいろいろな分野の技術を習得できる。
この技術を利用して商売を行うことになるようだ。それもイスラエ
ルの軍事予算は、国家予算の半分を占めるし、その半分でも足りな
い状態で、どう軍活動の効率を上げるかを常に考えている。

今日はIAIのグループ企業であるELTAを訪問した。エルタは
イスラエル軍用にレーダーやシステムなどを納入しているが、その
軍事電子兵器を世界に売っている。今回付き合っていただいている
営業マンも世界を股に駆けて飛び回っている。中国、チリ、タイ、
モンゴル、フィリピン、欧州諸国など25ケ国以上であるという。

エルタの警備も厳重である。IAIと同様であるが、営業マンがい
るので、優先的に入ることができた。勿論、カメラなどは持ち込み
禁止だ。

エルタではインテリジャンスのプレゼンテーションから始まった。
IMINT(衛星や飛行機からのカメラ写真)、
ELINT(敵の電波などの探知)、
COMINT(コミュニケーションの探知)、
SIGINT(いろいろな情報から意味を見つけること)
HuMINT(スパイ)

このエルタは上4つの機器、システムを製造しているとのこと。
その講義を受けるために廊下を歩いていると、エルタのレーダをロ
シアの新しいミグ戦闘機に搭載している写真が壁に掛かっていた。

軍事的にもキーパーツであるレーダがイスラエルからロシアに行っ
ていると聞いて、ロシア軍の動向を知るために輸出しているのかと
思った。どうも、この延長線に中国への輸出もあるようである。営
業マンが中国への出張回数は非常に多いと言っていた。

プレゼンテーションで大きな衝撃を受けたのが、迎撃ミサイルであ
るアロー2用の地上設置のレーダーで非常にコンパクトで移動可能
であると。写真もあり、これは凄いと思った。

それと軍事情報をWEBで全軍が情報を共有化している。すべての
情報をWEB化することは自衛隊も米軍もしていない。そして、ど
うも米軍が進めているRMAに必要な電子機器やシステムはすでに
イスラエルにあるようだ。このため、イスラエルの軍事用電子機器
が米軍にも使われているようである。そして、その優れてかつロー
コストな製品が世界で売れているようである。

ローコストにしている理由がシステムのほとんどを民生品で構成し
ていることによる。システムのOSはWindowsで、システム
のハードはIBMのブレード・コンピューターである。このため、
前線に近い場所のレーダサイトも非常にコンパクトで、コンテナの
箱1つで全ての機器が納まっている。これを現地に持っていけば済
むために簡単になっている。必要に迫られて作った物であるが、優
れている。女性の営業トップが力説していたのはハードではなく、
どのような価値を生み出すかであると。ハードよりその価値を高め
ることが重要な時代になったと、ここでも痛感した。

ホームランド・セキュリティでは、沿岸警備用のレーダー・システ
ムもあった。しかし、エルタのやり方を日本の防衛産業も真似して
軍事予算の効率化をしてほしいものですね。

どうも日本の衰退は、国家機関・企業での研究を止めたことでない
かとイスラエルを見ていると思い始めている。国鉄や電電公社を民
営化したために研究レベルが大きく落ちている。しかし、どこかで
国家ベースで目的を持った研究をする必要がある。そうしないと、
基礎研究がないために、企業が作る製品レベルも落ちているような
気がする。

もう一度、国家予算ベースで目的を持った研究体制を確立する必要
がある。通信も鉄道も民営化したため、残すは国防しかないような
気がする。北朝鮮からのミサイル防衛に真剣に取り組みべきで、そ
うしないと北朝鮮は真剣に拉致問題を取り組まない。兵力を増やさ
ない軍事力の強化が必要である。それには、軍事技術を最高レベル
にするしかない。これは対中国との軍事衝突の防止にもなる。中国
が日本を攻撃したら、滅亡になると思えば衝突を抑止できる。そし
て、その軍事研究を早期に民営転換する方法を考えることが、次の
日本の経済的な生き残りに必要なことのようであると感じる。

エルタ訪問後、80万人の都市である港湾・工業都市ハイファーへ
行ったのですが、イスラエルの中でもハイファー大学はレベルが高
く、その学校からいろいろなベンチャーが生まれているようである。

ベンチャーの成功率はしかし、イスラエルでも1%程度と低い。
しかし、ベンチャーを育てるインキューベータがいる。軍関係の技
術をベンチャー企業化するのは、成功率が高いが、大学のベンチャ
ーはそれほど高くないような気がした。ハイファーの丘の上から見
る港湾都市ハイファーはきれいである。

付き添ってくれた営業マンがドルース族の集落を見ないかというの
で、見に行った。ドルース族はアラブ系であるが、イスラム教を信
仰していない。独自の信仰をしている人たちで、イスラエルへの忠
誠度が高く、軍人にもなっているという。ドルース族の地域に軍人
墓地もある。今回の出張で付き添っていただいた営業マンの話が、
非常に面白かった。そして、その人から見たイスラエルの現状も
良く分かったような気がする。私もイスラエルが好きになりそうで
ある。商売的にも面白いものを発見できそうな予感がしている。

今回のイスラエル出張では体の調子がおかしくならない。ほとんど
肉を食べていない。シーフードや魚と野菜を食べているために胃腸
薬を持ってきたが、それも使わない。食事の量をコントロールでき
るためでしょうね。最初のパンと野菜の煮物とメインのシーフード
だけで、コース料理でも最後のケーキを食べていない。

それと、27日は9時近くにテルアビブの街に出ているが、休日で
もあり、沢山の子供連れが町を歩いている。ここが安全である証拠
のような気がする。日本で考えていたような危険を少しも感じない
。休日のためか家族連れが多く泊まっているためにホテルはゴッタ
がいしている。

しかし、あっという間のテルアビブでの出張でした。いろいろなベ
ンチャー企業を訪問しましたが、そのほとんどをお話できませんが
、イスラエルのベンチャー企業は軍との関係もあるし、軍の技術を
発展させていると感じました。これは大きな可能性を秘めていると
いう思いを持ちましたね。明日はインタンブールに戻ることになる。

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