1957.台湾の菜食主義者



         台湾の菜食主義者
                        平成17年(2005)4月5日
                      「地球に謙虚に」運動 代表
                           仲 津 英 治

 こちら台湾では清明節、旧暦の2月27日で休日です。皆さん故郷へ帰るのが
慣習だとか。故郷からU−ターンする人たちのラッシュが続いています。

 今日は台湾の菜食主義者=Vegetarianについて触れたいと思います。台湾では
菜食主義者のことを素食主義者と表します。

 2年以上前に台湾での仕事に耐える胃腸に戻そうと断食道場に入ったことがあ
ります。同じく「地球に謙虚に」運動の呼びかけ人である栃下和雄氏=エコロジ
カル イーテイング(省食・少食)運動代表が主宰されている道場でした。そこ
で中国人社会(台湾も含め)は食事をすることを楽しみとするいわば食道楽の
社会なので、健康のために態々断食を行なう人は極めて少ないとの話を伺いま
した。

 しかし平成15年(2003)8月台湾高速鐵路公司の職場に入って見ると、確かに断食
を行なう人は大変少ないことは確認できましたが、菜食主義者の人が多いことに
驚きました。私の所属している安全部は20人ほどの所帯ですが、一割の二人がそ
うなのです。一緒に食事に参りますと彼らは特別に別の料理を注文します。

 さらに驚いたのは菜食主義者の人と一緒に出張に行ったときに、出張先の係り
の人が弁当を注文する際、菜食主義者の人はいないかと確認したことです。彼以
外にもう一人いました。そして弁当屋はちゃんと素食何々と記された弁当を運ん
で参りました。また会社の忘年会パーテイーが開かれたときです。1,000人は下ら
ない社員全員参加の懇親夕食会でもあります。そこにもちゃんと菜食主義者専用
のテーブルが用意されており、数十人の出席者が会をともにしていました。何箇
所か菜食主義者用の食卓が整えられていたようです。

 少なくとも私の知っている範囲内で、日本では菜食主義者用の弁当とか、宴席
で専用テーブルを設ける手配などは、寡聞にして聞いたことが有りません。弁当
屋さんは菜食者用の弁当を作って採算が取れているのだろうかと人事ながら、関
心を持って伺ったところ、結構需要があるから大丈夫だ、レストランでも菜食専
用のお店もあるくらいだというのです。

 一方、台湾ではケーブルテレビが圧倒的に普及しています。台北など大都市で
は100チャンネルを越えるテレビ番組があり、その中に仏教の宗教番組が4チャン
ネルもあります。もちろん民間放送です。放送内容は当然硬く、一日中お坊さん
の説話、読経風景とお経などが流されています。北京語を習い始めてから、しば
らくして流れる漢字字幕とお坊さんの話を追っかけたことがあります。意味はさ
っぱり分かりませんが、どうやら和尚さんによって台湾語と北京語の違いがある
ようです。これはチャンネルに拠るのではなく、説話する和尚さんが使い分ける
か、いずれかの言語で話しておるとの事でした。

 いずれにせよ、宗教番組で4CHものテレビ放送があることには、台湾へ来たと
きに驚愕の念を禁じえませんでした。しかも企業CMはありません。親しくなった
方々に伺ってみますと、ある女性が「私も含め、信者がスポンサーになっている
」と言われました。職場の菜食主義の同僚曰く、自分もドナーであるとのことで
した。会費制かと伺いますと「いや個人の自由意思による」との答え。

 日本で宗教団体がテレビチャンネルを持つことは許されているのか知りません
が、仮に認めるとすると、信教の自由とか公共性のある電波を特定宗教に開放
するのかと言った議論が巻き起こりそうな気がします。

 信者によって支えられた宗教チャンネルの存在、放送内容を見ますと全て仏教
系です。そしてテレビ番組でも信者に菜食主義を勧奨しているとの事です。紹介
された複数の宗派のホームページを見ますと、お寺の建物は煌びやかで割と歴史
の新しい新興仏教寺院という印象を持ちました。壮大な寺院の建物、庭園などは
全て信者の寄付によるとのことです。

 そして菜食主義者の人はどれくらいいるのかと友人に伺いますと、人口の1-2
割はいるだろうとの返事でした。中に宗教上の信念に基づく人と、健康のために
菜食主義を貫いている人の二通りあり、仏教信者の方が長続きするとの事でした。
私は台湾社会の健全性の一端を知ったような気がしています。 

 また菜食主義も中身もかなり徹底しており、動物、魚介類の肉、乳、脂、また
それらを原材料にした製品も禁止であり、スープなどにも動物油は使われていな
いとの事です。

 去る3月13日に発信しました「稲作を大切に、お米を頂こう」のところで述
べましたように動物食はエネルギー資源を多消費する食生活でもあります。世界
3大穀物のトウモロコシ1kgで人間が1日生きられるとすると、鶏には2倍の、
豚には4倍の、牛には実に11倍のトウモロコシを与えないと同じ重さの肉が得ら
れないと言います。それだけ大きな面積の土地が要るのです。

 また肉食は肥満を生み、肥満体はその重さゆえに何かとエネルギー使用を促進
します。肉食主義者は消エネ・消資源生活者であり、菜食主義者は間違いなく
省エネ・省資源生活者です。

 私は、菜食主義者ではありませんが、かなり以前から肉食は避け、海鮮、海産
物は大いに頂くように切替えました。生物の祖先は海で生まれ育ったことを知っ
たときからです。そして朝夕2食を原則とするようになって3年と6ヶ月、体重は
コンスタントです。

 良い事はお互いに学びあえると思います。
 台湾から学ぶことが多いと思う今日この頃です。

仲津 英治

「地球に謙虚に」運動代表

台湾在任中
「地球に謙虚に」運動ホームページ No.1
http://www.hpmix.com/home/ise/kenkyoni/

「地球に謙虚に」運動ホームページ No.2
http://www5f.biglobe.ne.jp/~kenkyoni/

                           以上
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「日本漢字大悪補」   
   
  台湾でネットサーフィンしていて面白いページを見つけた。「日本漢字大悪補」という
 タイトルで、日本語で使う漢字と、台湾で使われる中国語の漢字の「意味の違い」を、
 その違い方に応じて7段階に分類してみせたところが面白い。

 まず@「もともと同じもの」として、可愛、英語、作家、運動、学生、恋愛、宣言、禁
 煙、銀行、経済などなど。銀行や政治など、なかには明治時代に中国語の方が日本から
 輸入した近代の言葉もある。

 次にA「すでにポピュラーになっている日本語」として、映画や宅配便をあげている。
 B「見てすぐに分かる」が、新登場(中国語は新上市、以下カッコ内同じ)、誕生日
 (生日)など。

 C「何度かみて分かる」は、無料(免費)、元気(精神)、風邪(感冒)、一番(最好
 的)、非常口(安全門)など。そしてD「説明を受けて分かる」は大丈夫(没問題)、
 荷物(行李)、大変(非常)、残念(可惜)など。このレベルまではなんとか筆談と身
 ぶり手ぶりで意思疎通が図れそうなレベルだ。

 ところがE「頭をひねっても分かりにくい」のが勉強(学習)、手紙(信)、切手(郵
 票)、汽車(火車)など。ちなみに中国語で勉強とは、相手に強要する、という動詞に
 なる。手紙はトイレットペーパーのこと。汽車は自動車のこと。切手は手を切る?

 さてF「どんなに頭をひねっても分からない」のが御袋(母親)、素敵(絶妙)、泥棒
 (小愉)、質屋(当鋪)など。カンガルーでもないのに、母親が御袋とは?と、ある台
 湾人にいわれたのにはまいった。

 7段階以外の「番外編」として、日本人観光客が台湾でビックリたまげる場所がある、
 という。産経新聞台北支局のすぐそばで、毎日のように日本人観光客がバスで大挙して
 やってくるレストランだ。「家中お金だらけ」という意味の、お金もうけに聡い台湾人
 の好きそうな名前なのだが、きらびやかな看板に輝く漢字は「金玉満堂」となる。

 何を想像するのか、店についてゲラゲラ笑う失礼な(?)日本人男性も少なくないらし
 い。  同じ漢字。されど、かくも漢字は難しい。
       Kenzo Yamaoka
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「車とバイク優先」   
   
  台北や高雄など、台湾で都市といえばまず「車とバイク優先」が常識だ。歩行者が横断
 歩道を渡っていても、車やバイクはお構いなしに突っ込んでくる。

 一方で歩行者も不思議なくらい、暴走車をひらりとかわしては、何事もなかったように
 過ぎ去っていく。ドライバーをにらみつける人などまずいない。

 台北に来たばかりのころ、横断歩道を渡っていたとき、目の前ほんのわずかのところを
 2人乗りバイクが突っ込んできて転びそうになった。バイクに向かって怒ったところ、
 一緒に歩いていた台湾人女性は「こわーい!」。 バイクが怖かったのではなく、バイ
 クに向かって怒った日本人が「怖かった」と言われ、がっくり肩を落とした。

 アーケードなどの歩道をバイクが疾走するのも「常識」。バイクの一方通行逆走も黙認
 状態。歩行者は誰一人として文句を言う様子もない。

 タクシーに乗っているとヒヤヒヤの連続だ。急な車線変更、並走するバイク、歩行者に
 数センチの距離まで接近する運転…。外国人には荒っぽい運転に映るのだが、台湾では
 何ら非常識ではないよう。外国人の乗客が怖がると、運転手は「台湾は一流のドライバ
 ーばかり。なぜなら二流以下は全員死んでしまったから」と使い古された常套句のよう
 なブラックジョークをとばす。聞かされたほうは目をつぶって運を天に任せるしかない。

 左折車線や駐車場で車列に割り込むことは日常茶飯事。割り込まれたドライバーは何も
 言わない。時には自分も割り込むことがあるので、割り込まれても気にしない―そんな
 「おおらかさ」があるからなのだろうか。

 台湾の人々は一般に相手の行動や失敗に対して実に寛大といえる。重要な会議の遅刻だ
 って例外ではない。自分勝手な集団のようだが、視点を変えると、互いに許しあえる社
 会と言い換えることもできる。

 前総統の李登輝氏は、こうした台湾人の性格の一端を「慈悲と寛容」と表現した。他人
 の「失敗」に慈悲の心で接する寛大さ。その精神こそが「台湾人アイデンティティー
 (帰属意識)」と著書に記している。日本人もカリカリせずおおらかに。もうすこし南
 国の精神を学びたい。

      Kenzo Yamaoka


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