1956.欧州連合の苦悩



ユーロは次の世界的な基軸通貨になれる可能性があるが、しかし経
済はダメになる。     Fより

欧州は安全保障面で、ロシアの軍事力と経済力が無くなり、周辺同
盟国が親露から親欧米になってきて、欧州の範囲は拡大する方向で
ある。キルギスも親米政権になる可能性がある。このように第2次
大戦後、いつも懸案になっていたロシアへの脅威は薄らいでいる。

それと、ロシアとの緩衝地帯もだんだん、ロシアサイドに広がって
いるために安全性の問題はなくなっている。EUの拡大は今後も続
いていく。

共産圏からの移民を歓迎してきたが、今後は移民に厳しい対応をす
るようであるが、南米諸国の元支配国であるスペインはアルゼンチ
ンなどからの移民を認めるために、EU内での統一が崩れる可能性
もある。EU統一がどこまでになるのか、まだ分からない。

ここで、フランスやドイツは米国の取って代われる国になると、ユ
ーロを基軸通貨化して、米国ドルに取って代われるように戦略的な
動きをしていた。しかし、どうも、ドルからユーロに基軸通貨が移
る前に、仏独経済が基軸通貨にユーロがなることで破産しかねない
状況になっている。このため、中東の石油争奪戦からも降りている
し、米国のドルを追い詰めることも出来ない状態になっている。
以前の元気はどこに行ってしまったのであろうか??

地経学では、基軸通貨を取れば経済が優位になると言うが、基軸通
貨を取る前は一番、経済が苦しくなるときである。ユーロが切り上
がる為に、輸出量が極端に減ることになる。国際競争力が強い必要
がある。しかし、現状、少しユーロがドルに対して上がっただけで
もう経済がおかしくなっている。

それに石油価格が上昇してきて、英国は北海油田があり、それなり
にやっていけるが、仏独は石油の輸入しかない。このため石油価格
の上昇は痛手であるが、それに以上の経済的な問題がでてきている。
この石油価格上昇の裏に米国ブッシュ政権ありで、仏独としても基
軸通貨戦争を停戦をするしかない。

そして、ドイツ経済を支えていたのは、企業の工場とそのマイスタ
ー制度で培われた職人技であったが、その職人技から自動化機械に
工場の組み立ての仕組みが変化して、ドイツより人件費が安い新興
EU諸国のポーランド、チェコなどに工場が移って、ドイツの失業
者は、500万人に達している。このためドイツ経済は苦難に直面
している。

フランスも同様に失業者が多く、国家企業を民営化しているが、ど
んどん倒産している。しかし、国家が助けることは出来ない。EU
としての統一から企業の環境をEU内で均一にしていることによる。

フランスは基本的には、農業国であるために、それほど大きな影響
を受けていないが、ドイツは工業国家であり、その工業力がなくな
るとEU経済の中心地であるために、EU全体の経済力もなくなっ
てしまうし、基軸通貨としてのユーロも維持できない。

英国もイラクへの出兵や自動車会社MGローバーの救済など経済問
題も出て、ブレア首相は劣勢に立たされている。この総選挙で負け
ると英国のイラクからの撤兵など、予断を許さなくなる。英国は
EUとして生きるのか米国の同盟国として生きるのかの選択を問わ
れている。

このようにEU全体で経常収支が悪くなっていくと、再度金利の上
がったドルに戻るか、経常収支の黒字が大きい日本の円、中国の元
に向かうしかないが、中国の元は海外投資家に解放されていない。
このために、円に来るしかない。どうぞ、EUの投資家の皆様、日
本への投資をして、資金維持をしましょうね。
==============================
英労働党と保守党、支持率が互角に=世論調査
  
 [ロンドン 8日 ロイター] 5月5日の英総選挙に向けて、
ブレア首相率いる与党労働党と最大野党保守党の支持率がきっ抗し
、互角の戦いとなっていることが、このほど世論調査で明らかにな
った。8日に発表されたデイリーテレグラフ向けのユーガブ世論調
査によると、労働党の支持率は36%で、保守党の35%をわずか
に上回った。前週の調査からは両党とも1%ポイントずつ上昇した。 
 他の世論調査と同様、労働党がわずかな優位を維持している格好
。このまま労働党が勝利すれば、ブレア首相は同党党首として初の
3期目に入ることになるが、現在過半数を占めている議席は減らす
ことになる見込みだ。 
 アナリストらによると、現行の選挙制度は労働党の都市部票獲得
に有利に働くため、ブレア首相を退陣に追い込むために保守党は大
幅に議席を伸ばす必要があるという。  
 ただ、同世論調査では、ブレア首相と閣僚に対する不信感が主な
争点となっていることが示されており、治安対策や医療問題といっ
た従来の論点よりも、信頼感の欠如が最も重要な問題であるとの回
答が35%に上っている。
(ロイター) - 4月8日13時16分更新
==============================
移民政策、割れる欧州 英独は規制、スペイン優遇

 【ベルリン=黒沢潤】欧州内で移民政策をめぐり摩擦が生じてい
る。ドイツや英国は移民規制を強化する一方、スペインは半年以上
の不法移民に滞在を認める特別優遇策を導入し、周辺国から反発が
強まっている。欧州連合(EU)は移民問題で各国の足並みをそろ
えようと、統一基準作りを検討しているが、容易ではなさそうだ。
 ドイツは今年一月に移民法を改正し、エンジニアや情報技術
(IT)専門家など高度な資格を持つ外国人に定住許可を与える一
方、単純労働者を受け入れないことを明確にした。ドイツは現在、
ヒトラーが台頭した一九三〇年代前半にも匹敵する五百万人台の失
業者を抱え、これ以上、自国の失業者を増やせないとの危機感があ
るほか、昨年三月のマドリード列車同時爆破テロを機に外国人受け
入れに敏感になっているという事情もある。
 一方、英国も二月、英語試験に合格した熟練外国人労働者だけに
永住権を与える「五カ年計画」を発表し、規制強化の姿勢を打ち出
した。二〇〇二年に移民や難民の受け入れを厳格化したデンマーク
の中道右派政権も二月の総選挙で再び勝利している。
 これとは対照的に、大幅な緩和策を導入したのがスペインだ。政
府は二月、三カ月の間に過去の滞在証明書と新たな雇用契約を提示
すれば滞在を許可する優遇策を打ち出した。スペインには北アフリ
カや南米、東欧の出身者など約百万人が不法滞在しているとされ、
「政府は地下経済をあぶり出し、社会保険料や税金の増収を図りた
い考え」(外交筋)だという。
 しかし、移民がいったん滞在許可を得ればEU内を合法的に自由
移動できるため、ドイツやオーストリア、オランダなどが「事前に
報告すべきだった」と猛反発している。
 EU地域の人口は二〇一〇年から三〇年の間に、約二千万人の減
少が見込まれ、現在の経済水準を維持するには移民の積極的な受け
入れが不可欠。EUはそのための統一基準を検討中だが、合法移民
に関するEU閣僚理事会の決定方式がドイツなどの反対で「全会一
致」のまま据え置かれていることもあり、早急な政策を打ち出すの
は困難なのが実情だ。
(産経新聞) - 4月2日2時58分更新
==============================
原油高騰の“真相”(東京新聞)
消費国の依存度低下

 原油価格の高騰が再び始まっている。昨年九月に一バレル(百五
十九リットル)=五〇ドル台に乗せて、年末に低下した後、反転。
このところは六〇ドルに迫る勢いだ。市場での値動きは、原油が市
況商品としての性格を強めていることによるが、高騰の背後に、投
機筋が行う「ゲーム」がある。石油ショックの再来はあるのか、防
止の手だては−。

 ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物
は四日、一時一バレル=五八・二八ドルをつけ、一九八三年の取引
開始以来の最高値を更新した。

 「驚きはしなかった。というのも、最近は相場の変動が激しすぎ
るから」と語るのは大手商社・三菱商事の担当者だ。「二、三年前
までは一日一ドル動けば大変だった。ところが、いまは二、三ドル
動くのが当然になってしまった」

 なぜ、原油価格が高騰しているのか。需要と供給の関係からは説
明できない、と専門家たちは口をそろえる。要は、原油の価格が市
場に左右されているのだ。それも投機筋の資金に。

 財団法人・国際開発センターの畑中美樹(よしき)主任研究員は
、そのからくりを三段跳びで説明する。

 「ホップの段階に当たるのは、中国やインドでの石油需要の伸び
に生産、運搬能力が追いつかないこと。それでも、需給だけでみれ
ば、まだ供給が大きい」

 ステップとなるのは、原油生産をめぐる世界環境の不安定さだ。
イラクでの生産増が抵抗勢力の攻撃で思うに任せず、イランには核
開発問題でいつ経済制裁が発動されるか分からない。ロシアは数年
前まで、米資本との共同開発計画を描いていたが、自己管理の傾向
を強めている。中国も長期安定供給のため、油田権益を買いあさっ
ている。

 「その結果、心理的な逼迫(ひっぱく)感が働き、投機筋が便乗
して、空前の高値傾向を招いた」−ジャンプだ。

 昨年九月、原油価格は五〇ドルの大台を突破。当時と今回に違い
はあるのか。

 畑中氏は「当時は冬の需要期の一時的な現象という見方もあった
が、今回はこれが恒常的な現象という見方が強い」と話す。

 また、湾岸地域滞在経験の長い日本の石油関係者は「米ブッシュ
政権が価格抑制に動かないことも高値安定の一因」と指摘する。

 「ブッシュ一族やチェイニー副大統領らは米系国際石油資本と深
く関係している。高騰は開発する側のこうした資本に有利だ。加え
て、アラブ首長国連邦(UAE)が米国製F16戦闘機を八十機調
達したように、オイルマネーの一部が米国の軍産複合体に流れる仕
組みになっている」

 石油輸出国機構(OPEC)は先月中旬の総会で、最大日量百万
バレルの増産を決めたが、市場には焼け石に水だった。増産といっ
ても「九〇年代半ばまでは、六百万バレルから八百万バレルの余力
があったが、いまは二百万バレル程度」(畑中氏)で、底を見透か
されている。

■「景気直撃薄い」OPECの読み

 ガソリンなど石油製品の供給を大幅に増やすには、油田開発やタ
ンカー建造、製油施設の増設が必要だが「こうした作業には三年か
ら五年はかかる。結局、この間は原油価格は高止まりするだろう」
(畑中氏)という見方がもっぱらだ。

 では、サウジアラビアに代表される産油国側はこの高値傾向をど
うみているのか。「OPECの姿勢は高値容認に映る」と語るのは
三菱商事の担当者だ。

 「かつてはプライスバンド(価格帯)があり、その枠内での推移
を望んだ。あまり原油が上がると、消費国の景気が冷え、価格急落
につながりかねなかったからだ。しかし、現在はこの高騰が景気を
直撃する心配は薄いと読んでおり、それが容認につながっている」

 ただ、前出の石油関係者は異論を挟む。「石油省レベルではそう
かもしれないが、湾岸の王族たちの不安は深い。彼らのモットーは
細く長く。いまの市場の急騰はこれに反するからだ」

 いずれにせよ、第四次中東戦争の最中に「石油戦略」を発動した
七〇年代と違い、OPECが市場を支配する力は弱まっている。
一つには、ロシアなど非OPEC産油国による市場シェアの拡大が
ある。

■米湾岸王族を封じ込め

 OPECは「価格が下がりすぎた際に、減産で支えることはあっ
ても、高値に対して、増産ではもはや対抗できない」(三菱商事担
当者)のが実情だ。そして高騰が容認されるのは「米国が湾岸の王
族を政治的にも封じ込めた」(石油関係者)のが大きな原因だ。

 しかし、この原油価格の高止まり傾向の中、七〇年代に二度、消
費国を襲った石油ショックの事態には至っていない。なぜか。

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の石井彰首席研究員は要因を三
つ挙げる。一点目は、過去の石油ショックに比べた場合の価格の低
さだ。「第二次石油ショックの最高価格は、現在で言えば一バレル
=八〇−九〇ドルに相当する。今回はまだまだ低い。さらに欧州や
日本については、ドルが安くなっていることで影響が緩和されてい
る」

 二点目は、経済に占める石油の比重が、石油ショック時に比べて
下がっていることだ。「量という点では、一次エネルギー内でのシ
ェアが下がっている。質の面でも、かつては『産業の血液』といわ
れていたが、今は交通需要、つまり自動車用が大半だ。通勤通学と
かに使っている個人の懐は痛むが、産業へのダメージは減っている。
産業構造も重厚長大からソフト産業に移行している」

 三点目は、今の時点では需給が逼迫していないという点だ。「米
国ではガソリンの精製が追いつかず、ガソリン価格が上がっている
という側面はあるが、石油そのものの需給は七〇年代とは違って、
逼迫していない。今は価格だけが上がっているおかしな状況にある。
それは投機筋の存在があるためだ」

 石井氏は、原油をめぐって投機筋が動きだす前段には、米国にお
ける天然ガス価格の上昇があったと指摘する。一昨年、米連邦準備
制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長は、天然ガス価格の高
騰が国内企業に及ぼす悪影響を懸念する発言をしている。

 「米国では天然ガスの方が産業にはずっと重要だ。環境問題の側
面からも、また発電所をつくるにしても天然ガスの方が反対が少な
いから。産業用の需要は増えたのに、供給が追いつかず価格が上が
った。すぐに輸入できるというものではなく、供給増には五年ほど
の時間がかかる。石油にスイッチするのではないかとの憶測が投機
の引き金になった側面がある」

 さて、高止まりが続くなら、日本が警戒すべきことは何か。東京
三菱銀行調査室の山本忠司調査役は、懸念されるのは中国、米国へ
の影響が間接的に波及することだと指摘する。

 「米国について怖いのは、米国の株式が原油高の影響で下落した
場合、日本の株に過度に影響を与えること。一気にマインドが悪く
なる。また、資源をがぶ飲みしている中国の経済が減速すれば、鉄
鋼などの素材や機械を輸出している国内産業にとって厳しくなる」
 そして提言する。

 「中国のエネルギー効率は日本の十分の一程度。中国の効率を上
げるような技術の輸出が、国内産業にもうまく商売になる形ででき
ればいいと思う。急に協調は組めないだろうが」
==============================
モラル問題は争点にされず−英総の選挙   
   
 宗教重視の米国流政治避ける英首相
教会は社会奉仕が本務
宗教指導者、積極的に政治的発言

 五月初めに実施される予定の英総選挙では、人工中絶、安楽死、同性愛、家族の価値な
 どのモラル問題は争点にされず、米国流選挙戦におけるような熱っぽい信仰信条のぶつ
 かり合いは見られそうにない。

(ロンドン・行天慎二・世界日報)掲載許可

 英総選挙の告示が迫る中、各政党はすでに活発な選挙キャンペーンを始めているが、医
 療・教育の公共サービス、税制などの経済問題、治安・刑法問題、移民政策などを主な
 争点にして戦っている。

 英国国教会のウィリアムズ・カンタベリー大主教は先月三十一日、各党指導者への公開
 書簡状を出し、こうした生活密着問題で丁々発止の議論を繰り返して有権者の関心を引
 き付けようとすることよりも、もっと根本的な諸問題、地球環境や国際開発、若者・家
 族政策などの長期的解決策を争点にすべきだ、と注文を付けた。

 また、英カトリック教会のマーフィー=オコーナー大司教は、人工中絶の法的規制問題
 を政治的論点にするように主張している。これは、保守党のハワード党首が先月中旬に
 雑誌「コスモポリタン」とのインタビューの中で、人工中絶時期の限界を現行二十四週
 間(欧州諸国の中では最長)から二十週間に短縮すべきだと発言したのを支持したもの
 だ。

 宗教指導者たちが政治的発言を行っている一方、英政府をはじめ多くの政治家たちは総
 じてモラル問題や宗教的問題を政治には持ち込まない姿勢を表明している。ブレア首相
 は先月二十二日、地域実践運動を行っているクリスチャン団体「フェイスワークス」で
 講演したが、「みんなが表に出て、胸をたたきながら信仰について語るような米国流政
 治になることは好まない」と語った。

 ブレア首相は個人的には国教会所属の熱心なクリスチャンであり、シェリー夫人はカト
 リック教徒。長老派教会牧師の家庭に生まれたブラウン財務相はじめ、閣僚たちの多く
 もキリスト教社会主義の信条を持っている。同首相はこれまでコソボやイラクへの軍事
 介入、アフリカ貧困救済など外交政策面ではモラル上の個人的信念を前面に出す場面も
 あった。

 ところが、「(モラル問題の)論争は理性主義のコンセンサスに根差しているのが英国
 民主主義の強さである。それら論争は寛容、丁重さ、個人的良心の尊重によって導かれ
 おり、宗教教義、教本、教えの辺境地には逃避しない」(タイムズ紙のコラムニスト、
 サイモン・ジェンキンズ氏)との指摘があるように、宗教的教義や個人的な信仰信条を
 政治の世界に直接持ち込まないのが、英国流民主主義の伝統だ。

 ブレア首相も「政治と宗教、それらは多くを共有していないということではない。しか
 し、宗教が政治的プロセスの中で使われることになってしまうならば、不健康だと思う」
 と語り、英国式の緩やかな政教分離の伝統を擁護している。米国ではキリスト教右派や
 福音主義者たちが政界に強い影響力を持っているが、教義を声高に打ち出すこれら根本
 主義の宗教団体は英国社会ではあまり受け入れられていない。

 英国では、キリスト教会などの宗教団体は宗教的教えよりもむしろその実践活動、各種
 の社会奉仕事業によって評価されがちだ。政府は貧困問題、麻薬・犯罪対策、老人ケア
 などのコミュニティー活動に熱心な宗教団体を支援しているし、野党の保守党、自民党
 もこの点ではほぼ同様な考え方を示している。

 英総選挙では宗教票の影響力もほとんどなく、選挙戦で各党によるホットなモラル論争
 は見られそうもない。
    Kenzo Yamaoka
==============================
米ウクライナ会談/旧ソ連圏に拡大した自由戦略   
   
  ウクライナのユーシェンコ大統領は就任後初めて訪米し、ホワイトハウスでブッシュ大
 統領と会談した。世界日報 掲載許可
 ブッシュ大統領はウクライナの欧州連合(EU)、北大西洋条約機構加盟を支持すると
 ともに、世界各国の民主化をともに支持していく両国の「戦略パートナーシップ」を発
 表した。旧ソ連圏の民主化への米政府の強い関心を示すものとして注目される。

米がWTO加盟を支持

 ブッシュ大統領は、ユーシェンコ政権誕生の原動力となった旧ソ連圏の大国ウクライナ
 での「オレンジ革命」に強い感銘を受けた。首脳会談後の記者会見で「民主主義を求め
 る人たちの力強さを世界に示した」と称賛し、同国での法と秩序の回復、汚職追放など
 民主化の努力を全面支持する意向を表明したのもこのためだ。

 同大統領は「世界における圧政終結」を二期目の外交目標に掲げており、米ウクライナ
 関係の緊密化で旧ソ連圏での「自由戦略」の勝利を誇示することができた。ロシアの後
 押しを受けたクチマ前政権の秘密警察から盛られたとされる毒物でユーシェンコ氏の顔
 が変形したことは、抑圧体制の残忍さを示すものとして米国民の同情を集めた。同氏夫
 人がレーガン政権下のホワイトハウスの職員でウクライナの自由化に尽くした米国人だ
 ったことも関心を集めた。

 ブッシュ大統領は対ナチスドイツ戦勝六十周年記念式典参加のため五月にロシアを訪問
 するが、その際、民主化に取り組んでいるグルジアやラトビアなどの旧ソ連諸国にも足
 を延ばす。米ウクライナ会談はこれら諸国への自由拡大外交の布石となろう。

 グルジアやキルギスでも親ロシア政権が相次いで崩壊した。ロシアのプーチン政権は
 「親米・反ロ国家」に包囲されつつあるとの懸念を強めており、「自由戦略」への対応
 を迫られよう。

 また、独立宣言でうたわれた米国の伝統的価値観は人権の尊厳と自由の尊重であり、こ
 れらは創造主から人間に与えられた普遍的価値と信じられている。だからこそブッシュ
 大統領の「自由戦略」の矛先は中東から旧ソ連圏、ロシア、中国にも向けられているの
 だ。

 米・ウクライナ首脳会談のいま一つの成果はブッシュ大統領がウクライナの世界貿易機
 関(WTO)加盟を支持したことだ。同国のEU加盟の大前提はウクライナの市場経済
 が認知されることだが、その証しとなるのがWTO加盟である。ユーシェンコ大統領は
 今年末までのWTO加盟を望んでいるが、強い発言力を持つ米国の支持は力強い援軍と
 なろう。

 クチマ前政権がイラクのフセイン政権に不法にレーダーシステムを売却していたことや、
 イランや中国に巡航ミサイルを輸出した疑惑も浮上し、米・ウクライナ関係は険悪だっ
 た。新政権の登場で両国関係は改善され、米国は旧ソ連圏に自由の橋頭堡(ほ)を築い
 た。

米ロの駆け引きに注目

 しかし、その地政学的位置から新政権は米ロ間の難しいバランス外交を強いられよう。
 新大統領の地盤は北部と西部、敗れたヤヌコビッチ氏の地盤はロシアの影響下にある東
 部と南部だ。

 その上、ウクライナは天然ガスなどのエネルギーをロシアに依存する。ユーシェンコ氏
 が当選後いち早くロシアを訪問してプーチン大統領と会談したのも、石油・ガスの安定
 供給を優先させたためだ。

 心は欧米志向だが身体はロシア依存というウクライナの現実の中で、米ロの駆け引きが
 どう展開されるかが今後の注目点である。

     Kenzo Yamaoka
==============================
事実上の独立国家共同体崩壊プーチン大統領が弱気発言   
   
 大統領府長官―指導層の一致団結訴え¥
ロシアへの“民主化革命”波及を警戒
キルギス政変で親ロ政権崩壊受け(世界日報)掲載許可
 グルジア、ウクライナの民主革命に続き、中央アジア・キルギスの政変で親ロ・アカエ
 フ政権が崩壊したことを受けロシアのプーチン大統領は、「独立国家共同体(CIS)
 から特別な成果が得られるはずなどなかったのだ」と述べ、ロシアの影響圏としてのC
 IS維持を最終的に断念したもようだ。一方、ロシアのメドベージェフ大統領府長官は
 エクスペルト誌に対し、指導層が一致団結しなければロシア崩壊もあり得るとして、一
 連の政変がロシアに波及することへの危機感を表明した。(モスクワ・大川佳宏)

 キルギスでアカエフ政権が崩壊し、野党勢力有力指導者のバキエフ元首相(55)が大
 統領代行兼首相代行に選出された先月二十五日、プーチン大統領は南カフカスのアルメ
 ニアを訪問していた。

 訪問目的は、「アルメニアにおけるロシア年」開会式への出席。アルメニアはCISで
 唯一残った「ロシアに従順な友好国」であり、その関係拡大は、ロシアを盟主とするC
 ISの求心力強化で重要な位置を占める。が、プーチン大統領が同国で行った発言は、
 これまで自らが語ってきたCISの存在意義を完全に否定するものだった。

 「もし誰かが、経済や政治、軍事分野などの協力でCISから特別な成果を期待してい
 たとしても、当然だがそのようなものは存在しない。なぜなら存在すること自体があり
 得ないからだ。実際にはCISは、ソ連崩壊のプロセスが、経済や人文分野、そして何
 よりも人々の損失を最小限に抑え、最も文化的な形で行われるためにつくられたものだ
 からだ。(CISは)その課題は遂行したと思う――」

 つい先日までプーチン大統領は、「CISは国家間協力の最も有望な形態だ」と繰り返
 し述べていただけに、この発言はロシアのマスコミに驚きを持って迎えられた。この発
 言はキルギスの政変を受けてのものだが、プーチン大統領を最も恐れさせたのは、その
 政変の性格である。

 グルジアやウクライナの「無血革命」とは違い、当初は野党勢力が政権打倒を主導した
 ものの、首都ビシケクでの暴動、略奪に示されるように、アカエフ政権に怨嗟(えんさ)
 を抱く貧困層の勢いに押される形で政変が進んだ。中央アジア各国はどこも大統領とそ
 の一族に富と権力が集中するなど、キルギスと似た状況にある。キルギスの政変が各国
 に波及する可能性は十分にある。

 ウクライナは親欧米路線を明確にし、ロシア離れを急速に進めている。十九日のロシア
 ・ウクライナ首脳会談でユーシェンコ大統領は、ロシアが進める統一経済圏への参加に
 肯定的な発言を行い、プーチン大統領をキエフ郊外の自宅に招き夕食を共にするなど友
 好関係を演出したが、その一方でプーチン政権が国家の威信を懸ける五月九日の対独戦
 勝六十周年記念式典に参加しないと表明。欧州連合(EU)加盟方針を強調し、国境問
 題でロシアとの対立を深めつつある。

 グルジアのサーカシビリ大統領は、同国アブハジア自治共和国に展開するロシアの平和
 維持部隊をウクライナ軍と交代させるよう要求。モルドバのウォロニン大統領は米国の
 軍事教官を招き軍改革を進めるほか、「EUへの脅威である」として、ドニエストル地
 域にあるロシア軍兵器を、国際社会と協力し廃棄する方針を示した。

 ロシアはエネルギー問題を通じてウクライナの取り込みを図りつつあるものの、CIS
 におけるロシアの“威信”は見る影もない。

 さらに、ロシアそのものへの“民主化革命”波及を懸念する動きも出てきた。ロシアの
 メドベージェフ大統領府長官はエクスペルト誌(四日号)に対し、ロシア指導層内部の
 深刻な対立や、官僚、司法による大規模な汚職などを列挙し、「このままでは統一国家
 としてのロシアが消滅する危険性がある」と警鐘を鳴らし、指導層の一致団結を訴えた。

 原油価格高騰によりロシア経済は発展を続けているが、社会的弱者に対する公共交通へ
 の無料乗車制度などの恩典が廃止されたことなどで、貧困層の不満は高まりつつある。
 改革派のハカマダ元下院副議長はロシア紙のインタビューで、ウクライナのオレンジ革
 命を引き合いに出し、「私はロシアで、(血の色である)赤色革命が起こることを恐れ
 ている」と述べている。
    Kenzo Yamaoka
==============================
キルギス政変/独裁・汚職・民の困窮が招いた   
   
  中央アジアのキルギスでアカエフ政権が倒れた。旧ソ連構成国における政治変動として
 は、二〇〇三年秋のグルジア「バラ革命」、昨年末のウクライナ「オレンジ革命」に次
 ぐ、「チューリップ革命」といわれる。
血縁、同族支配が目立つ  世界日報 掲載許可

 だが、キルギスの場合、前の二カ国のケースと比べると、不正選挙がきっかけだったこ
 となど共通点があるものの、若干様相が異なる。いわゆる「民主化革命」と断定するの
 は時期尚早だろう。同国の政治的な特殊性を考慮しなければならない。

 二月と三月のキルギス議会選挙で、不正が行われたとされる。しかし、米政府当局者も
 認めているように、大規模な選挙違反の事実は見当たらなかった。事実、選挙のやり直
 しはなく、最終的には新議会の合法性が承認された。「不正選挙」を口実として、野党
 勢力や多くの国民がそれまでのアカエフ政権への不満を一挙に爆発させたというのが真
 相のようだ。

 この約十五年間、権力の座に居座ったアカエフ大統領は、次第にメディアや野党への弾
 圧に拍車を掛け始めた。この政敵排除と並んで、利権の絡んだ血縁、同族支配が目立つ
 ようになった。

 国内の主要なビジネスを仕切るマイラム大統領夫人は、政治にも口出しをする「陰の実
 力者」とうわさされた。

 与党「進めキルギス」の実質的リーダーの長女ベルメト氏は、長男アイダル氏とともに
 新議会選挙に立候補したが、今年十月で任期切れとなるアカエフ大統領の延命策と見る
 向きもあった。

 一方で、汚職・腐敗は野放し状態だった。また、アカエフ一族への富の集中と対照的に、
 国民の62%が一日一、二jの貧困ライン以下の生活を強いられた。さらに、南北間の経
 済格差が際立ち、南部住民は困窮から抜け出せない苛立(いらだ)ちを募らせていたよ
 うだ。
 アカエフ大統領は「憲法に反する国家クーデター」と批判しつつも、大統領府が占拠さ
 れたため国外脱出を余儀なくされた。首都ビシケクでは民衆の一部が暴徒化し、商店の
 破壊・略奪に走ったが、大きな流血騒ぎは避けられた。大統領が非常事態を宣言せず、
 また軍隊や治安部隊に出動命令を下さなかったことが幸いした。

 しかし、政治的な混乱は当分続くものとみられる。突発的な政権崩壊後の受け皿作りの
 十分な準備が野党側になかった。問題はウクライナのユーシェンコ氏(現大統領)のよ
 うな有力な改革派の野党指導者が見当たらないことだ。

 暫定政権を率いるバキエフ大統領代行兼首相は元来、「アカエフ大統領の片腕」で有力
 後継者と見なされた人物。当初、旧議会の存続を支持していたが、アカエフ派勢力の多
 い新議会発足を認める代わりに、首相承認を得た。

 一方、腐敗を批判したためアカエフ大統領の不興を買って逮捕され五年間監獄につなが
 れていた有力者クロフ氏は、投獄されるまでに内相、副大統領、国家保安局長官、ビシ
 ケク市長などを歴任し、バキエフ氏よりもカリスマ性があり人気が高い。それぞれ、六
 月末に繰り上げることが決まっている大統領選挙に出馬するのではないかとみられてい
 る。

予断許さぬ大統領の動向

 ロシアに亡命中のアカエフ大統領が潔く辞任するのか、あるいは機会を見て巻き返しを
 図るのか予断を許さない。「中央アジアの優等生」キルギスに積極的な財政支援を惜し
 まなかった日本としては、一日も早い同国の政治的な安定を期待したい。
    Kenzo Yamaoka

コラム目次に戻る
トップページに戻る