1943.キルギス政権の崩壊



キルギスも親ロシア政権が崩壊して、ロシアと同盟関係にある国家
が減少している。その考察。     Fより

ロシアから欧米に乗り換えるロシア周辺国家で増えている。ウクラ
イナやグルシアなどが、ソロスなどの欧米資金が親欧米政治家を支
援して、親ロシア政権を倒したことが記憶に新しい。

しかし、今回のキルギスは欧米資金が入って、親ロシア政権を倒し
たではないようだ。キルギスには米ロの両軍が首都に派遣軍を置い
ている。このように米国にもロシアにもキルギスは気を使っていた
。このため、ロシアは勿論、欧米も今後のキルギスに警戒している。

大統領一族が膨大な利権を独占してきたことで、この政権への民衆
の怒りが予想外の早さで一気に爆発したようだ。しかし、米ライス
長官も、民主化ではなく安定と言っている。そして、その予想は当
たった。市内は暴徒が店などの商品を略奪している。治安の安定が
ない。野党指導者がその略奪を止めれらない。

野党指導者バキエフ氏が立候補することは間違いない。このバキエ
フ氏が親米なのか親露なのかは不明である。そして、最初にロシア
が援助した。ロシアの援助が先になった。援助で陣取りは決まる。
早く、日米の援助をする必要がある。イスラム原理主義の政権では
ないので、米国と共同で、ハートランドに楔を打ち込むことはいい
ことであろう。どうして、それが分から無いのか不思議である。

キルギスに米国の軍事基地を置いている理由の1つにミサイル防衛
で必要なロシア・ミサイル発射を監視するためである。もう1つが
中国奥地にある大陸弾道弾ミサイルの発射にも関係するのでしょう
ね。この意味からも日本のミサイル防衛を考えても重要である。

中央アジアは日米のミサイル防衛に非常に重要な地域である。
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ロシアが暫定政権支持・キルギスへ燃料支援など検討(nikkei)

 【ビシケク27日共同】キルギス暫定政権のバキエフ大統領代行は
26日夜、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、燃料支援検討など
の約束を取り付けたと発表した。ロシアはアカエフ大統領に見切り
をつけて、暫定政権を明確に支持、事実上の承認に向け動きだした。

 ロシア大統領府も同日、両指導者が電話で「キルギス情勢安定」
のため具体策を検討することで合意したことを確認した。会談はバ
キエフ氏の要請で実現したという。

 大統領府はまた、アカエフ大統領のロシア滞在を公式に確認した。

 バキエフ氏によると、電話会談では、燃料支援のほかに、春の農
繁期を控えキルギスへの種子の提供や農業分野への特別融資なども
協議した。 (11:09) 
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政変のキルギス、6月26日に大統領選実施へ(nikkei)

 【ビシケク=古川英治】中央アジアのキルギスでのアカエフ政権
崩壊を受け、同国上院は6月26日に大統領選挙を行うことを賛成多数
で決めた。これを受け、暫定政権のバキエフ大統領代行兼首相代行
は大統領選への出馬を表明した。ただ、首都ビシケクでは治安回復
が遅れ、アカエフ氏支持派のデモ隊が首都に向かっているもよう。
バキエフ代行は同日の記者会見で「反革命の動きは終息していない
」と述べた。

 バキエフ代行は会見で、ヤング駐キルギス米国大使から電話で就
任への祝福を受けたことも明らかにした。

 キルギスの立法・行政・司法機関は26日までの協議でバキエフ代
行と2―3月の議会選挙前の議会の正統性などを承認した。これを受
け、上院は出席議員の3分の2の賛成で大統領選の日程を決めた。バ
キエフ代行は同日の記者会見で出馬を表明し、アカエフ大統領が辞
任を拒否していることについて「もはや意味はない」と語った。イ
ンタファクス通信によると、同大統領はカザフスタンからモスクワ
に入ったもようだ。 (01:10) 
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キルギス混乱、略奪の嵐吹き荒れるビシケク市内

 【ビシケク=古本朗】野党勢力がデモ隊を動員して政権を奪取し
た中央アジア・キルギスの首都ビシケクでは25日夜(日本時間26
日未明)から、暴徒と化した数千人の市民が前夜に続き、銀行、商
店を略奪するなどして暴れた。

 警官隊は上方への射撃で、商店などを襲う暴徒を威嚇した。野党
指導者クルマンベク・バキエフ大統領代行の暫定政府は、原則的に
暴徒への実弾射撃を許可しており、死傷者が増え騒乱が一層エスカ
レートする危険性が高い。

 当局は、ビシケク近郊に駐屯する陸軍自動車化狙撃師団を市内に
入れ、官庁など重要拠点を警備させることを決めた。当局の情報で
は、24日の野党デモ隊による政府庁舎占拠の時点から、一連の騒
乱による死者は15人、負傷者は360人に上っている。

 市当局は騒乱収拾のため、バキエフ氏に非常事態宣言と夜間外出
禁止令を出すように要請した。バキエフ氏は「情勢は治安機関によ
って正常化される」として、慎重だ。非常事態宣言を発令すれば、
野党勢力の統治力欠如を裏付けてしまう、という懸念がある模様だ。

 しかし、野党陣営の暫定政府が会議中のビルにも暴徒がなだれ込
むなど、暫定政府の指揮命令能力への疑念が高まりつつある。

 消息筋の情報では、ビシケクの富裕な市民たちは、暴徒の標的と
なることを恐れ、家族を市外へ避難させている、という。
(読売新聞) - 3月26日11時57分更新
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03/27 14:54鍵握る2人の野党実力者 バキエフ氏とクロフ氏

 【ビシケク27日共同】暫定政権を率いるバキエフ大統領代行(
55)か、「民衆の将軍」の異名を取るクロフ元副大統領(56)
か―。アカエフ政権が崩壊したキルギスでは繰り上げ大統領選が六
月二十六日に決まり、政権を掌握した野党側が大統領候補を一本化
できるかが当面の焦点になってきた。南部と北部の地域対立も絡ん
で二人の実力者の協力は容易ではなく、今後の波乱要因の一つにな
りそうだ。
 バキエフ大統領代行は首相を務めた当時からポスト・アカエフの
最右翼とみられてきた。南部ジャラルアバド州出身だが北部のイン
テリ層にも支持者が多い。二十六日の記者会見では早くも繰り上げ
大統領選への立候補を表明。暫定政権の最高指導者として大統領の
座に最も近い位置にある。
 しかし国民的人気とカリスマ性ではクロフ元副大統領が一枚上だ
。旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後身、国家保安局長官や副大
統領を歴任。アカエフ政権内の汚職を批判して下野し、野党「尊厳
」を立ち上げて二〇〇〇年の大統領選出馬を目指したが、「在職中
の職権乱用」を理由に選挙前に逮捕された。今月二十四日に市民の
手で解放されるまで約五年間を獄中で過ごした筋金入りの人物だ。
 暫定政権では治安責任者になり、ビシケクで続いた略奪の横行を
抑え込むなど実力の片りんを見せつけた。
 しかしクロフ氏は北部ビシケク出身。北部出身者を重用したアカ
エフ長期政権への南部の不満はバキエフ氏が大統領にならないと収
まらないとの見方もある。二人が一本化に失敗すれば野党だけでな
く南北の分裂にもつながりかねない。二十六日、大統領選出馬につ
いて聞かれたクロフ氏は「国民の分裂を招いてはならない。簡単に
は決められない」と言葉を濁した。
20050327 1454

03/27 14:50 ロシアの妥協案拒否 アカエフ氏、強気が裏目
 【モスクワ27日共同】キルギス議会選をめぐる野党の抗議行動
を受け、ロシアのプーチン政権が、選挙結果を一部見直し、野党側
に全体の約三割の議席を与えるとの妥協案を示したが、キルギスの
アカエフ大統領が拒否していたことが二十七日、明らかになった。
 ロシア政権筋が明らかにした。この結果、プーチン大統領はアカ
エフ大統領と距離を置く姿勢に転じ、アカエフ氏が今月中旬、支持
取り付けのためにモスクワを極秘訪問した際も会談に応じなかった
という。
 ロシアの忠実な盟友だったアカエフ氏だが「約十五年間の長期支
配で生まれた過信」(同筋)が命取りとなった。
 ウクライナに反ロシア政権の誕生を許したロシアは、キルギスで
失敗を繰り返さないために対外情報局や軍参謀本部情報局(GRU
)を駆使して情勢を克明に分析。三割の議席を野党に譲れば、抗議
行動の沈静化と政権維持が可能と判断した。
 しかし、アカエフ大統領は定数のほぼ三分の二を、大統領の親族
、側近、財界の支持者で固め、野党は数議席しかない議会構成を基
盤に、野党の抗議行動を押し返せるとの強気の姿勢を崩さなかった
という。
20050327 1450

03/25 19:45 痛手、安定、警戒論… ロ米中、それぞれが注視

 キルギスのアカエフ政権が野党勢力の決起であっけなく崩壊、親
ロシア政権がまた消えたことで、ロシアは大きな痛手を負った。
中央アジアを対テロ戦の拠点とする米国は何よりも安定を望み、国
境を接する中国は自国の独立派への刺激を警戒するなど、それぞれ
が懸念を抱きながら事態の推移を見守っている。
 ▽敗北感
 旧ソ連諸国でつくる独立国家共同体(CIS)の盟主を自他共に
認めるロシア。同域内のグルジア、ウクライナに続きキルギスでも
親ロシア政権が崩壊に追い込まれた。
 イスラム原理主義組織が活発に活動するウズベキスタン、タジキ
スタンと国境を接し、アフガニスタンにも近いキルギスは、国際テ
ロ対策だけでなく地域全体の安定化にとって極めて重要な位置を占
めている。
 ロシアがビシケク郊外に置いたカント空軍基地には、CIS集団
安全保障条約の緊急展開部隊が駐留。ビシケクに近いマナス空軍基
地に二〇〇一年の米中枢同時テロ以降駐留している米軍へのけん制
に加え、中央アジア全体の安全保障のためにもキルギスの政情安定
が不可欠だった。
 しかし昨年、ウクライナで親ロシア政権の継続を画策して与党候
補を露骨に支援、逆に「オレンジ革命」を高揚させたプーチン大統
領としては、アカエフ政権への表立った支援もできなかった。「ウ
クライナの次はキルギス」と言われながら、みすみす同様の「革命
のシナリオ」を許したロシアの敗北感は深い。
 ▽「安定」優先
 「安定した民主体制が望ましい」―。議会選挙に端を発したキル
ギスの混乱について、初めてコメントしたライス米国務長官の口を
ついて出た言葉は、「民主」ではなく「安定」だった。
 ライス長官は、二期目のブッシュ政権が掲げる「自由の拡大」を
売り歩く「セールスウーマン」との見方も出ていただけに、「安定
」を優先する姿勢には「意外感」が付きまとった。
 米政府当局者は/(1)/議会選挙の不正がそれほど大規模なも
のとは認められない/(2)/野党勢力が暴力に訴えた―を理由に
、パウエル前国務長官らが声高に選挙のやり直しを求め、「オレン
ジ革命」成功に導いたウクライナとの対応の違いを指摘。
 さらに、米軍事筋によると、米軍部隊の駐留を認めてもらってき
た借りもある。
 ▽波及を警戒
 中国は、キルギスの混乱が国境を接する新疆ウイグル自治区の「
東トルキスタン」独立派を刺激することを最も警戒、「キルギスの
社会安定を心から希望する」(外務省)との立場だ。
 中国は〇一年に中央アジア四カ国、ロシアと上海協力機構を立ち
上げた。直後の米中枢同時テロを機に、「テロリスト集団」と断定
する独立派の抑え込みを狙ったテロ対策での協力強化を前面に打ち
出してきた。
 また、国策のエネルギー確保に向けて中央アジアのエネルギー資
源開発にも関心を示しているだけに、混乱の早期収拾と安定政権の
成立を期待している。
 「米国の動向を注視している」と中国筋。アフガニスタン軍事作
戦の際、キルギスが米軍に基地を提供した経緯を念頭に、混乱を機
に米国が影響力を強めることも警戒している。(モスクワ、ワシン
トン、北京、共同)
20050325 1945

03/25 20:06 軍、治安機関の支持失う? 経済低迷、生活苦が背景

 中央アジアで独裁色を強めていた国家の一つ、キルギスのアカエ
フ政権は、野党支持者らによる大統領府占拠で一気に崩壊した。南
部で続いていた野党支持者の抗議行動が首都ビシケクにも波及して
わずか二日目のあっけない幕切れ。経済の低迷による国民の生活苦
を背景に、治安機関からも見放された可能性を指摘する声もある。
 ▽市民の怒り爆発
 二十四日午後、約一万人の野党支持者らが集まる市中心部の広場
に、突如白い帽子をかぶったアカエフ大統領支持者ら約百五十人が
乱入、小競り合いが始まった。投石や棒などを使った衝突は人数で
勝る野党側がアカエフ派をあっという間に退散させた。
 平和的な集会に突如現れた暴力集団に野党支持者らは激高。近く
の大統領府に向かった野党支持者らが、ヘルメットと盾で武装した
警官隊数百人と一進一退の攻防を約二時間続けた。
 野党側の統率者は現場にはいなかったが、若者らを中心とする市
民の勢いは収まらず、一気に警官隊を退け大統領府に数千人がなだ
れ込み、難なく占拠を完遂させた。
 野党幹部のオトゥンバエワ氏は「首都で大規模集会を続けるつも
りだった」と述べ、大統領府占拠は突発的な出来事だったと振り返
る。
 ▽富の独占
 携帯電話会社、ガソリンスタンド、スーパーマーケット、カジノ
、ホテル―。アカエフ大統領一族が経営する事業の数々だ。地元記
者は「もうかるビジネスの大半がアカエフ・ファミリーと関係して
いる」とまゆをひそめる。
 一人当たり国民総所得(二〇〇三年)はわずか三百三十ドル(約
三万五千円)。多くの国民の生活は楽ではなく、長期政権による腐
敗に対する国民の不満は頂点に達していた。
 ビシケクに住むイスラム教聖職者クバン・シェピクさん(46)
は「この国には貧しい人々が多く、給料も低い。アカエフがいなく
なって生活がよくなると信じている」と政権崩壊を歓迎する。「ア
カエフは貧しい人々に対し何もしなかった」と訴える市民は多い。
 ▽希薄な忠誠心
 野党支持者らに押され大統領府内に退散した警察隊は、大統領府
の警備を放棄し無抵抗のまま現場を野党側に明け渡した。どんな手
段を使っても大統領府を守り抜く姿勢は見当たらなかった。アカエ
フ氏も軍を動員して野党支持者を鎮圧する手段を取らなかった。
 情報筋は「民主化を武力で弾圧すれば内外から非難を浴びる。ア
カエフは野党の勢いを警察だけで抑えられなければ、潮時と判断し
ていたのでは」と推測する。
 一方で別の観測筋は「軍、警察とも給料が安く、生活は苦しい。
アカエフへの忠誠心が薄れていた」と述べ、大統領が政権を維持す
るための権力基盤を失っていたことを指摘した。(ビシケク共同=
清水健太郎)
20050325 2117

03/25 20:11 積もり積もった民衆の恨み 膨大な利権を一族で独占

 あっけなく崩壊したキルギスのアカエフ政権。アカエフ大統領の
経済顧問を十年以上務め、今月二十二日まで首都ビシケクに滞在、
二十五日帰国したばかりの田中哲二(たなか・てつじ)・国連大学
学長上級顧問は、膨大な利権を一族で独占してきた政権への民衆の
怒りが予想外の早さで一気に爆発したと分析した。(共同=及川仁
)
 ―あっけない政権崩壊劇だった。
 「実は民衆の恨みが積もりに積もっていた。大統領は国際通貨基
金(IMF)のやり方を百パーセント受け入れるなど、一時は独立
国家共同体(CIS)民主化の旗手として期待されたが、経済の実
績が上がらず、民衆の不満が高まる中、政権維持のため、隣国のウ
ズベキスタンやカザフスタンのように警察など治安機関に頼りすぎ
てしまった。残念だ」
 ―大統領一族の利権独占も指摘されている。
 「首都近郊のマナス空港に米中枢同時テロ以降、米空軍を受け入
れることになったが、米軍機一機の離着陸で七千ドル(約七十五万
円)が支払われる。これまでの離着陸回数は数千回ともいわれるが
、財務相らはこの金が『公的財政収入として全く入ってきていない
』と話しており、この金のかなりの部分が大統領側に転がり込んで
いたと広く指摘されてきた」
 「カザフ人の娘婿がキルギスの権益を買いあさったり、妻の社会
福祉事業基金に海外からの金が流れ込むような仕組みになっていた
ことにも、民衆の怒りを買っていた」
 ―同様の独裁的支配体制を敷く他の中央アジア諸国への影響は。
 「カザフ、ウズベクの政権はキルギスほど生易しくはない。警察
、公安の力が強く、民主化、反政府運動が一定の動きに発展する前
、芽のうちに摘み取っている。今すぐ簡単に波及することはなさそ
うだ」
 ―野党側の強力な指導者不在が指摘されているが、今後の受け皿
は。
 「(大統領代行に就任した)南部出身のバキエフ前首相は実務家
で誠実な人。今回率いた反政府運動からイスラム過激派を慎重に排
除するなど、政治家としてのセンスがうかがえる。(治安機関を統
括する責任者に就任した)クロフ元副大統領は軍、治安機関ににら
みが利き、骨太でカリスマ性のある人物。民衆はクロフ大統領、バ
キエフ首相というのが据わりが良いと考えているのではないか」
20050325 2011
[2005-03-25-20:11]
03/25 20:45 K・バキエフ氏の略歴

 クルマンベク・バキエフ氏 1949年8月キルギス・ジャラル
アバド州生まれ。クイブシェフ工業大卒。電気技師や工場長勤務を
経て94年キルギス国家資産基金副総裁。97年チュイ州知事。2
000年12月―02年5月首相。「キルギス国民運動」党首。0
5年3月アカエフ政権崩壊に伴い大統領代行に就任。(共同)
20050325 2045

03/25 20:45 下野した「大統領の右腕」 野党勢力の統合課題

 首相時代に「大統領の右腕」「ポスト・アカエフの最有力候補」
といわれながら、二〇〇二年に野党議員の逮捕に抗議する群衆と警
官隊が衝突し多数の死傷者が出た事件の責任を取る形で辞任。野党
で最も有力な指導者の一人となった。
 手堅い行政手腕には定評があるがカリスマ性に欠けるとの見方も
。寄り合い所帯といわれる野党勢力をまとめ暫定政権を率いていけ
るかが問われる。
 南部ジャラルアバド州出身。工業大学を卒業し電気技師として勤
務した後、首都ビシケクを含むチュイ州知事に就任。アカエフ大統
領に見いだされて二〇〇〇年十二月首相の座に上り詰めた。
 しかし、次期大統領候補と目されるようになり、大統領の任期延
長を望むマイラム大統領夫人と反りが合わなくなったことが辞任の
遠因ともささやかれている。
 十月に予定されていた次期大統領選への立候補の意思を早くから
隠さず、「野党のまとめ役としては野心が強すぎる」との評も。政
変劇の中で獄中から釈放されカリスマ的人気を誇るクロフ元副大統
領らとの調整が当面の最大の課題だ。五十五歳。(モスクワ共同=
佐藤親賢)
20050325 2045

03/25 20:52 暫定政権とも協力姿勢 キルギス情勢でロ大統領

 【モスクワ25日共同】アルメニア訪問中のプーチン大統領は二
十五日のエレバンでの記者会見で「ロシアはキルギス情勢安定のた
めにあらゆる支援を惜しまない」と述べ、アカエフ政権を倒し、野
党が樹立したキルギスの暫定政権とも協力していく姿勢を示した。
 所在が確認されていないアカエフ大統領が「ロシアに来ることを
希望するなら、反対しない」と述べ、ロシアへの亡命を受け入れる
用意があるとも述べた。
 プーチン大統領は一方で「旧ソ連諸国で、またも不当な手段で問
題の解決が図られ、人的被害が出たことは残念だ」として、政権奪
取のために、キルギスの野党勢力がとった大統領府占拠などの手法
を批判した。
20050325 2052
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)3月26日(土曜日)
通巻第1072号  臨時増刊特大号

アカエフ大統領の独裁政権が転覆
 親日国家キルギスにもイスラム原理主義が猖獗を極めた

 旧ソ連イスラム圏、中央アジアのキルギスで政変が起きた。
 赤ら顔の学者で、旧ソ連時代末期から14年間も続いたアカエフ
政権が瓦解したのだ。グルジア、ウクライナに継いでの政変である。
 アカエフがアカデミズムの世界から冷戦崩壊とともに期待をされ
て登場した当時は、清廉なイメージが強く、また学者出身の木訥な
風貌は独特な人気があった。

 だが、かれもまた側近に囲まれ、裸の王様となり、支持者のみを
優遇して政権の私物化を進めた。そのうえ大統領は先の議会選で娘
と息子を当選させ、二人に近い人物に権力を移譲して事実上の「院
政」に移行しようとしていた矢先だった。

 要するにキルギス政変はソ連型の権威主義的体制がいかに国民か
ら乖離した独裁政治であるかを露呈した。
 日本時間25日未明、キルギス臨時議会が招集され、野党のカド
ゥイルベコフ議員が突如、大統領代行に就任した。民衆の騒擾はい
ったん収まったかに見える。

が、ロシアのプーチン政権にとっては危険な兆候との認識である。
事実、「ロシアの平和維持部隊をキルギスへ派遣せよ」と議会で直
前に吠えたのは、かのジリノフスキーだった。

 また当初はロシア型のOMONが鎮圧に当たった。
 OMONと言えば、かの1990年のバルト三国独立争乱の末期
に、ソ連型の共産党リーダーらが密かにデモ鎮圧に投入した秘密工
作部隊である。

さて政変後、アカエフ大統領一行はカザフへ亡命したという情報が
ある。ロシア外務省は「法の枠に戻ることを望む」と声明し平静を
装った。グルジア、ウクライナ、モルドバ、さらには中央アジアに
まで押し寄せた変革の波は、これで止めどもないことが分かる。

▲さて次はカザフスタン、それともトルクメニスタン?
 
となれば次は? カザフを私物化するナゼルバエフ、ウズベクを蹂
躙するカリモフ、トルクメニスタンの独裁者で”中央アジアの金正
日”といわれるニヤーゾフの御三家は依然として健在ではあるが。

 それにしても、このアカエフ政権の突然の崩壊は長期化した政権
それ自体の腐敗が主因である。とくに地縁血縁社会のキルギスでは
北部出身のアカエフ大統領が一族ならびに北部出身者を優遇したた
め、南部が反旗を翻すのは当然の流れとなった。

キルギス北部はいまもロシア語のほうがキルギス語より普遍的であ
り、旧ソ連型官僚主義、南部はイスラム系が強い。この構造は或る
近未来予測をしやすくしている。即ちウクライナも東部はロシアを
支持し、西部がは親ロシア路線で、選挙ともなると票が豁然とわか
れたように。
 
キルギス政変を米国は事前に知っていたのか?
アジア歴訪から帰国したばかりのライス米国務長官は、アカエフ政
権の崩壊に言及し、「安定した民主体制」へ移行するため、国際社
会とともにキルギスを支援していくと語った。

我が国は? 町村信孝外相は25日の会見で、「キルギスでは平和
的な方法で政治基盤が確立することを期待している」と述べるに留
めた。つづけて「日本はキルギスの民主化、市場経済化を支援して
おり、これからいかなる政権となろうとも、改革努力を支援する基
本姿勢に変わりはない」と町村外相は従来の政策継続を示した。
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キルギス政権崩壊 ソ連型統治のもろさ 「私物化」に不満爆発   
  
  ■暫定政権・民主選挙が焦点に
 【モスクワ=内藤泰朗】ソ連解体後、約十四年にわたり中央アジア・キルギスを支配し
 てきたアカエフ政権が野党支持勢力の抗議行動を受け、もろくも崩れ去ろうとしている。
 軍出動による流血といった最悪の事態は回避され、今後の焦点は野党勢力主導の暫定政
 権の樹立と民主的選挙の実施に移った。キルギス政変もまた、ソ連型の権威主義的体制
 のもろさを露呈した形であり、同様の統治を行うロシアのプーチン政権にとっては危険
 な兆候といえる。

 ロシアのインタファクス通信によると、アカエフ大統領とその家族は二十四日、野党支
 持のデモ隊が大統領府を占拠する数時間前に脱出し、カザフスタンに向かったという。
 大統領の居所をめぐっては一時、「ビシケクの米軍基地にいる」「いやロシア軍基地で
 保護された」などと情報が錯綜(さくそう)した。

 国家非常事態下で大統領の所在が不明となるのは異常であり、大統領が政権を掌握でき
 なくなったことを物語っている。

 政権崩壊の芽は長期政権の腐敗の中にあった。北部出身のアカエフ大統領は、一族と支
 持者のみを優遇して政権の私物化を進め、経済的にも貧しく不満が募っていた南部の反
 発を買ってきた。

 それが一挙に火を噴いたのは大統領による「政治の私物化」が露骨になったからだ。今
 年十月に任期を終える大統領は先の議会選で娘と息子を当選させ、二人に近い人物に権
 力を移譲して事実上の院政を敷くことをもくろんでいたとされる。

 今回、南部から起きた変革のうねりは、この時期に同国で咲き乱れるチューリップや特
 産のレモンから「チューリップ革命」や「レモン革命」と呼ばれ、体制転換につながっ
 たウクライナの「オレンジ革命」やグルジアの「バラ革命」と並び称されるようになっ
 た。

 しかし、数十もの野党を寄せ集めた同国の野党勢力には依然として統一された指導者が
 いないのも実情だ。南部では、デモ隊が政府関連施設などに火炎瓶を投げて焼き打ちし
 たほか、暴力、略奪行為も目立っており、欧米が野党勢力と距離を置く理由ともなって
 いる。
 「革命」を成就させつつある野党側は、政権により汚職容疑で逮捕されて約五年にわた
 り幽閉されていた野党指導者のクロフ元副大統領を解放しており、クロフ元副大統領は
 同日、アカエフ氏とその家族の安全は保証すると述べ、公式に退陣声明を出すよう求め
 た。

 一方、ロシア外務省は「法の枠に戻ることを望む」との声明を出したが、プーチン大統
 領はなお沈黙を守ったままで、グルジア、ウクライナ、モルドバ、さらには中央アジア
 にまで押し寄せた変革の波をかなり意識しているようにみえる。

                   ◇

 ■キルギスをめぐる主な出来事

 1990年10月 アカエフ氏、キルギス社会主義共和国最高会議で大統領に選出

   91年 8月 共和国独立宣言

      10月 直接選挙でアカエフ大統領を信任

   93年 5月 新憲法を採択。国名をキルギス共和国に改称

   95年12月 アカエフ大統領が再選

   99年 8月 南西部でイスラム武装勢力が日本人鉱山技師4人を拉致。約2カ月
   後に解放

 2000年10月 アカエフ大統領再選。憲法は3選を禁じているものの、憲法裁判所
 は「ソ連時代の任期は除外」と判断

   01年 8月 アカエフ大統領、05年の次期大統領選への不出馬表明

      12月 米軍にアフガニスタン空爆のため首都のマナス空港使用を許可

   03年 6月 下院、アカエフ大統領の在任中と退任後の刑事責任を免除する法律
   を可決

   03年 9月 首都近郊カント空港のロシア軍基地としての使用を認める協定に調
   印

   04年 9月 バキエフ元首相を中心とする野党9党、自由で公正な選挙を求める
   野党連合「キルギス国民運動」を結成

   05年2月−3月 議会選(1院制・定数75)で大統領支持の与党が議席の7割
   を獲得。欧米の選挙監視団は不正を指摘、南部から大規模な抗議行動が始まる
       Kenzo Yamaoka


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