1941.民主化に必要なこと



上智大学やアジアでライスが演説した。この演説から分かることを
検討しよう。            Fより

ライスのアジア歴訪の発言を見ると、日本との同盟重視と中国との
無用な摩擦は起こさないことが明確である。中国の反国家分裂法制
定には米国としては台湾との緊張を高めるために反対しているが。
しかし、その中国の反国家分裂法制定で、EUは中国への武器輸出
を延期している。中国にとってもこの法律制定で大きな損害を受け
ている。

それと、ライス演説の注目点は軍事ではなく外交で世界の民主化を
行うと宣言していることである。戦争を起こすことが割に合わない
ことがようやく、米国指導者にも分かったようである。ネオコンが
米政権から追い出されている理由もこの戦争主義のネオコンの政策
では米国経済が持たないと知ったように思う。

そして、ライスは日米同盟における日本の役割を、軍事支援ではな
く経済開発や災害援助にその役割があるという。ODAに期待して
いることが明らかである。

戦後、東南アジアが民主化した理由を、日本のODAという経済開
発援助でアジア各国の個人の経済レベルが向上したことによると見
ていることが、ライスも演説で強調している。このODAでの経済
開発を世界的にしてほしいと言うことのようである。それが民主化
の前提になると、このコラムが主張していることを米国政治家が追
認し始めている。

日本のODAを国連のアナン事務総長も狙っている。追加の常任理
事国に日本がなることは、ほとんど確定であると言ったが、その理
由がODAである。どうも英国で開催されたアフリカサミットでも
日本のODAを前提にした話が多かった。日本のODAの配分決定
権を国連や米国が狙っていることがライスの演説やアナンの声明か
ら明確である。

民主化したら、日本のODAが来ると言って、市場経済と民主化を
中東で行おうとしているのが米国で、どちらかというとアフリカに
ODAを配分させようとしているのが、国連アナンとEUシラクで
あろう。

フランスのシラク大統領が日本に来るのも、ODAの配分をアフリ
カにさせようとして依頼に来るようである。この時の交換条件が、
中国への武器輸出の延期である。金が一銭も係らない脅しです。
全ての政策や声明の裏を読みましょうね。そうしないと、何を狙っ
ているか分からない。日本の評論家は裏を読まな過ぎ。

そして、日本のODAを狙っているのが、韓国と中国である。この
2ケ国は戦争補償として再度、戦後補償が足りないと文句を言うよ
うである。日本の歴史認識が間違っているという問題を大きく言い
始めている。ODAの分け前をよこせと騒いでいるのです。

ODAに中国は感謝していない。日本がODAを中国にするのは義
務と思っている。そうしないと、中国がODA停止に文句を言える
はずがない。この2ケ国もODA狙いであることが明確である。
韓国大統領が、「竹島の日」ではなく歴史認識を問題にして、戦後
補償を大きく取り上げていた理由である。中国と韓国は日本が戦後
補償を追加で中国と韓国に寄こさないと日本が常任理事国になるこ
とに反対すると言う。常任理事国を担保に取りたいようである。

世界が日本のODAを狙い始めていることが明確になっている。逆
に日本はODAの理念を明確化して、日本の理念にあったことを重
視してODAの向け先を決めることが重要になっている。透明性を
高める努力が必要である。

自衛隊の活動とODAが結びつけたのがサマワでの自衛隊の活動で
あった。自衛隊が来ると多くの職がその地域にできて、民生安定に
なることが世界に知れ渡った。これで米国が日本の自衛隊の役割を
知ったようである。日本の自衛隊は、地域の安定に寄与する。ある
程度、治安が安定すると民間人が工場を立てて、次の発展ができる
という経済開発のプロセスが日本でできている。このプロセス開発
を東南アジアで日本は成功させてきた。中国でも成功したことで、
中国の経済発展が本格化したのです。

このような日本の役割を米豪も知って、豪米日の3ケ国軍事同盟に
なるのですが、日本の自衛隊はあくまでもエンジニアであり、ワー
カーで、その地域に安定をもたらす地域住民の職業を斡旋すること
なのです。その地域住民にその地域の道路や橋をかけるための労働
に日本のODAの金を使うことになるのです。外務省と防衛庁が組
んだ結果できた日本独自の地域安定化手法であると思う。

米軍にはテロとの戦闘以外の任務として、その地域住民の職業を斡
旋することようなことはしません。国務省か国防省が別組織で地域
統治の文官を送り込み、その決定に軍が執行を行うようです。日本
は戦闘部隊であるのにその直下で住民安定を行うことにしたのです。

旧軍の軍統治の伝統なのだそうです。ここが強みですが、反対に、
その分戦闘力がないことになる。この部分を豪州軍が行うようです
ね。日本の自衛隊が居るサマワだけを守備範囲にするので、実質
日本の自衛隊を守ることになるが、逆に地域住民の帰順度が高いの
で、豪軍の被害も少ないと思う。

このような自衛隊という軍隊が行うODAは今まで世界に無かった
ようですね。サマワの自衛隊で初めて世界が知ったようです。

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Kyoto Shimbun News 2005年3月19日(土)
ライス米国務長官の演説要旨 
 ライス米国務長官が19日、東京の上智大で行った演説の要旨は
次の通り。 
 【自由の拡大】 
 一、われわれは、自由の拡大のために働かなければならない。 
 一、アジアでは30年以上も大きな紛争がなく、太平洋の安全保
   障はサクセス・ストーリーだ。 
 一、日本はテロとの戦いや中東改革でも米国の主要パートナーに
   なり、世界規模でより広範な責任を担うようになった。 
 一、日本が自由の推進に指導力を発揮することは太平洋地域と世
   界にとって望ましい。 
 一、米国、日本、韓国が平和と安全を守るためにともに立ち上がれ
   ば、アジアと世界はより安全になる。 
 一、日米同盟は安全と安定だけでなく、思いやりの同盟でもある。 
 一、ブッシュ大統領は自由陣営に利する勢力バランスの創出を米
   外交政策の任務と定義した。アジア諸国は、自由が人間の精
   神の真に普遍的な価値であることを証明してきた。仏教国の
   タイ、イスラムのインドネシア、カトリック教徒が支配的な
   フィリピン、皇室のある日本、旧共産国のモンゴル、単一民
   族社会の韓国、多民族国家のマレーシアなどアジアの多様な
   文化の中で民主主義は出現している。ミャンマーで民主主義
   が機能しないと疑う理由はない。 
 一、21世紀のアジアはむき出しの力ではなく、自由の思想によ
   って形づくられるだろう。 

 【国連改革】 
 一、日本は自らの努力とその特性によって世界において名誉ある
   地位を獲得した。それが、米国が日本の国連安全保障理事会
   常任理事国入りを疑う余地なく明確に支持する理由だ。 

 【北朝鮮】 

 一、北朝鮮の核兵器への野心はわれわれの安全を危険にさらして
   いる。6カ国協議が核問題に対処する最善の枠組みだ。 
 一、北朝鮮が主権国家であることをだれも否定しない。われわれ
   は繰り返し、北朝鮮への攻撃、侵略の意図がないと表明して
   きた。6カ国協議の他の参加国とともに、われわれは北朝鮮
   に多国間の安全の保証を供与する用意がある。 
 一、しかし、北朝鮮の惨状や政権の本質、近隣国の無実の市民に
      対する拉致事件、核武装化による地域への脅威を米国や他の
      民主社会は座視しない。 
 一、北朝鮮がわれわれの提案を真剣に検討するのであれば、6カ
     国協議に即刻復帰すべきだ。 

 【中国】 
 一、中国は6カ国協議で重要な役割を果たしてきた。ブッシュ大
      統領と胡錦濤国家主席は、北朝鮮に核兵器が存在することは
      受け入れられないとの点で合意している。 
 一、しかし北朝鮮は近隣諸国の呼び掛けを拒絶した。すべての関
      係国は、決断の時が迫っていることを北朝鮮に理解させる努
      力を強めなくてはならない。 
 一、中国は特別の責任がある。米中両国がいかにしたら共通の利
      益を促進させられるかを北京で議論する。 
 一、スーダン、ミャンマー、ネパール情勢でも共通のアプローチ
      を進展させられるかどうかを見極めるため、中国と協力して
      いきたい。 
 一、米国には、自信にあふれ、平和的で繁栄する中国の台頭を歓
      迎する理由がある。 
 一、台湾という中国との協力関係を複雑化させる問題もある。わ
      れわれの「一つの中国」政策は明瞭(めいりょう)で不変だ
      。言葉であろうが行動であろうが、現状を一方的に変えるこ
      とに反対する。 
 一、中台双方に対し、より建設的な関係を目指した最近の動きを
      拡大させるよう促したい。平和と安定を守るため、台湾関係
      法に基づく義務を果たしていく。 
 一、経済的な開放と政治的な開放は不可分だ。国際化の進む世界
      がもたらす利益を享受していくなら、中国ですら、開放の形
      態、真に人民を代表する政府を受け入れなくてはならなくな
      る。 
 一、中国の指導者は、政治状況を経済的開放と調和させなくては
      ならなくなった場合、自由が機能するということを悟るだろ
      う。民主主義が機能することを悟るだろう。宗教の自由と人
      権尊重が、立派で成功を収める社会の基礎であることを悟る
      だろう。 

 【途上国支援】 
 一、日米はさらに協力することが可能だ。途上国に対する公的援
      助では、日米が全世界の40%を占めている。 
 一、日米は既に協力関係にあるが、ここに「戦略開発同盟」を提
      唱し、共通の目標の前進に向けた規則的、体系的な取り組み
      を始めたい。他国の参加も歓迎する。 

 【牛肉輸入】 
 一、太平洋地域の繁栄は信頼と最善の経済活動に対する理解にか
      かっているが、時に貿易紛争が発生する。最近では米国産牛
      肉の対日輸出問題がそうだ。 
 一、この問題を解決すべき時を迎えた。科学に基づいた国際的な
      基準が存在している。例外的な考え方が投資や貿易を損ない
      、さらなる繁栄を危うくする事態は避けなければならない。 

 【知的財産保護】 
 一、われわれは2国間や地域の、またはグローバルな相互補完的
      取り組みを通じ、太平洋地域に自由貿易を広げていきたい。 

 一、米産業界は海賊版や偽造品により毎年2000億―2500
      億ドルを失っている。技術革新は経済成長を刺激するが、効
      果的な知的財産保護策がとられない場合、被害をもたらす
ttp://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005031900039&genre=A1&area=Z10
Kyoto Shimbun News 2005年3月21日(月)
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日米はさらに緊密に
MARCH 20, 2005 23:11
by 權順澤 (maypole@donga.com)

「日本はおだて、中国には警告を…」 
ライス米国務長官が就任後初めてのアジア歴訪で明らかにしたブッ
シュ政権2期目の対アジアビジョンを、ワシントンポスト紙はこの
ように要約した。 

ライス長官は特に19日、上智大学での招請演説を通じて、世界の
強国としての日本の役割を拡大する米国の新アジア政策を披瀝した
と、同紙は伝えた。 

ライス長官は、「日米両国は、アジア地域はもとより、全世界的レ
ベルで同盟関係を『現代化』している」とし、最近、両国の外務・
国防長官が宣言した「共通戦略目標」を例に挙げた。「共通戦略目
標」は、日本の戦略的役割を、中国を含むアジア全体に拡大すると
いう内容だ。 

同紙は、ライス長官が演説で、日本の国連安保理常任理事国入りを
支持し、世界の中の日本の役割を明らかにしたことは、米政府が日
本を中国に対する均衡勢力として認識していることを示唆したもの
だと分析した。 

ライス長官は演説で、「米国は、自信があり平和的で、繁栄する中
国を歓迎する」としながらも、「しかし中国は、その能力を国際的
な責任と調和させなければならない」と指摘した。ライス長官は、
スーダンやミャンマーのような独裁政権と中国の経済的取り引きを
特に言及した。 

そして、「中国が世界化に応じてその果実を得るには、窮極的には
代議民主主義の政治体制を受け入れなければならない」とし、中国
の政治体制の民主化も求めた。 

ライス国務長官は、日米同盟は中国をターゲットにするものではな
いとしながらも、中国の行動に影響力を及ぼすためであることを明
確にした。同紙は平素、米政府の官吏が非公式的に中国の政治体制
改革を言及したことはあるが、ライス長官の同日の発言のように、
米国の対アジア政治、経済、安保政策の枠組みに中国の社会と政治
体制を合わせなければならないと警告したことはなかったと伝えた。

http://japan.donga.com/srv/service.php3?biid=2005032142978
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ライス米国務長官訪中が及ぼした大きな影響

http://j.peopledaily.com.cn/2005/03/22/jp20050322_48576.

米国のライス国務長官による中国観は、今回の訪中でほぼ明らかに
なった。「一つの中国」政策と中米両国の「率直で誠意ある建設的
な協力関係」を重ねて表明し、パウエル前国務長官が言った「中米
関係は史上最高の時期にある」との言葉を繰り返し、「自信のある
平和で安定した中国の台頭」を歓迎し、中国が米国の「世界的パー
トナー」となることを望む、などだ。中には中国の人権や宗教の問
題に対するマイナス評価や、欧州連合(EU)の対中武器禁輸措置解
除への批判などもあるが、全体的な姿勢は積極的かつ楽観的であり
、ライス氏がパウエル氏の対中融和姿勢を改めるのではないかとい
う人々の懸念を払拭した。 

こうしたおおむね理性的、客観的、積極的な対中姿勢は、今のアメ
リカ国内で突然起きた対中政策の逆流に対してのバランス効果があ
る。ここ2カ月間、EUの対中武器禁輸措置解除問題や中国の「反国家
分裂法」成立、中国の軍事力発展、中国による影響力の世界的拡大
の問題などをめぐり、米国の保守勢力はいわゆる「中国脅威論」を
蒸し返し始めた。米国のラムズフェルド国防長官やゴス中央情報局
(CIA)局長などは米議会公聴会で比較的厳しい言葉を使い、中国の
台頭が米国への脅威になる可能性を示した。米国と日本による安全
保障協議委員会(2プラス2)は公然と台湾海峡問題を議題に含め、
中米関係の良好な雰囲気に大きく影響を及ぼした。一方、ブッシュ
政権は2期目を発足するにあたり、明らかに外交日程の焦点を中東、
中央アジア、EU、ロシアとして、中国へは意図的に冷たくしている。
こうした状況は人々に中米関係はどこへ行こうとしているのかと憂
慮させている。このような特殊な時期におけるライス氏の訪中は、
明らかに注目を浴びた。訪中前後に発表した一連の声明は、米国は
米中両国の建設的協力関係の発展を引き続き推し進めるだけでなく
、次第に進む「中国の台頭」をアジア太平洋における戦略的中心議
題と見なすとともに、中国の「平和で穏やかな台頭」を願うものだ
った。これらは間違いなく中米関係を引き続き発展させることだろ
う。 

さらに注目すべき点は、ライス氏が第2次ブッシュ政権の閣僚らを調
整した上でこうした発言をしていることだ。ウォルフォウィッツ、
ボルトン、フェイスの各氏ら「新保守主義派」(ネオコン)の人物
が次々と異動、もしくはこれから異動させられ、自然とライス氏に
よる米国の国家安全保障政策を決める上での地位が上がってきた。
このため、ライス氏のアジア観、中国観が第2次ブッシュ政権のアジ
ア政策と対中政策の将来が決まると思われる。中国の指導者との顔
を合わせた直接的な意思疎通と交流は、特に「反国家分裂法」制定
後の台湾海峡情勢や朝鮮半島の核問題、EUの対中武器禁輸措置解除
問題など両国が意見を異にする分野で「率直な意見交換」ができた
ことは、間違いなく信頼を増して疑いを解く積極的効果があった。

ライス氏の訪中はまた中米首脳の戦略対話プロセスを正式に切り開
いた。国交正常化から30年近い交流を経て、特に「9・11」米中枢同
時テロがあってからは、反テロや朝鮮半島核問題などで著しく成果
のある協力を行い、中米関係は新しい段階へと歩み始めた。その中
心テーマは、台頭しつつある大国と現在の超大国とが長期にわたっ
ていかにして平和共存できるかという構造的難題である。このため
、中米両国は首脳間の戦略対話を必要とする。ライス氏の訪中は、
彼女が就任以来掲げていた中国との戦略対話の幕開けとなっただけ
でなく、中米関係を長期にわたって穏やかに発展させ、両国の各レ
ベル、各部門の間でより広く、より深い対話とコミュニケーション
を必要とするものだ。(編集ZX) 

「人民網日本語版」2005年3月22日 

更新時間 :2005年03月22日18:16 (北京時間) 
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アナン改革案/抜本的だが楽観視できない   
  
  アナン国連事務総長が国連改革についての報告書を発表した。
 最大の特色は日本が期待する国連安保理常任理事国の拡大のほか、米国が最大の関心事
 としている国際テロ対策、人道的危機に対処するための安保理の予防的な軍事力行使の
 容認、人権委員会に代わる人権理事会の開設など抜本的な改革案が提示されていること
 だ。
(世界日報)掲載許可
日本にプラス面多い案

 アナン総長は同改革案について、九月に開かれる国連特別首脳会合前の合意を求めてい
 るが、わが国にとってもプラス面の多い案であり、支持の方向で詳細に検討すべきであ
 る。

 同報告は同総長の要請を受けたハイレベル諮問委による昨年末の答申を受けて作成され
 たもの。

 安保理改革については、答申を受けて拒否権なしの常任理事国六カ国と非常任理事国三
 カ国を増やす案と、四年任期で再選可能な「準常任理事国」八カ国を新設する案の二つ
 を併記した上で、選択を各国に委ねるとしている。わが国はもちろん前者案を支持し、
 常任理事国入りのための外交活動を活発化すべきだ。

 「より大きな自由の中で」と題した報告書は、自由拡大のために安全保障、人権擁護、
 開発対策の一体化の必要性を訴えている。的を射た観点だ。

 安全保障面で注目されるのは、テロ対策である。報告書はテロを「社会、政府、国際機
 関を脅迫するために民間人や非戦闘員を殺したり、重大な傷害を与える行為」と定義し、
 来年九月までにテロを禁止する国際協約を締結することを提案している。イラクなどで
 の自爆テロ禁止を呼び掛けたものとして高く評価できる。

 また、ブッシュ米大統領が提案した核、化学、細菌兵器の不法取引を停止させるための
 拡散防止構想(PSI)支持をも表明した。さらに核テロ反対条約の速やかな締結と核
 兵器用の濃縮ウランとプルトニウム拡散禁止条約交渉をも呼び掛けた。いずれも米国へ
 の歩み寄りだ。

 国連はアフリカのルワンダの虐殺を防げなかったし、旧ユーゴのコソボ危機でも無力だ
 った。その反省に立って、安保理が予防的に軍事力を行使できる基準作成を報告書が求
 めたことも大きな前進だ。この基準は、ジェノサイド(民族大量虐殺)、民族浄化活動、
 その他、人道に対する犯罪などに適用されるべきだ。

 人権擁護面の柱は国連人権委の廃止提案だ。ジュネーブに本部を置く同委は米国などか
 ら批判の的となっていた。代わって、新設を提案された人権理事会は安保理や総会と並
 ぶ重要機関となるもので、メンバーは最高水準の人権基準を持つ国が総会で任命される
 ことを提案している。米国の批判に応えた国連組織改革だ。

 開発面の柱としては、二〇一五年を目標にすべての富裕諸国が国民総生産の0・7%を
 開発援助に振り向け、開発途上国は来年末までに、初等教育の実施、保健衛生制度の前
 進、エイズ拡大阻止などを中心にした貧困脱出計画を採択することを求めている。

寄せ集め国連の限界も

 報告書は、二十一世紀の脅威に対処するためには密接に絡み合った国際安全保障、人権、
 貧困対策の三つと包括的に取り組むことが必要とのアナン事務総長の哲学を示したもの
 として評価できる。

 しかし、問題はエゴで動かされやすい主権国家の寄せ集めという国連の限界だ。報告書
 は超大国の米国と多数派の途上諸国双方の要求を立てた内容だが、前途は決して楽観視
 できない。

    Kenzo Yamaoka
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ブレア英政権、地球規模問題でリード   
   
 貧困・環境が安保リンク 
 今年の主要国(G8)首脳会議(サミット)の議長役である英政府は、アフリカの貧困
 問題や地球温暖化などのグローバル(地球規模の)問題を外交議題の中心に据え、国際
 舞台で活発に動いている。その背景には、これらグローバル問題がテロや大量破壊兵器
 (WMD)の脅威とリンクしているとの認識があるためだ。
(ロンドン・行天慎二・世界日報) 掲載許可
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 ブレア英首相が主宰する「アフリカ委員会」が十一日にアフリカ救済の包括的支援策を
 発表した後、十五、六日にはロンドン市内でエネルギー・環境閣僚会合(二十カ国から
 エネルギー相・環境相が出席)を開くなど、ブレア英政権は今、グローバル問題でイニ
 シアチブを発揮している。
 グローバル問題は理想的テーマに陥りやすく、各国の利害調整が困難で短期的解決が不
 可能な問題だとみられている。このため、英政府のイニシアチブは七月初めにスコット
 ランドのグレンイーグルズで開催されるG8サミット向けのパフォーマンスとのうがっ
 た見方もある。しかし、ブレア政権は、グローバル問題への取り組みが長期的には、テ
 ロやWMDなど今日の現実的脅威に対する防止機能を果たすとの考え方に立っている。

 ブレア首相はアフリカ問題に関して、「数千マイル離れた所での飢饉(ききん)や不安
 定は、紛争、自暴自棄、大量移民、狂信主義を招くことになり、われわれすべてに影響
 を与え得る」(英紙ガーディアン十二日付)と語り、道義上のみならず国益上からも先
 進国が救済活動を行う必要性を強調している。また、エネルギー・環境閣僚会合でスピ
 ーチしたブラウン財務相は、「気候変動はわれわれの経済発展と成長を脅かすことにな
 る」「気候安定化、エネルギー投資とその安全を経済政策の中心にしなければならない」
 と語り、国際協力の重要性を指摘した。

 アナン国連事務総長の諮問機関「ハイレベル委員会」の英国代表委員、ハナリ上院議員
 によると、昨年十二月に出された同委員会の最終答申は世界の脅威に関する分析で、貧
 困、環境、組織犯罪、国家破綻(はたん)などがテロ行為やWMDの拡散につながると
 の見方をしており、国連レベルでも反テロ対策、イランや北朝鮮の核開発問題のみなら
 ず、グローバル問題が重要な国際安全保障事項だと認識されている。

 英政府は七月のグレンイーグルズ・サミットで、アフリカ貧困問題と地球温暖化問題に
 関する具体的合意内容を目指しており、主要国はそれに応える必要があろう。

    Kenzo Yamaoka
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中東に拡大する民主化   
   
 政治勢力よりも大衆のうねり
米国の干渉は逆効果も
 米国のブッシュ政権が「テロ組織」と指定してきた、レバノンのイスラム教シーア派組
 織「ヒズボラ(神の党)」について、もう少し柔軟に見ようとする兆候が表れている。
 ブッシュ大統領はヒズボラが政治組織としての正当性を示すため、「武器を放棄し平和
 を脅かさない」よう求めた。

 ヒズボラはレバノン政治の抜き難い一部だ。同組織はレバノン国会(百二十八議席)に
 十二議席を擁している。同国のイスラム教シーア派社会への影響力は、先週の親シリア
 集会に五十万人以上を動員したことで証明された。しかしブッシュ大統領はヨルダンの
 アブドラ国王との最近の会談後に、「ヒズボラがイスラエル・パレスチナ和平プロセス
 を挫折させるかも知れない」と懸念を表明した。

 二月十四日のハリリ前レバノン首相の暗殺事件以降の行動を見る限り、ヒズボラが平和
 の流れに水を差そうとしているようには見えない。シリア支持のデモ行進・集会でヒズ
 ボラ支持者らは、いつも掲げる同組織の黄色旗ではなく、レバノン国旗を掲げて国民的
 連帯をアピールした。またヒズボラの指導者ナスララ師は、シリア軍のレバノン支援に
 謝意を述べたものの、「今後もレバノン駐留を求める」とは言及しなかった。識者の多
 くは、同集会がヒズボラによるシリア軍への「一大送別イベント」だったとみる。

 それにしても、ハリリ首相暗殺事件以後の出来事は、ただ驚くほかない。ほんの数週間
 前まで、シリア軍のレバノン撤退など論外だったし、火曜日から始まったシリア情報機
 関の首都ベイルート退去は、もっと予想外だった。イラクでサダム・フセイン体制が転
 覆されたことが、大きな契機だったのは間違いない。その後、シリアと国境を接するイ
 ラク国内に十三万人規模の米軍部隊が常駐し、米第六艦隊がシリアから一日の航路の東
 地中海に展開している。事実上の包囲状況で、シリアは米国の圧力を本気にしなければ
 ならなかった。

 米国が民主主義拡大に本気であると理解されるにつれて、中東を覆ってきた政治的な重
 しが徐々に外され、民主化勢力に勇気を与えているようだ。長い間、さまざまな「恐れ」
 が中東の政治に影を落としてきたが、誰がどのように統治するのか、人々は従来より明
 確にものを言おうとしている。

 エジプトでは選挙制度の抜本改革を求める声が高まっている。これまで大統領選挙は単
 一候補で、ほとんど現職大統領が立候補し無競争で当選してきた。現在のムバラク大統
 領もご多分に漏れずで、古代エジプトのファラオのごとき権威と力を過去二十四年間保
 持してきた。だが、もはや「無競争」は通らないだろうし、今年秋に選挙が実施されれ
 ば当選は請け負えない。

 レバノンの有力な野党政治家サミール・フランジーエ氏は、現在の状況を「珍しい現象」
 と表現した。変化の主要な担い手が組織立った政治勢力というよりは、大衆のうねりと
 して起こっているからだ。だからこそ米国が自らの功績を喧伝(けんでん)しようとす
 れば、逆効果になりかねない。ワシントンは中東の底流にある根強い反米感情を見逃す
 べきではない。

 中東での劇的な変化について米国の手柄を強調して、米国のイラク侵略を正当化したい
 誘惑は強いだろう。イラクに大量破壊兵器が発見されず、サダム・フセインとアルカイ
 ダなどイスラム過激派テロ組織との関連も決定的に証拠立てられることはなかったから、
 この戦争の評価は依然として定まっていない。

 エジプト大衆は政治システムの変革を要求し、レバノン国民はシリアからの独立を主張
 している。その限りにおいて米国の支持・支援は歓迎されるかもしれない。しかしアメ
 リカの過剰な関与は、むしろ否定的効果を生み出しかねない。これが国務省の広報担当
 次官補として任命されたカレン・ヒューズ女史が心すべき第一の教訓であり、その困難
 な任務の中で学ぶことになろう。(世界日報)掲載許可
    Kenzo Yamaoka
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ブッシュ米政権、対中国政策を軌道修正か   
   
 政府高官から相次ぐ「警戒論」
ライス国務長官、価値観の相違を強調
1期目の協調関係に変化も

 一期目のブッシュ政権は中国に対し、テロとの戦いや北朝鮮の核開発問題を優先させる
 必要性から協調関係を重視してきた。だが、ここに来て、中国の急速な軍事力増強や台
 湾への武力行使に法的根拠を与える反国家分裂法採択などの動きに、米政府高官から懸
 念の声が相次いでいる。二期目に入り、米国の対中政策に何らかの軌道修正が加えられ
 た可能性がある。(ワシントン・早川俊行・世界日報)掲載許可

 「中国軍の近代化と軍事力増強は台湾海峡の力の均衡を崩しており、この地域の米軍に
 脅威を与えている」。先月十六日、上院情報特別委員会で証言した米中央情報局(CI
 A)のゴス長官は、中国の軍拡に強い警戒感を示すとともに、「台湾が独立の動きを見
 せれば、中国は武力で対応する用意がある」との認識を示した。

 また、米国防総省の情報機関、国防情報局(DIA)のジャコビー局長も同委員会で、
 中国が増強する弾道ミサイルは、台湾だけでなく、米国や日本、韓国の軍用施設も標的
 になる可能性があると警告。ファロン太平洋軍司令官も今月八日の議会証言で、中国の
 軍事力増強は「自衛の範囲を明らかに超えている」と懸念を表明した。

 さらに、先月十九日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した「共通戦略目
 標」も、台湾海峡問題の平和的解決を促すことを盛り込むなど、中国の動向に大きなウ
 エートを置くものとなった。

 中国に対する米政府の警戒感に拍車を掛けたのが、今月十四日に中国全国人民代表大会
 (全人代=国会)で採択された反国家分裂法だ。

 マクレラン大統領報道官は同法について、「両岸(中台)関係が緩和に向かう最近の傾
 向に逆行するものだ」と厳しく批判。米議会も中国非難決議を圧倒的多数で採択した。

 また、北朝鮮核開発問題に対する中国の姿勢も、米国の不信感を募らせている。中国は
 北朝鮮に最も強い影響力を保持し、仲介者として役割が期待されているが、この立場は
 一方で、米国との有効な交渉カードになっている側面がある。

 このため、中国は北朝鮮に真剣に働き掛けていないとの見方が強まっており、「ブッシ
 ュ政権は六カ国協議における中国の役割に懐疑的になるべきだ」(ジョン・タシク・ヘ
 リテージ財団上級研究員)との意見が出ている。

 ブッシュ政権一期目の米中関係を考えると、こうした「中国警戒論」が公然と出てきた
 ことは、大きな変化といえる。ブッシュ政権は発足当初、中国を「戦略的競争相手」と
 位置付け、対抗姿勢をあらわにしていたが、同時多発テロ以降、テロ対策や北朝鮮問題
 を通じて協力関係を急速に拡大。パウエル前国務長官は、米中関係を「一九七二年のニ
 クソン大統領訪中以来の最良期」と評したほどだ。

 二期目に入り、米政府の対中姿勢に変化が生じている要因の一つに、国務長官が中国と
 の協調関係を推進したパウエル氏に代わり、ライス氏が就任したことがある。

 ライス氏は二〇〇〇年、外交専門誌フォーリン・アフェアーズに発表した論文の中で、
 「中国はクリントン政権がかつて呼んだような『戦略的パートナー』ではなく、戦略的
 ライバルだ」「中国のパワーと安全保障上の野心を封じ込めることが重要」と主張。中
 国に強い違和感を抱いていることが分かる。

 また、ゼーリック国務副長官も同じ号に論文を発表しているが、同氏もクリントン政権
 の対中政策を厳しく批判している。

 つまり、第二期ブッシュ政権の外交を指揮するトップ二人が対中強硬論の持ち主であり、
 これまでの対中戦略に修正が加えられることは十分考えられる。

 ライス氏は十九日に都内の上智大学で行った演説でも、「信仰の自由や人権の尊重が社
 会の成功の基礎であることを中国も気付くだろう」「いずれ真に民意を代表する政府を
 持たなければならない」と、米中の価値観の相違を強調した。

 ただ、ライス、ゼーリック両氏とも、国益を重視する現実主義者であり、対テロ戦や北
 朝鮮問題への対応が求められる現段階では、中国の動向を牽制(けんせい)しながらも、
 「戦略的競争相手」と呼んでいた時のような対決姿勢は取らず、一定の協力関係は維持
 していくことが予想される。

 ライス氏は二十日に北京で行った胡錦濤国家主席との会談で、反国家分裂法に懸念を示
 す一方で、「一つの中国」政策を堅持する考えを伝えている。
       Kenzo Yamaoka

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