1921.米国の次の目標



米国の次の目標が明確化している。その検討。  Fより

米国の見解として、レバノンのハリリ暗殺はシリアの仕業であると
して、イスラエルにとって目障りなシリアのレバノン支配を打破す
るようです。しかし、ハリリの暗殺はイスラエルのモサドの仕業で
あるのは明確だ。ハリリは欧州の治安警備会社を利用していました
が、その厳重な警備をすり抜けて爆殺したのです。

モサドのような高等な技術を使える組織でしかできないことです。
しかし、米国はシリアが暗殺したとしている。このため、5月まで
にレバノンから完全撤退しないと、シリアの現政権を倒すために、
シリアに侵攻するという。

米ブッシュ大統領のシリアへの警告の言い方自体が、侵攻前のイラ
クのフセイン大統領に対する言い方と同じになっている。欧州は反
対であるが、国連の安保理事会に米国は侵攻を審議することもなし
に実施するようですので、欧州は沈黙のままでしょうね。中東は米
国の勢力範囲と欧米間で協定ができているために、反対はするが強
くはない。

この動きは、イラク国内の情勢にも影響している。米軍と暫定政権
は旧イラク軍人の再雇用を促進するのと、スンニ派と交渉をし始め
ている。これはある程度の治安の安定を図り、シリア攻撃時、イラ
ク・ゲリラに邪魔されないことを狙っている。

しかし、ロシアから戦術核ミサイル等の兵器がシリアにあり、これ
も前から指摘しているように、米軍がシリアに侵攻した時点で、使
用される可能性がある。使用先は、米軍だけではなくイスラエルに
対しても核攻撃があると見ている。

中東全体がこの影響を受けるような気がするのです。日本は中東の
石油に70%以上依存している。このため中東の石油が来なくなる
と、大きな経済的苦難に直面する可能性が高い。どうして、中東石
油の影響を少なくするロシアの石油を、今直ぐにでも日本は手に入
れないのか不思議でしょうがない。

北方4島の経済価値はほとんどないが、石油が来ないことによる経
済的損失は巨大である。国のリスク分析をすれば、どう対応するべ
きが一目瞭然なことである。それを北方領土返還ということでロシ
アとの友好を損ない、ロシアからの石油が来ない事態にしている。
悲しいかな、日本は単純な国民感情論で大きな経済的な損失とそれ
による死人まで出す経済的な人災を招くことになる。

それでは、どうして石油も出ないシリアに米国は侵攻するのでしょ
うか??それは、イラクでのゲリラ戦を戦うゲリラサイドの補給は
レバノンの港からシリア経由でされていることは明確であり、その
補給を止めることが必要と米国は判断しているためである。

シーア派のシスターニ師は現時点では、米国のイラク支配の協力者
であるため、イランがゲリラに弾薬や食糧を補給しているとは思え
ない。それとイラク石油の積み出しをレバノンの港までパイプライ
ンをシリア経由で引くことがいいと米石油会社は考えているために
でしょうね。

米石油会社の埋蔵量が軒並み減少して、このイラク石油しか現時点
で増やす方法がない。欧州の石油会社はアフリカの石油開発に進出
できるために埋蔵量が増える可能性が高い。欧米の協議で、アフリ
カの石油は欧州の勢力範囲にしたことによる。

このため、米国としては、先にシリアの補給路を絶ってからイラク
ゲリラを片付けようとしているが、その陰謀をイラク・スンニ派の
ゲリラは知らないために、米国の停戦協定に乗りそうである。しか
し、それはイラク・ゲリラの死を意味することになる。

どちらにしても、イスラエルの全土は核攻撃される危険性が高い。
勿論、イスラエルも核での反撃をするために、シリアは勿論のこと
、イランも核攻撃を行うので、イランもイスラエルに反撃を行うた
めに、中東の広範囲に核の汚染が広がることになるようですね。
あと早くで1年〜2年、遅くて5年〜8年程度しか残されていない
ように感じる。

現時点はハルマゲドンの最終段階である。そのことを銘記しておい
てください。その影響を少なくするような外交政策を日本は志向す
るべきなのですよ。
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シリアに即時全面撤退要求 5月が期限、米大統領

 【ワシントン4日共同】ブッシュ米大統領は4日、レバノン情勢
に関連し「シリアの軍隊、特殊機関はすぐにレバノンから立ち去ら
なければならない。中途半端な措置は受け入れられない」と強調、
シリアのアサド政権に即時全面撤退を開始するよう求めた。ニュー
ジャージー州での演説で語った。
 また大統領は同日付の米紙ニューヨーク・ポストに掲載されたイ
ンタビューで「シリア軍がいたら公正な選挙は行えない」と述べ、
レバノン議会選のある5月を期限とした全面撤退が不可欠との認識
を表明した。
(共同通信) - 3月5日9時4分更新
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中東に民主化ドミノの兆し=米で評価の声広がる

 【ワシントン2日時事】中東民主化をめぐる最近の動きを積極的
に評価する意見が、米国内で急速に広がってきた。一部には「民主
化のドミノ」という表現も使われている。イラクでは戦争終結後最
悪の自爆テロ事件が発生するなど混乱が続くが、中東民主化の動き
を1989年の「ベルリンの壁崩壊」に匹敵する出来事だと称賛し
ている新保守派(ネオコン)だけでなく、これまでイラク戦争に批
判的だったメディアなどにも同様の声が出てきている。 
(時事通信) - 3月2日17時1分更新
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米石油メジャーの石油・天然ガス埋蔵量が軒並み減少(nikkei)

 【シカゴ=山下真一】石油メジャーが保有する石油・天然ガス鉱
区の可採埋蔵量が軒並み減少している。各社は生産した分を新規開
発でどれだけ補ったかを示す「代替率」を発表しているが、2004年
は米シェブロンテキサコの場合、18%にとどまった。この結果、可
採埋蔵量は110億2500万バレル(天然ガスは原油換算)と前年に比べ
6%減った。油田・ガス田開発が思うように進んでいない現状が浮き
彫りになった。

 最大手エクソンモービルの04年の代替率は112%だったが、新たに
加えた埋蔵量18億バレルのうち9割がカタールのガス田によるもので
、油田開発は低調だった。米証券取引委員会(SEC)が定めた基
準で計算し直すと、代替率は83%に低下するという。代替率が100%
を下回ると、埋蔵量は減る。欧州勢も英蘭ロイヤル・ダッチ・シェ
ルの代替率が15―16%と低水準。ほかの石油大手も、SEC基準で
軒並み100%を下回った。 (07:00) 
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米兵の死者1500人に イラク戦開始以来

 【カイロ3日共同】AP通信によると、イラク中部バビル州で2
日、米兵1人が死亡し、2003年3月のイラク戦争開戦以来、米
兵の死者は事故死などを含め1500人になった。
 米国防総省の集計によると、戦闘による死者はこのうち、少なく
とも1140人という。
 首都バグダッドにある暫定政府の内務省庁舎前で3日、2台の車
による爆弾テロがあり、ロイター通信によると、少なくとも警官5
人が死亡した。
 2台は警察の車列に紛れて建物の敷地内に入ろうとしたが、治安
部隊が気付いて発砲したため、検問所の前で爆発した。1台は小型
バス、もう1台は四輪駆動車だったという。
 一方、イラク民間人の犠牲者は、非政府組織(NGO)「イラク
・ボディー・カウント」による集計で、2月27日現在、
最大1万8395人となっている。
(共同通信) - 3月3日18時24分更新
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[アラブの声]米国防総省、シリア侵攻、政権打倒計画の準備完了 
衛星写真はレバノン前首相爆殺犯はモサドを示唆

 レバノンのハリーリー前首相が爆殺事件の真相は未だ謎に包まれ
ている。米国はシリアの攻撃に踏み切るのか。エジプトの政治高級
週刊誌アル・オスボーの2月28日号は、これらの疑問に答えるマ
ハムード・バクリー記者の報告を掲載した。

 我々が入手した最新の複数の報告書は、ラフィーク・ハリーリー
前レバノン首相のベイルートでの爆殺事件へのイスラエルの役割に
関する米国政府機関が保有する重要機密情報の内容を明らかにして
いる。

 これらの報告書は、米国の人工衛星が爆発の瞬間を捉えており、
米国諸機関は爆発が地下で起きたと確信していることを示している
。確信する根拠は、人工衛星が爆発の瞬間に生じた炎の色が目を惹
き付ける程極めて輝度が高いことだ。

 これに対する可能な解釈は、一つしか無い。すなわち、炎が自爆
行為などによる地上から発したものならば、炎は黒ずんだものとな
り煙が空高く立ち上るものだが、このように光り輝く炎は大量の水
と混合したことを表している。

 ところが爆発時地上には水のあるところが皆無だったことが判明
した。しかし爆発現場近くの地下に水源があり、この水層こそが爆
発物と混合して大爆発を引き起こしたのだ。可能性が高いのは、爆
発物が置かれた場所は地下の池のような場所で、その地下池から発
射され極めて輝度の高い爆発炎を生じたのだ。

 ある世界的な情報機関は、ベイルート中心部の事件現場サン・ジ
ョージ・ホテルとその向かいのビル地域を描いたイスラエルが作成
した見取り図を入手できた。見取り図は、中に水が存在する地下通
路の存在を示している。見取り図上のホテルと向かいのビル間の道
路には、4個の黒点が記されている。

 これらの黒点を分析した結果、通過することになる車列を狙って
配置されていることが判明した。黒点は主要な爆発目標地点を示し
ているのだ。

 しかし問題は4点が道路に想像した点であることだ。いかにして
、他の車両ではなくハリーリーの車列に反応して暗殺できるかだ。
報告書はここでこの電子式起爆装置は、ハリーリーの車列にしか装
備されていないような撹乱、警戒、監視装置などの電子機器を搭載
した車両に対してしか起動しないという仮定を主張している。つま
り他の大臣たちの車にハリーリーの車に搭載されていたと同様な警
戒装置が備わっていたならば、爆発し暗殺されたということだ。

 報告書によると、爆破物は自動遠隔制御装置と連結しているが、
このような高度の技術を持った国は地域では1国しかない。それは
イスラエルである。この遠隔操作装置はマッチ箱程度の大きさで発
見されにくい。イスラエルはこのような種類の装置を開発する巨大
な能力を持っている。

 その他あらゆる情報を総合すると、暗殺に使われた装置は極めて
複雑で高度な技術が使われており、外国の諜報機関が現地の協力者
と協調して実行されたものであることを示している。

 事件後ペンタゴンはシリアに対する軍事行動の全体構想の準備を
開始した。ブッシュ大統領はブリュッセルの欧州首脳との会合で、
このような軍事行動で協調行動を採るよう呼びかけた。だが情報が
示すところでは、多数の欧州諸国がこの計画に反対した。この問題
では過激な態度を採ってきたフランスすら、如何なる軍事行動もテ
ロリストの強大化に繋がると警告し、中東で新たな軍事的冒険を冒
さないことの重要性を強調した。

 ブッシュはシリア軍と情報要員がレバノンから撤退を急ぐよう圧
力を掛けているが、実際の軍事行使はしばらく先延ばしにして、代
わりに経済・金融制裁をシリアに科す方向のようだ。一方ペンタゴ
ンはシリア攻撃の準備を進めている。

 以前の米国の計画はシリア軍を限定的に攻撃し、シリア軍の能力
(特に空軍の防衛力とミサイル能力)を麻痺させるだけで満足して
いたが、新計画はシリアの政権倒壊を目指している。イラクの場合
と同じでシリアを地上戦闘で軍事制圧するのだ。

 この作戦には危険性が付きまとうが、計画立案に参加した米軍指
導者たちは、イラクの治安はシリアから始まり、レバノンとイラク
という地域の重要な2国で戦略的重要性を持つ役割を演じていると
非難されるシリア政権を変革しなければ、イラクは中東における民
主主義のモデルにはなり得ないと見ている。

 米軍指導者たちは、イラクで経験したような困難はシリアでは起
きないと信じている。シリア政権は脆弱な独裁国家で、大方の国民
は過剰な警察力に依存する政府を拒否していると見ている。対シリ
ア作戦は電撃的に行い政権崩壊、そして米軍の支持による新政権誕
生で終了すると考えている。その後新政権の形態を決める選挙を実
施する。

 彼らは以上が迅速に実現すれば、イラクの治安情勢も速やかに解
決すると見ている。だが、米国によるシリア攻撃に正当性を与える
ために、設置が提案されている国際事件捜査委員会が、ハリーリー
暗殺の責任をシリアに擦り付けることを米政権内のタカ派が強要す
ることで、圧力を強めることを周辺諸国は恐れているようだ。

 ムバーラク・エジプト大統領が2月22日アサド・シリア大統領
に電話会談をし、翌23日にはオマル・スレイマーン総合諜報庁長
官をダマスカスに派遣して、ハリーリー暗殺後にシリアと地域を襲
ったこの複雑な事態の収拾策を探らせたなどの動きの裏には上記の
ような恐れがあったからであろう。

 イスラエルがシリア攻撃を目指した計画を進めていることは明瞭
になった。入手した情報が示すところでは、イスラエルの高級軍事
使節団がハリーリー暗殺の僅か4日後に秘密任務を帯びてワシント
ンに飛んだ。同地では多数のペンタゴンの幹部と会談している。使
節団は、「米国がシリアに対して軍事ステップを採れないならば、
シリア政権をイスラエルが倒すことを放任して欲しい。イスラエル
はアラブからも欧州からのいかなる非難をも無視する。パレスチナ
和平問題のためにアラブはイスラエルを必要としているからだ。ア
ラブの一部の国がイスラエルに敵対的な態度を取ったにしてもイス
ラエルを非難するまでには至らず、時間が経てばイスラエルとの関
係は通常通りに回復するものだ」との書簡を持参してきた。

 この情報によると、イスラエル軍事施設団は米国の高官たちに、
「イスラエルが単独でシリアに対して、米国の計画に多少修正を加
えて実行すれば、中東の安定に貢献する」との提案をした。イスラ
エル使節団が米国側に提示した報告書は、シリアのある軍事グルー
プが犯行3ヶ月前からレバノンに滞在しハリーリー暗殺を実行した
。レバノン当局は犯行数日前からベイルートのあるナイトクラブに
偵察に来ていた、この軍人グループの一人を拘束したことを公表し
ていない。このシリア軍将校はナイトクラブで深酔いし騒ぎを起こ
しレバノン軍の介入を招いたのだ。この将校は朦朧状態で、俺たち
はハリーリーを殺しに来ているのだとしゃべってしまったのだ」と
主張している。

 「証言の重大性にも拘らず、レバノン当局はこの将校を釈放して
しまった。その後レバノンの治安機関がこの男がレバノンを出国す
る前に再度拘束して取り調べたが、男はハリーリー暗殺には全く関
わっていないと主張した。結局取調べの結果、この将校は釈放され
シリアに送還された」

 この報告書では「以上の情報は、レバノンの信頼すべき複数の要
員から入手した。要員たちは、シリアはシリア軍のレバノンからの
撤退を求める全てのレバノン人指導者を始末すると決めていること
を掴んだ。シリアの体制を早急に始末し、その影響力を出来る限り
押さえ込まねばならない。シリアに新政権が出来ることはイラクと
イスラエルの治安安定の必須事項だ」としている。

 一方、特に最近のシリアとイランの相互接近の動きに鑑みて、ペ
ンタゴンはシリア内部の危機的状況を利用して、この体制を即刻排
除するために介入する必要性を感じている。この頃シリアはシリア
で一部のアラブ筋から、事態が危険水域に達する前にシリア軍を撤
退させるようにとの勧告を受けていた。シリアが実際に標的になっ
た現在、これ以上事態を悪化させないために、エジプトはシリアと
米国が直接対話をするよう動いている。
http://www.elosboa.com/elosboa/issues/414/0604.asp
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前首相暗殺で勢い増す野党勢力―レバノン   
   
 親シリアのカラミ政権が総辞職
国際世論高まるシリア軍撤退
 レバノン政財界切っての実力者で、国民の人気も抜群に高かったハリリ前首相(60)
 が暗殺された事件は、親シリアとされるカラミ政権を総辞職に追い込み、アサド・シリ
 ア大統領に駐レバノン・シリア軍撤退の可能性に言及させた。アラブ諸国の中で最も自
 由な雰囲気を持つレバノンが、独裁国家シリアの軍と諜報(ちょうほう)機関による監
 視体制を逃れて、真に独立した自由で民主的な国家になれるかどうか今、全世界が注目
 している。(カイロ・鈴木眞吉・世界日報)掲載許可

 ハリリ前首相が、側近ら十数人とともに首都ベイルートで暗殺されたのは二月十四日。
 「勝利と聖戦」を名乗るグループが出した犯行声明は、サウジアラビア王家を支持する
 ハリリ氏を標的にしたことをにおわせたものの、同グループの背景は不明で、国連から
 二十五日に派遣された調査団が、一カ月後をめどに事件をめぐる報告書をまとめること
 にしている。

 レバノン政府高官モハメド・カバニ氏は、爆発現場付近のホテルから爆発地点まで直径
 三・五b、長さ六bのトンネルが掘られ、中に仕掛けられた爆弾が爆発したと発言、周
 到に計画された暗殺であったことを示唆している。

 同事件に対し、レバノンの野党議員や一般市民は、同国を実効支配するシリアが事件の
 背後にいるとして、シリア軍の撤退と親シリアのカミラ政権の総辞職を求め、ゼネスト
 を含む連日の大規模デモを繰り広げた。十八日には、ハゼン観光相が辞任、親シリアの
 現政府では危機を脱することはできないと主張した。

 爆発した民衆パワーは、シリアの要請を受けたラフード・レバノン大統領が昨年九月に
 改憲して任期を延長したことや、シリアの軍と諜報機関による各種圧力への不満と怒り
 などが一気に噴き出た結果ともみられている。

 国際社会の反応も迅速で、米大統領報道官は十四日、ブッシュ大統領の「テロへの衝撃
 と怒り」を表明、翌十五日、米国は駐シリア米大使を召還した。ブッシュ大統領はシラ
 ク仏大統領とともに二十一日、シリア軍の即時撤退を求める共同声明を発表、二十三日
 には、諜報機関の撤退も要求した。ストロー英外相も二十一日、事件には、「シリアが
 関与しているとの高レベルの疑いがある」と述べた。国連は十五日、安保理で事件を厳
 しく非難して、アナン事務総長に事件の背後関係の緊急調査を要請、昨年九月の安保理
 決議1559に反してレバノンに軍を駐留させているシリアに対し、軍撤退決議の即時
 履行を求めた。

 これら急速に高まった国内外からの圧力に対し、二十三日に辞任をちらつかせていたカ
 ラミ首相は二十八日夜、市民六万人による平和デモの最中行われた臨時国民議会で、内
 閣の総辞職を表明、ラフード大統領は辞表を受理した。総辞職の理由は、暗殺事件の真
 相究明の障害にならないためとした。

 一方、国際的孤立を強いられたシリアは十六日、イランと「共同戦線」を組むことや、
 対空ミサイル・システムの売買を通じたロシアとの関係強化をアピールして抵抗、ムバ
 ラク・エジプト大統領と二十七日に会談したシャラ外相は、レバノン内戦の終結やシリ
 ア軍の撤退を決めたタイフ合意と、国連決議1559との相違を指摘して、国連決議が
 求める国外への完全撤退を拒否する姿勢を見せるなどしたものの、頼みの綱としたエジ
 プトやサウジから軍撤退への説得を受け、アサド・シリア大統領は三月一日、米誌タイ
 ムを通じ、数カ月以内のシリア軍撤退に言及、三日にはサウジを訪問した。

 エジプト情報筋によると、シリアが、これだけの国際圧力に抗して、駐留に固執するの
 は、表向きレバノン内戦再発防止だが、実質は、撤退によるレバノン政府からの経済的
 見返りと、レバノン国内でのシリア人の雇用を失うことを恐れているからだ。また、
 「戦略的には、対イスラエル戦略(ゴラン高原返還)のためのカードを失うからだ」と
 いう。

 同筋はさらに、アラブ諸国からも孤立したシリアは軍撤退以外に選択肢がないものの、
 「米国とイスラエルの圧力による撤退」だけは避けたいと指摘、「タイフ合意を持ち出
 すことで、アラブ諸国による一致した撤退要請に応じる形に持ち込みたいのが本音」と
 の見方を明らかにした。その最大の機会が、今月下旬、アルジェリアで開催予定のアラ
 ブサミット(アラブ首脳会議)の場になる、という。

ハリリ・レバノン前首相暗殺前後の出来事


1975−90年 民族対立に起因するレバノン内戦
1976年 アラブ連盟、シリア軍主体の「アラブ平和維持軍」のレバノン駐留を決定
(4万人、現在1万4千人)
1992年 ハリリ氏、首相に就任。内戦で疲弊した同国経済の建て直しを推進、復興の
立役者となる。98年に辞任
2000年10月 ハリリ氏、首相に再任
  04年9月 国連安保理、シリア軍のレバノンからの完全撤退要求を決議(1559
  号)
  04年10月 ハリリ首相、ラフード大統領の任期延長をめぐる問題で抗議辞任
  05年2月14日 ハリリ氏暗殺
       15日 米国務省、駐シリア米大使召還を発表
       16日 イランとシリアが外部からの脅威に一致して立ち向かう「共同戦線」
       を組むことで合意
          対空ミサイル・システムの売買を通じたロシアとの関係強化をアピ
          ール
       17日 ブッシュ米大統領、シリア軍撤退と、レバノンでの自由で公正な選
       挙実施を要求
          レバノン野党、カラミ内閣退陣とシリア軍完全撤退目指す平和的抵
          抗運動を呼び掛け
       21日 ブッシュ米大統領、フランスのシラク大統領と会談、シリア軍即時
       撤退を求める共同声明を発表
       21日 首都ベイルートで追悼デモ、前首相派ら野党支持者数万人が参加
       23日 ブッシュ米大統領、シリアに対し秘密警察も撤退させるよう要求
       24日 レバノンのムラド国防相、シリア軍の全部隊が近く、国境沿いのベ
       カー平原まで退く方針であると表明
       28日 野党勢力のゼネスト。平和デモ6万人
          カラミ内閣総辞職
     3月1日 シリアのアサド大統領、数カ月中にシリア軍をレバノンから撤退さ
     せる方針と表明
          ライス米国務長官とバルニエ仏外相、シリア軍の撤退を実現するた
          め、米仏の高官が協力してシリアを説得していく意向を表明
今後の予定
     3月22、23日 アルジェリアでアラブサミット開催(シリア軍撤退問題が
     主要議題に浮上か)
     5月 レバノンでの総選挙

     Kenzo Yamaoka
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第2次ブッシュ政権の民族的均衡   
   
 ユダヤ系が1閣僚でも大きな意味/共和党ではキッシンジャー氏以来
獨協大学教授 佐藤 唯行
人選でエスニック・バランス  世界日報  掲載許可

 第二次ブッシュ政権の中枢を担う閣僚、上級スタッフたちの人選が明らかになった。こ
 うした人選は、多人種・多民族国家アメリカにおいては、人種・民族集団間の微妙なバ
 ランス・オブ・パワーを配慮したものにならざるをえない。その結果、各集団がアメリ
 カという国の中で占める地位、力量を閣僚人事のエスニック・バランスの中から読みと
 ることができる訳である。

 例えば、近年まで全米最大の人種的マイノリティー集団であった黒人からは、コンドリ
 ーザ・ライスが筆頭閣僚である国務長官に任命されている。彼女は黒人としては二人目、
 黒人女性としては最初の国務長官である。

 また最新の国勢調査において、黒人を抜き去り、今や総人口の13%を占めるに至った
 ヒスパニック系からはアルベルト・ゴンザレス司法長官とカルロス・グティエレス商務
 長官の二人が任命されている。ゴンザレスはメキシコ系移民労働者の息子だが、メキシ
 コ系はヒスパニック系全体の七割を占める最大グループである。

 またグティエレスはフロリダにおける共和党圧勝に貢献した「反共の移民集団」亡命キ
 ューバ人の出自である。この他、運輸長官には日系のノーマン・ミネタ、労働長官には
 華人系のイレーン・チャオという具合だ。ミネタはクリントン政権においても商務長官
 をつとめ、アジア系初の閣僚として知られている。

国土安保長官にチャートフ氏

 こうした中、全米総人口の2%弱にすぎぬユダヤ系からは、マイケル・チャートフ(一
 九五四―)が、テロ対策の要となる国土安全保障省の長官に任命された。十八万人の職
 員を擁するこの巨大省庁のトップとなったチャートフはラビの息子として信仰篤いユダ
 ヤ教徒の家庭で生育した。彼はかつて司法次官補として、同時多発テロ後の「愛国者法」
 (別名、反テロ法)の制定で中心的役割を果たした。

 また中東・北アフリカ出身者が犯した軽微な移民法違反を厳しく取り締まり、多数の身
 柄を拘束したことでリベラル派の人権擁護団体からは強い批判を受けたことで知られる。

 その一方で、保守派からは移民の人権よりも、テロ再発防止を最優先する断固とした彼
 の姿勢に期待が寄せられている。

 さて、読者諸兄の中には「政治力に長けた民」であるはずのユダヤ人が、正規閣僚十五
 人中、チャートフひとりしかいないことを意外に感じる方もおられるやもしれない。し
 かし、これを意外に感じてはならないのである。

 これは現ブッシュ政権が成立する以前、長きにわたりユダヤ人社会と共和党との結びつ
 きが弱く、それ故、歴代共和党政権人脈の中に見るべき人材の蓄積がなされてこなかっ
 た結果なのである。

 第二次大戦後の歴代共和党政権の閣僚の顔ぶれを調べてみれば、キッシンジャー国務長
 官を「唯ひとりのユダヤ系閣僚」として擁していた第二次ニクソン政権とフォード政権
 を除けば、他の全ての共和党政権にはユダヤ系閣僚は皆無であったことが判るのである。

 一方、民主党は一九三三年のフランクリン・ルーズベルト政権発足以来、ユダヤ人社会
 と強固な同盟関係を保ち、ユダヤ人を閣僚の座に積極的に登用し続けてきたのである。

 そのピークが、クリントン政権の一九九六年であった。この年、都合十四人の正規閣僚
 中、ユダヤ系は四人、しかも、そのうちの三人が最上位の三閣僚(国務・国防・財務)
 を全て占めていたからである。

 こうした歴史的経緯を踏まえれば、今回、ブッシュが自分の政権内にひとりのユダヤ系
 を閣僚として登用したことの意味は、おのずと明白であるといえよう。すなわち、歴代
 の共和党政権以上にユダヤ・イスラエルの大義を尊重し、ユダヤ人社会との友好関係を
 大切にしようとするみずからの姿勢を目に見える形でアピールしようとしたのが今回の
 任命の狙いであったといえよう。

国防安保関係でユダヤ系登用

 最後に重要省庁の準閣僚と大統領府の上級スタッフに任用されたユダヤ系をみてみると
 ネオコン(新保守主義者)と呼ばれる力の行使に積極的で、アメリカ的価値の世界への
 普及に使命を抱く知識人が多いことが判る。その筆頭が国防副長官のウルフォウィッツ
 である。

 イスラエルに対する脅威をとりのぞくため、早くから武力行使によるイラクの弱体化を
 主張してきた彼は、目下、対イラン強硬派として知られている。国防次官のダグラス・
 ファイスもイラク戦争を主導したユダヤ系ネオコンの要であり、国防総省きっての親イ
 スラエルのタカ派である。また国家安全保障会議上級部長(中近東・北アフリカ担当)
 のエリオット・エイブラムズも政権きってのユダヤ系ネオコンといえよう。

 ネオコン人脈以外では大統領府の広報部長として、各省庁の報道担当との連絡調整の任
 にあたるデヴィニッシュがユダヤ系として知られている。今後の彼等の働きに注目した
 い。
     Kenzo Yamaoka
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薄氷のシャロン‐アッバス関係   
   
 ユダヤ人過激派が妨害の恐れ
 イスラエルのシャロン首相とパレスチナ自治政府のマハムード・アッバス議長の首脳会
 談が実現し、双方は和平実現に向けて動き始めている。しかし、アッバス議長の評価は
 まだ定まっていないし、イスラエル側ではユダヤ人過激派によるシャロン首相暗殺の恐
 れもある。(米UPI通信、二月二十一日)
 パレスチナ自治政府のアッバス議長(アブ・マゼン)に関する評価はまだできない。同
 議長がアフガニスタンのハミド・カルザイ氏またはイラクのイヤド・アラウィ氏のよう
 な米国寄りの人物であると信じるパレスチナ−イスラエル問題観測者もいるし、パレス
 チナ人に平和と国家樹立への最大の希望を与える人物であると確信している者もいる。 

 確かにアッバス氏は、ヨルダン川西岸地区およびガザ地区のイスラエルの存在を「占領」
 と言うことを外交上控えて(実際にはそうなのだが)、選挙宣伝を除けば、低い調子の
 言葉遣いをする傾向がある。恐らく同氏の非常に穏やかで実用的なアプローチこそが今
 必要とされているのだ。

 アッバス氏が実権を握って以来何が達成されたか。あの老練なアリエル・シャロン氏
 (イスラエル首相)が実際にエジプトで歓迎され、そこでパレスチナ指導者との歴史的
 な握手のためにポーズをとった。このことはエジプトの学生たちにあまり受け入れられ
 なかったが、シャロン氏の血生臭い過去を思えばそれも理解できる。しかし、学生たち
 はチェックポイントや夜間外出禁止令、戦車に直面している人々ではない。

 アッバス氏は平和をつくり上げるために選出されている。よく指摘されてきたように、
 和解することができるのは敵とだけだ。たとえそうではあっても、同氏がシャロン氏の
 牧場を訪問することにしたのは少し時期尚早だったと思われる。

 評論家たちは、シャロン氏はなぜ気が変わったのかと問うかもしれない。四年前に就任
 して以来、シャロン氏はパレスチナ人国家という考えについて議論する気は全くなかっ
 た。それよりも、和平会議を再開する前に何カ月間も暴力を行使しないなどの克服し難
 い障害を何度も置き、強敵ヤセル・アラファト氏を悪者にするのを楽しんでいるように
 見えた。

 四年前には、イスラエルでもパレスチナでも人々の雰囲気が違っていた。どちらもオス
 ロ合意(パレスチナ暫定自治合意)の崩壊で挫折感を抱いており、後にその感情は怒り
 に変わった。これまで彼らは非常に近くにいながら大変遠かったが、今振り出しに戻っ
 た。

 この争い(インティファーダ)の間に三千人以上のパレスチナ人および千五百人以上の
 イスラエル人が命を失い、さらに多くの人々が障害者になった。どちらの人々も疲れて
 いる。パレスチナ人は、果てしない苦闘と破壊された経済で疲れ果てており、一方ほと
 んどのイスラエル人は、「残忍な占領者」とみなされ、人種差別の壁に対する国際的な
 手厳しい批評をかわさねばならないことにうんざりしている。シャルムエルシェイクで
 シャロン氏が言ったように、イスラエルは再び占領者になることを決して望んでいない。

 しかし、たとえ今回アッバス氏と改心したアリエル・シャロン氏が善意を持っていたと
 しても、両者とも闘わねばならないそれぞれの過激論者を抱えている。現時点では、ア
 ッバス氏は停戦協定を維持しているように見える。同氏は公然と、パレスチナ人とイス
 ラエル人の間の戦争は事実上終わったと言い、ハマスとイスラム聖戦両過激派グループ
 の停戦の約束を発表した。パレスチナのこのリーダーはさらに、イスラエル人に対する
 ロケット攻撃を阻止できなかったことで、九人の治安部隊責任者とその補佐官を解雇し
 た。

 シャロン氏の側では、「殺人罪に問われていない」パレスチナ人の囚人釈放を約束し、
 十五人の武装勢力の遺体を返還した。同時に、数百人のパレスチナ人労働者がイスラエ
 ル領内の自分の仕事に戻ることを許された。さらに、五十六人のパレスチナ人が追放さ
 れ、ヨルダン川西岸地区の自分の家に戻る許可を与えられた。それだけではない。パレ
 スチナおよびイスラエルの軍司令官たちは、ヨルダン川西岸地区の町エリコ、続いてト
 ルカレムとカルキリヤの管理権のパレスチナへの移譲について討議した。

 かなり見通しは明るいように思われるだろう。しかし、早まってはならない。予想外の
 危機が展開しつつある。ガザから永久的に撤退するイスラエル政府の計画に怒ったユダ
 ヤ人の過激論者は、シャロン首相自身を含むイスラエル閣僚を殺すと脅迫している。

 イスラエルの日刊紙イディオト・アハロノトは、撤退が近づくにつれて、シャロン氏暗
 殺の企ての恐れがますます高まっていることを示唆している。 同紙によると、「タカ
 派のイスラエル元首相で現在財務相を務めているビンヤミン・ネタニヤフ氏は、結婚式
 に出席している間にタイヤを切り裂かれ、一方教育相は毒舌のため過激派のターゲット
 にされた。もう一人の閣僚ビンヤミン・ベンエリエゼル氏は『悪の権化、あさましいイ
 ラク人、アラブ生まれのナチ党員。ユダヤ人よりアラブ人を愛している』と書かれた手
 紙を受け取った」。

 宗教や国籍を問わず、世界中で過激論者が悩みの種であることは疑いない。これら過激
 論者は、至る所でまともな人々が平和で繁栄した生活を送るのを妨げている。平和をよ
 いと思うわれわれは皆、激しい抵抗にもかかわらず今度は穏健派が成功するように、た
 だ祈るのみだ。(世界日報)掲載許可
 
      Kenzo Yamaoka


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