1919.存在と論理



陰陽、正反は、存在の中に不可欠じゃね。   虚風老 
 存在と論理。

論理というのは、いわば、見方の仮構であり実在そのものを表わし
てはおらんといえる。
「群盲象を撫ぜる」の喩があるが、人は、実在そのものの全体像を
捉えることはできんじゃろう。ただ、必要なハタラキに限定しては
、理解することはできんじゃがね。

そして、一つの実存には、必ず相反する論理系が含まれておる。
それを、一つの論理(思考)から見る時、人は矛盾に思う。
その二つを、テーゼとアンチテーゼと呼ぼうと、陰陽あるいは、正
反や、表裏と、いうことも可能だが、必ず相反する「相」が隠れて
おる。
「坂」は、実在としては一つであるが、ハタラキとしては、「登り
坂」と「下り坂」がそこにあるわけじゃ。だからこそ、<波動>と
いう現象が存在できるのじゃがね。

その二つのバランス、強弱あるいは、揺らぎによって、物事には流
れ(動き)が存在する。

つまり論理は、一つなのではなく、反する二つの論理系がセットで
あり、どちらが正しく、どちらが間違いというのではない。(アク
セルとブレーキのようにな)
だが、一方の論理にだけ囚われると、相手が間違いに思えるんじゃ。
実際、ハタラキとして、現象化(現実化)されるときには、統合さ
れた姿であらわれる。
仏陀の哲学ではそれを、<中>としておるがね。

政治状況にも、二つの論理が現れる。
共同体と、開かれた世界(フジテレビとライブドアのように、共同
体=国を守るための論理と、外資規制をするというのと、資本とい
う、無国籍グローバル市場経済の論理)
内と外    
自由と公共
個人と国家、、、、。等々
これらは、一方の論理だけ取り出すと、他方を圧迫する。これらは
、必ず両方に足を置いておかなければならないわけじゃ。どちらも
互いがなければおかしくなってしまう。
我々の生体が、交感神経と、副交感神経によって成り立っているよ
うなもんじゃ。伸びは縮むとセットになっておる。
しかし、思考上のモノである「論理」は一方でも成り立ち、直線的
な方程式を提出してしまう。
人間存在や社会は、一本の論理によって計ってはならない。必ず反
する論理の統合(強弱はあっても)による。論理の矛盾なのではな
く、二つの反する論理が存在しておるのが当たり前なのじゃ。ただ
、外界との関係で、二つの間に強弱が生じる。それが、変化と対応
を生むんじゃ。

味方でなければ敵という、二分法や、二項の絶対の対立というのは
、そもそもなりたたない。それは、単に相対化というのではなく、
隠れているにしろ、常に二つの位相が存在しており必要に応じて現
れるということじゃろう。(それは時間レベルでも違うということ
を意味するの、以前はうまく機能したことが、今は逆に機能不全を
起こす因になるとかね。)
一本の原理に乗ることは、それだけで危ういといえるじゃろう。
よく矛盾しているという意見を聞くが、それはそもそも、違う二つ
の系(系の中にも、時に正反は紛れ込む)をごっちゃにして論ずる
せいであろうの。

科学的な方程式に馴れた者は、一つの原理(論理)で割り切りたい
と思うじゃろう。しかし、それは前提を制限された一つの系におい
て記述されているにすぎんのじゃ。
だが<いのち>は、統合された実在なんじゃね。

                      虚風老
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北方領土返還のレス        コスモス   
   
 もう何年前から北方領土返還を訴え続けているのだろう。
私としては、これからも返ってこないだろうし、それでもそれを言
い続ける価値がある、と言いたい。

 その上で、
 『ロシアのシベリア開発や日本の国益』と、そのためにロシアが
首を縦に振るような領土返還条件まで譲歩しよう、という意見は、
天秤にかける価値は皆無であると考える。

 ロシアが中国だけに石油を供給するためのパイプラインで満足す
ると思うだろうか? 一国との取引より、多国に渡る取引の方が安
全保障上優れている。

 なぜこの時期に、
 「ロシアとの友好を保つために、北方領土について譲歩すべき、
そう考えない人々は頭を使うべきだ」
 などという、北方領土『奪還』を訴える団体よりも『感情的な意
見』が出てくるのかさっぱり分からないし、それにみあう利益も見
当たらない。

 反アメリカの国家とパイプを繋ぐための譲歩のつもりかもしれな
いが、それを相手側が譲歩と受け取る可能性は全く無い。彼らはそ
れを当然と思うからだ。当然と思っていることに対して取引など成
立するはずが無い。

 もう一度言うが、北方領土は返ってこないだろう。訴えている連
中も同様のはず。訴えることに意義があるからだ。それは前回すで
に述べた。

 北方領土に妥協すべきと訴える人々は、それに見合う利益をもっ
と提示していくべきだ。大多数の人々は利益に従うし、今の状況が
そうでないなら、見合った利益など無いと人々が考えている証拠に
なる。つまり妥協派のPR不足だ。
 返還を訴える人々を納得させられる利益を上げて欲しい。それを
あげられずに虚仮にしたコメントが続けば、「ああ、やっぱり利益
なんて無いんだ」としか考えられない。
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(Fのコメント)
他国との政治交渉が、国内の調整で破綻する国家が日本なのでしょ
うね。相手国の国内情勢や戦略的な問題点を理解しようともしない
で、国内調整しか見ていない。

これでは交渉はうまくいかない。日本の国益を考えて、ロシアの国
益とぎりぎりの詰めを行う必要があるのです。そうしないと、2島
の返還は可能であるのに、今の日本の対応であると、北方4島は永
遠に返還されないことになる。そして、あと2島がロシアにとって
必要な理由も明確であるから、そこを考えた提案をすれば、実質的
に返還されたのと同じ状態になる。どうして、それを国内の説得が
できないために無理と言うのか??

ロシアの国内世論の方が日本より厳しいことは知っていますか??
ロシアの右翼政党自民党は、北方4島返還絶対反対ですよ。
それをプーチン大統領は2島返還はすると明言している。勇気ある
決断だと思うのですが、そのような勇気ある決断ができるロシアの
大統領は今のプーチンしかいないように感じる。

しかし、プーチンが見返りで要求するシベリア開発の優先順位を示
して、日本として得な石油パイプラインなどを開発するように絞る
べきである。ロシアは日本を打ちでの小槌(返さなく済む資金源)
と思っている。これに対しては、歯止めを掛ける必要がある。

それと、2島の領有権をロシアに残す、実質的に4島を返還される
と、ロシア人が大量に日本に入ってくる。勿論、ロシア・マフィア
たちも来るでしょうから、その治安問題が大変になることを覚悟す
る必要がある。それと、4島へのインフラ整備の公共事業費も出る
でしょうね。
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Re:メルマガのレス       コスモス 
何をもって日中関係が最悪とするのか、過去の国家間外交の事例を
もって表現してもらえませんか。

中国もやりようによっては、日本の親中派議員をうまく取り入れて
対米牽制を行うことが出来たのに、それを江沢民がメチャクチャに
してしまったことをもう一度再考してみてください。

> 古森さんのサンケイの記事はネオコンの主張ですよ。

数多くの記事というものは情報の一つに過ぎず、どれだけの情報を
集めうるかが、それぞれの記事の変更・印象操作を見抜く鍵となり
ます。
 まあネオコンだろうが共産主義者だろうが、新鮮で入手しがたい
情報を提供してくれるなら、それだけはありがたく拝借して、他の
『考え方』についてはスルーしてもいいのではないでしょうか。
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(Fのコメント)
あなたの主張が明確でない。Fの主張は、米国と同様に、中国とも
友好的に付き合う必要があると言うことです。日中関係を最悪にし
たい勢力が、日本のメディア(PHPのVOICEなどの優良誌ま
でも特集を組む)や評論家(宮崎某、クライン某)が多すぎると思
うし、右系メルマガも日中関係を最悪化するように書いている。
実際にVOICEをお読みください。

その主張の根源を見ると米国と中国の関係が敵対関係にあるとして
いる。しかし、実際は米国は中国との関係を正常化して東アジアで
の紛争を起こさないようにしている。米国再編も見方が全然違う。
東アジアに展開する在日、在韓米軍を中東戦争に送り込みたいとし
ているのと中国との紛争に巻き込まれないようにグアムまで主力を
撤退しようとしている。

そして、中国と米国の軍事的な対話をするようにして、東アジアで
の紛争を起こさないように努力している。台湾の独立志向を米国は
止めている。米軍幹部を送ったのも、台湾独立阻止ですよ。

それは東アジア紛争で米国が戦争まで起こしても得なことがないこ
とに起因している。守るとしたら、日本だけでしょうね。米国の打
ち出の小槌ですから。

米国が中国と有効な関係にあるときに日本が中国と問題を起こすの
は、戦略的・経済的に不利益になると思うが。

このような考察は、片岡鉄哉のアメリカ通信でも同じ主張のようで
すね。米世論も同様ですよ。
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6割が北朝鮮攻撃に反対=イラク戦争前と逆転−米世論調査

 【ニューヨーク3日時事】米紙ニューヨーク・タイムズが3日公
表したCBSテレビとの合同世論調査によると、北朝鮮の核問題を
外交手段で解決できなくても、同国を攻撃すべきでないと考えてい
る米国民が59%に上ることが明らかになった。イラク戦争前に行
った調査では、攻撃賛成が多数派だった。
 調査によると、北朝鮮の核兵器保有宣言に関し、81%がこれを
信じると回答。この問題が米国に深刻な脅威を突き付けていると考
える人も70%に上った。外交的解決が失敗した場合の対北朝鮮攻
撃について、イラク戦争前の2003年2月の調査では52%が賛
成、36%が反対だったが、賛成33%、反対59%と逆転した。 
(時事通信) - 3月3日19時2分更新
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経済被害、最大112兆円   
  
 避難所生活者は460万人
首都直下地震で想定・中央防災会議
 政府の中央防災会議の専門調査会(座長・伊藤滋都市防災研究所会長)は二十五日、首
 都直下地震による被害想定の最終報告を公表した。初めて試算した経済面での被害額は、
 建物倒壊といった直接的な損害のほか、生産力の低下などを含め最大で約百十二兆円。
 また、避難者は最大約七百万人で、うち疎開する人などを除く避難所生活者は約四百六
 十万人発生するとしている。

 政府は最終報告を踏まえ、今夏までに被害軽減対策を策定。二○○五年度には「南関東
 地震対策大綱」を見直し、対策を本格化させる。

 経済被害額が最大となるのは、東京湾北部を震源とするマグニチュード(M)7・3の
 地震が午後六時に発生し、関東大震災と同じ風速一五メートルの強風の場合。百十二兆
 円の内訳は、被災地域内での建物やインフラなどの復旧に必要な直接被害額が六十六・
 六兆円、被災地以外も含めた生産力の低下や交通機関の寸断などによる間接被害額が四
 十五・二兆円。

 これは東南海・南海地震(約五十七兆円)の約二倍、東海地震(約三十七兆円)の約三
 倍の規模となる。

 また、地震の揺れにより新幹線やJR在来線など鉄道、高速道路などで事故が発生した
 場合の死者数を推計。最大は、午前八時台の都心西部直下地震(M6・9)で約四百人。
 東京湾北部地震では、同じ時間帯で約三百人としている。

 人的被害をまとめた昨年十二月の中間報告では、都心西部直下の場合、風速一五メート
 ルのケースで、死者が最大約一万二千人としていた。今回、交通被害による死者を加え、
 死者数を約一万三千人に修正した。
他の地震との経済被害想定の比較
                    (単位兆円)
   地震      総 額  直接被害  間接被害
▽首都直下地震    112  66.6   45.2
▽東海地震       37  26     11
▽東南海・南海地震   57  43     14

来月10日までに自衛隊撤収
インドネシア・タイ 地震・津波復興支援
 大野功統防衛庁長官は二十五日、インドネシア・スマトラ島沖地震と津波による被害の
 復興支援のため、国際緊急援助隊派遣法などに基づき同国やタイに派遣している自衛隊
 を三月十日までに撤収させる命令を出した。
 自衛隊の撤収時期について防衛庁は一時、地震発生から三カ月となる三月二十六日をめ
 どとする方針だった。しかし、現地のニーズが低下していることに加え、既に米軍など
 が撤収していることなどを踏まえて前倒しした。

 インドネシアとタイでは現在、千人規模の陸海空三自衛隊の部隊が医療・防疫や物資輸
 送などに当たっている。防衛庁長官の命令を受け、まずインドネシアでの防疫活動を今
 月二十七日をめどに終了し、三月上旬に担当要員を帰国させ、主力は十日に現地を出発
 する予定。(世界日報)掲載許可
 
      Kenzo Yamaoka
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自然災害への備えは万全か   
   
 京都大学防災研究所教授 林 春男氏に聞く
態勢づくりは世界最高水準
限界知ることも大切/回避できぬ超大パワー被害

復興までの過程を理論化/研究者と実行者の壁超えて

 先日も関東地方を強い地震が襲った。未曽有の被害をもたらしたインド洋大津波や新潟
 県中越地震と同様の大規模な自然災害は、今後またどこで起こるか分からない。内外の
 備えは万全か。防災のあり方、現状などについて、京都大学防災研究所の林春男教授に
 聞いた。

 (聞き手・池田年男・世界日報)掲載許可

 〇――〇

 ――日本の防災システムの現状をどう見るか。

 まずはっきりしておきたいのは、日本の防災態勢を過小評価する向きがあるが、そうい
 う認識は改めるべきだということ。世界でも一、二を争う水準にあると言っていい。一
 例として、ここ京都市の場合、水害と地震両面での防災マップを作製し、保存版として
 全市民に届けて啓発している。それだけでも大変な手間と経費がかかる。

 しかし、市民の側がそれをどれだけ役立てているかとなると、その点は心もとない。六、
 七割はもう捨てられてしまったことだろう。それが国民の防災レベルを象徴しているよ
 うな気がする。

 市民は、行政なり防災機関が何とかしてくれると思い込んでいる。行政機関は何もかも
 できるはずがないのに、自分たちに限界があることをちゃんと言わない。だから、結果
 としてどちらも無責任な形になっていく。マスコミなどは、災害が起こったら、被災者
 がかわいそうだから助けてあげなければいけない、という論調に終始する。

 生きていく上ではさまざまなリスクがあるのだから、それに対してどのように備えてい
 くかは基本的には個々人が考えるべき問題だ。行政の役割は、個々の人ではできないよ
 うな規模の対策を講じたり、その成果をまとめて社会に提供したりするということにな
 る。

 災害も、人生の中で覚悟しておかねばならないリスクの一つだが、そのリスクに立ち向
 かうということについて、国民はまだあまり主体的に考えていない。そういう部分が大
 変問題なのではないか。

 日本の防災は世界でも高い水準にあると言ったが、地震が起きて建物が壊れてしまった
 あとで何をしなければいけないのか、どうすることが求められるのかということを具体
 的に考えてこなかった。そこが日本の防災上の不備な部分だとは言える。

 被害が起きないようにするというのが防災の第一の目的だが、しかし、そこにも限界が
 あると理解した上で、限界を超える事態が発生した時に誰が何をしなければいけないか
 まで考えておかないと、真の意味でのバランスのとれた防災にはならない。

 近年に入って、科学も発達し人間の力が強くなっていく中で、自然をコントロールでき
 るという思いを持つようになり、現実に小さな災害は減ってきた。そこで、もう災害の
 ことは考えなくてもよくなったと思い込んでしまったところが、失敗だったのかもしれ
 ない。

 小さな災害には耐えられるよう防災力は上がっているが、それを超えるような大きな力
 が来た時には、まさに堰(せき)を切って水が流れ出すようなものだ。その被害の規模
 は甚大で波及効果は広大、ということが現実に起こっている。

 理工学的な対策だけでは不十分だとしたら、結局は一人ひとりの心の持ちよう、生活習
 慣、社会のありようも考慮することが必要になる。防災の分野でも心理学的なアプロー
 チが重要になってくるのは、そのためだ。

 私が「被害抑止力」と呼んでいるそのレベルはおそらく世界でも一番高いと思うけれど
 も、抑止限界を超えるような大きな力に襲われた時の被害は逆にいえば、大変大きな規
 模になる。それに対して社会、あるいは一人ひとりが備えができているかどうか。

 各地で配布されているハザードマップを活用して、自分たちが今、どういう状況の中で
 暮らしているのかを知っておくことが備えの出発点になる。それは、一人ひとりが正し
 く、真剣にリスクと向かい合っていくうえでの前提だ。

 ――災害に備えたり、被害に遭ってしまったりした場合の対応として、「自助」「共助」
 「公助」の三つが大切だと言われている。

 阪神大震災以前、多くの人は災害からの復興に占める公助の割合は八割も九割もあると
 思っていたフシがある。しかし、阪神大震災では、公助の限界が露(あら)わになった。
 被災地ではお互いに助け合ったし、ボランティアも活躍した。自助、共助、公助が組み
 合わされなかったら、どうにもならないということが明らかになった。

 かつて「いのちを守る地震防災学」という本で、自助、共助、公助の比率は七割、二割、
 一割だと書いたことがある。公助はせいぜい一割くらいしかない。もっといえば、セイ
 フティーネットでしかない。自分で、あるいはお互いさまで処理できない人を救うだけ
 のものとして公助を位置付けないといけない。

 共助もそう当てにはできない。消去法でいくと分かることだが、結局、最後に頼れると
 ころは自分しかないと。だから、この三つの言葉については、「自助を覚悟する。共助
 の環境をつくる。公助を当てにしない」と読んだほうがいい。特に、都市部での災害の
 場合はそう考えるべきだ。

 〇――〇

 ――災害からの復興の主役はあくまで被災者自身だと。

 行政の責任は限られている。被災者の自助、共助を補完する役割しか担えない。行政が
 すべてを担えない以上、自助、共助、公助を上手に組み合わせて、復興を成し遂げるし
 かない。そのためには、復興という問題に対して、主体的に取り組める人材を持つこと
 が肝心だ。主体性とは、いざとなったら自分の力で事態を切り抜ける意欲と知恵のこと
 をいう。

 この点について、阪神大震災で大きな被害を受けたある市のトップは「復興にはバカモ
 ノ、ワカモノ、ヨソモノが必要だ」と言った。この場合の「バカモノ」とは、これまで
 の常識を超えた、新しい発想でものを考えることができる人。「ワカモノ」とは年齢が
 若いだけでなく、エネルギーに満ちあふれて、ばりばり仕事を進められる人。「ヨソモ
 ノ」とは、それまでのしがらみ、つまり従来の地域の約束事などにとらわれずに、大胆
 に新しいことを推進できる人のことだ。短い言葉だが、実に的を得ている。

 ――防災教育についてはどう考えるか。

 私は内閣府の防災教育チャレンジプラン実行委員会委員長も仰せつかっている。毎年、
 全国で優れた防災教育の試みをしている二十校を選んで、表彰し、サポートする活動を
 行っていて、今月二十七日には東京・大手町で、今回の成果と今後の計画の発表会を開
 く。

 それとは別に、先月、『12歳からの被災者学』という本を私たちが監修して出版した。
 いざ災害が起きてしまった時に、どういう問題がどんなふうに生じて、どう乗り越えて
 いけばいいのかを体系的に説明する必要があると考えて作った本だ。過去の災害で得た
 教訓を体系化した内容になっている。

 日本では今後三十年ほどの間に、巨大地震の発生が確実視されている。文部科学省の推
 定では、二〇二〇年から四〇年くらいの間が一番確率が高い。それを乗り切る人たち、
 中心になる人は誰かを考えると、一九八〇年代以降に生まれた人ではないか。ならば、
 彼らに自分たちが置かれている運命と、その使命を明確に理解してもらって、きちっと
 備えてもらわないといけない。国難を乗り切るための主役になる人にぜひ読んでもらい
 たい本だ。

 防災教育といっても、教えるべき中身を整備しないで、教育、教育といっても役に立た
 ない。被害が防げればそれに越したことはないが、ある程度のところまでしか抑えられ
 ない。それを超えるような強い力に対して、嫌だから見ない、という態度も理性的な対
 応といえない。

 ――今後はどういう研究に力を入れていくか。

 この研究室のミッションとして取り組むことが二つある。一つは、災害が起きてから復
 興までの過程を理論化すること。つまり、滅多に人は経験することではないが、いざ経
 験した時にできるだけ合理的に、しかも迅速に対応できれば最終的に被害を減らすこと
 は可能になるのだから、起こってから立ち直っていくまでの一人ひとり、あるいは社会
 の過程についての理論をつくろうと思っている。というのも、そういう分野の研究が今
 までほとんどなされてこなかったからだ。

 それからもう一つは、災害や防災、安全・安心の問題は、いろんな分野の知識が必要に
 なり、実際に実行する人と研究する人との協力も必要になる。そうでないと、実は上が
 らない。しかし、現状はお互いにコミュニケーションがなかなかうまくできない。そこ
 で、その壁を壊していく仕組みを考えることも重要だ。いろんな分野の知恵を実際の被
 害の軽減のために生かせる仕組みをつくる研究と言い換えてもいい。

 この二つのことをするのが私たちの使命だと思っている。

 はやし・はるお 昭和26(1951)年、東京都生まれ。京都大学防災研究所巨大災
 害研究センター教授。同大大学院情報学研究科社会情報学専攻教授。地域安全学会会長。
 内閣府の防災教育チャレンジプラン実行委員会委員長。自らこれまで2度の大断水に見
 舞われたが、太陽熱温水器で克服。寝室には編み上げ靴を置いて、いざという時に備え
 ているという。著書に『12歳からの被災者学』『阪神・淡路大震災向かい合い続けた
 10年』『いのちを守る地震防災学』『率先市民主義−防災ボランティア論講義ノート
 −』など多数。
     Kenzo Yamaoka

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