1893.ライス外交について



ブッシュ演説とライスの演説がほとんど同じである。その考察
                     Fより

新国務長官のライス氏の言っていることは、ブッシュ演説と同じで
ブッシュ大統領の演説はライスさんが下原稿を作っているような感
じである。ということは、米国ブッシュ政権の中東民主化は本気で
ある。ライス国務長官は研究する必要がある。

1月30日のイラク選挙は成功としているし、クルド人自治区、シ
ーア派地域は完全に民主化ができそうである。米国がこのため、イ
ラク政府と共同で民心を掌握できそうである。そして、スンニ派地
域だけが問題であることは判明した。しかし、米軍はそのスンニ派
地域の都市からは撤退するとしている。この部隊はシリア国境に展
開するようだ。

ということは、シリア、イランなどへの戦争拡大も視野に入れて、
世界動向を見る必要になっている。ライスが欧州訪問で英独仏に行
くが、この目的は欧州が提案しているイラン核問題の平和的な解決
の期日を切ることであろう。また、シリアへの侵攻を伝えるために
行くように思う。

ライス国務長官は、対ソ強硬論者である攻撃的なリアリストとして
有名であり、その理論をイスラム国家にも適用可能と信じている。
しかし、米国の真の目的は、中東の石油支配であることも見えてい
る。米国は昔から戦略を立てて、成功するまで20年程度のプログ
ラムを実行する。ブッシュが911以後、対テロ戦は20年以上の
戦いであると言ったが、その通りに実行するのである。そして、世
界のすべてを米国の思い通りにするのが覇権国の特権である。銃か
ら民主主義を作ろうとしている。米国人の犠牲には、今までの8倍
の見舞金を出しても遂行するようである。

このターゲットであるイランや米国支配地の南米ベネズエラやハイ
チに手を出す中国に米国は日本を本格的に対決させるぞと脅してい
る。中国は米国の支配地域を認識していない。米国は北中南米がテ
リトリーである。欧州はアフリカがテリトリーである。これに中国
は気が付かないのか自国のテリトリーが確立していないために、無
用な摩擦が起きている。アジアでは日本とテリトリー獲得競争をし
ている。しかし、中国は石油などの資源争奪戦に参加して、米国や
欧州とどこかで激突する運命にあるようだ。

このことを米国も気が付いている。このため、イスラム諸国の民主
化ができた後に、中国が米国に資源争奪戦で立ち向かうと、米国は
中国と敵対して、米国は中国排除となる可能性があるが、今は米国
としては中東で手が一杯である。米国は中国と今問題を起こそうと
していない。

日本が感情的な反中になったので、それなら日本が中国と戦ったら
ということで、米国は真剣ではなく、日本応援をした。このため、
日本の反中気分が無くなると、米国の対中国の構えを下ろしている。

しかし、ライス国務長官になり、本格的に中東民主化と言うハルマ
ゲドンを遂行するようだ。
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<米国務長官>「世界を変える外交」を提唱

 ライス米国務長官は31日、就任後初めて国務省職員との対話集
会を行い、米国の価値観に合わせて世界を変えるという外交方針を
打ち出した。ブッシュ大統領が「世界の圧政に終止符を打つ」と宣
言したのと同一路線上の姿勢と言える。内政干渉の危険が高まるだ
けに、この外交方針には紛争の原因になりかねない側面がある。
(毎日新聞) - 2月1日22時38分更新
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ライス米国務長官、対独関係修復を宣言・首相と会談 

 【ベルリン4日共同】ドイツを訪問したライス米国務長官は4日、
ドイツのシュレーダー首相との会談後、記者会見し「今こそ米独が
直面する課題で協力すべき時だ」と述べ、イラク戦争で対立した両
国が関係を修復、イラク政策などで協力していくことを宣言した。 

 長官の訪問は23日のブッシュ大統領訪問の地ならしも目的。イラ
ン問題などを含む緊密な協力関係構築への第一歩となった。 

 会見で長官は、イランの核開発疑惑について「イランは国際的規
則を順守する義務がある。欧州各国と協力、協議しながら順守を求
めるメッセージを送っている」と述べ、同問題で欧州と歩調を合わ
せる意思を示した。長官は欧州歴訪最初の訪問地ロンドンで、イラ
ンへの軍事行動について「現時点では議題にない」としていた。 

 シュレーダー首相も「イランが核兵器開発能力を持つべきではな
いことで国際社会は一致している」とした上で、対イラン軍事行動
の可能性を排除していない米国の姿勢について「欧州の外交活動に
悪影響は与えない」と理解を示した。 (08:26) 
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イランは「忌み嫌う」対象・ライス国務長官(nikkei)

 米国のライス国務長官は3日夜(日本時間4日早朝)、欧州・中東
外遊の最初の訪問地であるロンドンに到着した。ライス氏は当地に
向かう機中で同行記者団と懇談し、イラン政府の自国民に対する人
権侵害は「忌み嫌うべき対象だ」と語り、異例の強い表現で非難し
た。イランの核開発問題は欧州各国首脳との主要議題で、会談を前
にイランとの対決姿勢を鮮明にした。

 ライス氏はイランの指導部について「選挙で選ばれたわけでもな
い宗教指導者が政権を運営することは、誰が見ても国民にとって良
くない」と指摘。「われわれはイランに対して、彼らの行動が国際
社会の望む方向と逆行しているとはっきり伝えている」と述べた。

 イランの核問題を巡っては英仏独の3カ国が外交解決を目指してイ
ランとの交渉を進めている。ブッシュ米大統領は欧州の外交努力を
尊重する考えを示しているが、米側の交渉参加は拒否。2日の一般教
書演説でイランを「世界第一のテロ支援国家」と表現した。
(ロンドン=森安健) (16:01) 
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EUが対中武器禁輸解除すれば中国に誤ったシグナル=米国務長官
  
 [ワシントン 1日 ロイター] ライス米国務長官は1日、欧
州連合(EU)が、1989年の天安門事件後に講じている対中国
武器輸出禁止措置を解除すれば、中国の人権問題に誤ったシグナル
を送るものだとの認識を示した。 
今週の欧州訪問を前にロイター通信などとのインタビューで述べた
。EUではここ数カ月、対中国武器禁輸措置の解除について激しい
議論が戦わされている。 
長官は「天安門事件への懸念から禁輸措置が講じられた状況で、人
権に関して誤ったシグナルを送らないよう注意すべきだと言わなけ
ればならない」と述べた。
(ロイター) - 2月2日12時15分更新
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米軍、イラク部隊の訓練強化へ=兵力数千人の配置換え計画−NY紙

 2日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、米軍当局が
イラク駐留米軍のうち数千人を戦闘任務からイラク部隊の訓練任務
に配置換えする計画だと報じた。 
(時事通信) - 2月2日19時1分更新
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イラク選挙は「期待以上」 ライス国務長官が認識示す(ASAHI)

 ライス米国務長官は30日、同日実施されたイラク国民議会選挙
について「ブッシュ大統領は、イラク国民にとって偉大な日だ、と
語った。大統領は非常に強く励まされたと感じている」と述べ、選
挙は成功したとの認識を示した。米FOXテレビなどのインタビュ
ーで語った。 

 ライス氏は、一部地域で選挙実施を断念したことなどを念頭に「
完全な選挙とは言えない」としながらも「期待以上にいい形で進ん
でいる。サダム(フセイン元大統領)が独裁者だった3年前にはだ
れも予想できなかった」と指摘、イラクの民主化に向けた「前向き
の進展」だとして意義を強調した。 (01/31 01:06) 
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ライス米外交/モラル重視し圧政終結目指す   
   
  ライス米新国務長官の「モラル(道義)外交」に注目したい。
 米評論家のカル・トーマス氏によると「自由の拡大こそ米国の使命」と説いたブッシュ
 大統領の二期目の就任演説に大きな影響を与えたのは、旧ソ連の反体制運動家のシャラ
 ンスキー氏の近著「民主主義の事例」だった。

人権と民主化が戦略の柱

 シャランスキー氏は同書の中で「私の確信はすべての人は自由を望んでいることだ。自
 由の拡大は世界をより安全にする。米国を主導国とする民主主義諸国は自由の世界的拡
 大の重要な役割を担っている」と述べた。同大統領もライス氏も熱心な愛読者で、この
 発想に共鳴している。

 ライス氏の原体験はアラバマ州での黒人差別だった。友人たちがバーミングハムの教会
 爆破事件で虐殺された。それに加えての9・11同時多発テロだった。同氏は一昨年二月
 六日の演説で自らの体験を基に「悲劇が自由の重みを私に知らせた。神は全世界の人々
 に自由の権利を与えた」と述べたが、この演説にブッシュ大統領が聴き入っていたとい
 う。

 カル・トーマス氏は自由への信仰こそブッシュ外交の神髄だと指摘するとともに、その
 最前線に立つライス外交をパウエル前長官の「世俗外交」との対比で「モラル外交」と
 表現している。

 ライス長官の指名公聴会で注目されたのは、価値観の重視だった。例えば中国について、
 クリントン前政権は「戦略的パートナー」と友好国扱いしていたが、ライス氏は「価値
 観にかなりの相違がある」と指摘し、人権問題などでの抑圧的な政策を看過しない姿勢
 を明確にした。

 さらに同長官は「圧政の前線」として、キューバ、ミャンマー、北朝鮮、イラン、ベラ
 ルーシ、ジンバブエの六カ国を名指しして批判した。ブッシュ大統領の「自由ドクトリ
 ン」を念頭に人権と民主化を外交戦略の柱にする意思を明確にしたものといえる。

 さらに、「二重基準」として批判されていた中東の専制諸国への外交だ。対テロ戦で協
 力関係にあるパキスタンやサウジアラビアなどには人権上の問題があるにもかかわらず、
 これを無視してきた。しかしブッシュ大統領は「中東における自由の欠如に目をつぶっ
 てきたが、われわれの安全につながらなかった。結局のところ、自由を犠牲にしても安
 全を手に入れることはできないからだ」と述べ、中東全域への自由の拡大へと転換する
 方針を明らかにしている。便宜的協力を反省したわけだ。

 ライス長官の「モラル外交」の根底にあるのは、人間の尊さの根拠として「人間のみに
 自由が与えられているのは、神の似姿として人間が創造されたからだ」という宗教的信
 念をブッシュ大統領と共有していることだ。その点で、人間を存在の中心とみる世俗的
 な人本主義に立つ民主党の現実外交とは根本的に異なる。

 各国とも価値観とは関係なく、その時のそろばん勘定で合従連衡的に国際関係を処理し
 ていこうというキッシンジャー流の外交が主流だ。日本にも米国から距離を置き、米国
 には「中国カード」を、中国には「米国カード」を使えるようにする「戦略的プラグマ
 ティズム外交」を主張する向きがある。

背景にある宗教的信念

 だが、ブッシュ・ライス外交は別だ。価値観を重視し、その背景には「世界における圧
 政の終結を究極的な目標とする」という宗教的、思想的信念があることを忘れてはなら
 ない。日米協力関係は米外交の理解から始めるべきである。世界日報 掲載許可
       Kenzo Yamaoka
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ウルフォウィッツ氏の次なる標的   
   
 フセイン打倒の米国防副長官留任/目論見通りの対中東構想が進展
獨協大学教授 佐藤 唯行
イスラエル支持派として頭角

 第二次ブッシュ政権が発足する中、ウルフォウィッツ米国防副長官が留任した。

 フセイン政権打倒後のイラク占領統治での失策の責任を追及する声は連邦議会で根強い
 が、彼が長年にわたり推進してきた対中東構想は大旨において彼の目論見通りに進展し
 てきたといえよう。

 慎重かつ冷静な学究出身の政策立案者である彼は、イスラエルに寄せる自らの熱い想い
 をこれまで公言したことはない。けれどポーランド系の亡命ユダヤ難民として、生涯を
 通じて熱心なシオニストであり続けた父を持ち、またイスラエル人と結婚し、イスラエ
 ルに在住する実の姉を持つ彼は、紛れもなくイスラエルの安全保障に心を砕き続けた人
 物といえよう。

 八〇年代初頭にはレーガン政権の国務省政策企画局長として、アメリカ製の空中警戒管
 制機(AWACS)をサウジアラビアに売却する計画に異議を唱えた。サウジを通じて
 AWACSの機密が、他のアラブ諸国に漏れれば、イスラエルの安全保障が脅かされる
 と考えたからである。またパレスチナ解放機構(PLO)との交渉開始に向かおうとす
 る同政権内の動きを抑えるべく努力を傾けたことも知られている。彼はレーガン政権内
 部におけるイスラエル支持派の最右翼であった。

 続くブッシュ(父)政権で国防次官を務めた彼は九〇年八月、イラクによるクウェート
 侵攻に際しては、イラクと戦争をせずとも経済制裁や封じ込め戦略だけで充分だとする
 政権幹部に対して、周辺国(イスラエルをその中に含む)に軍事的脅威を与えぬよう、
 武力行使によりイラクを弱体化させねばならぬと強く主張した。九一年一月、湾岸戦争
 開戦直前には彼はイスラエルのイツハク・シャミル首相を訪ね、開戦後、もしイスラエ
 ルがイラクのミサイル攻撃を受けても、決して反撃せず、報復はアメリカ軍に任せるよ
 う説得する大役を果たした。この戦争の対立図式の中に「イラク対イスラエル」という
 要素が持ち込まれてしまえば、アメリカを盟主とする多国籍軍の軍列に加わっていた少
 なからぬアラブ諸国の反発を招くことは必至と思われたからである。

同時テロでイラク攻撃論主張

 更に二〇〇一年九月十一日、全世界を震撼させたテロの四日後、キャンプデービッドで
 の閣僚会議の席上、アフガニスタンのみならず、イラクも同時に攻撃せよと叫んだのが、
 他ならぬウルフォウィッツであった。(これに反対したのが国際協調派のパウエル率い
 る国務省グループであった。)

 二〇〇四年七月に発表された米独立調査委員会が作成した「9・11テロ調査報告書」
 によればウルフォウィッツは「テロの背後にサダム・フセインが存在する可能性は無視
 しがたい」と進言し、イラク攻撃を勧めていたことが明らかとなった。二〇〇三年三月
 二十日に始まるイラク戦争は彼を筆頭とするユダヤ人系ネオコンによる数々の進言によ
 り実現したという説も米政界の消息筋の間で取りざたされているほどである。

 このようなうなウルフォウィッツが次に狙う標的は果たしてどこなのであろうか。

 長年にわたり、テロリストを支援してきたリビアは昨年十一月にその化学兵器を破棄。

 十月にはかつて国外追放に処したユダヤ人の里帰りを独裁者カダフィ大佐が許可し、ユ
 ダヤとの和解の途を歩み始めている。また反米・反イスラエル武装組織アルカイダの本
 拠となっていたアフガニスタンも今日では彼らは一掃され、昨年秋に「民主主義的な」
 選挙を実施するほどの変貌を見せている。このアルカイダをかくまい軍事訓練所を提供
 してきたタリバン政権を認証していたパキスタンも今では「テロとの戦い」でアメリカ
 を助けている。更に、これまでイラクへの武器供与、反イスラエル武装組織ヒズボラへ
 の支援を行ってきたシリアの独裁者アサド大統領も二〇〇三年四月以後はアメリカに恭
 順の姿勢をとるほどに様変わりを見せている。

イランの核で再び出番あるか

 この他のアラブの大国ではエジプトとサウジは民衆レベルの反米・反イスラエル感情は
 根強いが、政府それ自体は親米で、イスラエルと事を構えるつもりはさらさらない。ト
 ルコに至っては昔からのイスラエルの同盟国である。

 こうした中、依然として、今日でも「米・イスラエル同盟」に脅威を与え続けているの
 が、武装組織ヒズボラの後盾となり、また核弾頭のミサイル搭載技術を開発中との疑惑
 を持たれているイランである。

 しかし石油大国イランはイラクなどより国際社会との結びつきは強く、武力行使につい
 て国際社会の同意を得ることは一層困難といえよう。米外交の舵取り役、ライス新国務
 長官が、イランに核ミサイル開発を断念させるための武力行使以外の有効な選択肢を打
 ち出せなければ、対イラン強硬派のウルフォウィッツに出番が訪れるであろう。
  世界日報  掲載許可
  
       Kenzo Yamaoka
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ブッシュ再選後の米欧関係   
   
 仏独が対抗意識強める可能性
 欧州連合(EU)諸国はブッシュ米大統領の再選を表面上歓迎しつつも、「さらに四年
 間」単独主義的な米国と付き合うことに不快感を抱いている。ブレア英首相は今後も米
 欧間の橋渡し役を続けるつもりだが、イラク復興、中東和平、地球温暖化などの国際的
 諸問題での両者の意見調整は容易でない。
(ロンドン・行天慎二・世界日報) 掲載許可

イラク、中東和平、地球温暖化などで対立
橋渡し役に徹するブレア英首相 
 四、五の両日にブリュッセルで開かれたEU首脳会議(欧州理事会)は議長総括声明の
 中で米大統領選挙結果に触れ、「欧州理事会はブッシュ米大統領の再選を心から祝す。
 ……EUとその加盟国は法治を推進し、公正で民主的かつ安全な世界をつくる努力(多
 国間機関を含めて)を結束するために、ブッシュ大統領の新政権と密接に協力すること
 を期待する」と述べた。
 だが、こうしたEUの儀礼的な統一見解とは裏腹に、フランス、ドイツなどイラク戦争
 反対に回った国々はブッシュ再選を本音では歓迎していない。サミットの場で、シラク
 仏大統領は「強い米国政治の確立によって当然に、欧州は政治的経済的に強化する必要
 がある」と語り、EUが米国の対抗勢力になるべきだとの見解をあからさまにした。今
 回の米大統領選挙に関して、欧州諸国の多くは国際協調主義を訴えた米民主党のケリー
 候補の当選を望んでいたと伝えられている。米国と「特殊な関係」にある英国でも与野
 党の多くの議員、そして一般世論もブッシュ候補よりもケリー候補当選を期待していた。

 一方、対テロ戦争をブッシュ大統領と二人三脚で進めてきたブレア首相にとって、ブッ
 シュ再選は英米同盟を堅持し、イラク参戦を肯定する上からも好ましいものであるが、
 同時にギクシャクしている米欧関係の橋渡し役として一層腐心しなければならないこと
 を意味している。

 同首相は四日、英紙タイムズとのインタビューで、「ブッシュ大統領は四年間いること
 になる。一面では、ある人々は(これを)否定している。選挙が行われ、米国は意思表
 示した。その他の世界は聞かなければならない」と語り、二期目のブッシュ政権とうま
 く付き合っていくべきだと主張した。

 ブレア首相はブッシュ新政権と協力して、イラクの復興と民主化、中東和平プロセス活
 性化、地球温暖化対策、アフリカ大陸の貧困問題などの国際的諸問題解決のために努力
 する意欲を示している。特に、イスラエルとパレスチナ二カ国共存を目指す「中東和平
 ロードマップ(行程表)」を推進するため、ブッシュ大統領に積極的にコミットするよ
 う促したい意向だ。

 他方、同首相は三日のブッシュ祝勝声明の中で「欧州と米国は新たに同盟関係を構築し
 なければならない」と述べて、ブッシュ新政権とEU諸国の関係改善の必要性を強調し
 た。同首相は今後も米欧の橋渡し役に徹するつもりだが、外交政策上における米欧間の
 意見調整は容易でない。

 イラク問題では戦争に反対した仏独が復興援助の現段階でも平和維持軍の派遣を拒否し
 ており、EU内での意見統一はできていない。EUサミットに招待されたイラク暫定政
 府のアラウィ首相はこうした仏独の姿勢について、「傍観者の役割に満足している国々」
 と形容して、不満をあらわにした。中東和平プロセスに関しては、米国がイスラエル寄
 りなのに対しEUはパレスチナ寄り。EUはイスラエルのシャロン首相が進めているガ
 ザ地区撤退計画を歓迎しつつも、パレスチナ側との話し合い抜きの一方的行動には反対
 している。地球温暖化問題では、EU(英国も含めて)は米国と対立したままであり、
 妥協の余地を見いだせないでいる。アフリカの貧困解決に関して、米欧は共通認識に立
 っているものの、エイズ防止(コンドーム配布かセックス回避か)など具体的な援助方
 法をめぐって意見の相違がある。

 ブレア首相は「二期目の大統領は、欧米を一体化し得ると希望する議題を発展させる余
 地とエネルギーを持っている」と語り、米欧関係改善に楽観的見方をしているが、仏独
 スペインなどの「古い欧州」はブッシュ新政権に対する対抗意識を強めている。
       Kenzo Yamaoka
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ベネズエラ・コロンビア問題、待たれる仲介作業   
   
 ゲリラ幹部拘束めぐり衝突 
 南米コロンビアの治安当局が先月、隣国ベネズエラ領内で極左ゲリラ幹部を拘束したこ
 とが、両国間に外交衝突を引き起こしている。ベネズエラ政府が「主権侵害だ」と謝罪
 を求めれば、コロンビア政府は「テロリストに屈しない権利がある」と双方の意見は対
 立、緊張緩和に向けてブラジルや米州機構(OAS)など第三者による仲介作業が望ま
 れている。
 コロンビア国防省は先月十三日、同国最大の極左ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC)
 のロドリゴ・グランダ幹部がベネズエラの首都カラカスに潜伏しているという情報を基
 に、“賞金稼ぎ”(ベネズエラの警察官)に同幹部の拘束を依頼、コロンビア国境近く
 の街で現金(約一億円)と引き換えに同幹部の引き渡しを行った。

 グランダは、FARCの外交担当幹部として知られていたが、コロンビアの治安関係者
 は、同幹部が麻薬・武器売買にもかかわっていたとみている。

 拘束当時、同幹部は首都カラカスで国際会議に出席していたとも伝えられており、カラ
 カスに長期滞在していることはほぼ公然の事実だったという指摘もある。

 グランダ幹部の拘束に関し、コロンビア側は当初、ベネズエラ国境に近いコロンビア側
 の町で拘束したと発表していたが、後にベネズエラ領内で拘束してコロンビア領内まで
 移送していたことを明らかにした。

 これに対し、ベネズエラの左派系チャベス大統領は今月十四日、「事前連絡もなく主権
 侵害だ」と批判、コロンビア大統領からの直接謝罪があるまでコロンビアとの二国間協
 定と貿易関係を凍結すると発表、駐コロンビア大使を召還した。

 チャベス大統領の批判に対して、コロンビアのウリベ大統領は「コロンビアにはテロリ
 ズムに屈しない権利がある」と主張、逆に「国連加盟国は、テロリストに対して避難場
 所を提供することを禁止しているはずだ」とした。

 両国間の衝突に対して、米政府は駐ベネズエラ米大使を通じてコロンビア政府への支持
 を表明、「コロンビア革命軍をテロ組織と認めるか」とベネズエラ政府を追及している。
 コロンビアは南米きっての親米政権で知られており、米国から多大な財政援助を受けて
 いるが、反米派として知られるチャベス大統領と米政府は数年来、米国の外交政策など
 をめぐって衝突してきた。

 米国務省は今週に入り「極左ゲリラ幹部がベネズエラ領内で自由に活動し、ベネズエラ
 のパスポートを所持していた」ことに関する説明をベネズエラ政府に求めており、これ
 に対し、チャベス大統領は、「米政府がコロンビアによる極左ゲリラ幹部拘束を背後で
 画策していた」と逆に非難した。

 左派系チャベス大統領に関しては、ライス新国務長官も場合によっては圧力を掛ける必
 要があると就任に先立ち言明していた。(サンパウロ・綾村 悟・世界日報)掲載許可
      Kenzo Yamaoka
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FBI、国内の敵性国家情報収集強化   
   
 混乱する米情報機関
「CIAの領域侵す」と一部諜報員は反発
 9・11同時テロ以来、米国の諜報(ちょうほう)機関の不備が指摘され、情報機関の改
 革が行われようとしているが、その過程で米国内の諜報活動を扱う連邦捜査局(FBI)
 が敵性国家への諜報活動を扱う米中央情報局(CIA)の活動分野に深く踏み入る動き
 を強め、CIAの一部諜報部員は反発を強めている。
 (ロサンゼルス・宮城武文・世界日報)掲載許可

 FBIとCIAはそれぞれ諜報活動の対象範囲を米国内と海外という形で領域分担して
 きたが、九三年の世界貿易センター爆破事件で、国外のイスラム過激派勢力が関与した
 ことが明らかになり、米国内と国外の情報をそれぞれの所轄の機関が占有するシステム
 の弊害が指摘されてきた。この事件ではFBIは「国外で計画されたテロ計画には責任
 がない」とCIAをやり玉に挙げ、CIAは「米国内の捜査はFBIに責任がある」と
 応酬した。

 しかし、この事件以後もFBIとCIAの死活的な情報の共有や協力は行われることな
 く、二〇〇一年九月十一日、米史上最悪の対米同時多発テロ事件の遠因をつくってしま
 った。

 こうした失敗にかんがみ、9・11テロの独立調査委員会は、情報機関を統括する国家情
 報局長の設置などを盛り込んだ改革案を提示、現在、そうした改革が具体的に実行に移
 されようとしている。

 その一環として、二期目のブッシュ政権で内閣入りしたロバート・ミュラーFBI長官
 は、ポーター・ゴスCIA長官との協議を求め、海外テロリストの情報などの共有、さ
 らに米国内でCIAが敵性国家についての情報収集のため米国内で行っている諜報活動
 への関与を要求しているという。

 歴史的にFBI要員とCIA要員はお互いに不信感を抱いており、情報の共有や活動の
 協力は極めて困難なことは周知の事実だ。形としては要員の強制的な交換人事が行われ
 たりしているが、七八年から八七年までFBI長官を務めたウェブスター元長官が八七
 年から九一年までCIA長官を務めるなど、人員数、予算、それに議会や政府の肩入れ
 からしてFBI主導で行われるケースが多い。

 今回も、FBIは大幅な人員増とともに情報活動の強化を図っており、CIAが米国内
 で行っている情報活動にも関与する動きを強めている。例えば、南カリフォルニアでは、
 FBI要員が宗教間の対話・交流を図るとして、イスラム教指導者やキリスト教、ユダ
 ヤ教指導者との集会に積極的に参加している。宗教間の調和による平和の創出という大
 義名分はあるが、イスラム過激派の情報収集という目的を念頭に入れたものであること
 は間違いないだろう。

 こうしたFBIの方針の根拠は、ブッシュ大統領が〇三年に出した大統領行政命令に基
 づいている。それによると、FBIは「米国内で外国の情報を収集できる」とされてい
 るが、それは「大統領が指名した情報機関の高官からの要請がある場合に限る」とされ
 ている。

 しかし、実際にはFBI内部には「テロ取り締まりのためには自分たちは自由に情報収
 集ができる」と考えているという。このため、CIAの諜報部員の中には「FBIの介
 入はCIAの生存にかかわる問題だ」と危惧(きぐ)する声も強まっている。

 最近の報道で、米国防長官が内部に独自の情報機関を組織し、極秘に活動を行っていた
 ことが明らかになっているが、こうした動きはすべてCIAの手足を奪うものになって
 いる。CIAは往年の影響力を失ってきており、特にクリントン前大統領の政権下では、
 同大統領がまったくCIAの活動に関心を払わなかったため、士気の低下、有能な人材
 の流出が相次いだとされている。ブッシュ政権になってもそうした後遺症は残っており、
 中堅の有能な諜報部員や幹部がCIAを続々と辞めているとの報道が相次いでいる。

 情報が国の安全を左右することは言うまでもない。米国は情報機関の大改革に迫られる
 と同時に、情報機関は未曽有の混乱状態に陥っているのが現状だ。

     Kenzo Yamaoka

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