1879.ブッシュ2期目の政策



ブッシュ再選による2期目の政権が始動する。その検討。 Fより

ブッシュ政権の2期目は、自由を拡大し圧制を終焉させるという構
想を掲げたが、この対象地域を中東としている。東アジア、特に北
朝鮮、中国、ミャンマーの圧制は対象外とした。

ここに米国の苦悩を見ることができる。北朝鮮との対決には韓国の
反対が確実で、かつ中国と対決すると米企業が発展著しい中国から
締め出されることになる。もう1つ、中国にある米国債を売るぞと
中国銀行総裁から脅されて、米国は当面、中国と事を構えない方向
に軌道を修正した。基軸通貨であるドル防衛の方を優先した。

中国の崩壊を国粋主義者は言い立てるが、この言い方は過去20年
以上も同じことを言ってきた。しかし、中国は崩壊していないし、
20年前より発展している。20年前に、1つが軍閥が分裂し、中
国は複数の国に分裂すると言い立てた。もう1つが農村と都市の経
済格差により、暴動が起きて分裂すると。

そして、今も20年前と同じことを言っている。20年前は騙され
たが、もうこのような国粋主義者の言を信じない。中国を知ったこ
とで、このような問題で、中国が分裂することはないと分かった。
しかし、まだ騙される人がいる。もういいかげんに、中国分裂説を
止めるべきだ。

中国へ進出した企業の問題点である官僚の汚職は、今も続いている
。これは修正させるべきであると思うが。特に地方が激しい。中国
の本当の問題に焦点を当てて、解決させることが必要で、中国崩壊
説は進出企業にとっても有害である。横に逸れた。

米国は当面、中東に焦点を当てることになる。ネオコンは中東戦争
拡大に賛成である。特にイランの核開発には危機感を感じている。
そして、当面危機的状況にある北朝鮮は手打ちを行うストーリーが
出来ている。このため、中東問題を米国は解決することになったよ
うだ。ニ正面作戦は今の米国でもできない。

チェイニー米副大統領がラジオで、イラン攻撃の火蓋はイスラエル
が引くと言っている。MD(ミサイル防衛)が有効なのは、ミサイ
ルが打ち出された直後に発見して迎撃するしかない。この発見には
衛星写真等で該当位置を確定しておいて、その地域から打ち出され
るミサイルを打ち落とすことである。このためには、イスラエルは
イラクに基地を必要としている。既に衛星をイスラエルは打ち上げ
ているので、後は、ミサイルを初速の段階で迎撃することである。
このためには、イラン近傍から迎撃ミサイルを打ち出す必要がある。

しかし、そのイラクが今後も確保できるがどうか、分からなくなっ
ている。米国は選挙終了後、撤退するはず。このままの状態である
と泥沼化して展望が開けないし、確保したいのは親米クルド人が住
む地域である。この地域が石油産出地域であるから、ここだけ確保
する意向のようである。

シーア派のシンターニ師はイラン・シーア派から送り込まれたイラ
ン人であるから、選挙で圧勝して政権を取れた後は反米になるに決
まっている。イラク政府自体が反米になる。このため、イラクは分
裂することも決まっている。クルド人だけが親米国家として米軍が
駐留して、石油権限も米企業が取る事になる。

このため、イラクのほとんどから米国は撤退になる。しかし、それ
ではイスラエルはイランからの核ミサイルに脅える事になる。
このため、イスラエルが核施設を爆撃する可能性は高いということ
である。しかし、イランの各施設はそのほとんどがロシアからの技
術移転でできている。

ロシアは、外貨獲得のためにイスラエルの動きを警戒している。ロ
シアはイスラエルにユダヤ人を送り込んでいる。この中には、ロシ
アKGB要員もいるために、イスラエルの動きが手に取るように分
かる。このロシア系ユダヤ人たちがシャロンの支持母体であるから
余計である。

このロシアを国内問題で締め付けようとして、ユダヤ人たちが、優
遇制度廃止に付け込んで、ロシアを不安定にしている。これに対し
て、プーチンはユダヤ財閥を徹底的に締め上げている。この戦いと
中東情勢を関係して見る必要があるのです。

そして、イラン、ロシア、中国の反米、反イスラエル連合が中東で
も出来ている。イランの石油開発に中国石油が、どんどん進出して
いる。日本が獲得したアザデガン油田開発の権利を奪い取ろうとし
ている。

拡大中東戦争になれば、ハルマゲドンに近くなり、ブッシュの支持
基盤である福音派の支持を受け続けられるし、イラクから撤退すれ
ば、福音派の信者を犠牲にすることが少なくなる。このため、東ア
ジアの問題である中国の対米弾道ミサイルは台湾・日本のイージス
艦で発射直後に発見して、SM−3迎撃ミサイルで打ち落とすこと
したようである。

このため日本とMD研究を本格化するが、軌道に乗ったミサイル迎
撃を諦めた。これが60億ドルの研究費削減の理由である。このた
め、米国は日本が中国からのミサイル攻撃抑止に重要な同盟国にな
ったのです。そして、その日本やグアムに米本土から司令部を移し
始めた理由なのです。10年後の敵である中国警戒はするが、当面
問題を起こさないようである。米中両国は、雌雄の決着を先延ばし
にしたようだ。
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ブッシュ米大統領の「自由実現」演説、対象は中東

 【ワシントン=貞広貴志】ブッシュ米大統領は22日放送のラジ
オ演説で、20日の就任演説で提唱した「自由を拡大し、圧政を終
わらせる」構想の主な対象が「拡大中東地域」であることを明らか
にした。

 大統領はラジオ演説で、米国の安全保障が海外の国々での自由実
現にかかっているとの認識を改めて示した上で、「拡大中東地域で
自由と希望、民主主義を促進し、テロの素地となる絶望や無力感、
怒りを打ち砕こう」と述べた。

 就任演説では、人々の自由を阻害している「圧政」がどの国・地
域を指すのか、具体的な言及はなかった。この日のラジオ演説は、
ブッシュ政権が、30日に国民議会選挙の行われるイラクを含む中
東地域での自由・民主化実現を、優先課題にすえていることを示し
た形だ。
(読売新聞) - 1月23日0時21分更新
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イスラエルはイラン核施設攻撃の恐れ=米副大統領が懸念表明
[AFP=時事] 2005.01.21

【ワシントン20日】チェイニー米副大統領は20日、米MSNB
Cテレビとのインタビューで、イランは世界の問題国のトップに挙
げられて当然だと述べるとともに、イスラエルがイランの核計画を
つぶすために攻撃をかける恐れがあると指摘した。チェイニー氏は
、イランがイスラエルの破壊を政策目標として公言していることを
考えれば、イスラエルが先制攻撃に出るのはあり得ることだと述べ
た。

同副大統領はイランの核計画に強い懸念を表明した。イランは、自
国の核計画は民生用の発電が目的だと主張しているが、米政府は原
子力発電を隠れみのにした核兵器開発計画だと非難している。ただ
しチェイニー氏は、米国がイランに対して軍事行動を起こす可能性
については否定的な見解を示し、外交で解決するのが最善だと述べ
た。

チェイニー副大統領は同日、ブッシュ大統領に先立ち、ワシントン
の議事堂前の階段で2期目の就任宣誓を行った。
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アザデガン油田:外務省vs経済産業省 2003/07/01 09:12 

 期限切れ後も交渉継続へ イラン最大級の油田開発

 【テヘラン30日共同】国営イラン石油公社傘下の石油開発技術
会社のアブルハサン・ハムシ社長は30日、記者会見し、イラン最
大級のアザデガン油田の開発をめぐる日本側との交渉期限を同日迎
えたことを明らかにした上で「今後も交渉を継続し、必ず合意に達
する」と述べた。交渉妥結の時期についての見通しは示さなかった。
 同油田の開発については、6月28日付の英紙フィナンシャル・
タイムズが、イランの核兵器開発を懸念する米政府が、計画から撤
退するよう日本側に圧力をかけていると伝えていた。
 石油開発技術会社は同油田に関するイラン側交渉団の1員。交渉
遅れの理由について、ハムシ社長は「油田の埋蔵量が当初に比べ増
加したため、日本側が開発について新たな提案をした」と説明。
「日本側からは米国の圧力は感じられなかった」と述べた。
 同社長によると、交渉期限切れに伴い、イランが日本に与えてき
た優先交渉権も失効するが、イラン石油省があらためて優先交渉権
を付与するとみられる。
 アザデガン油田はイラク国境に近いイラン南西部に位置。確認埋
蔵量は260億バレル。日本側企業は国際石油開発(旧インドネシ
ア石油)や石油資源開発。アラビア石油がサウジアラビアで持って
いたカフジ油田の権益が2000年に失効したため、新たな「日の
丸油田」として期待されている。            (了)

(c)共同通信社
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外貨準備高「多すぎる」、中国人民銀行総裁が警鐘
FujiSankei Business i. 2005/1/21 

中国人民銀行(中央銀行)の周小川・総裁は1日、金融経済をテー
マにした会議で講演、中国の外貨準備高が多すぎるとの見方を示し
た。周総裁が外貨準備高について見解を表明したのは今回が初めて
。国際金融報など各紙が伝えた。中国の外貨準備高は2004年末
、6099億ドル(約62兆8197億円)に達し、前年同期に比
べ2067億ドル、51・3%増と大幅に拡大。 

 周総裁は「外貨準備高の伸びは、対外貿易額の拡大、外資導入や
一部の短期外債などが要因」と分析。その上で、外国企業が中国に
投資した資金はいずれ回収され、短期外債も償還が必要となると指
摘し、外貨準備高の減少が中国経済に与える影響の大きさにも配慮
しなければならないと警鐘を鳴らした。 

 また周総裁は外貨準備高の適正水準について、「かつては3カ月
分の輸入額といわれていたが、1997年のアジア金融危機後は半
年分の輸入額が妥当な水準だとされている」としながら、「これも
本当に適正な水準とはいえない。輸入の伸びが前年比30%を超え
る状況では準備高は判断が難しい」と述べた。国内外の資本の流動
など複雑な要因がからみあっており、中国の通貨政策にも影響をも
たらすと分析した。 

 さらに、外資導入にともなう外貨建て資本の流入が準備高を押し
上げている事実を指摘。「中央銀行としては外資導入や外債の増加
は、将来、資本の流れが逆になる事態に備える必要がある」と、外
貨準備高の増加を単純に歓迎する風潮にクギを刺した。 

 周総裁は「中国に直接投資を行った外国企業は、少なくとも10
%の利回りをあげようと考えている。収益を再投資したとしても、
早晩、収益を外貨建てで回収していくことになる」とし、中国の合
弁企業などは、外資側が利潤を国外に持ち出す際の対応や準備を整
えておく必要を強調した。 

 外債についても同様で、中国に進出した外国企業や外国銀行の本
社から投入された外貨は人民元に交換し、外債に勘定されて外貨準
備高の一角を形成している点に注目するよう求めた。 

 このほか、外資企業が投資資金を回収する際の準備を整え、アジ
ア金融危機時の韓国経済のような衝撃を回避することが重要との考
えを示した。 

 人民元の国際通貨との交換について周総裁は、「今年は若干の緩
和措置を実施するが、中国の金融システムの健全性と経済の発展レ
ベルと為替レートを調和させながら進める」方針を明らかにした。
金融改革では、民間の小規模企業への融資に重点を置くとともに、
個人向け金融サービスの向上を図ると述べた。 
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ブッシュ米大統領が就任演説 

「全世界に自由を拡大」
影落とすイラク情勢の展開
 【ワシントン20日横山裕史】ブッシュ米大統領は二十日、連邦議会議事堂前で二期目
 の就任宣誓を行い、就任演説の中で「全世界に自由を拡大する」外交ビジョンを打ち出
 した。大統領当選後、社会保障改革など国内政策実行を強調してきた同大統領だが、歴
 史に残す遺産として、「自由の歴史における最も偉大な業績」に焦点を当てた。

 ブッシュ大統領の一期目の外交は、二〇〇一年九月十一日の同時多発テロへの報復、米
 国土防衛のためのテロとの戦いを中心に展開された。二期目の就任演説は、テロの脅威
 への対応からさらに一歩踏み込んで、世界のあらゆる国々の専制政治を打倒し、自由を
 世界に拡大するという積極的外交ビジョンを打ち出したものだ。同大統領は演説の中で、
 「圧制と絶望の中に生きるすべての人々よ、米国はあなた方の抑圧を無視したり、抑圧
 者を許すことはしない。あなた方が自由のため立ち上がる時、われわれは共にあるだろ
 う」と強調。自由と民主主義の世界的拡大を訴えた。これは世界的テロとの戦いよりも
 一層野心的な外交目標である。

 これまでブッシュ政権は、テロ支援国家に対してテロ支援の停止を求め、テロ組織との
 戦いのために専制政治を維持する非民主的国家とも協力してきた。パキスタン、中国、
 サウジアラビアなどはその例だ。パキスタンの場合も、ムシャラフ政権の弱体化がテロ
 勢力の拡大、第二のタリバン政権樹立につながることを懸念し、同政権の非民主的要素
 には目をつむってそれを援助してきた。ブッシュ大統領の「自由の世界的拡大」という
 外交ビジョンが、こうした対テロ戦の同盟国に対しても、自由化、民主化を積極的に要
 求していくことを意味するのかという当然の疑問が生じる。

 今回の大統領就任式は9・11後初めての就任式で、一万三千人の軍・警察部隊が動員
 され、かつてない厳重な警備態勢の下に挙行された。米国内では、過去三年間、愛国法
 が制定され、テロに対する警備、国土安全保障のためにますます自由が制限されるよう
 になっている。世界的なテロとの戦いでも、自由と民主主義の理想とテロとの戦いは必
 ずしも両立しない。

 ブッシュ大統領にとっては、専制政治打倒、自由と民主主義拡大というビジョンの試金
 石はイラクである。自由と民主主義の世界的拡大は、イラク・モデルの世界的拡大を意
 味する。イラクでは一月三十日の選挙を前に、武装勢力、テロリストによる攻撃がエス
 カレートしている。

 米中央情報局(CIA)などが組織する国家情報会議(NIC)が最近公表した報告書
 は、イラクがアフガニスタンに代わって国際テロリストの中心的な訓練基地になってい
 ることを指摘した。

 米国のイラクへの軍事介入の結果、世界各地でイスラム過激主義がかえって拡大してい
 るという懸念もある。イラク問題が解決しなければ、自由と民主主義の代わりにイラク
 の宗教対立、民族対立の構図が地域から世界へと拡大する結果になりかねない。

 「ブッシュ大統領は確固たるビジョンを掲げたが、大統領の成功は最終的には就任演説
 で言及されなかったイラク問題によって決定されることになるだろう」(ABCテレビ
 の評論家ジョージ・ステファノプロス氏)。世界日報 掲載許可

 ▼2期目就任演説の要旨
 ブッシュ米大統領が二十日に行った二期目の就任演説要旨は以下の通り。
 一、憎しみと怒りの支配を打ち破り、圧制者の野心を浮き彫りにし、適切で寛大な希望
 に報いることができる唯一の力は、人間の自由の力だ。

 一、さまざまな出来事や常識から判断して、われわれは一つの結論に至った。それは、
 わが国における自由の存続は、他の地における自由の成功にますます依存しつつあると
 いう事実だ。

 一、世界平和のために最も望まれることは、全世界に自由を拡大することである。

 一、建国以来、われわれは地球上のすべての男女が権利、尊厳、無類の価値を有してい
 ると宣言してきた。これらの理想を推進することが、われわれの国家の任務だ。

 一、すべての国と文化において、民主的運動・制度の発展を求め、支援することが米国
 の政策であり、最終的な目標は、世界の専制政治を終焉(しゅうえん)させることだ。

 一、必要なときには、武力により自国と友好諸国を守る。

 一、専制政治の終焉という最も偉大な目標は、数世代にわたる集中的な作業である。困
 難だということは、これを回避する言い訳にはならない。米国の影響力は無制限ではな
 い。しかし、米国の影響力は相当なものであり、われわれは自由の大義のため自信を持
 って、これを行使する。

 一、わたしの最も厳粛な職務は、国家と国民をさらなる攻撃や新たな脅威から守ること
 だ。無分別に米国の決意を試した者たちは、これが確固としたものだということを認識
 した。

 一、結局は、自由なしに正義はなく、人間の自由がなければ人権はあり得ない。永遠の
 隷属の可能性を受け入れない。ゆえに永遠の圧制者の存在を認めない。自由はこれを愛
 する者たちに訪れる。

 一、今日、米国は世界の人々に改めて呼び掛ける。米国は抑圧に苦しむ人々を無視しな
 いし、抑圧者を許さない。あなた方が自由のため立ち上がるとき、われわれはあなた方
 とともにある。

 一、弾圧、投獄、亡命を強いられている民主的改革者たちは、米国があなた方を自由な
 国の将来の指導者たちとみなしていることが分かるだろう。

 一、不法政権の支配者たちは、リンカーン元大統領が信じていた「他者の自由を否定す
 る者たちは、自由を得るに値せず、公正な神の支配の下、彼らの自由は長続きしない」
 ということを、われわれも信じていることを知るだろう。

 一、米国のすべての同盟諸国は、われわれがあなた方の友情を名誉に思っており、助言
 を信頼し、支援を頼りにしていることが分かるだろう。自由の敵たちは、自由諸国間の
 分裂を狙っている。民主主義を促進するための自由諸国の協調は、敵の敗北の序曲とな
 る。

 一、米国民に改めて訴える。米国は実行困難だが、それを放棄するのは不名誉な義務を
 受け入れた。米国の行動で数千万人が自由を獲得した。いつの日か自由の火が世界の最
 も暗い片隅にも到達するだろう。

 一、若い国民に呼び掛けたい。君たちは米軍兵士の決意に満ちた表情の中に、国への忠
 誠心を見た。悪が現実に存在し、勇気が勝利を収めることを目の当たりにした。自分た
 ちが望むよりも大きな目標のために奉仕する選択をせよ。

 一、米国は理想主義と勇気を必要としている。なぜなら、われわれには米国の自由とい
 う極めて重要な未完の作業が残されているからだ。自由に向かって動きだした世界で、
 われわれは自由の意味合いとその誓いを示す決意だ。

 一、すべての米国民に希望と未来を与えるため、オーナーシップ(所有者)社会を建設
 する。国民の自宅や事業などの所有を拡大する。

 一、偉大な目的に向け前進するため、癒やされなければならない分裂があることを認識
 しており、これを癒やすため誠実に努力する。

 一、自由が脅かされたとき、われわれは国家の結束と連帯を感じ取り、一心同体となっ
 て対応した。

 一、米国は自由が最終的に勝利することを完全に確信して前進する。われわれは、自由
 の歴史において、最大の偉業を達成する用意がある。

Kenzo Yamaoka
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ブッシュ米大統領、宗教と信仰の役割に言及   
   
 神との関係を最重視
 「最も宗教的な大統領」と言われるブッシュ米大統領。二十日に二期目の就任式を迎え
 るが、このほど行われた米紙ワシントン・タイムズとの会見で、「神との関係なしでは、
 大統領の役職に耐えることはできない」と述べる一方で、オープンに信仰を語る自らの
 スタンスが“敵”をつくる一因になっているとの見方を示した。(ワシントン・三笘義
 雄)
 二十日に行われる大統領就任式から、牧師による祈祷などの「キリスト教的宗教行為」
 を排除することを求めていた訴えについて、首都ワシントンDCの連邦地裁は十四日、
 「就任式における聖職者の祈祷は必ずしも憲法違反にならない」ことなどを理由に、訴
 えを棄却した。

 原告のカリフォルニア州在住の医師兼弁護士で「無神論者」のマイケル・ニューダウ氏
 は、十三日の公聴会で、大統領就任式でキリスト教聖職者が祈祷することは、「米国が
 キリスト教国家だと世界に宣言することに等しい」などと主張。「国教の樹立」などを
 禁止する米憲法修正第一条に抵触すると訴えていた。

 連邦地裁の決定に先立ち、ブッシュ大統領はワシントン・タイムズとのインタビュー
 (十二日付)で、「私は聖書の上に手を置くつもりだ」と断言。訴えを全く意に介して
 いない姿勢を表明していた。

 一方、「大統領が信仰を重視するあまり、それを他人に押し付けようしているのではな
 いかと心配している人がいる」と指摘。今回のような訴えが起こされたのは、自らの信
 仰について公言してはばからない大統領本人に“原因”の一端があるとの見方を示した。

 しかし、大統領は「『信仰深くないならば愛国者ではない』とみなされると心配してい
 る人もいるようだが、私はそんなことは言ったことはないし、そんな振る舞いをしたこ
 ともない」と強調。「国民の『信仰する権利』あるいは『信仰しない権利』を常に守る
 ことが大統領の責務であることを私は十分理解している」と述べながら、米国における
 「価値観の多様性」を称賛した。

 信仰の重要性への言及も忘れなかった。大統領は「(「政教分離」を掲げるリベラル派
 が公的な場から宗教的要素を排除する動きを強めても)その反動はすさまじものがある」
 「こと宗教と信仰に関して、米国は特別な地だ」などと語り、多くの米国人にとってい
 まだに宗教・信仰が果たす役割が大きいとの認識を示した。

 また大統領自身についても、「神との関係なしでは、大統領の役職に耐えることはでき
 ない思う」と心情を吐露。神に帰依することなしに「唯一の超大国」米国の大統領の重
 責を全うすることはできないと語った。世界日報 掲載許可
 
      Kenzo Yamaoka
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中国、シーレーン沿岸国に基地建設   
  
 WT紙報道
エネルギー戦略の一環
 【ワシントン18日早川俊行】米紙ワシントン・タイムズは十八日、中国がエネルギー戦
 略の一環として、中東から南シナ海までのシーレーン沿岸国に海軍基地やコンテナ港施
 設などを積極的に建設していると報じた。

 同紙が入手した「アジアのエネルギーの将来」というタイトルの国防総省の内部文書に
 よると、中国はペルシャ湾に近いパキスタンのグワダル港に海軍基地を建設中で、そこ
 には既に中国の諜報(ちょうほう)部門が設置され、ホルムズ海峡やアラビア海を通行
 する船舶の監視を行っているという。

 ミャンマーにも海軍基地を建設しているほか、マラッカ海峡に近いベンガル湾の島々に
 も情報収集施設を設置。このほか、バングラデシュやカンボジア、タイとも戦略的な結
 び付きを深めている。

 こうした中国の動きについて、国防総省の内部文書は、台湾問題と連動していると分析。
 中国が台湾への武力侵攻に踏み切れば、米国は中国のエネルギー網を封鎖することが予
 想されることから、中国はシーレーン沿岸国との戦略関係の強化を進めているものとみ
 られる。世界日報  掲載許可
       Kenzo Yamaoka
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社会革命へ邁進するチャベス大統領―ベネズエラ   
  
 原油を外交戦略の武器に
中国との経済協力を強化
注目される米政権の対応

 南米ベネズエラの左派系チャベス大統領が、「社会革命(ボリバル革命)」実現に向け
 た動きを活発化している。同大統領は、昨年八月のリコール国民投票で反大統領派に勝
 利した後、マスコミ規制法案などを通じて反対派の動きを抑え、四年越しの公約実現に
 向けて本格的な「土地改革」に乗り出した。根強い支持層と豊富な原油を背景に、チャ
 ベス大統領は内外ともに存在感を強めているが、一方で親米派政権のコロンビアと外交
 問題も抱えており、二期目のブッシュ政権の対応も注目される。

(サンパウロ・綾村 悟・世界日報)掲載許可

 南米ベネズエラは世界五指に入る原油産出国だが、長年続いた二大政党制は政治腐敗の
 温床を生み、原油輸出による多くの財政収入にもかかわらず、国民の半数以上は貧困層
 に属していた。

 一九九八年の同国大統領選挙で、左派系チャベス大統領は「社会革命」による富の再分
 配を約束、圧倒的な貧困層の支持の下に当選を果たした。チャベス大統領の当選は当時
 の米政府も予想していなかったものだった。

 それまでのベネズエラ政権が取ってきた親米路線から一転して反米・親キューバ的な政
 治姿勢を取ったことが、社会支援プログラムを積極的に打ち出すチャベス大統領を熱烈
 に支持する層と、同大統領を「独裁的」「左寄り」と批判する経済団体やマスコミなど
 を中心とした反大統領派の対立を呼んだ。

 また、チャベス大統領は南米きっての反米主義者としても知られ、米軍のアフガン爆撃
 やイラク戦争などを強く批判。チャベス政権への批判や政治的圧力を掛ける米国に対し
 て、「ベネズエラは米国の植民地ではない」と米政府による政治的な干渉を嫌った。

 その後、反大統領派はチャベス大統領のリコール国民投票実施を求め、大統領派と反大
 統領派の仲介作業にカーター・センターや米州機構(OAS)が乗り出した。しかし、
 昨年八月のリコール投票では、多くの予想を裏切る形でチャベス大統領が圧勝した。

 投票勝利後のチャベス大統領は、反対派の動きを抑える手を次々と打ち、米州機構が投
 票の正当性に口を挟む機会を与えなかった。

 リコール投票に先立ち、地方選挙での大統領派の圧勝に加え、石油公社から反対派を一
 掃するなどし、同大統領はすでに有利な立場に立ちつつあった。勝利後はマスコミ規制
 法案やデモ規制法案などを通すことによって、一層「権力が集中し過ぎている」との批
 判も浴びるほど力を得始めている。

 さらに、現在の原油高で同国の財政収入が増えていることから、社会プログラムの充実
 によりチャベス大統領の主な支援層である貧困層の支持は今後さらに強まることが予想
 される。二〇〇七年の次期大統領選に向けてチャベス大統領は今のところ有利に立って
 いる。

 チャベス大統領の強気やその存在感を支えるものの一つには、大統領が世界五指に入る
 ほどの原油を握っているという背景もある。原油はチャベス政権にとって大きな外交戦
 略の武器となっている。

 例えば、ベネズエラはキューバに原油を輸出しており、その見返りとして数千人規模の
 キューバ医師がベネズエラに派遣されて貧困者向けの医療プログラムを支えている。

 また、ベネズエラは米国が輸入する原油の12%を提供している。最近では中国との提
 携強化を図っており、チャベス大統領は昨年のクリスマス時期に中国を訪問、両国関係
 を強化した。中国は、将来的な不足が予想される原油や食料などでブラジル・ベネズエ
 ラなどと経済関係の強化を急いでいる。

 それだけに、米国の政治家の中には「ベネズエラの内政に口を挟むよりも原油確保を優
 先させるべきだ」との声もある。ただし、ライス次期米国務長官が「ベネズエラには注
 意を払う必要があり、(チャベス)大統領の政治的な動きいかんでは(南米の)他の諸
 国と協調して圧力を掛ける必要性に迫られることもあり得る」と述べるなど、米国もベ
 ネズエラ問題を重要視している。

 最近では、今月十四日にコロンビア極左ゲリラ幹部がベネズエラ領内で拘束された事件
 をめぐりベネズエラ政府がコロンビアとの外交・貿易関係を凍結する事件も発生した。
 この事件では親米派のウリベ大統領は「コロンビアは極左ゲリラのテロに屈しない」と
 正当性を主張。コロンビアの最大援助国である米国政府もウリベ政権を支持しており、
 この地域の緊張はこの先しばらく続く可能性もある。

 このような動きを含め、第二次ブッシュ政権が中南米に向けた明確な政策と政治的不安
 定に対して断固とした対応を取る用意があるか、注目されるところだ。
     Kenzo Yamaoka
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<チャイナ・ウォッチング>   
   
 1980年代の初め、私は米シアトル大学の政治学科に籍を置き、その当時興
味のあった米ソ関係を中心に勉強を続けていた。

それほど大きくない政治学科の中で私が最も親しくさせてもらっていたのは、
カトリックの尼僧で政治思想史を中心に教えていたシスター・クリス。そして、
もう一人が東ドイツの専門家だったシャーフ博士だ。

その二人が教えてくれた科目のうち、いまでも鮮明に覚えているがシャーフ博
士のソ連に関するものだ。彼の授業、何がいいかというと、彼の選ぶ必読書が
すこぶる面白く、また、ためになるのだ。そのソ連に関する授業では、アメリ
カを代表する新聞の一つ、ワシントンポストのモスクワ特派員だった記者が書
いた本が選ばれ、その本を読んで非常に多くの示唆を受けたことを覚えている。

それはともかく、その授業で書かされた論文のテーマというのが、以下の三つ
のモデルから一つを選んで、ソ連について自分なりの理解の仕方を確立すると
いうものだ。一つは社会主義モデル、もう一つが社会福祉国家モデル、そして
最後が歴史的連続モデルといわれるものだった。

このうちから私は最後のモデルを選び、社会主義という体制は敷かれているも
のの、やはりソ連にはロシアの伝統的な文化やあり方が色濃く残っており、そ
うした歴史的な連続性を鏡として理解するのが早道だと主張したのだった。

思うに、こうした歴史的連続性モデルが適用可能なのは何もソ連に限ったこと
ではないだろう。この4年間、中国という歴史的連続性が世界の中でも最大級
に強いと思われる国(社会)に住んで、改めて過去を学ぶことの重要性を痛感
している次第だ。

本日のメルマガでは、昨日(17日)伝えられてきた大きなニュースを参考に
しながら、中国の歴史的連続性について考察してみたいと思う。

● 世界が注目したある要人の死

その大ニュースというのは、89年の天安門事件で失脚を余儀なくされ、その
後の15年間、自宅軟禁状態に置かれていた趙紫陽元共産党総書記の死だ。

実のところ、私は彼に関するメルマガを昨年の夏あたりから考えていた。ちょ
うどそのころ、香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポストに彼の容態が悪
化しているとの記事が出たからだ。それに注目した私は、彼が死去した場合の
中国政治、社会に与える影響についてメルマガで書こうと思ったのだ。しかし、
その後、他のさまざまな事件や現象が発生、私はそれに気をとられてしまい、
趙元総書記のことについて何も書けないまま月日がたつことになってしまった。

しかし、年が明けて早々、香港メディアで彼の死が報じられ、その直後には中
国政府がきわめて珍しいことに、記者会見の中で、それを否定する談話を発表
する事態となっていた。

その時点で「これならまだ大丈夫かな」と思っていた私だが、その後、昨日の
朝の段階で彼の容態が悪化したとのニュースが流れ、少し心配になりながらも、
東京からやって来た知り合いのアテンドのため外出。訪問先の別の知り合いか
ら今回のビッグニュースを知らされたのだった。

● 民主化運動との深い関係

話を中国の歴史的連続性に戻すと、その「連続性」の中で再三出てくる例が、
要人の死をきっかけとした民主化運動だ。まずは、89年の天安門事件で運動
を粉砕する側に立ったトウ小平だが、周恩来の死がきっかけとなって発生した
76年の(第一次)天安門事件ではその首謀者とされ、失脚している。そして、
その89年の天安門事件は胡耀邦の死がきっかけとなって起きたものだ。

この場合共通しているのは、事件の引き金となった要人の死というのが、いず
れも民衆に人気の高い要人の死であったという点だ。周恩来にしても、胡耀邦
にしても大衆の間で人気のあった政治家だ。

また、事件が発生した時期が、中国社会の変革期、変動期にあたっているとい
うことも共通項としてあげられるだろう。周恩来が死去したのは、毛沢東の死
の直後であり、その当時はポスト毛時代の方向性が見えないまま、民衆の間に
は「毛主席が死んだ後の国はどうなるのだろう」という不安があったと思われ
る。さらに、89年の事件では、70年代末から始まった改革開放政策により、
インフレや失業など、さまざまな経済的および社会的な問題が発生している中
で起こったのだった。

はたして、今回もまたこれまで同様、趙紫陽の死が何らかの形で民主化運動に
つながるのだろうか。

少なくともその可能性が否定できないと見た政府は、彼の死を用意万全の態勢
で迎えているようだ。死去を伝える朝日の記事は次のように当局の神経質な対
応を紹介している。(*1)

「政府機関の同社(注:新華社)が失脚した元総書記の死去を速報するのは異
例だが、訃報(ふほう)は新聞と雑誌の掲載に限り、テレビとラジオでの報道
は一切認めないという通知を流すなど、当局が神経質になっている様子がうか
がえる」

また、イギリスの高級紙、ガーディアンも次のように伝えている。(*2)

「民主化運動の頭首の死が抗議行動の波を引き起こすかもしれないという政府
の恐れを反映して、今週、北京の天安門広場の治安はすでに強化されていた」

当然の反応だろう。これまでもメルマガで再三にわたってお伝えしてきている
ように、国内において貧富の差が拡大し、持たざるものの間における不満や怒
りの増大が昨年あたりから、あからさまな抗議運動という形で表に出てくるよ
うになっているからだ。こうした中での要人の死、しかも当時、民主化運動に
同情的だった趙紫陽元総書記の死というものが、当局にとって高度の警戒を要
する出来事であるというのは当然のことだ。

もう一度問う。では、彼の死はこれまで同様の民主化運動を引き起こすのだろ
うか?

結論からいうと、私は確率的には、そうならないような気がする(とはいえ、
確信があるわけではない。もちろん)。ある意味、冒頭で述べた歴史的連続性の
否定といえるのかもしれないが、これまでと現在では状況に大きな変化が起き
ていると思われるからだ。以下で、その理由を説明したい。

● 「1国2国民」制度

みなさんよくご存知のとおり、トウ小平はイギリスからの香港返還をスムーズ
に進めるため、「1国2制度」という天才的な制度を発明した。彼の真骨頂であ
る中国式プラグマティズムの最高傑作の一つといえるかもしれない。

このネーミングを借りるとすれば、私にはいまの中国にさながら「1国2国民」
制度とでも呼べるような社会の階層化が起きているように思える。同じ中国と
いう国の住民ながら、経済発展の恩恵に浴する機会に恵まれる都市住民(国民
A)とさまざまな制度上の制約に悩まされる農村部の住民(国民B)とでは、
住む世界がまったく違うのだ。中央政府のさまざまな政策にもかかわらず、両
者間のギャップは拡大する一方で、なかなか縮まりそうにはない。

そうした背景があるからこそ、私には趙紫陽の死があったとしても、一般的な
改革運動にはなりえないとの考えを持つ。なぜなら、恩恵にあずかることので
きない農村部住民(一部の豊かな農民を除く)がいくら不満を訴えようとした
ところで、彼らの境遇に冷淡とはいわないまでも、あまり関心を持たない都市
住民がそれに同調することは、ほとんど考えられないからだ。

また、過去の運動において中心的役割を果たした学生についても、AP通信は
次のように伝えている。(*3)

「趙時代に子供だった今日の大学生は、きわめて競争の激しい就職戦線におい
て自らのキャリアを確立することに全力を集中しがちであり、彼らの前の世代
に比べて、はるかに政治的に活発ではない」

つまり、この「1国2国民」制度が崩れない限り、国民Aと国民Bの利害が一
致することはほとんどなく、全国的な広がりを持った社会運動など、めったな
ことでは起こりえないような気がするのだ。要するに、ある程度の私有財産を
持ってしまった国民Aにとって、自らの既得権益を侵すような社会運動は願い
下げ、ということだ。

なお、前掲のガーディアンはさすがイギリスの新聞というべきか、多少のブラ
ックユーモアを込めて、次のように書いている。

「中国の虐げられた農民が趙元総書記の死を耳にすることになるのかどうか、
それはまったくわからない。それに、たとえ聞いたとしても、北京まで赴くた
めの時間と労力を割くことができる者はほとんどいまい」

● 「非政治化」する中国人

さらに、前の時代と異なる点として考えられるのは、国民の政治ばなれだ。

中国とはすぐれて人治の国であり、法治の国ではないとよくいわれるわけだが、
人治ということは、国民がきわめて「政治的」であるということを意味する。
明確なルールがないため、権謀術数も含めて、人と人の間における権力闘争に
は激しいものがあり、指導者は権力やカリスマによって他人を動かし、自らの
権益を守り、拡大しようとすることになる。

それが、「政治的」という意味なのだが、どうもその政治的生き物であるはずの
中国人の間で、そうではない、つまりホモ・エコノミクス(経済人間)的な人
種が増えているような気がする。

しばらく前に話をしたある大手マスコミの記者の知り合いが指摘したのは、上
海人が政治的なことにほとんど関心を持たず、ひたすら金儲けにまい進してい
るように見受けられるということだ。民主化や社会的ひずみの是正など、上海
人にとってはどうでもいいことなのかもしれない。彼は、そうした非政治的な
人間の住む上海になかなか馴染めず、一般大衆のレベルでも熱く政治を語れる
北京のほうがよかったという。

さらに彼が嘆いていたのは、以前は政治について熱く語っていた北京人の友達
が上海で商売を始め、以前とすっかり変わってしまったということだ。彼が「以
前の君はどこにいってしまったのだ?」と問うと、「君こそ、まだ政治的なこと
に関心を持っているのか?」とまったく意に介さない人間になってしまったと
いう。彼いわく、「上海には人を変える力があるのかもしれない」――そのとお
りかも知れない。(*4)

しかし、どうだろう。金儲け主義の上海人に比べて、あれだけ政治的生き物と
称されてきた北京人にも確実に変化が起きているのではないだろうか。もちろ
ん、北京に住んでいない私にははっきりしたことはいえないが、ここ数年で北
京にも上海に負けないくらいのショッピングモールなどができたほか、だいぶ
前のメルマガで紹介したように、上海に対抗できる金融都市をつくろうという
動きも北京にあり、単なる政治首都だけでは終わりたくないという北京の意気
込みが感じられる。というか、商業主義、拝金主義の波は、確実に北京さえも
飲み込もうとしているかのようだ。

それは、「政治を語っても金儲けにつながらない」という結局、金儲け主義に屈
した結果なのか、あるいは上海に負けてたまるか、という対抗意識なのか。い
ずれにせよ、北京人の政治一辺倒にも少し変化が生じてきているのかもしれな
い。少なくとも、私はそういう「非政治化」が北京、そして他の都市において
も確実に起きてきているのではないかと想像するのだが、いかがだろうか。

● 他国が通ってきた道?

ある意味、こうした「非政治化」は、以前の日本や欧米でも見られたことだ。
つまり、経済が発展する過程において、どうしても社会の歪みが目立つように
なり、大衆、特に理想と行動力にあふれる若者たちが中心となり、改革を求め
る運動を始める。しかし、たいていの場合は、当局につぶされ、その後は人々
(社会)の「非政治化」が起こり、若者もノンポリ化して、改革への熱意は急
速に冷めていくことになる。

もしも、中国の現在の発展段階が、そうした「非政治化」の入り口にあるとす
れば、多少の政治的な運動はあったとしても、それがこれから拡大するという
可能性は少ないのかもしれない。少なくとも、先に指摘した「1国2国民制度」
の下、発展の恩恵にあずかる国民Aの間における「非政治化」はますます進み、
それが不満を持つ国民Bの政治的動きを抑制する方向で作用しそうな気がする。

ただし、私にもよく見えないのが、持たざるものたちの不満と怒りがどの程度
の深さと強さを持つのか、という点だ。また、国民全体に占めるそういう人た
ちの割合がどの程度あるのか、という点だ。

もしも、それが報道で伝えられる以上の深さと強さ、そして広がりを持つので
あれば、たとえそれが今回の趙紫陽元総書記の死に間に合わなかったとしても、
その後、また別の要人の死がきっかけとなり、大きなうねりとなって体制を揺
さぶる改革運動になるのかもしれない。(ただし、あれだけの指導者はもう出て
こないという説もある。)

また、ニューヨークタイムズでは次のような中国の伝統を指摘している。(*5)

「中国当局はしばしばトップ指導者の死に対する民衆の反応を心配する。中国
の伝統では、死を嘆く人々には悲しみを表明する機会が与えられなければなら
ず、国家の指導者はたとえ政敵であっても、その最後のしきたり(慣例)を否
定することを嫌がるのだ」

そして同記事は、そうした伝統の下、胡錦涛国家主席は非常に難しい判断を迫
れることになると指摘する。

「胡主席は趙氏をどのように追悼するか、その判断を迫られることになる。国
葬となれば、支持者は意見を表明する機会を与えられることになるかもしれな
い。それは現指導部にとっては脅威とみなされる可能性がある。(しかし)もし
も公の葬儀が行われなかったとしたら、胡主席はかつての指導者を適切に扱わ
なかったという批判にさらされ、趙氏をいまよりもさらに長期的な不正義のシ
ンボルにしてしまうかもしれない」

私はこれまで年々難しさの増す経済運営も含めて、現指導部の置かれた状況が
「行くも地獄、退くも地獄」だと頻繁に指摘してきたわけだが、今回の選択も
まさにそうした究極の選択といえよう。

その選択の結果は、はたして中国の歴史的連続モデルを証明することになるの
か。それとも前述したように、中国はすでにそうしたモデルが通用しない発展
段階へと移行したことを証明するのか。これからの数週間、あるいは数ヶ月間
の中国社会の動きが、これまで以上に注目される。

(*1)「趙紫陽氏死去 天安門事件で失脚、民主化運動に理解」
      朝日オンライン版、2005年1月17日
   http://www.asahi.com/international/update/0117/002.html

(*2)”China on alert after Tiananmen party reformist dies”
      by Jonathan Watts, January 17, 2005, The Guardian

(*3)”Ex-Chinese Leader’s Death Poses Dilemma”
      by Associated Press, January 17, 2005

(*4)上海人が非政治的なのは、ある意味、彼らなりのサバイバルの方法なの
かもしれない。つまり、政治的基盤のない土地の人間が政治的に権力をつかも
うとしても、そうした基盤のある土地の人間に勝つのはなかなか難しい。そう
である以上、上海人は別の方法、つまり経済的な方法によって、自らの権益を
守り、身を守ろうとするのかもしれない。もちろん、西洋列強によって開かれ
た都市であり、一攫千金を狙ったやからが国の内外(日本も含む)からやって
きてつくった都市であるという歴史も関係しているのだろうが・・・

(*5)”Zhao Dies, Posing a Challenge for China’s Nervous Leadership”
      by Joseph Kahn, January 17, 2005, The New York Times
       Kenzo Yamaoka


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