1837.中国の方向と日本



中国の胡主席で、どう中国は変化するのであろう。  Fより

中国の限界をこのコラムでも何回か書いたが、民主化がどうしても
必要になっている。民主化すると今でも分離志向が強い地方が、中
央の言うことを聞かなくなる。これが心配な点ではあるが、もう中
国が、これ以上に経済レベルを上げようとすると、自由な発想と民
主主義的な組織にしないと限界がある。

政府系の銀行の不良債権もどんどん大きくなっているし、役人の汚
職も多い。役人はそれを汚職と思っていないし、恣意的に法律を変
更することも多い。これでは企業はたまらない。これは共産党独裁
という政治制度で中国を支配しようとしているために、不正のチェ
ック機能が働かないからで、国営銀行の不良債権もチェックが効か
ないことで、雪だるまのように増大している。

この組織構造は、民間会社でも同じで、社員の流動率が非常に高い。
上司の意向に沿わないと、首になるか自分で辞めていくようだ。
これでは、組織にノウハウを貯められる状態ではない。

または、中国の労賃が安いので世界から工場が進出しているが、元
が切り上げられたら、ベトナムなどに外資は逃げていく可能性があ
る。そして、米国などは元切り上げを要求している。その内、スー
パー301条の適応をされて、米国に輸出できなくなる可能性もあ
る。

このように中国のバブル崩壊は2008年までにあるということは
、民主化がなければ、起こる事になる可能性が高い。ロジャー・ス
ミスさんは、中国がバブル崩壊で株が安くなるから、その時に仕入
れるべきで、その後50年以上は中国の時代になると言っているが。

もちろん、バブル崩壊の後には民主化された中国になる可能性が高い。

また、中国軍の近代化が加速して、米国防総省は中国の将来に対し
て危機感を強めている。中国原潜がグアム近海まで来ていることに
対して、米空母への攻撃があると見ている。

しかし、グローバリズムを推進する米国経済界は中国との関係を重
視していきたいと思っている。これは、米IBMが中国最大のIT
会社である聯想と提携したことで分かる。

このことで米国内で中国政策が2つに割れていることを示している。
その影響で国防総省の政策スタッフも世界日報によると2つに割れ
ているようである。

米国が2つに割れているために、日本の外務省も2つに割れている
。このため、防衛大綱に仮想敵国として中国の脅威が入ってしまっ
た。日本と中国は友好的な関係にないことを世界に示してしまった。
どうしようもない政策ミスでしょうね。経済界からの反発が必要で
あろうと思うが、どうでしょうね。

日本企業は現在、中国への製品供給で、利益を上げているのですか
ら、中国とは友好関係になければならないのですよ。経済的な視野
が無さ過ぎるように感じる。
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米IBM、サービス事業でも中国・聯想と提携(nikkei)

【ニューヨーク=篠原洋一】米IBMは8日、パソコン事業の売却
先である中国の聯想集団(レノボグループ)とサービス事業でも広
範に提携する方針を明らかにした。聯想の顧客にIBMが情報シス
テム構築・運営のノウハウを提供するなど、両社が協力して企業向
け市場を開拓する。

 提携はIBMのサービス事業の戦略地域である中国が主な舞台に
なる見通しだ。中国内に強固な顧客基盤を持つ聯想はパソコンの単
品販売からシステム構築ごと請け負う手法への移行を進めており、
ノウハウの提供はIBMにとって大きな事業機会になる。IBMが
世界各国でサービス事業を展開する場合に聯想からパソコンを安定
的に優先調達できるようにする狙いもある。 (07:00) 
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北朝鮮ウラン濃縮は歪曲 米が脅威誇張と専門家
 
 【ワシントン10日共同】米国の朝鮮半島問題専門家セリグ・ハ
リソン氏が米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」最新号に、
北朝鮮のウラン濃縮による核開発は「イラク(の大量破壊兵器)同
様、ブッシュ政権が情報を歪曲(わいきょく)し、脅威を誇張した
ものだ」と、ウラン濃縮に強い疑問を示す論文を発表していること
が10日、分かった。

ウラン濃縮を否定する北朝鮮側の主張を裏付けるような内容のため
、国務省のエアリー副報道官は同日の会見で「明確で有無を言わせ
ぬ証拠がある。論文は間違い」と、北朝鮮のウラン濃縮は疑いよう
がないとの米政府の見解を強調した。
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中国、新防衛大綱の対中警戒を批判
 【北京11日共同】中国外務省の章啓月副報道局長は10日夜、日本
政府が新防衛大綱で中国への警戒感を鮮明にしたことについて「『
中国の脅威』を示すいかなる根拠もなく、無責任だ」と述べ、強い
不満を表明した。

 章副報道局長は「歴史問題があり、日本の軍事関連の動向は極め
て敏感な問題だ」と指摘し、近隣地域の平和と安定のために「慎重
な行動」を取るよう要求。また日中関係については「日本が両国の
関係発展を促進する政策を取ることを希望する」と述べた。

 中国各紙は東京発の新華社電を掲載し、「初めて明確に中国を日
本の軍事的脅威と位置付けた」などと日本メディアを引用する形で
伝えた。細田博之官房長官の「中国を脅威とみなしているのではな
い」との発言も紹介した。

 中国では小泉純一郎首相の靖国神社参拝や、イラクへの自衛隊派
遣などから「日本の右傾化」を懸念する声が多いだけに、反発を強
める可能性もある。 (15:00) 
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成16年(2004)12月8日(水曜日)
        第986号

中国の工場労働者の平均賃金は一時間あたり65円
米国は2152円、先進国平均が1450円、あまりの格差に呆然

 米国労働統計局は、中国の平均賃金を自給になおして計算し、驚
くなかれ、一時間64円だとした。インフレと購買力平価を加味し
て米国の実状に適合させたシミュレーションで、これでも実際は
300円に相当するだろうが、とした。

 日本でもほかの先進工業国でも、保険と福利厚生費を加えている
ため、中国の賃金にも、これらを加えて修正数値を用いているのだ
が、実際には中国の労働者には外国企業いがいに福利厚生費が設定
されているケースは稀である。

 米国労働統計局は中国の公式統計を杜撰の極みとして、専門の調
査員を雇用し、実際の現場の調査に当たらせた。

 その結果、都市部の工場ではおよそ3800万人の従業員の平均
時給を107円と算定したが、地方の7100万人の労働者の自給
は46円前後(メキシコでも252円)。ちなみに米国のそれは
2152円。ほかの三十ヶ国の平均値は1450円と計測している。

 むろん、これらの数値はシミュレーションでしかなく、中国の食
費の安さを勘案すれば、なんとか食べていける労賃を稼ぎ出してい
ることにはなるが、中国の公式発表で、一人あたりのGDPは
1000米ドル。これを一日八時間労働300日稼働(中国は週休
二日ではない)と仮定した場合、時間給は48円前後となる。

 ともかく実態にちかい数値が浮き彫りになった。
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人民元改革、早期実現促す・米財務省報告(nikkei)

 【ワシントン=小竹洋之】米財務省は3日、主要貿易相手国の為替
政策に関する報告書を議会に提出した。対象期間である今年1―6月
に「不当な為替操縦をした国・地域はない」との判断を示しながら
も、対ドル相場を事実上固定している人民元の変動幅拡大を促す方
針を表明した。 

 報告書は米経常赤字の拡大が金融市場の不安定要因になっている
ことを意識した内容となった。米国は財政赤字の削減と貯蓄率の向
上に取り組む一方、米国の貿易相手国には経済成長の加速、特にア
ジア地域は柔軟な為替制度への移行に取り組み、国際不均衡の是正
に向けた責任を共有すべきだとの見解を示した。 

 その一環として中国の人民元改革も取り上げ、「米政府は中国の
改革努力を強く継続的に促し、できるだけ早く柔軟な為替制度に移
行するよう支援する」と強調した。 (19:11) 
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中国 台湾が憲法改正なら…2006年、軍事力行使も 米専門家   
   
  ■胡主席も方針変わらず
 【ワシントン=古森義久=産経】中国は人民解放軍の戦力を着実に強化し、とくに台湾
 攻略の能力を高めており、二〇〇六年に台湾側が憲法の改正を始めれば、軍事力行使に
 踏み切る可能性が高いという見通しがブッシュ政権の中国軍事問題担当だった専門家ら
 から十一月三十日、明らかにされた。中国の共産党中央軍事委員会の主席が代わっても
 台湾への軍事力行使の基本方針は変わらないという。

 米陸軍大学や研究所AEIが共催で開いた「中国軍の将来」というセミナーで、ブッシ
 ュ政権の国防総省中国部長を十一月まで務めたダニエル・ブルーメンソール氏は「党中
 央軍事委員会の主席が江沢民氏から胡錦濤氏に代わっても台湾を軍事力で攻略する基本
 戦略は変わらない」と述べ、中国が軍事力行使に踏み切る危険は〇六年の台湾憲法の改
 正の際に高まるだろうと警告した。同氏はこのタイミングについて、台湾の陳水扁総統
 が同年に台湾の憲法改正に取り組む方針を発表し、中国からみて憲法改正は独立の間接
 的な宣言に等しくなり、軍事手段への依存が一気に強くなるだろう、と説明した。

 同セミナーでは、中国軍の戦略研究の専門家として知られるジェームズ・マルベノン氏
 (情報調査分析センター次長)も、「台湾の憲法改正は中国にとって事実上、独立を宣
 言されたに等しく、〇六年に台湾海峡での中国軍の軍事行動開始の危機が高くなる」と
 いう予測を明らかにした。

 中国軍の台湾攻略作戦についてブルーメンソール氏は(1)党中央軍事委では江沢民氏
 の「台湾への武力行使を放棄しない」という基本方針はコンセンサスとして揺らいでお
 らず、胡錦濤氏もその路線を一貫して引き継いでいる(2)中国の対台湾政策の前提で
 は台湾側が平和裏に中国と統一されることを望んでおらず、残された方途は中国の軍事
 力行使となる(3)中国は米国が軍事介入できないうちに台湾を降伏させる電撃作戦を
 考えており、爆撃用航空機、弾道・巡航両ミサイルによる攻撃、潜水艦と駆逐艦による
 海上封鎖、電子戦争などを断行する(4)米軍の介入を防ぐには米艦艇への抑止的な攻
 撃のほか、日本国内の米軍基地へのミサイル攻撃能力を高めておく−ことなどを指摘し
 た。 
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「中国」の扱いで内部対立   
   
  国防総省は、議会が提出する「四年ごとの国防計画見直し」(QDR)の作成を進めて
 いる。QDRの作成は、国防総省幹部と「上級見直しグループ」が監督し、ラムズフェ
 ルド国防長官とウルフォウィッツ国防副長官が進めているものだ。
 QDR作成で長官を補佐しているリアン・ヘンリー氏と副長官は、ジム・トマス国防次
 官をQDR作成の監督の責任者に加えた。

 一つの戦いが既に内部で展開されている。中国をどう扱うかだ。二〇〇一年九月に公開
 された前回のQDRでは、中国を名指しすることは避けたが、「勢力を増しつつある」
 共産国、アジアの軍事的競争相手と遠回しの言い方をしていた。

 ブッシュ政権内の親中派(国防総省内では多くはない)は、QDRで中国の脅威を強調
 したくない。これは、一部の高官が、ブッシュ政権の中国政府への「戦略的中断」と呼
 んでいるものの一環だ。

 そこには、世界的な対テロ戦争により米国は、中国が勢力を増すのを抑える努力を控え
 ざるを得なくなっている、という考え方がある。


中国の潜水艦
 国防当局者によると、中国海軍の攻撃型潜水艦は最近、域外の海中での作戦を進めてい
 る。このようなことはこれまであまりなかったことだ。

 情報当局は最近、西太平洋全域での中国潜水艦の活動を記した機密扱いの地図を公開し
 た。

 それによると米国は、潜水艦が十月終わりに母港の寧波を出港してから、南に向かって
 台湾近海を通り、グアムに向かう十一月半ばまで、ずっとその動きを把握していた。グ
 アムは米海軍が三隻の攻撃型潜水艦を配備し、さらに七隻を追加しようとしているとこ
 ろだ。

 中国の潜水艦はその後、沖縄近海に向かい、自衛隊に発見された。これを受けて日本は
 中国政府に説明を要求、中国はすぐに謝罪し、潜水艦が日本の領海を侵犯したのは、技
 術的な問題が原因だったと説明した。
(ビル・ガーツ&ロワン・スカーボロー)世界日報  掲載許可
     Kenzo Yamaoka
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国防近代化を急ぐ中国   
   
 拓殖大学国際開発学部教授 茅原郁生氏に聞く
海洋・宇宙戦略で米に対抗
海洋防衛の範囲拡大図る/高まる日本への脅威

有人衛星技術を応用へ/日本はグローバルな防衛戦略を

 最近、中国の艦船や原子力潜水艦、偵察機が日本の領海、領空を侵犯する事件が増えて
 いる。海図作成の調査、日本の防衛力の偵察などの目的が考えられるが、中国側の狙い
 は何か、その背後にどんな軍事戦略があるのか。中国の軍事問題に詳しい茅原郁生拓殖
 大学国際開発学部教授に聞いた。

 (聞き手=フリージャーナリスト・多田則明・世界日報)掲載許可

 ――近年、中国軍事力の拡大が目立つ。

 今、世界の安全保障環境は大きく変化している。「9・11」以後、テロとの戦いが重
 要になり、米国はトランスフォーメーション(軍事改革)で、米軍の前方展開の態勢を
 世界的に変えようとしている。こうした中、経済成長に自信を持った中国は大国志向を
 強め、加えて近年はナショナリズムの高揚を受け、国防近代化を進めている。

 中国には力を重視する独特の安全保障観がある。その背景には、軍事力のない清朝が悲
 惨な末期を迎え、半植民地にされた近代百年の体験がある。また、毛沢東が「政権は銃
 口から生まれる」と言ったように、現政権も力でもぎ取ったものだ。人口の5%、六千
 八百万人の共産党員が十三億人の中国を統治するには強い軍事力のバックアップが欠か
 せない。

 中国の国防近代化には三つの大きな背景がある。第一は、国際的な安保環境の変化だ。
 国際テロ組織など国家以外の小さな組織が国家に挑戦し始めており、人民戦争戦略では
 対応できない。しかも中国は多くの少数民族を抱え、新疆ウイグル自治区での東トルキ
 スタン運動などは現実の脅威になっている。

 第二は、米国がイラクに対して国連の決議なしに攻撃したことだ。この論理が将来、中
 国に向けられる可能性も否定できない。

 第三は、軍事革命の進展である。その一つは精密誘導兵器の発達で、一九九一年の湾岸
 戦争で現れ、イラク戦争でもその威力が発揮された。加えて戦場機動能力も非常に向上
 した。湾岸戦争では米国は五十万の兵力を送ったが、イラク戦争では十六万だった。三
 個師団が五百`先のバクダッドに二週間で進撃し、制圧したのは戦史にない。米軍の統
 合運用が進み、最適の兵器でピンポイント攻撃する。

 ――国内的にも大きく変化しているようだ。

 まずナショナリズムの高揚がある。経済成長の結果、中国国民が大国意識を持つように
 なり、国の威信を重視する風潮が出てきた。

 九月の第十六期共産党中央委員会第四回総会で江沢民氏が党中央軍事委員会主席の座か
 ら引退し、胡錦濤総書記が軍のトップに就いたが、胡氏は本当に軍を掌握できるのかと
 いう疑問がある。江沢民時代は★(★=都の者を登)小平氏というカリスマの支持を背
 景にしながら、それでも軍を掌握するのに十年かかった。トップが交代したからといっ
 て、すぐに従うような単純な党軍関係ではない。胡氏は今後、軍を掌握するためかなり
 の努力を要するだろう。

 一方、胡錦濤氏は国民に豊かな社会の全面実現を約束している。発展から取り残されて
 いる農民や内陸部の人たちの我慢が限界に近づいているからだ。しかし、その実現にも
 膨大な予算が必要になる。

 もう一つの国内要因は台湾問題だ。中国にとって国家統一の象徴が台湾で、台湾統一の
 旗を降ろすことはできない。他方、台湾では台湾人意識が高揚し、陳政権は台湾独立に
 向かうだろう。それに対して中国が使えるカードは軍事力しかない。

 ――ミサイル防衛(MD)の影響は?

 中国の国防には、米国から中国を守り台湾の独立を阻止するという二つの要求がある。
 米国に対する抑止力は核戦力しかない。米国がMD構想を実現させれば、これまで米国
 に攻撃されても数発のミサイルは生き残り、米本土に対する報復力を抑止力としてきた、
 最小限核抑止力さえも使えなくなる。中国が対米核抑止力を保持するためには、米国の
 MD網を突破する核戦力を備えるか、自前のMD網をつくるしかない。

 もっとも、米国がいきなり核を使うことは考えられない。中国を先制攻撃する場合は、
 トマホークなど精密誘導ミサイルを使うであろう。ミサイルに対する有効な防衛網を持
 たない中国は、バッファーゾーンを海洋正面に張り出し、米艦艇や潜水艦がトマホーク
 の射程内に入って来ないようにするしかない。そこに中国の海洋進出の狙いがある。

 従来は日本列島から沖縄、南西諸島、台湾、フィリピン、ミンダナオを結ぶ線を第一列
 島線と呼び、その内側を海上防衛の範囲としていた。しかし、それだと沿海地域はトマ
 ホークの射程内に入る。そこで中国は日本から小笠原諸島、グアムにつながる第二列島
 線まで海洋防衛の範囲を拡大しようとしている。こうした中国の海洋進出が米国を刺激
 し、日本にも大きな脅威を及ぼそうとしている。

 〇――〇

 ――台湾の武力統一は実際、可能なのか。

 台湾に対しては、通常兵器による局地戦での勝利が主な課題だ。台湾を占領するには二
 百`の海峡を越えて陸軍を輸送しないといけないので制空権・制海権を取る必要がある
 が、それは極めて困難だ。中国はロシアからスホーイ27、スホーイ30MKを買って
 いるが、台湾も米国からF15、F16を、フランスからミラージュを買っている。二
 〇一〇年には中国が優位になるとみられているが、それは台湾との比較であって、米空
 母が二、三隻来ると崩れてしまう。台湾は米国から潜水艦を買おうとしており、制海権
 でも中国が圧倒的に有利だとはいえない。

 そこで、中国が台湾の対岸にミサイルを五百基配備したといわれる。しかし、それを全
 部撃ち込んでも、台湾の支配はできない。台湾も山岳地帯の地下基地に戦闘機や戦車を
 隠しているので、中国軍が上陸すると反撃されるだろう。

 中国の国防の将来を考えると、海軍と核ミサイル、宇宙に行き着く。中国がMD網を備
 え、ミサイルの命中精度を向上させるためにも、宇宙情報が大きな意味を持つ。昨年秋、
 有人衛星の打ち上げに成功した中国は、米国、ロシアに次ぐ第三の宇宙大国になった。

 有人衛星に向けた神舟号は四回の発射実験の後、五回目の打ち上げで成功した。世界か
 ら人権軽視を批判されている中、失敗すると国家威信が大きく失墜する。そのため、中
 国は経済性を度外視して高い成功率を積み上げて打ち上げた。

 それは中国に宇宙大国としての自信をもたらし、波及効果としてミサイルの命中精度の
 向上などに応用されると見なければならない。さらに、偵察衛星の打ち上げなどで米国
 による宇宙の一極支配への挑戦も可能になりつつある。その点で中国は世界のトップレ
 ベルに迫りつつあり、米国にとって中国は挑戦する意図を持ち、パワーを付けつつある。

 ――日本はどう対応すべきか。

 今後、中国が軍事的にアジア地域の安全を脅かすのは海洋と宇宙においてであろう。そ
 れに対して日本はどうか。最近出た防衛計画大綱でも、武器輸出三原則やPKOをめぐ
 る議論などはグローバルスタンダードとは程遠いところで繰り返されている。米国の核
 の傘に守られた甘さがある。

 今の日本に最も重要なのは海洋戦略であろう。日本存亡の危機はシーレーンに起こる可
 能が大だからだ。中国の進出海洋には、日本の輸送船が通るバシー海峡、マラッカ海峡
 が含まれる。中国の狙いは明らかに西太平洋のシーコントロールにあるのに、日本は
 「排他的経済水域の周辺で違法な調査活動をしている」などの次元の抗議を繰り返すだ
 けだ。

 日本は四百五十万平方`の世界第六位の排他的経済水域を持つようになったが、その監
 視と管理を海上保安庁に任せている。総合的な海洋戦略を立て、本格的な対応をしてい
 かなければならない。海洋国家としての明確な海洋戦略を世界に示す必要がある。

 さらに、安全保障の専門家も含めた総合的な宇宙戦略の構築が必要だ。まして国会決議
 による「宇宙利用は平和利用目的に限る」という縛りを解除する必要がある。

 米国のリフォーメーションはアジア重視で、グアム基地を強化している。それが中国に
 は対中包囲網の構築に見え、対抗して海にバッファーゾーンを広げようとしている。

 将来、アジアの安全保障は日米中の関係がカギになる。日本は米国の核の傘と日米安保
 条約がないと存続できないが、例えば米中間を仲介するなど独自の役割を果たす気概が
 必要だ。そのためには、日本は中国に対して交渉カードを持ち、影響力を増さないとい
 けない。ODA(政府開発援助)も中国に対するカードとして考える必要がある。日本
 は中国をにらんだ海洋・宇宙戦略を立てると同時に、日米中を基軸にしたグローバルな
 戦略を立て、展開していくべきだ。

 かやはら・いくお 昭和13年(1938年)山口県生まれ。防衛大学校(第6期)卒
 業。陸上自衛隊入隊、師団幕僚長、防衛研究所研究部長などを経て平成11年(199
 9年)より拓殖大学国際開発学部教授。この間、英ロンドン大学客員研究員など務める。
 著書に『中国軍事論』(芦書房)、『安全保障から見た中国』(勁草書房)、編著に
 『中国空軍』(芦書房)、『中国の核・ミサイル・宇宙戦略』(蒼蒼社)、共著に『2
 020年の中国』(日本経済新聞社)など。
       Kenzo Yamaoka


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