1830.日中離反の仕掛け



米国の陰謀で日本と中国の関係を破壊しようとしている。 Fより

日本と中国の経済的な関係を面白くないと思っている欧米諸国が、
日本と中国の離反を仕掛けている。日本と中国の距離が近いことと
、ASEAN+3の東アジア共同体ができると、米国や欧州と中国
の友好な関係は日本の経済的な繋がりが強くなり、今までのような
欧米企業の優先性がなくなると見て、日中の反目を仕掛けている。

フランスの首相が、中国に行って日本の批判を行い、中国との関係
が強いことを協調している。中国の公共事業やビル建設に欧米企業
の参加が多い。しかし、日本企業の参加を阻止できないと、中国で
のビジネスがなくなると危機感を持っている。自動車で現に日本企
業が勝ち始め、優位にあったフォルクスワーゲン車が売れなくなっ
ている。欧州の危機感は相当なものである。

このため、欧米企業は中国企業と組んで、日本と中国との中間地帯
での石油発掘を仕掛けて、日本の世論に火をつけようとしている。
資源競争に持って行き、中国の反日感情と日本の反中感情を刺激し
ている。

また、米国は日本にワシントン州にある陸軍太平洋司令部を座間に
移転して、中国ミサイルの標的にして、日本にMD(ミサイル防衛
)を迫ってきている。これにより、日本での反中感情を高めようと
している。また、米国は台湾に中国からの独立を仕掛けさせて、中
国に台湾戦争を起こさせる陰謀をしている。そして、日本世論を台
湾独立支持にさせて、中国と日本を離反させようとしている。

米国国務省は東アジア共同体についても、米国の参加を求めている。
米国はアジア地域でのリージョナル覇権は日本ではなく、中国が取
ると見ている。この中国の民主化を進める必要があると米国は考え
ているようだ。

しかし、下手をすると日中が組み、米国の覇権を侵す可能性がある
とも見ている。そのために反日を中国に仕掛け、日本に反中を仕掛
ける必要があるとプログラムを組んで、実行し始めている。

この仕掛けに乗っているのが、国家神道、国粋主義者である。日本
企業が米国経済の調子がおかしくなっても、生き残るには中国ビジ
ネスしかないことを、あまりにも無視している。

一方、中国は当面民主化はしないが、米国との関係を良好にしよう
としている。米中関係を良好にしておけば、日本や台湾との問題も
米国との話しで片がつく。

米国のドル暴落は米国経済、特に消費経済に大きなダメージを与え
る。しかし、中国の元はドルリンクであるために、ドル暴落でも輸
出が落ちないどころか、輸出が増大している。この中国製製品の部
品を作っているのが日本企業で、中国の工場がフル回転すると、日
本企業の日本の工場もフル回転する関係にある。日本は中国とお互
いに補完関係にある。米国は中国との関係を中立的にしている。
あくまでも、日中関係を壊して、補完関係を崩したいのである。

増田俊男さんは米国のエイジェントであるために、米国と中国との
戦争があると宣伝している。そのようなことができないことは、イ
ラク核問題で明らかである。中国より先にシリア・イランでの攻撃
であり、その中東が片付いてからである。20年以上先にしか見え
ない。

中米戦争は日本だけに対して言っている事に注意した方がいい。中
国には米国は敵対的なことをしていない。あくまで、米国の日本向
き宣伝である。増田さんの記事は米国のエイジェントとして聞くべ
きだ。ハワイへの投資もおかしい。米国年金基金や米国ファンドが
日本のビルを買って、東京都市部はバブル期と同じような状態にな
っている。米国ファンドが日本に来るということは、米国投資より
いいからです。

今までは米国が覇権国家であり、世界が米国の意図どおりに動くこ
とが多かったが、もう世界は米国の思惑通りに動かない。特に欧州
ではそうである。しかし、ブッシュ政権はまだ日本だけは米国の思
い通りに動き、中国と離反して経済的な共倒れになるといいと思っ
ているようだ。欧州も期待している。欧米共通の意識である。
米国の経済的な問題が大きくなり、中国市場しか、日本製品より悪
い欧米製品を買ってくれるところがない。このために、中国での日
本排除なのである。

もう1つ、危ないのが、台湾独立宣言である。この独立宣言を行う
と中台戦争になり、日本も影響を受ける。米国は仕掛けだけして、
中国との戦争を日本だけにやらせる可能性がある。米国は中国に台
湾が独立する場合は支援しないが、台湾に武器を売る。

米国の福音派は、最後の審判で生き残るのは、敬虔なキリスト教徒
だけと信じている。アジアでの戦争で日本人、中国人が死ぬことは
神の道と見ている。

このような米国の手に日本は乗ってはいけない。日中友好の道を進
めるしかない。アジアの時代が直ぐそこまで来ている。その目を潰
すことはないように、ASEAN諸国と中国、韓国、日本で新しい
アジアを作ることです。
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東アジアサミットを来年開催へ ASEAN合意(ASAHI)

 東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国は29日、ラオスの
首都ビエンチャンで開いていた首脳会議で、初の「東アジアサミッ
ト」を来年、マレーシアで開催することで合意した。また、日本、
中国、韓国を加えたASEANプラス3首脳会議も同日、この決定
を支持した。サミットは将来の「東アジア共同体」の構築を見据え
ており、地域協力の強化に向けた新たな一歩になる。 

 27日のASEAN外相会議では、性格付けなどをめぐってさら
に協議が必要だとして、開催決定の先延ばしで合意していた。しか
し、この日の首脳会議で一転して開催が決まった。 

 今のところ、来年秋にクアラルンプールであるASEAN首脳会
議に合わせ、ASEANプラス3の枠組みを基本に開催される予定
。最終的な参加国の決定など詳細は、来年2月か3月にフィリピン
であるASEANの非公式外相会議などを通じて議論する。 

 新しいサミットについては、開催に賛成した首脳からも「ASE
ANプラス3の枠組みとの違いをはっきりさせるべきだ」との意見
も相次いでおり、調整に時間がかかる可能性もある。 

 また、この日のASEAN首脳会議では、共同体の実現に向けた
「ビエンチャン行動計画」を採択した。2020年までの共同体確
立に向け、当面6年間の取り組みを示す。安保、経済、社会・文化
の3分野で具体策を盛り込んだ。計画のため基金を設立することも
決めた。 

 会議終了後に発表された議長声明では、加盟国間の格差是正の重
要性を強調。朝鮮半島の核問題をめぐる6者協議の早期開催に期待
し、イラク復興では国連が主導的役割を果たすべきだとした。 
(11/29 22:57) 
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ラムズフェルド米国防長官が留任、強硬路線を継続

 【ワシントン=菱沼隆雄】米政府高官が3日明らかにしたところ
によると、ブッシュ大統領はラムズフェルド国防長官に政権2期目
での残留を要請し、長官も続投を受諾した。

 穏健派のパウエル国務長官の辞任は決まっており、来年1月から
の第2期ブッシュ政権では、タカ派の国防長官の留任で強硬な外交
・安全保障政策が定着するとの見方も出ている。

 ただ、ラムズフェルド長官が第2期政権の途中で辞任する可能性
は捨てきれず、続投が当面の間にとどまる可能性もある。

 米メディアによると、大統領がラムズフェルド長官に留任を要請
したのは11月29日。同高官は大統領からの留任要請について、
「我々は(従来と)異なる戦争を進めており、この戦いに勝つこと
が決定的に重要だ」と語り、イラク復興など大きな課題が残ってい
る現時点での国防長官交代は望ましくないとの判断を示した。
(読売新聞) - 12月4日14時2分更新
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東アジア共同体/日本の金融パワーが推進役に   
   
  ラオスの首都ビエンチャンで開催された東南アジア諸国連合
(ASEAN)首脳会議は、二〇二〇年までの「ASEAN共同体
」実現に向け、域内関税の引き下げなど今後六カ年の具体策を示し
た「ビエンチャン行動計画」を採択し閉幕した。
 ASEANは、政治、経済、社会の三分野で共同体創設を目指し
ており、今回の「ビエンチャン行動計画」採択で域内統合へ大きく
前進する足場を固めたことになる。

13カ国が対等に協議へ

 一連の会議で注目されたのは、自由貿易協定(FTA)を通じ、日本、韓国、中国との
 経済連携のありようを具体的に詰めたことだ。

 また、開催をめぐり調整が難航していた「東アジア首脳会議」構想は当初、ASEAN
 の求心力低下を危惧したインドネシアや中国の台頭を懸念したベトナムなどが「時期尚
 早」として反対していたが、来年から開催することで合意した。

 世界で地域統合が進む中、ASEANとしてはいつまでも先延ばしにするわけにもいか
 ず、日韓中三カ国との一層の関係強化に進まざるを得なかった。

 「東アジア首脳会議」は、ASEAN側が日韓中を招待するという形ではなく、ASE
 AN十カ国と日韓中を加えた十三カ国首脳が対等に協議する場で、自由貿易地域創設な
 どを含む将来の「東アジア共同体」の核となるものだ。

 日本は、「東アジア首脳会議」第一回会議で開催国のマレーシアと共同議長になること
 に意欲を燃やしている。「ASEAN共同体」形成と同時並行的に、「東アジア共同体」
 に向けた政治的会合の場ができたことを歓迎したい。

 ASEANをハブ(軸)にしてアジアが統合に向け動き出している流れを確かなものに
 し、「生命(いのち)の息」を吹き込むのは、各国に共通した政治的意思が不可欠とな
 る。
 その意思を強固なものに育んでいくためにも、「東アジア首脳会議」は存在価値が大き
 い。

 だが、アジアは歴史的確執の場でもある。核保有国であり第二次世界大戦後、三度も戦
 争を重ねたインドとパキスタンだけでなく、中国と台湾や韓半島も不安定だ。

 ASEAN内部でも、保守派で固まったミャンマー軍事政権やインドネシアのアチェ問
 題、タイ南部で今年既に五百六十人もの死者を出しているイスラム過激派によるテロ事
 件などさまざまな火種を抱えこんでいる。こうした分裂と軋轢(あつれき)を呼び込む
 諸問題を克服して、統合に向けた道を整備するには、主要国家のリーダーシップが欠か
 せない。
 その意味から、わが国は「東アジア共同体」実現に向けたカードを有効に使うことが肝
 要となる。東アジア域内の通貨安定に貢献できる金融パワーがそのカードの一つである。

 世界一の外貨準備高を保有し、世界最大の対外純債権国であり、世界第二位の経済規模
 を誇るわが国が、域内の通貨安定に貢献すべきことに疑問をはさむ余地はない。

 かつて欧州連合EUの金融統合にドイツが大きな役割を果たしたように、東アジアが金
 融危機に陥ることがないよう金融安全保障策を講じるため、日本が積極的なリード役を
 買ってでる必要がある。

日米関係を踏まえ対応を

 無論、手放しで東アジア共同体に邁進(まいしん)すべきではない。日米関係を踏まえ、
 欧米から、閉ざされたブロック経済圏ではないかと誤認されないよう開かれたものにす
 る気配りも忘れてはならない。(世界日報)掲載許可
       Kenzo Yamaoka
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中国が対ASEAN積極外交   
   
 「東アジアの盟主」も視野に
見返りに「市場経済国」認定
 ラオスの首都ビエンチャンで先月末、開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首
 脳会議は、二〇二〇年までの「ASEAN共同体」実現に向け、十一の産業分野で一〇
 年までに優先的に自由化を進める枠組みなどを定めた「ビエンチャン行動計画」を採択
 し閉幕した。一連の会議で注目されたのは、自由貿易協定(FTA)だけでなく安全保
 障問題などでも積極的なアプローチに出た中国のASEAN重視の外交姿勢だった。中
 国がASEANに急接近しているのは、「東アジアの盟主」を視野に収めた遠謀と、持
 続可能な経済成長を遂げるための環境整備という現実問題がある。

(バンコク・池永達夫)

 ASEANは政治、経済、社会の三分野で共同体創設を目指しており、今回の「ビエン
 チャン行動計画」採択で域内統合へ大きく前進する足場を固めたことになる。

 各国首脳で唯一、公式訪問の形とした中国はASEAN対話国の中で最多の四文書に調
 印した。ホスト国のラオスにも新たな経済支援を決めるなど気配りも忘れなかった。

 一方、ASEAN側が中国へのお土産に用意していたのは、世界貿易機関(WTO)協
 定上の「市場経済国」認定だった。中国はWTO加入時に市場経済国と認められず、こ
 こ九年連続してダンピング(不当廉売)認定世界一の不名誉な記録を残している。中国
 とすれば、不当な扱いを受けているという被害者意識が強く、各国に「市場経済国」認
 定を外交課題としている。

 一連の外交日程をこなした温家宝首相は二十九日、「ASEANとの関係は新たな段階
 に入った」と強調した。

 その中国とASEANは先月二十九日、ビエンチャンで首脳会議を開き、一〇年までの
 実現を目指す自由貿易協定(FTA)の具体的中身となる貿易協定と紛争処理メカニズ
 ム協定の合意文書に調印した。

 これで中国とASEAN双方は、来年七月から関税引き下げを開始。タイやマレーシア、
 インドネシアなどASEAN原加盟国六カ国は一〇年、後発ASEAN加盟国のミャン
 マーやインドシナ三国は一五年までに基本的に関税を撤廃することになった。

 また今回、中国がASEANと結んだ紛争処理協定は、海賊対策など南シナ海での協力
 関係強化が柱となっている。これは、同海域などで多発する海賊やテロ、密輸といった
 安全保障分野にも共同で取り組むというのが趣旨となっている。

 さらに、中国とASEANが調印した行動計画の中には、原油と天然ガスの探査・生産
 などエネルギーインフラの整備を推進するという項目も入った。中国はエネルギーの安
 定供給源の確保とともに、周辺諸国の対中警戒心を解き、良好な外交関係を保つことで、
 持続的な高度経済成長を保障する環境整備に余念がない。

 南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)は、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マ
 レーシア、ブルネイの領有権が絡んで、長年緊張関係が続いている。同諸島をめぐって
 は、一九八八年に中国とベトナムが武力衝突を起こすなど、過去に幾度となく緊張が高
 まった経緯がある。

 しかし、各国とも原油や天然ガスなど豊富とされる地下資源を共同で開発し、経済成長
 に欠かせないエネルギー源としたいのが本音だ。領有権という政治的メンツよりも、経
 済的実利を優先する姿勢が鮮明になっている。

 中国では国内の原油生産量が伸び悩み、旺盛な需要を賄うために輸入が急増している。
 日本エネルギー経済研究所によると、中国の年間原油需要量は二〇一〇年に三億六千六
 百万d、二〇年には四億四千六百万dに達する見込みだ。昨年比でそれぞれ一・五倍、
 二・四倍となる。中国の経済成長率が7%の前提で試算した数字で、現在の9%台成長
 が続くと、原油需要は一段と拡大する公算が大きい。わけても中国国内の原油生産が頭
 打ちとなる一方、需要は急増している最中だ。

 また、中国の台頭を促し、相対的にASEANの求心力を損なうものとして「東アジア
 首脳会議」構想はインドネシアやベトナムから「時期尚早」との声が上がっていたが、
 これに最も積極的だったのは中国だった。ASEAN側の招待国の中の一国でなく対等
 の立場になることで、「東アジアの盟主」につながる地域での影響力拡大の足場を築け
 るためだ。「東アジア首脳会議」では、来年のマレーシア開催に続き、早くも第二回議
 長国に名乗りを上げた。

 経済的実力を身に付ける一方、強力な軍隊を擁し、かつ毎年二ケタ台の軍事費増強路線
 を取る中国に対し、ASEANがどのように東アジア地域での主導権を確保しつつ、
 「東アジア共同体」形成に向けたリーダー役を果たすのか、これからがその正念場とな
 る。
 世界日報  掲載許可
      Kenzo Yamaoka
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トレンド『冷戦後の日中安全保障』を読む   
   
 正念場のソフトな対中封じ込め策
ラインハルト・ドリフテ著
 中国の原子力潜水艦が日本領海を侵犯した事件は、日中間のセンシティブな安全保障関
 係を改めて浮き彫りにしたといえよう。侵犯後、海上警備行動の発令が大幅に遅れるな
 ど初動態勢への課題、さらに中国原潜と断定するのに躊躇(ちゅうちょ)するといった、
 いわば中国に対し腫れ物に触るようなわが国政府の対応が露呈したのである。

 今回は中国側が事実上その非を認めたが、中国海軍の東シナ海進出が顕著になってきた
 現在、この種のトラブルは今後も起きる可能性がある。ただ、こうした事態にどう冷静
 に対応し、収拾を図っていくか。これが両国間の重要な課題になってこよう。今回のよ
 うな軍事的ケースでなくても、外交を含む広義の安全保障面でも然りである。

 そのためには、日中間に横たわる歴史的な安全保障の相克を理解しておくことが肝要だ
 ろう。本書はその点で日本と中国の安全保障政策に通じた著者が、双方の安全保障専門
 家に取材した豊富なデータ、資料、見解をベースに日中安全保障の在り方を丹念に分析
 し、問うている。

 まず、指摘すべきは、中国にとって日本との安全保障問題は対日関係の枠組みだけでは
 論議できないということだろう。

 中国にとって最大の安全保障のライバルは米国であり、米国がアジアで覇権を握り、そ
 してその覇権の基盤となる同盟(日米安保条約)の強化を警戒している。TMD(戦域
 ミサイル防衛)の配備問題や、台湾をも対象にした新日米ガイドラインへの強い警戒感
 はその表れだ。中国としては、日本が外交・安全保障面で米国に追従する国であり、そ
 れゆえいかなる利益摩擦も、米国が最終的な裁定を下す立場にあるとみている。

 一方、日本の対中外交の要諦(ようてい)は、実は「エンメッシュメント(網にかける)
 」政策だと著者は言う。つまり、中国を「無責任」な国であり続けさせないために、で
 きるだけ多くの国々とともに、中国に対する軍事的抑止と勢力均衡に努める「ソフトな
 封じ込め」策である。これにより、中国を西側主導の国際的規範と制度から成る世界秩
 序の参加者へと転換させようという試みなのである。

 政府開発援助(ODA)を含む対中経済援助を柱にした経済面での「エンメッシュメン
 ト」策は一定の成果を収めている。安全保障面でも日本はアジアの国々と積極的に防衛
 交流を進めており、それに中国を組み入れようとの狙いだ。

 著者は、こうした中国を多国間経済体制さらには安全保障体制に組み込んでいく努力を
 進めていくべきだと強調している。さまざまな相克を持つ両国だけに、特に安全保障分
 野では冷静な論議が求められる。本書はそうした論議の土俵にふさわしい幅広い歴史的
 考察に裏打ちされた解説・分析となっている。黒木正博  世界日報 掲載許可
 
      Kenzo Yamaoka
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在日米軍再編を加速―2期目のブッシュ米政権   
   
 日本の防衛役割分担拡大に向け米国からの圧力強まる
 ブッシュ米大統領再選、ライス次期国務長官指名により、ブッシュ政権の外交・安保チ
 ームの結束が強化され、米国の軍事戦略と外交政策がより一貫した形で展開される見通
 しが強まっている。国防総省を中心に進められている軍のトランスフォーメーション
 (変革と再編)がより直接的に外交に反映されることになりそうだ。それに伴い、在日
 米軍の再編が加速し、日本の防衛役割分担拡大に向けて米国からの圧力が強まる可能性
 がある。(ワシントン・横山裕史)
 ブッシュ政権の一期目には、米政府外交・安保閣僚の軸となるパウエル国務長官とラム
 ズフェルド国防長官が穏健派と強硬派に分かれて対立したため、外交政策の展開が一貫
 性を欠くものとなった。しかしパウエル長官の後任に指名されたライス氏は、長年ブッ
 シュ家と家族同様の付き合いをし、ブッシュ大統領がテキサス州知事だったころからそ
 の外交問題の指南役を務めてきた。ブッシュ大統領の「オルター・エゴ(分身)」と言
 われる。考え方もブッシュ大統領に近く、テロやならず者国家に戦いを挑む強硬姿勢か
 ら、ホワイトハウスでは「戦うプリンセス」というニックネームで呼ばれていた。パウ
 エル長官は今年のワシントン・タイムズ紙とのインタビューで、閣僚の保守傾向の度合
 いについて、「ダン(ラムズフェルド)とコンディ(ライス)を80から90の間とすれば、
 自分はさしずめ60か65だ」と述べたことがある。保守・強硬派の度合いからすれば、ラ
 ムズフェルド国防長官とライス次期国務長官は似たもの同士ということだ。

 ブッシュ大統領は二期目の外交・安保政策の最優先課題がテロとの戦いの継続にあるこ
 とを明確にしている。二期目には、テロとの戦いを中心に軍事戦略と外交政策が一体と
 なって展開されるということだ。ラムズフェルド長官とライス長官が仲良くやってゆけ
 るか懸念する向きもあるが、ライス氏は一期目、幾度も決裂しそうになるラムズフェル
 ド、パウエル両長官の間を取り持ち、調整役をこなしてきた。少なくとも一期目のよう
 な軍事・外交の分裂症的兆候はなくなるはずである。

 ブッシュ政権二期目の軍事戦略の焦点は、イラクの治安回復とテロ・武装勢力の鎮圧、
 パキスタン、アフガニスタン、イランなどその他のテロ拠点地域におけるテロ・武装勢
 力との戦闘などテロとの戦いであり、もう一つはテロとの戦いに勝てる軍隊を作るため
 の米軍の変革と再編である。

 その二つのいずれも日本の進路に直接響いてくる。前者は自衛隊のイラク派遣問題であ
 り、十二月十四日の派遣期限切れを前に日本政府は自衛隊の駐留延長を検討している。
 後者はテロとの戦いという米国の新世界戦略に沿って進められようとしている在日米軍
 再編問題であり、それに呼応する形で検討されている日米安保再定義、新防衛大綱など
 で、政府はミサイル防衛システム開発・生産・配備を可能にするための武器輸出三原則
 の緩和、自衛隊の国際協力活動の「付随的任務」から「本来任務」への格上げを検討中
 だ。二つのうちで、日米関係により長期的かつ根本的な影響を及ぼすのは、米軍の変革
 と再編の一環としての在日米軍再編である。

 米軍の変革と再編は、今に始ったものではない。ラムズフェルド米国防長官らはブッシ
 ュ政権発足前から、世界における脅威がソ連崩壊後にソ連・東欧圏の戦略核兵器から、
 ならず者国家や国際テロなどに変質することを予測し、それに伴う軍の改革を呼び掛け
 てきた。ラムズフェルド長官はブッシュ政権入閣とともにその変革に着手していたが、
 九月十一日同時多発テロで国際テロという新しい脅威が具現化し、軍の変革と再編が一
 挙に緊急課題としてクローズアップされてきた。

 変革と再編には二つの焦点がある。第一は、米国が誇る情報通信技術を駆使し、装備を
 ハイテク化して米軍を変革し、効率的で機動的な軍組織に再編成することである。第二
 は、冷戦時代および一九九〇年代を通じてソ連・東欧圏の戦略核・戦域核の脅威に対処
 するため欧州、極東に十万人ずつ展開されてきた米軍を、テロ、宗教・民族紛争が集中
 する北アフリカ、中東から東南アジアにかけての「不安定の弧」に沿って移転、再展開
 することである。

 この米国の軍変革・再編において、日本は主要な戦略拠点として位置付けられている。
 中東からアジアにかけての「不安定の弧」を活動範囲とする米陸軍第一軍団の司令部を
 ワシントン州から活動の前線に近い日本のキャンプ座間に移転する案が浮上しているの
 もこのためだ。日本政府は日米安保を極東に限定して考えているが、米国は太平洋地域
 から中東に及ぶ広範囲な地域を日米安保協力の対象範囲と考えているフシがある。米国
 は今後同盟関係を維持・継続するためには、日本の安保協力への考え方をも変革しなけ
 ればならない必要に迫られている。これまではブッシュ政権の外交・安保スタッフの内
 部対立で対日圧力が分散してきた感があるが、内部対立が解消され、ライス・ラムズフ
 ェルド・チームで外交と軍事が表裏一体で動き出すようになれば、日本の防衛分担拡大
 への圧力がより直接的に加わるようになる可能性がある。世界日報 掲載許可
 
      Kenzo Yamaoka
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地殻変動の進む世界の政治・経済   
   
 二期目のブッシュ政策の方向性/日本は英国の立場と役割に注目を
経済評論家 鳴澤 宏英
米は欧州との関係修復不可欠

 世界の政治・経済は、今や地殻変動のさ中にある。まずイラク情勢が泥沼化で、内外の
 批判が高まったにもかかわらず、大統領選挙に完勝したブッシュ政権は、保守化の路線
 を堅持するであろう。その結果、米欧間の価値観の違いが浮き彫りとなりつつある事実
 は否定すべくもない。フランスでは、米国は火星(Mars−戦<いくさ>の神)から、欧
 州は金星(Venus−愛の女神)から来たとの比喩が語られていると聞く。明らかに身び
 いきと嫌米感情をあらわにしたものだが、理解できる面もある。

 次の選挙を意識する必要のない二期目のブッシュ政権は、再選の支持基盤となった新保
 守主義とキリスト教原理主義という二本の柱を重視し、その堅持に努めるであろう。し
 かし他面、後世に名を残すかたちで任期を終えたいとの思いが強いことは想像に難くな
 い。それには欧州との関係修復や国連の役割重視など一定の軌道修正が不可欠ではなか
 ろうか。

 そう判断する理由の第一は、当面のヤマ場である来年一月のイラクの国民議会選挙、さ
 らにはその後に控える憲法制定、大統領選挙を成功させる必要がある。そのためには欧
 州や国連との協調と協力が不可欠、米国単独でそれをなし遂げることは至難のわざであ
 るからだ。

 第二は広義の戦費の負担は増大する一方だ。イラクに続き、「悪の枢軸」の烙印を押し
 たイラン、北朝鮮の問題解決も巨額のコストを要する。財政赤字がすでに許容限度を超
 えている折から、任期中の財政赤字の半減の公約を果たす見通しが立たなければ、その
 先にドルの暴落、長期金利の暴騰ひいては米国経済の没落の始まりという「悪魔のシナ
 リオ」が見えてくる。それを回避して始めてブッシュ大統領は、9・11のトラウマから
 米国民を解放し、国際社会における指導的地位を保持し得た大統領として、歴史にその
 名を残すことができよう。

米欧を仲介するブレア英首相

 このような筋がきを念頭に置くとき、まず注目されるのは、長年の盟邦である英国の地
 位と役割。大統領選の直後に、いち早く訪米したのはブレア首相だが、そのこと自体両
 国の同盟関係を考えれば、異とするに当たらない。重要なのは米英首脳会談の背景とそ
 の中身である。

 指摘すべきは、第一に米欧関係修復にブレア首相が仲介役を買って出たことである。第
 二は、大統領選挙の結果を受けて開かれたEU(欧州連合)首脳会議で集約されたEU
 側の意向を米国側に直接伝えたこと。そして第三は英国の国内事情である。すなわち首
 相の対米追従の姿勢を、ブレアはブッシュの「プードル犬」として批判する世論の高ま
 りに対して、来年春に下院選挙を控えるブレア首相、彼の率いる労働党としては、国民
 に対して、対米外交の主体性を誇示し、単なる「忠犬」でもまた欧州の一地方でもない
 ことを強く印象づけることが不可欠だ。こうした動きは始まったばかり。今後の展開を
 見守らなければならない。ただ来年の選挙は、国内の逆風にもかかわらず野党(保守党)
 の明らかな劣勢によっておそらく勝利を収めるであろう。

 右に関連して留意すべきは、海外に展開する米軍の再編である。北アフリカ、中東から
 北東アジアに及ぶ「不安定の弧」(Arc of Instability)への機動的対応を強化するの
 がその目的。その場合、片や英国は大西洋の、片や日本は太平洋の対岸に位置し、地政
 学的にも米国の軍事戦略の面でも東西の要(かなめ)の位置にある。その意味で英国の
 対米外交は、わが国にとって多くの示唆を与えるものとして見守ることが肝要だと思う。

国益踏まえ米に要求と助言を

 ところで最近米欧の歩み寄りについて、ふたつの注目すべき動きがみられた。その第一
 は、イランの核開発問題について、英独仏三国とイランとの間で大枠合意が成立したこ
 と。米国は依然国連安保理付託の強硬姿勢を崩していないが、欧州側に歩み寄る可能性
 は十分あると考える。

 第二は、イラクの対外公的債務の削減について、わが国を含めた主要国間の合意が成立
 したこと。産油国であるイラクに対する債務削減は50%程度とする欧州側(とくにフラ
 ンス)の主張に対し、米国はイラク側の負担軽減のため90%の高率を求めてきた。これ
 について、三段階方式、すなわち〇五年に30%、IMF(国際通貨基金)のプログラム
 の決定時に30%、その実効を見定めて〇八年までに20%、計80%とする案で妥協が成立
 したのである。以上ふたつの動きは将来に向かって明るい展望を開いたものと評価され
 る。

 世界的な地殻変動の対応については、すべての局面で主要国間、さらには国連の場にお
 ける国際的な協力と協調が欠かせない。わが国としても、英国の例に倣って、米国に対
 して国益を踏まえた要求をし、また助言を積極的に行うべきである。それは小泉政権が
 ぜひともなし遂げなければならない第一の外交課題たるを失わない。それが実現すれば、
 わが国の国連安保理の常任理事国入りは、米国に二票を与えるだけのこと―との海外の
 批判に応えることともなるであろう。(世界日報)掲載許可済み
       Kenzo Yamaoka
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ドル急落阻止の日経、朝日の社説は時宜を得たものの   
  
 ドル急落阻止の日経、朝日の社説は時宜を得たものの、国際政策協調という視点が足りず
新聞
FRB議長が引き金
 グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が先々週末の十九日に講演を行い、
 「米国の経常赤字の規模からみて、いずれかの時点でドル資産への投資意欲の減退が起
 こるはずとみるのが説得的であるし、(急激なドル安に対処するための通貨当局の大規
 模介入は)持続的な効果を持たない」と発言したことから、先々週末から先週初めにか
 けてドル安の流れが一段と加速した。

 その後、先週末にかけてドルは東京やロンドン、ニューヨークの外為市場において、終
 値ベースで一ドル=一〇二円台前半まで下落した。一〇〇円割れをうかがう情勢だ。

 今年十月以降のドル安の主因は、二〇〇四会計年度(〇三年十月−〇四年九月)に四千
 百二十五億ドルもの規模に達した米国の巨額の財政赤字と、〇三年に過去最大の五千三
 百六億ドルに達した大幅な経常赤字の“双子の赤字”。同国は大幅な経常赤字を埋める
 ために、海外からの資金流入に頼っている現状だが、対欧州などを中心にその資金流入
 がこのところ先細り傾向を強めている。

 グリーンスパン議長は米国の大幅な経常赤字が縮小しなければ、同国への対米投資、す
 なわち資金流入の道は断たれると発言したわけだから、ドル安が加速したのも当然であ
 る。このまま放置しておけば、ドル暴落、株暴落、債券暴落のトリプル暴落が生じ、同
 国はもちろん世界経済に重大な悪影響を与えかねない。事実、十九日の同国金融市場で
 はトリプル安が生じた。

政策協調に言及せず

 ブッシュ大統領は、チリのサンティアゴで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APE
 C)の首脳会合で、強いドルを支持することを強調したが、具体策を伴う発言ではなか
 ったため、ドル安の歯止めにはならなかった。こうした経緯を踏まえ、日経、朝日は社
 説で、ドル安ないしドル暴落を防ぐための具体策を求めている。時宜を得た社説ではあ
 ったが、国際的な政策協調への言及がなかったことに物足りなさを感じた。

 日経は二十二日付の「『強いドル支持』なら具体策を」と題する社説で、「ドル相場の
 急落は米経済にとっても、世界経済にとってもマイナスだ」と述べ、@ドル安が進んだ
 場合の日米欧を中心としたドル買い介入を実施することA米政府が来年初めに発表する
 予算教書に、巨額な財政赤字の削減策を盛り込むこと――の二点を求めた。

 一方、朝日も翌二十三日付の「米は赤字削減へ行動を」と題する社説で、@ブッシュ政
 権が第一期に行った大型減税策を見直す(大型減税の恒久化を実施しない)A一ドル=
 一〇〇円を突破するような急激な通貨の変動に対しては、米国も含めたドル買い協調介
 入を行う――ことを求めている。

日欧の内需努力必要

 二紙とも同様の見解であり、それはそれで正しい処方箋ではある。しかし、今日の米国
 の財政・貿易の双子の赤字の原因としては、@日本や欧州連合(EU)が米国の内需拡
 大に依存した外需主導型の経済運営を行っていることA米国が生産や雇用の海外移転を
 一段と推し進め、国内産業や国内雇用の“空洞化”が目立ってきていること――などが
 考えられる。

 従ってここは、@米国が増税や歳出削減を行うことによって内需と、従って輸入需要を
 抑制し、それによってもたらされる金利低下による緩やかなドル安で輸出を増やすA日
 本や欧州はもちろんブラジル、ロシア、インド、中国などの新興工業諸国(BRICs)
 は内需拡大に努めるB緩やかなドル安を実現するための為替介入を行うC日中韓三カ国
 と東南アジア諸国連合(ASEAN)は自由貿易による緩やかで自律的な経済共同体を
 形成し、米国依存の経済構造から脱却する――といった国際的な政策協調が必要なとこ
 ろであろう。

 日経や朝日の社説にはこうした国際政策協調の視点が欠けていた。時宜を得た社説であ
 るだけに、もう少し突っ込んでいたら良かったと思う。(野村道彰)世界日報 掲載許
 可
     Kenzo Yamaoka
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対情報活動能力の向上図る   
   
  米国は外国のスパイに対して、カウンターインテリジェンス(CI、対情報活動)能力
 を向上させ、今以上に攻勢を掛けようとしている。
 全米のCIを横断的に統括するミシェル・バン・クリーブ氏は先週、ポトマック政策研
 究所で行ったスピーチで、CIはスパイを無力化する以上のことを意味する、と語った。

 「CIには、あらゆる活動が含まれる。人間によるもの、技術を生かしたもの、国内で
 も国外でも、外国の情報活動による脅威を発見、評価、無力化、利用するために実施さ
 れるものだ」とするとともに、米国のCIはこれまで、「この野心的な計画に責任を持
 つ者がいないことから」ばらばらの状態にあったと指摘した。

 「米国に敵対する情報機関は、連邦捜査局(FBI)の捜査員や中央情報局(CIA)、
 軍の部隊をターゲットにすることはない。狙われるのは米国だ。国家の安全のため、C
 Iに戦略的に取り組まなければならない」

 ブッシュ大統領が、CI戦略を見直すため、米国のCI計画を整理統合し、さらに効率
 を高めることを計画していることを同氏は明らかにした。

 「私の考えでは、米国のCIは、全世界での対テロ戦の戦略的重要性に匹敵する価値を
 持っている。国家の安全を維持するため、米国のCIは、状況に対応する戦略から、事
 前に状況の変化に対処する戦略へとシフトする必要がある」

 攻撃的CIとは、問題を戦略的に評価すること、「敵の存在、能力、意図を察知する」
 ことだ、と同氏は指摘した。

 「それには、戦略的CIにより、外国の情報機関を組織的に攻撃することも含む」とい
 う。

 「攻撃的CIは、さらに広い意味では、新しい脅威を抑制したり、形成したりすること、
 また重要な決定に影響を与え、弱点を覆い隠し、外交的目標を追求し、交渉のテーブル
 であれ戦場であれ、優位に立つために利用することができる。戦時には、敵の情報収集
 能力を破壊しなければならない。敵がわれわれを欺こうとすることもある。これも破壊
 の対象となる」

 イラク戦争では、敵の情報機関を無力化することが戦争に勝つために不可欠であること、
 衝突が起きてからではなく、事前に計画をよく練っておくことの大切さが、改めて見直
 された。
(十一月二十六日)(ビル・ガーツ&ロワン・スカーボロー)世界日報 掲載許可

     Kenzo Yamaoka

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