1816.米国:世界覇権の放棄



ブッシュ次期政権の陣容と今後の覇権がどうなるかを考察。Fより

ブッシュ次期政権は、一期目より非エリートの政権になる。アーミ
テイジの後任にボルトンとなると、ボルトンはネオコンの主流であ
るから国務省もネオコンが主流になり、国務省改革が動き始める。

どうこの国務省改革をライスが抑えられるかになる。私の見解は限
界があると思う。ライスはブッシュ1期政権でも中核にいたわけで
はなかった。

ブッシュはチュイニーやラムズフェルドの強行な案を吟味するため
、ライスに反対意見も聞かせていただけである。このため、ライス
の影は薄かった。それより国務省改革と言っていたネオコンの主張
が通り、ネオコンやチェイニーの力が増す方向になる。

そして、欧米協調のために、イスラエルを抑える政策を提案したが
退けられて、パウエルは自分の出番がないと辞任したようだ。その
情勢でライスが国務長官となっても、限界がある。

そして、ブッシュは今まで米国を担っていたエリート組織を解体す
るようである。米国の覇権はCIAの仕掛ける陰謀と国務省の外交
の2本柱によって成り立っていた。国防省は脇役でしかなかった。

CIAは反米組織を潰して、中南米を米国圏としていたし、ソ連に
対応していた。その覇権維持組織を改革して無力にする。このため
CIAの幹部が次々と止める事態になり、米国は陰謀さえできない
大国になることが確実になったようである。

今後は衛星写真NRAや電話盗聴エシェロンが中心のスパイとなり
人間中心のヒューミットはほとんどなくなるということだし、現地
新聞や動性情報の収集も弱くなる。CIA予算を大幅に縮小するた
めに、現地語ができる要員がいなくなる。

このため、イラク戦争でも現地の情報が取れないで、ミスジャッジ
しているようであるが、軍事力で押しつぶせば、現地の感情など関
係ないということのようですね。この結果は悲惨なことになると思
うが、もう少し待てば分かる。

一方、ラムズフェルド辞任はないのでしょうね。イラク戦争を、
ここまで混乱させたのはラムズフェルド戦略の失敗ですが、どうも
辞任なし。チェイニーからの信頼が厚いためでしょうね。

米国の覇権を維持してきたエリート組織CIA、国務省を壊すブッ
シュは、ドルの基軸通貨維持にも無頓着である。とうとう、通貨の
番人であるグリーンスパンもドル暴落が起こることはしょうがない
といい始めている。覇権の源泉である陰謀、基軸通貨ドルを壊すこ
とを厭わないブッシュ政権は、世界の覇権を放り投げるのでしょう
ね。その維持自体が東部エスタブリシュの利益で、ブッシュ支持の
田舎の利益になっていないと思っているようだ。

お金を稼いで田舎を助けているのが都市の大企業であるとは認識で
きないようです。それほど、東部のエリートを毛嫌いして、米国の
国力を減退させることになる。財政赤字も拡大の方向であるし、年
金は止める方向だし、米国の平均的な国民は益々貧しくなるでしょ
うね。

このようにエリートを嫌って世界覇権を米国は放り投げ、それを拾
うのは、EUか中国でしょうから、ここ当分、世界動向から目が離
せないようですね。米国はEUではなく、中国の民主化ができれば、
中国に覇権を託す可能性もある。もう北朝鮮問題など東アジアの問
題を中国に丸投げしている。

海軍大学教授バーネットの戦略も国際戦略の専門家には評判が悪い
が、米国のネオコンの走狗、国防省のスタッフとバーネットが共同
で研究した戦略であり、この方向で米国は動いている。中国を抱き
こみ、中東に米軍を集中させて、米国の手中に石油を収めて、世界
覇権は諦めるにしても、世界経済を牛耳ろうとしているように感じ
る。

米国経済の利益に中東は大きな役割を占めるが、アジアには米国の
経済に利益になることがない。このため、米国はアジアに興味がな
い。どうして、親米派には、そこが分からないのであろうか?この
ため、反中国主義に米国はない。

そして、とうとう、ロシアがドルリンクからユーロリンクに移行す
ることになり、かつ中国が通貨バスケット制に移行するといい始め
ている。これはドルの基軸通貨を弱めることになる。米国も同意し
ているために、益々、ドルを維持することができなくなり、ドル暴
落で世界から安い製品が補給されなくなり、反対に中国製品が米国
では高くなり、中国経済、日本経済は米国需要がなくなり、景気後
退になる可能性が出てくる。

1つだけ、景気後退にならない場合がある。それは中国の国内市場
が自律拡大するときである。ここに期待をしたいですね。日本とし
ては。そうしないと、日本を支えているのは現在米国投資家であり
、中国の特需である。米国投資家としては円高になると、日本の案
件が高くなり、投資できなくなる。このため、この2つ共になくな
る事態になる。それは日本としては、大きな痛手であろう。

もう1つ、米国離れをする必要がある。特に経済面からそうする必
要が出てくるでしょうね。米国の需要が落ちることになる。米国に
進出している日本企業の利益を確保できなくなる事態を想定してお
いた方がいい。これに比べると、安全保障面(日米安保)は、それ
より後でいいと思うがどうでしょうね。
==============================
国務省高官退任 とら丸   2004/11/17 07:34 
   
パウエル国務省長官とアミテージ同副長官が辞任する。これで米国
はさらに孤立する可能性大。欧州との亀裂はさらに拡大。米国の国
際派は危機を感じる。しかし大多数の米国国民はあまり外交に興味
はなく、戦争屋が主導する米国は世界各地の紛争処理で経済は破綻
する。このとき米国民は初めて自分たちの馬鹿さ加減に気づく。 
==============================
アーミテージの後任 YS   2004/11/17 14:26 
   
 Among the most widely mentioned of Mr Armitage's possible 
replacements is John Bolton, a notable hawk on Iran and 
North Korea, and vigorous critic of the UN.

Rice named Secretary of State in boost for hawks
By Rupert Cornwell in Washington

17 November 2004
http://news.independent.co.uk/world/americas/story.jsp?story=583659 
==============================
Re:アーミテージの後任 アルルの男・ヒロシ  URL 2004/11/18 08:41 
   
本日の産経新聞では、ボルトンの他に、グリーンの名前すら挙がっ
ていましたね。それでNSCアジア上級部長には、ビクター・チャ
ジョージタウン大学教授の名前が・・・。
二人とも長島さんのお友達ですね。

ネオコンのボルトンと、セントリスト(中道派)のグリーン。
というところで話は動いているようですね。国務次官にボルトン、
国務次官補にグリーンでバランスを取る?同盟国の「お守り」は現
地語が話せないと無理じゃないかな。パウエルは留任の条件に、イ
ランへの関与政策とシャロン政権への強硬姿勢をあげて、ブッシュ
に蹴られたらしい(ポスト報道)です。イランの件は、欧州で押さ
え込めるかどうかがヤマでしょうが、どこかで米国が交渉をつぶす
可能性もありますね。

それにしても、ブッシュも「愛人」を国務長官に据えるとは思いま
せんでした。

article | Posted March 18, 2003

A Lesson in Diplomacy
by Juliet Johnson
http://www.thenation.com/doc.mhtml?i=20030331&s=johnson 
==============================
国務長官にライス氏 新補佐官にはハドリー氏

【ワシントン16日共同】ブッシュ米大統領は16日、辞任を発表
したパウエル国務長官の後任に側近のライス大統領補佐官(国家安
全保障問題担当)を指名すると発表、ライス氏の後任には国家安全
保障会議(NSC)ナンバー2のハドリー大統領副補佐官を昇格さ
せる方針を明らかにした。
 来年1月20日の大統領就任式後、上院で承認へ向けた審議が行
われる。審議は比較的順調に進むとみられ、承認されれば米史上初
の黒人女性の国務長官就任となる。
 大統領補佐官には承認手続きが必要なく、ライス氏の長官就任を
受けてハドリー氏が正式昇格するとみられる。
(共同通信) - 11月17日8時1分更新
==============================
400字で斬る国際情勢ニュース(797)
◆失意のパウエル、政権去る◆
(2004/11/17)

 ブッシュ米政権にあって「外交」を担当してきたパウエル国務長
官が辞任する。「軍事」を担当するラムズフェルド国防長官辞任の
話は今のところ漏れてこない。副大統領に保守の巨魁チェイニー氏
を据え、第2次ブッシュ政権は、とめどもなく右旋回する可能性が
出てきた。

 パウエル長官に続き、エーブラハム・エネルギー長官、ベネマン
農務長官、ページ教育長官も辞任する。国務相では知日派のアーミ
テージ国務副長官も政権を去る。全15閣僚のうち、これで少なく
とも6閣僚が政権を去ることになる。政権内ネオコンの包囲網の中
、パウエル長官は遂にその真価を発揮することなく終わった。

 1990─91年の湾岸危機・戦争で、シリアやエジプトも参加
する多国籍軍をまとめ上げ、クウェート解放のグランドデザインを
立案・実行したパウエル氏にとって、単独行動主義、いわゆるブッ
シュ・ドクトリンは、長い軍歴に基づく己の信条に必ずしも沿った
ものではなかった。

 外国での高い評価にもかかわらず、米国内での国務長官としての
パウエル氏の力量に、疑問を呈する声は、少なくない。ネオコン内
では、パウエル氏を放逐して国務省改革を声高に叫ぶ論者が多い。

 パウエル長官が国連で切々と訴えたイラク戦争の大義も、大量破
壊兵器(WMD)が遂に見つからず、基になった米中央情報局
(CIA)情報が誤りだったことが判明してしまった。立つ瀬がな
いとはこのことであろう。

 後任にはライス大統領補佐官(国家安全保障担当)が確実視され
ている。初の黒人女性国務長官だ。が、国際協調派とネオコンの間
に立って外交の舵取りができるか未知数だ。結局のところ、どう転
んでも、第2次ブッシュ政権が現在よりも左旋回することはない。
右旋回の可能性が高く、よくて現状維持路線だ。(了)

国際ジャーナリスト連盟(IFJ)会員
国際情報ファイル・深層海流主幹 石川純一(文責)
==============================
CIA幹部相次ぎ辞任 ゴス新長官改革で軋轢 再編法案にも飛び火か

 【ワシントン=近藤豊和】米中央情報局(CIA)で上級幹部ら
が相次いで辞任を表明、背景に、ゴス新長官が進めるCIA改革を
めぐる軋轢(あつれき)が指摘されている。
 ブッシュ政権はテロ対策強化に向け情報機関の再編を二期目の主
要課題の一つに据えているが、その本丸の内紛は再編法案の議会審
議にも飛び火しそうな雲行きとなっている。
 米国内報道よると、CIA情報収集部門トップのスティーブン・
キャップ氏とナンバー2のマイケル・スリック氏が十五日に辞任を
表明した。これとは直接関係ないものの、ゴス氏が長官に就任する
まで長官代行を務めたマクローニン副長官も先週末に退官を表明し
た。
 ゴス氏は、前職の下院議員(共和党)時代にスタッフとしていた
パトリック・ムレイ氏を長官上級顧問に任命し、CIA内部の大幅
な改革を九月の正式就任直後から積極的に進めようとした。
 キャップ氏らは、「ムレイ氏らは内部事情を知らないにもかかわ
らず、無理な改革を進めようとする」と、批判していた。
 ゴス氏は一九六二年から九年間、CIAに勤務してキューバ危機
などで秘密工作に従事した経験があり、下院で情報特別委員会委員
長も八年間務めており、情報機関ににらみのきく人物として、ブッ
シュ大統領の強い要請で長官に任命された。
 ゴス氏は、二〇〇一年の米中枢同時テロを検証した独立調査委員
会の勧告による情報機関再編の動きの中で長官に就任しており、大
統領も同氏がCIAに大なたを振るうものと期待している。
 ゴス氏とCIA内部上級幹部らの軋轢について、情報機関再編の
関連法案を審議中の議会は早くも反応を示している。共和党のマケ
イン上院議員らが「大幅な改革は不可欠だ」とゴス氏を援護射撃し
ているのに対し、民主党のレビン上院議員らは「外部から連れてき
た側近を使う改革には無理がある」と、ゴス氏に対する批判を強め
ている。
(産経新聞) - 11月18日3時40分更新
==============================
では,なぜブッシュは再選できたのか?
http://mltr.e-city.tv/faq14.html#01221e
【回答】
以下のような見解がある.

 ブッシュに再選を果たさせたのは、マイケル・ムーアを先頭に、
ブッシュを(その支持者を)バカバカバカと言い続けてきた(いや
、言うことの快感に酔っていた)反ブッシュの人々の、その態度な
のだ。

 一番ヒドイと思ったのは、ケリー支持=都市部中心、ブッシュ支
持=地方中心というデータを受けての、農村地帯批判が盛り上がっ
ていること。無知な田舎の牛飼いや農耕者には投票権などやらずに
、教養ある都市圏の人間だけで大統領を選出し、世界を動かしてい
こうということか。
 思わず苦笑する。教養人という人たちは、やはりホンネのところ
では民主主義がお嫌いらしい。
あんたがたのそういうホンネを敏感に感じ取った人々が、唯一の自
分たちの武器である一票を有効に使ったことによって、ケリーは敗
北を喫したのである。
 彼らが食べる小麦も、大豆も、牛肉も、みんな地方の田舎者が作
っている。それらを飽食しながら自分たちを啓蒙しようとする奢っ
た文化人たちへの、今回の選挙結果は痛烈な返礼だ。

 私は、2003年3月28日の日記で、今回の選挙結果の先取り
とも、言えば言えないこともない事実を指摘している。 
http://www.tobunken.com/olddiary/old2003_03.html
「N.Y.や西海岸あたりの知識人が、ブッシュの無知をあざ笑え
ばあざ笑うほど、彼の支持基盤であるテキサス等、中央部でのブッ
シュへの肩入れは強固なものになっていく。
 忘れてはいけないが、アメリカという国は基本的に田舎者が大多
数の国なのだ。知識をひけらかし自分たちをバカにする都会ものに
対する、純朴な良き農民、牛飼い、季節労働者たち非エリート層の
反発がブッシュの力だ。
 彼らは、アメリカ人のアイデンティティを奪おうとするインテリ
たちに、根本的なところで抜きがたい不信感を持っている。
 ブッシュはそこをうまい具合にすくい上げ、強いアメリカ、不正
の前に屈するよりは名誉ある孤立を選ぶアメリカのイメージを自ら
の上に重ね合わせている。

 ものを知らない、よく言い間違いをする、文法を誤って使う、し
ょっちゅうジョークをハズす、嗜好が幼稚である、というようなこ
とでマスコミはブッシュを笑い者にする。
 これは平清盛がノシ上がってきたときの宮中公家たちの態度、ヒ
トラーが台頭してきたときの旧プロイセン貴族たちの態度と同じだ。
彼らの立場がその後どう逆転 したかは、歴史の教えるところである。
ブッシュを甘くみてはいけない。彼のようなタイプのリーダーは、
本当に恐ろしいのだよ(2003年日記より)」

 いばるわけではない。こんなこと、向こうに知人・友人の2、3
人もいればちゃんと伝わってくることだ。
 それも見えなかった、見ようとしなかった日本のマスコミ、ジャ
ーナリストたちって、いったい何なのか。
 現実を見据えず、自分の理想の世の中ばかりを目の前にブラ下げ
ていた結果なのではないのか。
 アメリカ人がクシャミをすれば日本人は風邪をひく。遠くもなく
同じ保守化は日本を襲うだろう。
 いや、すでに その徴候は顕著だろう。

 市民運動も結構、リベラル派の意見の方が正しい場合があること
も少なからず認める。しかし、なぜ、そのような意見が主流になり
えないのか。それは何度も言うが、その意見をデモクラシー下で国
民に伝える、根本の方法、そして態度が間違っているからではない
のか。
 私は山形浩生氏ほど不人情ではないので、本気で彼らの行く末を
心配してしまうのである。
唐沢俊一「裏モノ日記」,2004/11/4,抜粋要約

 宣伝になるが、私の同人誌『ジャック・チックの妖しい世界』を
お持ちの方はいま一度、読み返してみるといい(お持ちでない方は
東文研の通販で!)。アメリカの大衆レベルでどれだけロックや同
性愛やドラッグといったものを“憎む文化”が浸透しているかがわ
かる。ブッシュと原理主義の関係にもちょっとだが触れている
(すっかり忘れていた)。
 問題は、こういう傾向を単なるトンデモと軽く考え(私の本もそ
のレベルだが)、実は現代アメリカ社会に通底している大きな潮流
ととらえられなかった(自分たちの方を大きな潮流とカン違いして
いた)進歩派の認識の甘さである。

 ただ、それまでは個人の信念に過ぎなかった宗教観が、国家とい
うもののアイデンティティにまで肥大してきたという事実が興味深
い。この日記でも、また『社会派くんがゆく!』でも21世紀の戦
争は餓えや貧困ではなく、アイデンティティ問題から起こるとしつ
こく言ってきたが、今回の結果はその、当然のこととはいえ何か嫌
な形での表面化なのかもしれない(町山氏ほど心配はしていないけど)。
同,2004/11/5,抜粋要約

 ※小室直樹を誉めていたりと,ちょいとアレな日記ではあるが.
==============================
ロシア、ドル連動制廃止・ユーロ連動高める
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20041118AT2M1100Q17112004.html
 【モスクワ=古川英治】ロシア中央銀行は通貨を米ドルに連動さ
せる為替制度を廃止し、2005年からユーロを中心に構成する通貨バ
スケットを指標に相場を管理する手法を導入する。欧州が主要貿易
相手である実態を踏まえ、ユーロとの連動を高める狙い。外貨準備
に占めるユーロの比率も引き上げる。原油などの欧州向け輸出がド
ル建てからユーロ建てに替わる契機となる可能性もある。
 ロシアはこれまで中銀が必要に応じてルーブル・ドル市場に介入
し、対ドル相場での変動を抑えてインフレ率や輸出競争力を調整す
るドル連動制をとってきた。これを主要貿易相手国の通貨で構成す
る通貨バスケットを指標とし、対ドル相場だけでなく主要通貨全体
に対してルーブルが安定するように管理する。 (07:01) 


米大統領、人民元問題を議論へ・週末の米中首脳会談
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20041118AT3K1800B18112004.html 
 【ワシントン17日共同】米ホワイトハウス高官は17日、今週末に
予定されているブッシュ大統領と胡錦濤・中国国家主席の首脳会談
で、大統領が人民元問題を取り上げる見通しであることを明らかに
した。米政府は、元相場が対ドルで事実上、安く固定されているこ
とが対中貿易赤字拡大の要因と不満を募らせている。 
 首脳会談は20日、チリ・サンティアゴで同日から始まるアジア太
平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて開かれる予定。 
 両首脳は昨年10月、バンコクAPECの際の会談でも人民元改革
をめぐり議論し、元の変動相場制移行へ向けた米中共同の専門家グ
ループを設置することで合意した。しかし、その後の中国の対応に
ついて高官は「漸進的な歩み」と指摘し、米政府として満足してい
ないことを強調した。(09:23) 


中国、ドルを人民元に交換する動き相次ぐ 
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20041118AT3K1800F18112004.html
 【香港18日共同】18日付の香港英字紙エイシャン・ウォールスト
リート・ジャーナルは、中国人民元が切り上げられると、米ドルで
保有している資産に損失が出る恐れがあるとして、中国国内で市民
が大挙して米ドルを人民元に交換している、と報じた。 
 同紙によると、中国では、少し前までは米ドルで資産を保有して
いた人々がドル離れを起こし、多くの人が人民元を、より安全な通
貨と評価。上海市内の銀行では昼休みにドルを人民元に交換するた
めの長い列ができる。列に並んだ人々は「ドルはもう(持つ)意味
がない」「ドル預金ではなく、ユーロや円にしておけばよかった」
などと話している。(10:14) 
==============================
グリーンスパン議長:ドル需要はいずれ減退へ:経常赤字に警告
[ブルームバーグ]

11月19日(ブルームバーグ):グリーンスパン米連邦準備制度理事
会(FRB)議長は19日、米国は経常赤字を埋めるために国外資金
を呼び込む必要があることについて、海外投資家の対米投資意欲は
いずれ限界に達し、ドル以外の通貨に資金を分散する、もしくは
より高い金利を要求することになると警告した。 

グリーンスパン議長はフランクフルトで開催された欧州の銀行業界
の会合で講演し、「米経常赤字の規模を考慮すれば、ドル投資意欲
がいずれ減退するのは避けられない」と語った。さらに、「海外投
資家はいずれドル資産の積み上がりを調整する、あるいは米国に投
資を集中させるリスクを相殺するために、より高い投資利益を求め
ることになる。この結果、米国の経常赤字を埋めるコストは押し上
げられ、ますます維持が難しくなる」と述べた。 

グリーンスパン議長はそのうえで、こうした調整は金融市場で吸収
される可能性が高く、経済に重い負担を強いることにはならないと
するこれまでの見解をあらためて示した。議長は「危機的状況を招
くことなく、市場の力によっていずれ持続可能な経常収支を回復す
ることになろう」と前置きしたうえで、「自己満足してはならない
」とクギを差した。 

ニューヨーク外為市場ではドルが対ユーロで下落。現地時間午前9
時42分現在、1ユーロ=1.3062ドルで推移している。前日遅くは
同1.2961ドルだった。 

グリーンスパン議長はこうした状況がドルの水準にどのような意味
合いを与えるか予想するのは困難だとし、「為替レートの予想は、
コインの裏表のいずれが出るかを占うより難しい」と語った。 

            双子の赤字 

講演テキストによると、グリーンスパン議長は米金利の方向性や経
済成長率には言及していない。 

第2四半期の米経常赤字は過去最大の1662億ドルに膨らんだ。グリ
ーンスパン議長は米通商調整へのカギとして、米国の貯蓄率向上を
促進する政策を挙げた。 

議長は「財政赤字を削減(できることなら黒字に転換)することは
、国内貯蓄を拡大させる最も効果的な措置と考えられる」と述べ、
「個人の貯蓄率は現在、異常に低い水準にあり、これを引き上げる
政策を策定するなど、民間部門の貯蓄を大幅に拡大させることも当
然ながら有益だ」と語った。 

原題:Greenspan Says U.S. Can't Be `Complacent' on Deficits 
(Correct) (抜粋) {NXTW NSN I7FJP907SXKX } 
==============================
ブッシュ再選で変わる米中台関係   
   
 米の武器供与案受理が先決―台湾
与党過半数奪取が生命線―立法院選
対米外交、限界に直面も

 ブッシュ米政権二期目の新人事が明らかになるにつれ、今後の米中台関係が微妙に変化
 することが懸念されている。台湾独立を支持しない一方、台湾への武器供与は続けると
 いう従来の米国の政策が変化し、台湾独立阻止のカラーが色濃くなる可能性が出ている。
 台湾にとっては十二月十一日の立法委員(国会議員に相当、定数二二五)選挙で与党が
 過半数を奪取することが最悪の事態を阻止する最大のヤマ場となりそうだ。

(香港・深川耕治・世界日報)掲載許可

 ローレス米国防副次官補(東アジア・太平洋担当)は十月、米国で行われた米台商業協
 会の非公開での会議の席上、「台湾立法院で米国から購入する軍事兵器特別予算が通過
 されなければ、台湾内の政争が国防など切迫した議題より優先していると見なされる」
 と台湾側に迫った。

 台湾の中央通信社が内幕を報じたもので、ローレス副次官補は会議に出席した米台双方
 の出席者に対して台湾への武器供与の異常過ぎる高負担率に警告を発したという。十月
 四日、同副次官補は「米国から武器給与する特別軍事予算が台湾で通過するかどうかは
 台湾が自力で防衛することを承諾するかどうかのテストだ」と話し、同予算案が台湾野
 党各党の反発に直面し、立法院でなかなか通過しないことへの不快感を示した形だ。

 台湾の陳水扁政権は、中国軍が福建省沿岸などで台湾に向けた弾道ミサイル増強配備を
 続ける武力統一の動きに対抗し、米国から最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)
 発射装置などを調達する六千百八億台湾元(約二兆円)の特別予算案を提出。ブッシュ
 米政権も同武器売却を原則として承認していた。

 だが、台湾二大野党の国民党や親民党は「通常価格より高額で兵器を売り込む米国から
 購入するぐらいなら、別の方法を選択すべきだ。このままでは中国を刺激して戦争機運
 が高まるばかり」と軍拡路線に猛反発しており、野党が過半数の議席数を占める立法院
 での「武器調達特別予算案」通過は困難な状況だ。

 同予算案は十二月十一日に行われる立法委員選挙の最大争点の一つとなっており、与党
 側が議席の過半数を奪取できれば、予算案通過は実現可能となる。予算案を早期に通過
 させることで米国の不快感・不信感を払拭(ふっしょく)し、台湾自立化のための新憲
 法制定や陳総統が最近になって突然打ち出した「台湾」の国名での国連加盟申請運動な
 どに米国側の理解を得るためには立法委員選挙で与党側が過半数を獲得できるかどうか
 が、いわば、台湾の命運を決する“天王山の戦い”となっている。

 台湾立法院(国会に相当)の党派別議席数の現状は陳総統が党主席を兼任する与党・民
 進党が八十、李登輝前総統が精神的指導を行う連立与党の台湾団結連盟(台連)が十二
 で与党側が合計九十二議席。一方、野党側は第一野党の国民党(連戦主席)六十六議席、
 親民党(宋楚瑜主席)四十四議席、新党一議席で計百十一議席となっており、野党の過
 半数支配が続いている(無所属など十四、欠員八)。

 少数与党として苦しい議会工作が続く立法院は、野党・国民党の隠然たる議会工作で陳
 政権の政策法案が通過しにくい“ねじれ現象”が、政権の打ち出す独自政策法案を議会
 で野党側がつぶしにかかる混乱や法案先送りという形で表れ、与党の独自カラーが骨抜
 きにされてしまう状況を繰り返してきた。

 だが、今回の立法委員選挙は、国民党の連戦主席ら野党陣営が台湾高等法院(高裁)で
 総統選挙の当選無効裁判を起こして敗訴し、新憲法制定への機運が盛り上がるなど、与
 党側に追い風が吹いている。選挙戦の強さで定評のある与党・民進党は十五議席増の九
 十五議席、新憲法制定の強い後押しを続けて台湾本土派の票掘り起こしが拡大する台連
 は九議席増の二十議席獲得で過半数の百十五議席を目指し、ほぼ、目標の射程圏内に入
 りつつある。

 今後は二大野党の国民党、親民党が勢力を衰退させ、議会運営は与党主導で安定した議
 会運営に変わっていくことが予想されるが、最大の難題はすでに内政から外交へ移って
 いる。台湾の新憲法制定を独立志向と受け取って難色を示す米国への外交交渉は、辞任
 表明前の十月に訪中したパウエル米国務長官に「現在が米中関係で最良の時期」と言わ
 しめる老練な中国外交に比べて微力でしかない。

 陳総統は石原慎太郎東京都知事や韓国の金泳三元大統領と台北で相次いで会談し、日本
 や韓国の親台湾派との親交を深めて新憲法制定による台湾自立化路線への理解を周辺国
 に広げようとしているが、親中国派が多数を占める日韓では米国への影響力行使は不可
 能に近い。

 二期目のブッシュ米政権は、パウエル国務長官の辞任とライス補佐官の国務長官就任、
 アーミテージ国務副長官の辞任などで台湾の独立志向への反対が鮮明になる可能性が出
 てきており、新憲法制定に関しても同草案に対する細かい検閲などが水面下で加速しそ
 うだ。
 台湾関係法を通して米から高額な武器を購入する以外に米側への独自交渉ができない民
 進党政権下の対米外交は、限界に直面しており、新たな対米交渉戦略の転換を迫られて
 いる。
Kenzo Yamaoka
==============================
 「憲法違反」の拒否権に活路   
   
 ブッシュ大統領、財政規律強化へ
曲がり角の米経済政策
 減税一本やりで通してきたブッシュ米大統領の経済政策が曲がり角を迎えている。減税
 と財政赤字削減両にらみの政策運営に転換を迫られているためだ。そこで浮上してきた
 のが最高裁判所で違憲判決を受け廃止された「項目別拒否権」の復活という荒業(あら
 わざ)。二期目を迎えるブッシュ政権の経済政策運営は、憲法論争をにらみながらの展
 開になりそうだ。

重くのし掛かるイラク経費

 「項目別拒否権の付与を望んでいる」−−。再選直後の四日、記者会見でブッシュ大統
 領がこう言い切った。口を開けば減税の効用にしか言及しなかった大統領が具体的な財
 政規律策を明示するのは珍しい。

 米国の財政赤字は二○○四会計年度に四千百二十五億ドルとなり史上最高を記録。減税
 に加えてイラクへの駐留経費が重くのし掛かっている。「五年で赤字半減」という自ら
 の選挙公約を実行し、赤字拡大を懸念する世論や市場に安心を与えるためにも、削減へ
 の姿勢を示すことが必要になっているのだ。

 そこで登場してきたのが項目別拒否権。議会から送られてきた法案について、大統領は
 一括して拒否するか承認する以外に方法がない。しかし項目別拒否権を使えば、法案の
 特定部分についてだけ「ノー」と言える。

 この拒否権の導入を提唱している民間シンクタンク、クラブ・フォー・グロースのムー
 ア理事長は、「各省庁の予算細目を定める法案には、議会審議の段階で不必要な歳出が
 滑り込んでくる。項目別拒否権があれば大統領は余計な部分だけ排除できる。毎年数十
 億ドル単位で歳出抑制が可能になる」と期待を掛ける。

 しかし一方で、効果に疑問をもつ声も小さくない。保守系シンクタンク、アメリカン・
 エンタープライズ研究所(AEI)のエンゲン研究員は「予算全体から見れば、赤字削
 減にとってほとんど効果がない」とみる。

クリントン政権で日の目

 項目別拒否権は一九九六年、クリントン政権で一度導入されたことがある。しかし九八
 年に最高裁判所は「憲法で定められた大統領の権限を逸脱しており違憲」と判断。この
 権限は廃止に追い込まれた。仮にブッシュ政権が導入を強行しても、司法判断というハ
 ードルを越えないと前に進めない。

 大統領も記者会見で「憲法問題をクリアすることが必要だ」と強調し、最高裁の判断に
 反しない形での導入を模索する考えを強調した。歳出法案をいくつかの法案に細分化す
 るという「脱法行為」も関係者の間で議論されているようだ。

 項目別拒否権には米議会共和党も乗り気といわれ、ブッシュ政権は早ければ年明けから
 の本格的な工作を開始するとみられている。世界日報 掲載許可
Kenzo Yamaoka
==============================
改憲なくばニクソンショック再来   
   
 米中急接近で報復された佐藤政権/米国に親日大統領続く保証はない
スタンフォード大学フーバー研究所元上級研究員 片岡 鉄哉
日本の未来に示唆に富む教訓

 「日本の社会と国家の枠組みを変える重要課題がここ一、二年の間に一気に押し寄せて
 くる」。公明党の幹部が、十月五日の朝日新聞に語っている。小泉総理が進める憲法改
 正の話なのだが、敏感な公明党には読めるのだ。ところが自民党には、総理の動きを権
 力闘争とみなして反対する者がいる。これは余りにも無知で、危険なことである。実は
 佐藤栄作が米国政府の改憲提案を拒否して、ニクソンショックという一大危機を招いた
 という不吉な前例があるのだ。

 日本の戦後史は改竄されてしまって真実を語る者はいないが、佐藤の前例は、小泉改憲
 が失敗した場合に何を予期するべきかを示唆していると思う。佐藤総理は、戦後処理の
 一環として、沖縄返還を片付けるように吉田茂と兄の岸信介から頼まれていた。

 しかし「核抜き本土なみ」という条件を、ベトナム戦争で敗退している米国政府に呑ま
 せるのは無理だった。そこで佐藤はかなり危険なデマゴーグをやった。那覇に行って、
 「核抜き本土なみ」で沖縄を取り返すという手形を一方的に出したのである。左翼が喜
 んだのは言うまでもない。

 佐藤は自分自身を、退くに退けない立場にはめ込んで、「さあ、どうしてくれる」とア
 メリカに開き直ったのである。佐藤の密使となった京都産業大学の若泉敬によると、ニ
 クソン政権は二つに割れた。しかし、ニクソンとキッシンジャーという地政学の天才た
 ちは、奇想天外で創造的な解決策を案出した。

 若泉がキッシンジャーに初対面した時、相手は開口一番、「核兵器が欲しいのか」とぶ
 っきらぼうに聞いている。天才たちは、佐藤が核武装をする目的で、沖縄米軍の核兵器
 を撤去しろと要求しているのだと推理したのだ。当時、中国は核実験をやったばかりだ
 った。ニクソンも、前任のジョンソンも、口を酸っぱくして日本の防衛協力を要請した
 が、断られている。だから核武装というインセンティヴを与えて誘惑できると考えたの
 だ。

ニクソンの温情仇で返す佐藤

 69年末の会談でニクソンは、「ハーマン・カーンの言っている様に、日本国民は住宅等
 の個人生活の向上といった自分の良いことばかり考えていないで、もっと高次元の域に
 到達することを求めなければいけない」と佐藤に助言している。カーンはキッシンジャ
 ーの腹心として、日本核武装論を打ち上げた戦略家である。

 しかし、核武装は無理だった。代わりに佐藤は、対米繊維輸出を大幅に規制する密約を
 交わしている。しかし若泉によると佐藤は約束履行の努力を全くしていない。密約を知
 らない通産省は繊維交渉を決裂させた。ここに至ってニクソンショックなるものが来る。
 日本に通告なしに米中接近が始まるのだ。これに驚いた佐藤は田中角栄を通産相に任命
 して、何がなんでもまとめろと下命したが遅かった。

 ニクソンが怒ったのは無理からぬことだった。共和党の彼は、ルーズベルトの戦争に嵌
 められた日本に同情していた。東京に来て「マッカーサー憲法は間違いだった」と謝罪
 までしている。そのニクソンの温情を佐藤は仇で返したのだ。日本の改憲も核武装も駄
 目だと結論したニクソンは、米中デタントで報復したのだ。

 大失態をやった佐藤は弱体化し、後継に選んだ福田赳夫は田中角栄に総理総裁の職を奪
 われることになる。官僚政治の終焉だった。責任は吉田学校優等生の佐藤にあった。

ブッシュの任期中に改憲せよ

 日本は外交面で孤立した。非武装日本の田中総理は、米国政府の核の傘も支持もないま
 まで対中接近を図った。だから周恩来の仕掛けた罠にはまることになる。台湾を放棄し、
 後にODA(政府開発援助)と呼ばれる巨大な対中援助を支払うことになる。その後の
 中国は橋本派を利用してジワジワと影響力を拡張し、靖国神社参拝や憲法改正にも反対
 するようになった。

 ニクソンから三十年たって、日本を窮地から救ってやろうというのが共和党ブッシュな
 のである。この温情に報いることに小泉総理が失敗したと仮定しよう。現在、ニューヨ
 ークタイムズが、総理の改憲と靖国参拝に反対している。民主党主流の意向を反映して
 いるのだ。米中が一緒になって反対したら、改憲は不可能に近い。どうしてもブッシュ
 が引退する二〇〇八年が締め切りである。これほど親日の大統領は、戦後六十年間にた
 った二人だけである。

 小泉が失敗したら、安倍晋三がやればいいなどと思うのは政治音痴だ。二期の共和党政
 権に愛想をつかしたアメリカは、必ず民主党に鞍替えする。恐らくヒラリー・クリント
 ンが勝つだろう。ブッシュが八年間もやって失敗した政策を、彼女が拾ってくれると思
 うのは一人よがりだ。

 「日本は平和主義でいいじゃないか。それより中国に接近しよう」ということになるの
 が自然な流れだ。小泉改憲が失敗したら、ショックと衰退しかない。(敬称略)
  (世界日報)掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
==============================
 「ブッシュは変わる」は欧州の幻想   
   
 アトランティストの期待は外れる/結束して米の行動の自由に制限を
在仏・米コラムニスト William Pfaff(ウィリアム・ファフ) 
ブッシュ再選に当惑する欧州

 ブレア英首相は米大統領選後、欧州は米国の「新しい現実」に対応しなければならない
 と発言、欧州連合(EU)加盟国の中に依然として、米国有権者がブッシュ大統領の政
 策を承認したことを受け入れようとしない国があると非難した。

 この発言は明らかに、ブッシュ大統領のイラク政策に反対した「古い欧州」を意識した
 ものだが、確かに欧州のこれらアトランティスト(汎大西洋協調主義者)にふさわしい
 ものだ。これらアトランティストはつい先ごろまで、第一次ブッシュ政権は大西洋連合
 の大ハイウエーで起きた事故のようなものだったと考えていた。

 あるオランダの大学の教授が二〇〇二年に教えてくれたことがある。オランダの政界で
 は、長年にわたり欧州とうまくやってきた米政府内のアトランティストを、ラムズフェ
 ルド国防長官が誘拐し、閉じ込めてしまった、という考え方が広がっているというのだ。

 米国のアトランティストらは、今回の選挙で囚(とら)われの身から解放され、ブッシ
 ュ大統領が条約を拒否し始めた時に壊れた欧州と米国の親密な関係をすぐに取り戻すこ
 とができるのを待っている、と欧州アトランティストらは思っていた。

 欧州の外交政策関係者らの間で最近、和解と新しい出発が、繰り返し言われている。フ
 ランスのバルニエ外相も、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルで、偉大な米国は、
 平和と自由の実現に貢献し、主要なパートナーとしてフランスを支援しており、両国の
 運命は切っても切り離せない、と大げさなくらいの賛辞を送った。今後、重要な問題に
 対処していくために、和解が必要だからだ。

 この重要な問題とは、「フランス・バッシング」を米政府内にとどめておくこと、主要
 パートナーとして米国と話し合うこと、イラク、パレスチナ、イランなどをめぐる米国
 の政策を変えさせること、だ。

変わらないブッシュ政権外交

 ブレア首相ですら、重大局面に際しては、以前のように同盟国内で協議すべきだと主張
 した。だが、現在の米政府は「米国の安全保障を国連に委ねることになる」と同盟国と
 の協議を見下している。同首相は、パレスチナとイスラエルに対する米国の政策を転換
 してほしいと思っている。とても実現しそうにない。ソ連のニキータ・フルシチョフ共
 産党第一書記は、このような事態について、「ブタに笛を吹かせるようなもの」と表現
 している。一方、米政府内に生き残っているアトランティストらは、欧州と米国は経済
 的に依存関係にあり、敵対関係は解消すべきだと主張する。これ以上問題が増えれば、
 欧米は決別するしかない。

 にもかかわらず、ブッシュ政権は選挙運動期間中、エアバスの補助金をめぐる問題を再
 び取り上げた。その後も追求は続いているようだ。選挙前に貿易で欧州に譲歩したのは、
 米国の製造業者の歓心を買うためだ。また、米国の輸出業者への税の軽減をめぐる国際
 貿易機関(WTO)の裁定で欧州が勝利したため、米国は制裁を科せられており、この
 制裁を解除することを狙ったものでもあった。

 米新政権のネオコン(新保守主義者)は、どうしてWTOなどというものが存在するの
 か、と考えている。現実に、第二次ブッシュ政権が、基本政策を見直して、欧州をなだ
 め、欧州の政策を認めようという兆候はない。

 ブレア首相は、大西洋間同盟関係を復活させるためにまずすべきことは、カルテット
 (国連、EU、ロシア、米)が協調行動を取り、忘れ去られている中東和平「ロードマ
 ップ」を復活させ、パレスチナの独立とガザを含むパレスチナ領からのイスラエルの撤
 退を進めることだ、と主張した。ブレア首相の主張は、フルシチョフのブタに笛を吹か
 せることに等しい。

 同じことが第二次ブッシュ政権についてもいえる。期待されていたケリー政権について
 も、選挙前に同じことがいわれていた。外部の環境により、変更を迫られない限り、米
 政権は変わろうとはしないし、何も変わらない、ということだ。

 ブッシュ政権の外交政策の本質は変わらない。つまり、@テロリストと大量破壊兵器を
 保有する「ならず者国家」を米国の敵と指定するAならず者を武装解除し「大中東」を
 平和にするために、軍事的に実行可能とみれば、軍事的圧力を掛けたり、軍事介入する
 B米国の軍事基地と同盟関係の地球的ネットワークを拡大する、ということだ。これら
 は、米国の外交界では誰もが当然のことと考えている。世界は安全確保のため米国を必
 要とし、同盟国はこのことを理解すべきだ、と考えているのだ。

単独行動主義4年後も続くか

 この政策は欧州を分裂させる。アジアをも分裂させるはずだ。多くの欧州諸国がこの政
 策に従うのは間違いない。一方でこれに反発し、現在の米国の覇権に対抗する国際的シ
 ステムを構築しようとする国もあるはずだ。

 これは軍事的性格を持つものではない。イラク情勢は、今の世界で軍事力を行使するこ
 との限界を見せ付け続けている。ほとんどの人はそう感じているはずだ。中国は、米国
 からの軍事的脅威に直面する可能性のある大国の一つであり、軍事的均衡に大きな関心
 をもっている。欧州にとって、米中の対立関係は主に、外交・金融・経済力に影響を与
 え、それらによる政治的影響力を変化させるものだ。

 たとえ、今の世界で「敗北」ということがはっきりと定義できても、米国を「敗北させ
 る」ことを考える国はない。できることはただ、国際社会が力を合わせて、腕力と影響
 力を持つ国々とともに国際的システムを強化し、米国の行動の自由をさらに制限するこ
 とだ。これは二年前、イラクをめぐる分裂を機に欧州で始まった。中国、恐らくは日本、
 それ以外のアジアや中南米で協力関係を深めている国々は、ここから力を得、これを利
 用しようとするだろう。

 しかし、四年という期間はそれほど長くない。米国の「ユニラテラリスト(単独行動主
 義者)の力」は、第二次ブッシュ政権後まで続かない可能性がある。常に上に立とうと
 野心を持ち続けていれば、それを抑えようとする反対の力も生まれるのだ。
  (世界日報)掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
==============================
米国のファルージャ攻撃を考える   
   
 ブッシュ再選と宗教国家の「聖戦」/文明対立の構図から虐殺の世界に
評論家 高瀬 広居
聖戦の定義示した父元大統領

 ブッシュ大統領が再選されファルージャへの総攻撃のさなか世界は硝煙の晩秋を迎えた。
 この軍事作戦がやがてイラクの将来に何を齎(もたら)すか、その当否は問うまい。い
 や、日本にそれを問うだけの資格はない。

 中国の原子力潜水艦の監視、追尾、捕獲、爆雷投下も為しえぬ間抜けな日本国に、軍事
 戦略的可否を訊ねるのは馬鹿げている。せいぜい人道支援だ、復興だと金切声をあげて
 いればよい。人質同胞救出のための出動すらできず見殺しにする自衛隊は案山子(かか
 し)に過ぎない。その派遣軍を誇りに思うほど日本国民は劣化し愚民化している。

 ブッシュは「アメリカ国民を守るためにテロと闘う」という。当選後彼の国家主義的ユ
 ニラテラリズムは昂揚し「イラク戦争の大義」は明確化されつつある。一言でいえば、
 世界の普遍的文明と価値を荷なうアメリカの栄誉と尊厳を守護する目的でイラクを撃ち、
 反米テロを殲滅するということである。小泉純一郎氏にはそうした「正当な理由」を語
 れるだけの価値観が無い。

 ブッシュの父元大統領は一九九一年二月、十二項目にわたる「ジャスト・ウォー(正し
 い戦争・聖戦)」の定義についての原則を示している。息子ジョージはこれを引き継い
 でいる。その第一項目聖戦開始の「正当な理由」には「正義を守ること、正しい国際秩
 序の回復、人権の保護」が掲げられ、さらに「合法的な権威の存在(国家を戦争に従事
 させる合法的な権限をもつ当局によってのみ開戦は許される)」が強調されている。
 「正義・正しい・合法的」とはすなわち「アメリカの大義」を指す。

キリスト教で求める世界秩序

 「ジャスト・ウォー」の概念は四世紀に聖アウグスティヌスがはじめて言及したとされ、
 十三世紀にイタリアの神学者トマス・アクィナスによって基本原則が示され今日に至っ
 ている。つまり、戦争の正当性とはカトリックとプロテスタントのキリスト教原理に基
 づいて構築されているということである。

 ブッシュ父子は敬虔なプロテスタントでありエピスコパル教会に属するいわゆるWAS
 P(アングロサクソン系白人プロテスタント教徒)であり、湾岸戦争もイラク戦争もこ
 の宗教的信仰と理念によって武力行使が決断されている。しかも、ブッシュが国論二分
 の激戦を制した再選パワーは、妊娠中絶、同性愛結婚、幹細胞による生命再生を「神へ
 の冒涜」として拒否する熱烈な保守的キリスト教徒(メガ・チャーチ中心の)によって
 支持されたエネルギーだという。この宗教的倫理性を強固な基軸として全世界の秩序を
 求めるアメリカのナショナル(というよりステイツというべきだろう)アイデンティテ
 ィーは未来軍事構想、米軍再編成というプレゼンスとあいまってよりモンスター化して
 いくにちがいない。

 国民の九割が神の存在を信じ、米国は神の加護のもとにある国と認識し、だからこそ米
 国的価値観は普遍性をもち繁栄を勝ちとれるのだという、この国家と国民の自信は一層
 深まるだろうし「聖戦への奉仕」を厭わぬ若者も増えていくにちがいない。

 こうしたアメリカの、国民国家(ナショナリズム)と西欧文明、さらには宗教的価値観
 を世界政治、経済の主要なアクターとする潮流に対抗しうるものは、いまや国家と民族
 の枠組を超えて連帯するイスラム教徒のほかはないであろう。加えて原理主義過激派の
 反米感情の高まりは今日“憎悪の感情”と化してしまっている。ハンチントン教授の
 「文明の衝突」は色褪せ、西欧対非西欧の文明対立の構図から血と骨を洗う虐殺の世界
 に突入してしまった。ファルージャ攻撃はその一端を物語っている。それでもアメリカ
 はこのイスラムの壁を突破しなくては正当性と権威を守れまい。

宗教理念なき日本はどうする

 かつて太平洋戦争開戦当時、欧米諸国は「自由民主主義対アジア的全体主義の対決」と
 この戦争を定型化し、日本もまた「白人文明とアジア文明の新秩序抗争」と位置づけて
 いたが、戦闘の激化とともにアメリカは日本を「非文明的侵略者、卑劣な野蛮人、黄色
 い小猿」と罵り、日本は「ギャングと腐敗、鬼畜的背徳者」と反米蔑視を叫んだ。わず
 か数年で文明の戦争は一転皆殺しの情念へと移り変わっていったのである。世界は現在
 そのルツボに立たされている。

 不幸にして日本にはアメリカのような宗教理念も文明観もない。イスラムのごとき超国
 家的連帯の宗教文明も欠けている。宗教といえば他愛のない「魂の救済」のみ考え、そ
 れが「きわめて政治的な存在」であることを知ろうともしない。だから「聖戦の意味」
 も分からない。しかし、世界の流血は宗教というファンダメンタルズを源泉としており、
 ブッシュはそれを国内外で明らかにしテロという「新たな敵」に対し、歴史の勝者とし
 ての答えを出そうとしている。

 いったい日本はどうしたらよいのか。世界最大の仏教国というなら、どこにそのツテを
 求めたらよいのか。国家を超えて広がった「宗教」は新しいインターナショナルの役割
 を荷なって日本に迫っている。中国には儒教的国家主義の「宗教」がある。いつでも
 「ジャスト・ウォー」の旗色を鮮明にできる。能天気日本は、それでも薄明の中を漂い
 続けるのか。世界日報  掲載許可済み
Kenzo Yamaoka


コラム目次に戻る
トップページに戻る