1809.ブッシュ政権の思想



ブッシュ政権の2期目が始まった。ブッシュ政権の構想を日本の評
論家は読み違えている。その考察。    Fより

今後、米国は中国との問題が出てきて、元切り上げや貿易戦争など
の問題で中米関係は最悪になるという見方である。それと中台戦争
が起きて、米国は中国と戦争になるという論者もいる。

しかし、ブッシュ政権での米軍再編成で見えるのは、海軍戦争大学
のバーネット教授の新地政学概念に沿っている。このバーネット戦
略の基本は民主主義国家同士には戦争がないということである。
日本も戦後、民主主義になったために米国の同盟国家になったし、
戦後50年日本は戦争をしていないというものである。

このバーネットの戦略地図によると、中国は民主主義国家となり、
かつ北朝鮮も中国圏として民主主義地域としている。非民主主義地
域のほとんどがイスラム地域とアフリカ地域や南米である。中国を
敵対視していない。この構想を知って、米ブッシュ大統領の演説を
聞くと、そのバーネット構想通りのことを言っている。

このバーネット構想は地経学から出てきている。地図と経済学の合
成語である地経学は、経済活動も地理的な位置が大きなポイントで
あるということである。戦後を見ても、日本に近いアジアは大発展
しているが、これは日本企業が工場を日本に近いアジア地域に移転
させたことによるのです。このように日本近傍にいることがアジア
諸国の経済発展の理由である。地経学の通りになっている。

そして、この地経学では基軸通貨こそが世界を制するというほど重
要要素なのである。この基軸通貨を守ろうと米国はユーロを敵視し
ている。シラクは米国ドルの締め付け、ユーロで石油取引を中東に
仕掛けた。ここから米欧の通貨戦争になっていった。ロシアもユー
ロの陣営に近づいている。

しかし、ドルリンクの今の中国は経済的には米国圏になっている。
米国の企業が大挙して工場を中国に作り、原価削減をしている。
そして、中国を市場としても活用し初めている。元がドルにリンク
されているから、為替差損も起きない。このような中国に米国が、
貿易摩擦や貿易戦争を起こすと、自分の経済に跳ね返り、米国とし
ても損害が大きいために、元切り上げを徐々に促すが、貿易戦争に
なる状況ではない。米国ドルとのリンク制を通貨バスケットにする
ことを米国は現在中国に提案している。

米国と日本が演じた貿易戦争にならない。中国は米国企業を受け入
れたことによる。日本のように米国資本が日本企業に入るとギャー
ギャーいう日本唯心論者の意識では米国との戦いになるが、中国人
は相手を受け入れることで貿易摩擦、貿易戦争を回避している。
ここは中国人を見習うことが必要である。

台湾が独立したらどうなるか??と質問されるでしょうね。その答
えは、パウエル国務長官が言ったように、台湾独立を宣言して中国
が台湾との戦争になっても、米国は台湾を助けないとしている。

ブッシュの支持基盤は都市部の米国ではなく、田舎の米国人である。
田舎の米国人は台湾も中国も区別がつかない人たちで、勝手に戦争
させればいいと思っている人たちである。米国の思想を民主党の支
持地域、都市の思想で見ているが、米国の田舎の思想で見ると、今
まで思ってきた思想とは大いに違うことを肝に銘じることが必要で
ある。もうロックフェラーが代表する東部エスタブリシュの米国支
配力はほとんどない。FRBの終わりでしょうね。

ファルージャの攻撃で米軍の被害も大きく、米国も欧州の助けが必
要になっていると、緒方さんは見ている。

1635.新しい地政学概念
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k6/160524.htm
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<緒方貞子氏>「米国は単独主義貫けない」との分析示す

 国際協力機構(JICA)の緒方貞子理事長は12日、訪問先の
メキシコ市で毎日新聞などと会見し、ブッシュ米政権のイラク政策
について「ある程度の治安を回復させるためには、単独行動を貫く
ことはできないだろう」と、米国が国連や諸外国の理解と協力を求
める方向へ転換していくとの見方を示した。
(毎日新聞) - 11月13日19時41分更新
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ブッシュ政権、欧州との関係修復を模索(nikkei)

 米ブッシュ政権が欧州との関係修復に動き出した。大統領は12日
のブレア英首相との共同記者会見で、来年1月の就任式後早々に欧州
各国を訪れイラク戦争を機に生じた亀裂の修復を目指す意向を明ら
かにした。訪問先が固まる前に大統領が外遊を発表するのは極めて
異例。米政府高官は「大統領選終了後、迅速に欧州諸国と協力して
いくメッセージを発信したかった」と解説した。

 ブレア英首相は、ブッシュ大統領の訪欧発表を会談の成果と評価
している。ブッシュ大統領の再選が決まった直後に開かれた欧州連
合(EU)首脳会議で「米国との関係強化」という言質を引き出し
、今回の発表の地ならしをした。首相は会見で「欧州側も大西洋間
(米欧)の同盟関係を強くしたいと思っている」と強調した。しか
し、英国を除く欧州各国ではブッシュ大統領への反感が根強い。
(ワシントン=横田一成、森安健) (07:01) 
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米USTR、議員団の301条提訴却下・中国人民元問題(ASAHI)

 【ワシントン=吉田透】米通商代表部(USTR)は12日、超党
派の米議員団が中国の人民元制度を「不正な為替操作だ」として米
通商法301条(不公正貿易慣行国の特定・制裁)に基づく調査や制裁
などを求めていた問題で、提訴を却下する方針を正式に表明した。

 この提訴は共和、民主両党の約30人の議員らが9月30日付で起こし
た。USTRは9月初めに米大手労働組合などによるほぼ同じ内容の
301条提訴について、提訴後間もなく却下していた。人民元問題に関
するブッシュ政権の対応方針に変更がないことを改めて示した。

 この時期まで却下の決定を引き延ばしていたのは、11月2日の米大
統領選挙や米議会選挙への影響を避けるのが狙いだったとみられる。

 USTRは同日発表した声明で「米政府は中国が柔軟な為替制度
に早期に移行すべきであると信じており、そのために中国政府と対
話を進めてきた」と強調。 (13:11) 
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「民主主義ゆえに小泉首相と親密」と米大統領(ASAHI)

 「最も親密に仕事をする相手の一人が、私の友人小泉首相だ」。
ブッシュ米大統領は12日、ブレア英首相との会談後に行った共同
記者会見で、小泉首相との親密な関係をわざわざ持ち出して、高く
評価してみせた。大統領選の最中にも何度か言及したが、今回は中
東民主化は可能だという論拠に使った。 

 ブッシュ氏は中東民主化を進める理由について「民主主義国どう
しは戦争をしないからだ。民主主義国は平和を促進すると強く信じ
ている」と説明。「民主主義が根付かない社会もあると疑っている
人がいるのは知っているが、戦後も日本についてそう言われたこと
を思い出してほしい」と日本に触れた。 

 そのうえで「最も親密に仕事をする一人が私の友人小泉首相だ。
同じテーブルについて北朝鮮などの平和維持を話し合うのは注目に
値する。お互いに敵だったのはそう遠くない昔だからだ」。さらに
「確かに彼はいい男だ。彼が味方なのは、日本に民主主義が定着し
たからだ」と語り、民主主義の効用を強調した。 (11/13 12:38) 
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米軍再編の重要性を確認 日米審議官級協議(ASAHI)

 ワシントンで開かれていた在日米軍再編のあり方を検討する日米
審議官級協議が12日、3日間の日程を終えた。現在の東アジア情
勢を踏まえて米軍再編が日米両国の安全保障にとって重要だという
認識で一致。今後は局長級協議なども交えて集中的に話し合いを進
めていくことで合意した。 

 今回の協議は、10月の日米外相会談を受けて初めて開かれた実
務者レベルの協議だ。ブッシュ政権が進める世界規模の米軍再編の
理念や目的を、日本側がただす形で協議は進められた。最終目標で
ある在日米軍基地の移転案を話し合う前に、両国間の認識をすり合
わせて協議を速やかに進めるためだ。個別の移転案も取り上げられ
たが、今回は質疑応答に終始したという。 

 日本側からは外務省の梅本和義北米局参事官、防衛庁の山内千里
防衛局次長らが、米国側からはローレス国防副次官、リビア国務次
官補代理らが出席した。 (11/13 10:38) 
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アルルの男・ヒロシ 様

「1803.腐り果てた選挙」を興味深く読ませて頂きました。

「全文翻訳」とありますが、「Absentee Ballots Go AWOL」の部分
が見当りません。何かお考えがあって省かれたのでしょうか?

          庄田常勝 拝
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「ブッシュ再選後の中東政策」

米大統領選は、接戦の末、民主党対立候補ケリーを破り共和党現職ブッシュが再選さ
れた。
今後の米国の対外政策の中で特に中東政策を予想してみたい。
そのためには、ブッシュ政権のこれまでの政策の傾向、その政策を取る理由を正確に
分析する事を第一に行うべきなのは言うまでもない。

ブッシュ政権が最初に行った対外的イベントは、9・11同時多発テロ直後のアフガ
ン攻撃である。
米国がテロ容疑者ビンラディン以下アルカイダの捕縛または殺害を図る事を理由に起
こしたこのアフガン攻撃については、実質上の報復戦争であるとして国連決議として
の同意は得られなかった。
しかし各国は、何らかの形で「仇討ち」しなければ国内世論により米国政権と社会が
持たない事に理解を示しこれを容認し協力した。

ブッシュ政権の最も大きなイベントは、もちろん次のイラク戦争である。
イラク戦争は、最大の開戦理由とされた大量破壊兵器の脅威が存在すると本気で信じ
ていたのはほぼ米国民だけであった事が示すように、客観的には必然性のない戦争で
あった。

◆イラク戦争の位置付け◆
イラク戦争は、9・11テロの機会を利用した、ネオコンの主導と米国エスタブリッ
シュメント(支配層)各勢力の合意による、石油ドル決済体制維持と石油資源確保、
軍需復興利権等のために中東覇権の足掛かりを作る事を目的とした、サダムフセイン
退治の戦争である。

石油ドル決済体制が崩れれば、ドルが基軸通貨の地位を退位する事になり、膨大な財
政赤字と貿易赤字によって成り立っている現在の米国の繁栄の維持は不可能になる。
また、冷戦後、経済力を付けつつあるEU、中国、アジア諸国、ロシア等により米国
が相対的に衰退する事を防ぐ事と資源の需給逼迫に備えるためにも、石油ドル決済体
制と石油資源確保は米国の長期戦略の中心である。
これに軍需利権、復興利権を求める軍産複合体、イスラエルの中東での地位と安全保
障を確保したいユダヤロビー、聖書の預言を成就させたいキリスト教原理主義勢力が
加わり、これに再選と父ブッシュの雪辱戦を果たしたい子ブッシュが乗って開戦が行
われた。

米国民は、ユダヤ系の支配するマスコミの世論操作も加わり、大量破壊兵器によるテ
ロ再発の恐怖のためにイラク戦争開戦を支持した。

上記のような米国の恣意性と、多分に後付け的なもう一つの開戦理由「中東の民主
化」の理念が「大中東構想」のスローガンの下に表裏一体となって、かつ両者が鬩ぎ
あって並存しており、イラク戦争の功罪と帰趨を分かり難くしている。
これは、かつての大日本帝国によるアジア支配と「八紘一宇」「欧米の植民地からの
アジア解放」の理念が「大東亜共栄圏」のスローガンの下に表裏一体であった事に似
ている。

◆イラン戦争と核使用?◆
さて再選されたブッシュ政権は、今後の対外政策をどう進めて行くのか。
政権人事が煮詰まってくればある程度輪郭が見えて来るが、それ自体まだ憶測を生む
段階である。

基本的なシナリオとして、普通に考えれば、これまでの政策の延長線上に今回の再選
の力になった勢力への配慮をより加味した政策を取ると考えるべきであろう。

イラク戦争は現在泥沼の様相も見せているが、このまま来年のイラクの国政選挙後、
米軍が単純に撤退すれば、反米政権が樹立されかねない。
その場合、イラク戦争の当初の主な目的である親米政権の樹立と中東支配の足掛かり
が失われる事になる。
既に1000人以上の米兵の戦死者と2000億ドル以上の戦費を費やしたイラクか
らの単純な撤退を、米国支配層等と米国民が黙って許すと考えるのは難しい。
ブッシュ政権は、イラク新政権と武器供与協定を結ぶ等で親米路線を維持させるた
め、裏表から様々な工作を行うと予想される。

また、国境からのシーア派テロ勢力の流入や核開発を理由に、イスラエルと連携し
て、一気にイラン、シリア攻撃等に出て中東覇権の完成を図る可能性もある。
その際の切り札として、小型戦術核を使用する事も考えられる。

なお、対北朝鮮攻撃については、日本と並んで大量の米国債の消化先である中国との
関係を考えれば、朝鮮半島はその庭先であり、かつ石油の出ない東アジアで事を構え
る事は直接の経済的メリットは無く、少なくとも中東よりも後回しとするだろう。

◆ブッシュの変心?◆
もう一つの可能性として、2期目の大統領としてブッシュが支持勢力の要求に囚われ
る事なく自由に政策を実行し、ニクソンの対中国交樹立、レーガンの冷戦終結のよう
に歴史に名を残す事を目指すシナリオも有り得る。

父ブッシュが果せなかった大統領選再選を遂げ、父の強力な反対を押しきってイラク
戦争の開戦に踏み切った事にも垣間見られるエディプスコンプレックスから解放され
たように見える事がこの可能性を後押しする。

歴代大統領と較べると賢くは無さそうだが、どう見ても悪人や狂信者には見えず純朴
なテキサス人に見えるブッシュが、実際何を考えているかは分からない。
しかし、大量破壊兵器がなかった事を未だに半数以上が認識していない一般米国民と
違って、「CIA」に騙されたとまでは認識している当事者のブッシュは、内心イラ
ク戦争は失敗だったと考えていても不思議はない。

今後、ファルージャ等に大規模な掃討作戦を行うにしても、イラクの正式政権樹立後
は、石油利権と中東支配の野心を捨てて、国際協調の下イラクの事はイラク国民の決
定に委ねる選択をする可能性はある。

この場合、中東全体の泥沼化によるドカ貧の可能性は薄まるが、新政権の親米度合い
が続く可能性は低く、米国の繁栄維持のためには取り分が少ない。
また、石油ドル決済体制を維持できず「普通の国」となってしまう岐路となる可能性
もあり、米国の運命を天に任せた一種の賭けとなる。

その報酬は、尊敬するレーガンの「冷戦終結の立役者」に並ぶ「中東民主化の父」の
名誉か。
40年前のケネディー暗殺も真相は未だ不明だが、ブッシュがこの選択をした場合、
同じ運命を辿る可能性も否定は出来ない。

◆歴史の行方◆
筆者は、「欧米の植民地からのアジア解放」が歴史の必然であった様に、「中東の民
主化」もまた歴史の必然と見る。

その上で、「欧米からのアジア解放」が、日本の進駐と敗北、アジア各国のナショナ
リズムの芽生えによる旧宗主国に対する解放戦争によってなされた歴史の弁証法的展
開を見れば、今後の大きな流れとしては、曲折を経つつも「中東の民主化」が米国の
進駐、反米感情によるナショナリズムの勃興、米国の撤退という展開によってなされ
ると見る。

しかしながら、その流れが、米国、イスラエルによるイラン、シリア、サウジアラビ
ア等に対する小型核を使った先制攻撃や、露骨な利権確保、それらに対抗するテロの
世界への蔓延等の激しい過程を経るならば、流れる血は限りなく、第3次世界大戦勃
発の可能性すらある。

経済規模で世界第2の大国である日本は、本来歴史の転換点に当たり、今後の激動す
る世界を方向付けて行く事について国力に応じた責任を負う。

しかしながら、既に我が国の現政権は、その発足直後から後ろ盾であるブッシュ政権
にピタリと付き従い、国家の運命を一蓮托生とする事を決めている。
第2期ブッシュ政権がどういう対外政策を取るかは現時点では不明確であるが、歴史
学者アーノルド・トインビーの言葉を待つまでもなく、独立の気概と主体性を失った
国家は亡びの門に在り、国益を確保する事もまた侭なるまい。

佐藤 鴻全
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米大統領選に思う−過剰なリベラル化阻止した米国民   

 マスコミ、映画界の逆風に動じず
民主党上院院内総務も落選
在米ジャーナリスト 那須 聖

メディアの反ブッシュ

 ブッシュ大統領は米史上最高の票を獲得して再選されただけでなく、同日行われた議員
 の選挙では、与党の共和党が上院で四名、下院では二十名近くも議席数を伸ばした。殊
 に野党の上院院内総務ダシュル氏が落選したことは、民主党にとって大ショックであっ
 た。国民は文字通り、ブッシュ大統領に全権を委譲した形になった。

 今回の大統領選挙では米国のマスコミの八割以上が民主党候補ケリー氏を感情的過ぎる
 ほど、激烈に支持した。その中には、テレビではABC、CBS、NBC、CNNの四
 大テレビ局、新聞ではニユーヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズなどの有力紙
 が含まれている。

 それだけではない。ハリウッドの映画俳優の多くも様々な方法でブッシュ候補に反対す
 る行事を行ったし、ブッシュ氏を批判し、彼の再選に反対する映画も二本作られて、か
 なりの観賞者を集めて話題を撒(ま)いた。

 さらに株で何億ドルもの財を築き上げたジョージ・ソロス氏の如きは、千数百万ドルの
 私費を投じて、ブッシュ大統領再選に反対するテレビ、新聞広告を行った。それにもか
 かわらずブッシュ氏が再選されたことは、金で大統領を買うことができない証拠である。

キリスト教価値守る

 ブッシュ大統領にとって、このような逆風がハリケーンのように全米で吹き荒れている
 中で選挙が行われたが、それらは一部の若い層には多少の影響力を及ぼしたかも知れな
 いが、大多数の有権者はそれに動じることもなく、全権を委譲するほどブッシュ大統領
 を支持したのである。その原因は、一体どこにあったのだろうか。

 一言で言えば、国民がブッシュ氏と民主党候補ケリー氏の違いをよく見極めていたこと
 にあったと言えよう。元来米国の建国の父たちは、米国をユダヤ・キリスト教思想の上
 に打ち立てた。そして二十世紀中葉まで、米国国民は、それに含まれている道徳的価値、
 家庭の価値を忠実に守り通し、これが米国の伝統的な価値として、現在の米国および米
 国文化を築き上げてきたのである。

 ところが二十世紀の半ば以後、左寄りないしリベラルと呼ばれる勢力が現れてきた。彼
 らはこのような伝統的な価値を犠牲にしてでも、目新しいものを追い求めようとして、
 個人の利益を主張し、妊娠の人工中絶、同性愛者の権利などを擁護するだけでなく、彼
 ら同士の結婚をも容認しようとしてきた。しかし、これが米国の伝統的基礎を揺るがし
 始めている。

 イスラム過激派もこの米国の伝統的な価値に挑戦し、それを切り崩そうとして、執拗
 (しつよう)に米国に対するテロを行ってきているわけである。

 この勢力に加担したのが民主党である。クリントン前大統領もこのような考えを持って
 いたために、彼は同じような傾向を持った判事を連邦最高裁判所はじめ、多くの裁判所
 の判事に任命した。このために彼らはリベラルな判決を下しており、その一部は社会的
 に大問題を引き起こした。

 民主党議員の中でもケリー氏はその最たるもので、このために彼はイラク問題、北朝鮮
 問題の本質を見抜けなくなっているだけでなく、彼の内政、外交政策に一貫性がなくな
 っている。このことは彼に確固たる基礎的原則がない証拠である。そして目先の変わっ
 たことを進歩的だと思い込んで、それに魅力を感じたマスコミの多く、さらにはハリウ
 ッドの俳優たちが、これに同調してきたのである。

 一方ブッシュ大統領は、この伝統的な価値をあくまでも堅持しようとして、リベラルな
 いし進歩的と称する連中と対立してきた。殊に同性愛者だけでなく、彼ら同士の結婚に
 も断固反対し、結婚は男と女の間に限るという規定を憲法の中に盛り込むことすら提言
 している。

司法の左傾化を回避

 このようなブッシュ大統領の基礎的な考え方は、彼の外交政策にも反映している。つま
 り米国が多少の犠牲を払っても、テロ撲滅戦争を断固完遂して米国の伝統的な価値を守
 るだけでなく、アフガニスタンおよびイラクに民意を反映した民主主義政権を打ち立て
 る強固な決意ともなっているのである。

 連邦最高裁判所の判事九名のうち三、四名は来る四年間に辞任するものと予想されてお
 り、大統領がその後任を指名するが、もしケリー氏が当選しておれば、四年以内に米国
 の最高裁判所の判決は決定的に左寄り、ないしリベラルになり、米国の伝統的な価値と、
 それによって固められた国家の基礎が崩れることになったであろう。ブッシュ大統領の
 再選によって、それが回避されただけでなく、米国司法制度が米国としてより健全にな
 ることが予想される。

 このように現在は米国の伝統的な価値が危機に立たされており、国民の多くがそれとな
 くこの事実を意識している重大な時に、大統領選挙が行われたわけで、国民は米国の伝
 統的な価値を守る選択をしたと言えよう。世界日報 掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
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ブッシュ大統領再選後の経済動向   
   
 引き続き緩慢な拡大基調か/ドル不安の潜在などが弱材料
経済ジャーナリスト 尾関 通允
経済政策課題浮上の可能性も

 ブッシュ大統領再選だから、米国の内外政策路線は基本的には変わらないだろう―とい
 うのが大方の見方だが、厄介かつ重要な政策課題が経済の分野で浮上してくる可能性は
 必ずしも小さくないことに、注意の必要を指摘しておきたい。ドルのレート調整がそれ
 で、目下のところ不透明ながら、浮上してくるとすれば、その時期と調整の幅ならびに
 多角的調整に中国元をも含めるかどうか、さらに、調整後の米国経済運用の在りようい
 かんなどが、その後の国際経済にも日本経済にも、相応の影響を及ぼすことになろう。

 無論、市場にまかせるという従来通りの対応の継続も、選択肢としてはあり得る。その
 場合は、財政と対外経常の双子の赤字がさらに膨らむ懸念は一段と大きくなる。ドルの
 今後は、国際経済の波乱要因として、調整の有無にかかわらず、注視していかざるを得
 ない。

 それはそれとして、日本経済は、緩慢ながら拡大基調を維持している。景況が上向いた
 ままなのに金融が緩和状態を改めず長期金利も小幅の一進一退のまま低迷しているのは、
 経済拡大のテンポが鈍いからだろう。

 金融緩和については、@マネーマーケットの構造変化(法人企業全体としては恒常的だ
 った資金不足が解消している)、A経済バブル破裂後の長期経済停滞下で有利子負債減
 らしに努力する企業が相次いだ、B日銀が政府や公共団体の発行する債券の消化を支援
 するため緩和基調を崩すまいとしている、C円レートの上昇を阻むため政府と日銀が対
 外資本流出を促す政策方針を採っている―などを、挙げることができる。だが、それら
 以上に大きいのは、景況改善の勢いが極めて弱いことで、景況とのかかわりの深い経済
 諸指標も、それを裏付ける姿になっている。

わが国の景況は弱くも改善へ

 いくつかを例示する。

 製品在庫率指数の上がり方が、ゆっくりしている。二〇〇〇年を一〇〇として、鉱工業
 生産指数はこの春に一〇〇を回復しているものの、製品在庫指数の方はそれに及ばず後
 を追う形になっている。在庫管理の合理化努力ということもあろうが、それ以上に、製
 造業全体の事業活動が基本的には慎重だからに違いない。

 関連して、輸入物価指数の上昇がようやく著しいにもかかわらず、国内企業物価指数の
 方は底固いといった程度で、力感に乏しい。消費者物価指数=生鮮食品を除く総合=が
 軟調の域を出ていないことをも含めて考察すると、コストの価格転嫁を貫徹でき得る基
 盤条件は、まだ整ってきていないのではないか―と思える。

 もう一つ、賃金・時間外労働・雇用・失業など労働関係の諸統計は、景気の遅行指標だ
 が、この立ち直りようも、歯がゆいばかりに遅々としている。ここでも、企業の活動意
 欲は、さほどでないことが分かる。

 これらから推察すると、景況は確かにいい方へ向かっているが、まだ力強さに欠ける―
 というべきだろう。そこで、次の問題はその背景だが、これにも、いくつかの要因がか
 かわっている。端的には、経済の拡大を促す力とそれを阻もうとする力とが、交錯して
 いることである。

不透明な海外条件が抑圧要因

 経済の拡大を促す力は、経済内に蓄積し始めている。景気が底入れから上向きに転じて
 経営環境がよくなるにつれ、経営を積極化させる企業が増えるのは、当然の成り行きで、
 そこでは、需要増と供給増とが相互に刺激し合って経済のさらなる拡大を促進する。

 ただし、そのテンポが、最近時点までの実績から眺めた限りでは、実にのろい。のろい
 のが、今回の景気反転局面の特色で、それは、景況の力強い改善を阻む力が他方で働い
 ているからにほかならない。

 その一つは、“失われた十年”なるキャッチフレーズが象徴する長期の不調で諸企業の
 負った経営上の傷―過剰設備・過剰人員・人件費と物件費の節減の遅れ・有形無形の資
 産劣化など―が深かったことだろう。そのため、アツモノにこりてナマスを吹く状態か
 ら脱け出すのに、時間がかかることになりやすい。しかし、それ以上の重しになってい
 るのは、海外条件が不透明なことで、これをおいては抑圧要因は見当たらない。

 ここで不透明な海外条件とは、改めていうまでもなく、@ドル不安をも内蔵する米国経
 済の先行き不透明、A過熱の中国経済の命運いかん、B石油の供給不安はどうなるか―
 の三つで、これらの動向をにらみながら、日本経済は展開していくことになろう。
  (世界日報)掲載許可
Kenzo Yamaoka
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ブッシュ革命実現へ   
   
 社会保障制度の抜本的改革目指す
両院支配、信任投票で決行―ブッシュ大統領
制度の民営化が改革の基本

「オーナーシップ社会」提示

 大統領選挙当選を果たしたブッシュ大統領は四日の記者会見で、二期目の優先目標とし
 て、社会保障制度の抜本的改革を挙げた。極めてセンシティブな問題で、まかり間違え
 ば政治生命を絶たれるような懸案だが、52%の一般投票の支持、上下両院の共和党支配
 という「信任」を受けて、レーガン革命を超える「ブッシュ革命」を断行する決意だ。
 (ロサンゼルス・宮城武文)

 「自分はワシントンのやり方を十分に学んだ。自分はただ大統領職を得るためにここに
 来たのではない。自分にとり結果が大事であり、行おうとしていることを実際に実行す
 ることが重要なのだ」

 四年前、フロリダ州の開票問題でごたごたが続き、大統領当選の確定が大幅に遅れたと
 き、ブッシュ氏は「超党派」で事を成そうと「低姿勢」の構えをアピールしたが、二期
 目のブッシュ大統領は、税制、社会保障制度、医療保険制度の改革を通じて、偉大な保
 守革命を起こす気構えのようだ。

 ジョンソン民主党政権が打ち出した「偉大な社会」政策は、社会保障、医療、教育など
 の分野で貧困層が利益を享受できる道を大きく開いたが、政府支出が膨大になり、大幅
 な財政赤字が経済を圧迫。保守派のレーガン大統領が登場して、国内的には自主努力、
 減税を通じて社会変革を求め、対外的には国防力を強化、内外共に「強い米国の再生」
 を目指し、「レーガン革命」という言葉が一世を風靡(ふうび)した。しかし、レーガ
 ン政権の時は議会で民主党が支配的な位置にあり、思う存分の「保守革命」は実行でき
 ず、妥協したのが歴史的現実だ。

 しかし、米有力紙ロサンゼルス・タイムズ紙は「ブッシュ大統領がやろうとしているこ
 とを実行できれば、ブッシュ氏はレーガン氏と並び称せられる大統領になるだろう」と
 分析し、両院が共和党支配の政治的環境の下で、「保守革命」実現の可能性を指摘した。
 実際、現ブッシュ大統領は、父親のブッシュ元大統領よりも、レーガン元大統領の方を
 「大統領のモデル」として崇拝している。

 中立の立場のケイトー研究所で社会保障政策を研究しているマイケル・タナー氏も「大
 変な闘いが展開されることになるだろうが、今の政治的環境では、社会保障制度の改革
 も可能だ」と、ブッシュ大統領の改革断行が実現することを予想している。

 ブッシュ大統領が実行しようとしている社会保障制度改革の基本は制度の民営化だが、
 基本案は二〇〇一年にブッシュ大統領が超党派で諮問した社会保障制度改革委員会の提
 言に求められる。それには社会保障税を個人の退職金口座に振り込むことなどの案が盛
 られ、社会保障の政府支出を軽減する方策が提言されている。ブッシュ大統領は今回の
 選挙キャンペーンでも「オーナーシップ(所有権)社会」というビジョンを提示し、老
 後は自分で管理し、それだけの財力を自分で所有できるようにすることを促している。

 当然、高齢者や貧困層の社会保障受益が減じられることになり、不満が起きることが予
 想されるため、二年後の中間選挙を念頭に置いて、共和党下院議員の中にもブッシュ大
 統領の社会保障制度改革に反対する動きもある。

 しかし、今回の選挙結果で明らかになったことは、共和党の地盤が強固になり、民主党
 の長期低落傾向を裏付けるような傾向が出ていることだ。同性愛の結婚を憲法修正条項
 で禁止することが住民投票で掛けられるなど、価値観の崩壊に危機感を覚える保守派層
 が多数派となっている現状が、激戦州でのブッシュ勝利、共和党候補選出という結果に
 導いたといえる。「政府の受益削減」という痛みを、「モラル的価値観の擁護」「オー
 ナーシップの拡大」というセールスポイントをもって、宗教保守派層のみならず、広く
 一般国民の意識にまで浸透させていけるかが今後のブッシュ大統領の大きな課題となる
 だろう。
  世界日報 掲載許可
   Kenzo Yamaoka


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