1790.日本財界ガラガラポンと人材流出の危機管理



日本財界ガラガラポンと人材流出の危機管理 アルルの男・ヒロシ 
   
今回は、「ネットワークから外れたものは、新しいネットワークを
作って逆襲する」という話をしたい。

既存のネットワークとは何か。皇室に連なる官僚派政治家の面々や
、早大雄弁会出身の政治家ネットワーク、東大法学部出身の政治家
・官僚ネットワークなどがその代表格であるだろう。戦後の一時期
はそこに、中曽根康弘氏を中心にする「保守派知識人600人」の
サークルが加わる。この「保守派ネットワーク」を研究し、図解解
説したのが、麗澤大学教授の、ロナルド・モースという人であり、
これは例年「モース・ターゲット」として定期的に発表されてきた。
ここ数年は、発表されていないようである。

新しいネットワークとは何か、これこそが現在、日本社会を騒がせ
ている、球界再編の動きとも大きく関わってくるネットワークであ
る。

例えば、現在、郵政民営化担当大臣である竹中平蔵がいる。彼は、
斎藤貴男氏の「不平等社会日本」(文春文庫)によれば、東大法学
部のネットワークから外れてしまった人間である。その大学受験の
時期が、ちょうど大学紛争で東大入試が中止された時期に重なって
いたので、仕方なく、一橋大学に入ったのである。更にいえば、
竹中平蔵こそ、和歌山の靴屋(要するに部落民)出身で、東大に入
れなかったルサンチマンから米国にすり寄って、出世したアメリカ
の手先そのものであるという危ない見方すらできるだろう。別に
これは断じて部落差別を容認している訳ではなく、既存のネットワ
ークから拒絶された人間は、また新しくネットワークを作らざるを
得ないという法則の話をしているだけである。誤解されないように。

ただ、そういうメインストリームから外れざるを得なかった才能あ
る人々は、何か屈折した感情を日本社会に対して持っていくようで
ある。竹中氏は「東大法」のサークルではなく、アメリカの研究所
を中心にした「インナー・サークル」に加入するようになったわけ
である。また、日亜化学の中村修二氏は、才能を安く買われてしま
う日本的会社共同体に嫌気が差して、アメリカのカリフォルニア大
学・サンタバーバラ校に迎えられた。これはれっきとした「産業ス
パイ」としての転身であるといって良い。しかし、中村修二氏に報
いなかった日亜化学にも問題はある。その間隙をうまーく、アメリ
カ・カリフォルニアのサンディエゴ周辺の軍需産業に狙われたのだ
ろう。

また、中国・北朝鮮のエージェントを務めたと糾弾される人々にも
似たような屈折はある。作家の魚住昭氏が暴いたように、野中広務
氏は、部落民出身で、若い頃は朝鮮系の人々と暮らす機会が多かっ
た。こちらも差別というカベによって日本のメインストリームのサ
ークルから除外されてしまった人である。差別というのは、意図し
てか、せざるか、差別した側のサークルに対するルサンチマンを抱
くようになっているらしい。ユダヤ人が差別されまくって、それを
バネにして金融民族として成功したのが良い例だ。

だから、人材流出の危機管理問題は、差別問題、在日韓国・朝鮮人
問題とも密接にリンクしているというべきである。差別された側の
切実な気持ちを考える必要がある。

竹中平蔵こそは、アメリカのエージェントである。最近のUFJの
処分問題では、伊藤金融大臣、竹中経済担当大臣は、及び腰で若手
が息巻いて押さえが効かなかったと日経新聞などは書いている。
こんなものは真っ赤なウソである。日経以外の新聞ではそんなこと
は一言も書いていないし、UFJ処分に至るまでの経緯と各大臣の
発言をトレースしていけば、すぐに分かることである。日経新聞は
ここまで露骨な情報操作を行っている。日経金融新聞では、記者座
談会まで行って、「竹中・伊藤は、UFJの処分はしたくなかった
」と偽りの情報を流そうとしている。困り果てた経済紙である。

柳沢伯夫・金融大臣が、2002年9月の小泉・竹中訪米のあと、
首を切られたのは、「国際金融資本」の要求に、抵抗し、金融機関
への公的資金投入よる不良債権処理路線を受け入れなかったので、
共和党の大統領経済諮問委員会委員長である、コロンビア大学教授
のグレン・ハバードによって旧知の竹中に切り替えられた。このこ
とはジリアン・テットの『セイビング・ザ・サン』(日本経済新聞
社 2004年)に明確に書かれている。

ダイエーの件にしても、ウォルマートが、「ダイエーが欲しいなあ
」と竹中に対して、ゴールドマン・サックスの持田昌典・日本支社
長などを通した形で伝えたのでしょう。シティにくっついていたは
ずの竹中は最近は、ゴールドマンサックスに非常に近くなっている。

それから、日本のレジャー界もアメリカの手先によって代替わりが
始まっていることも注目しておいた方が良いだろう。つまり、野球
利権は全部、オリックスの宮内義彦・会長が乗っ取るということだ。
具体的にいうと、例の明治大学の一場投手の裏金事件が突然はじけ
た件、あれは全部宮内の系統が仕組んだ事でしょう。傍証として、
最近の「日経ビジネス」誌がある。宮内はこういう慣行に対して概
して批判的であったという話がある。

それから、ナベツネの失脚も宮内が寝首をかいた。ナベツネも年齢
的にもう押さえが効かなくなっているが、この代替わりを意志的に
推し進めたのはやっぱり宮内義彦である。
従来、親米派といえば、中曽根康弘−キッシンジャー系に代表され
るように、政治的な色彩が強かったのだが、これからは、ハゲタカ
・ファンドに代表されるような、経済系の人脈が中心になっていく
でしょう。ナベツネに対して、宮内は接近したり、遠ざかったりし
ていて、非常に怪しい動きを見せていました。ダイエーホークスを
宮内の覚えめでたい、安本正義(孫正義)が買収する動きを見せて
いるのもミエミエの動きだ。「楽天・ライブドア」も、ネット企業
人脈で、宮内に最終的につながっていくでしょう。NTTの崩壊は
仲々起こりはしないだろうが、じわじわとNTTは追い詰められて
いくかも知れない。

その宮内ですが、あおぞら銀行の社外取締役に就任している。あお
ぞら銀行のボードメンバーには、前ブッシュ政権の経済担当補佐官
であった、ローレンス・リンゼーAEIシニアフェローもいる。
このあおぞら銀行は、ハゲタカのサーベラス(地獄の番犬ケルベロ
スの英語読み)が買収した銀行だが、宮内はなんと、サーベラス日
本支社のアドバイザリーボードのチェアマンに就任していた時期と
重なります。要するに、宮内のボスは、ダン・クウェールで、この
辺でネットワークの一部が一般人にも分かるように表面に現れてい
る訳だ。宮内のあおぞら銀行買収は、一種の「利益相反」ではない
か?なぜこのことを追及するマスコミが居ないのか!

さらに、今日、横浜ベイスターズの社長が、一場選手の裏金事件で
辞任した。最近では西武グループの堤会長も、西武鉄道の株主問題
で辞任に追い込まれてしまった。これは断じて偶然ではないだろう。
日本経済を管理する、インナーサークルのガラガラポンが本格化し
てきたと言うことに他ならない。宮内の計画する、日本球界版の「
規制改革」だ。国際金融資本の代弁者によって、日本経済の「カジ
ノ化」が着々と進められていく。

それから、防衛問題でいえば、極東条項の見直し問題、武器輸出三
原則の見直し問題。いずれも日本という国家をアメリカの部品の一
つに組み込んでいくもくろみにほかならない。極東条項は死守すべ
きでしょう。日本がアメリカのヤラセのイラク戦争や「テロ戦争」
に関わる必要など一切ありません。日本は一国平和主義が一番です。
(ただし、国連の平和維持部隊に関しては、協力する必要はある。
小沢一郎氏のいうように、明確にその部分を分けていくべきでしょ
う)

ところが、今回の改造組閣では、軍事マニアでクリスチャンの石破
茂が外れたかと想ったら、今度は大蔵族でフルブライト留学生あが
りの大野功統(おおのよしのり)が防衛庁長官に就任した。大蔵族
を防衛庁長官に据えたのには理由がある。

というのは、在日米軍の再編とミサイル防衛計画の本格化を見越し
て、米軍の駐留費やそれを肩代わりする部分の自衛隊の防衛費の配
分などの問題がある。彼は山崎拓派である。山崎拓は首相補佐官で
、三極委員会メンバーの川口順子前外相といっしょに、外交を「補
佐」する。

リチャード・アーミテージの下で、対日外交政策を牛耳っているの
が、椎名素夫の秘書や岩手日報の記者を務めて、日本の内情をスパ
イしていた、マイケル・J・グリーンという人物で、彼は現在、国
家安全保障会議アジア上級部長である。このグリーン(ユダヤ系)
が、日本の若手政治家を操っている。操られているのは、若手では
ないが中堅の山崎拓、中川秀直、若手で、民主党の前原誠司、長島
昭久、山本一太らであり、これらの人物が超党派の改憲グループを
結成している。「志士の会」などの「中二階」はすっ飛ばされそう
な勢いである。

マイケル・グリーンは、もともと、日本の次期支援戦闘機(FSX
)開発にまつわる、いきさつを研究した、ジャパノロジストであり
、この成果を一冊の本に纏めている。これには、現在ホットイシュ
ーになっている、米国に限定しての「武器輸出三原則見直し」の撤
廃が、「政策提言」として織り込まれているのである。この話につ
いては、古森義久氏の名著『透視される日本』に詳しい。(さしず
め今は、「投資される日本」か?)

要するに、今の保守というのは殆どがアメリカの手先なのであり、
そうではない人物を見つける方が難しい。小林よしのり氏の最新の
ゴーマニズム宣言もその辺が感覚として直感で分かっているようで
、非常に歯切れが悪い。しかし、私は彼の言論を高く評価する。

真実は、日本の保守というのは多かれ少なかれ、アメリカの手先で
しかなかったのである。これはもうぬぐいようのない事実である。

だから、私は日本の保守派に半ばあきらめを感じているのである。
保守だろうが左翼だろうが真実の構図で物事を語ってくれる論者を
こそ信じたい。 
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世界日報・ワシントンタイムズ系    アルルの男・ヒロシ
   
そう言えば、レフトビハインドで有名な、ティム・ラヘイ氏ですが
、ムーニストとのつながりもあるんだそうですよ。
ムーニストといえば、ワシントンタイムズですね。ブロックの「ネ
オコンの陰謀」(朝日新聞社)には、文がはっきりしている(鮮明
)な人が、編集部にやってきて云々とか書いています。

そこで疑問なのは、何故、この人達がアメリカで新聞を持たなきゃ
ならんのかという話です。大森実氏の本などにそれらしい記述を探
ってみましたが、駄目ですね。そもそもこの勢力は、北朝鮮の金一
家に対してどういうスタンスで臨んでいるのかということがわから
んです。新聞の論調からすると、反共タカ派で当然に反金一家なの
かとも思いますが・・・。どうもそうでも無さそうな感じ。とりあ
えず、同じ民族の同胞心が強いようです。半島統一に何とか関わり
たいという感じでしょうか。

有田氏の記事の中で、「クムガンサン開発は、現代Gに」とありま
すね。そう言えば、最近話題のケソン工業団地というのはどこの資
本なんでしょうかね。知らないうちに半島が統一に向かっているよ
うな気もします。

参考
http://www.worldtimes.co.jp/book/syougen/main.html

http://www.web-arita.com/touitu4.html 
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幕屋ですか・・・ アルルの男・ヒロシ
   
アルルの男・ヒロシです。

YS氏の最新コラムを読んで一言。

副島隆彦氏によると、創価学会というのは、穏健な仏教原理主義と
いうことですが、これにキリスト教原理主義の類似物である「幕屋
」(手島郁郎・初代代表)やら統一系の勢力が現在のところは(多
分)対立していますが、宗教右派がシオニストに乗っ取られたよう
な事と同じように融合して別の勢力になったら大変でしょうね。
それとも学会は日本的カトリック、親イスラエル系神道団体は、プ
ロテストタント原理主義という様な感じで対立構図が続いていくの
かな〜。ちょっと曖昧でおおざっぱな言い方で済みません。

今のところ学会とこういう勢力の融合はなさそうですが、アメリカ
のキリスト教右派がシオニストに乗っ取られたようなことを考える
と、ちょっと心配だなあ。

創価学会が内部に問題を抱えていることは事実でしょう。っていう
かうんなもの、どこの団体だって抱えているわけでしょう。学会ネ
ットワークが日本のインナーサークルの一つとして昨日しているこ
とも間違いないでしょうが、今のところは分析のレベルとしては、
早大雄弁会のネットワーク程度のものと一応認識しています。私は
学会の人と接触した経験がないので、あまりこだわらないのかもし
れませんが、創価学会の人たちが、組織の利益のみを優先するよう
にならない限りは一応は様子見ということで良いんじゃないでしょ
うか。

原理主義の時代っていう話で思いついたまま書いてみました。 
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Re:幕屋ですか・・・       YS
   
 立正佼成会のバチカンへの接近を考えれば、
「融合して別の勢力」になる可能性もあるかもしれませんね。
ひょっとして、すでになっているのかも。

http://www.kosei-kai.or.jp/news/2002-01/0124-01.shtml 
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件名:  自衛隊イラク派遣は仕切り直しを   
   
 復興支援を再検し計画立てるべき/だらだら続ける日本的悪習改めよ
東京国際大学 教授 渥美堅持
日本流に決定された派遣継続 日本政府は九月二十日、今年十二月十四日で切れる自衛隊
のイラク派遣を一年程度延長する旨の意向を米政府に伝えたと発表した。発表は小泉首相
の国連演説に合わせて行われたものである。小泉首相は国連での演説に先駆けて「自衛隊
派遣延長」の意向を内外記者団に発表していることから外務省、防衛庁の決定は当然のこ
ととして受け止められた。

 この結果、自衛隊イラク派遣の延長問題は期限切れの十二月十四日直前の閣議で最終決
 定される予定である。野党はこの問題を国会で追及するつもりであるようだが、日本人
 の性格から見ても、今までの例から見ても、派遣延長は事実上決定されたとみて間違い
 ないであろう。

 日本政府はイラク人道復興支援特別措置法を制定するに際し、派遣長期化を念頭にその
 期限を四年間としている。それ以前の撤退は、米軍のイラクからの撤退が行われるか、
 もしくは自衛隊への攻撃が拡大し被害が出た場合と考えているようだ。すなわち自衛隊
 のイラク撤退は、米軍の動向により決定されるものであり、日本独自の対イラク計画に
 基づくものではないということになる。

 そうなると米軍がイラクに駐留している間、自衛隊イラク派遣は継続されると見て間違
 いない。米軍の駐留が長期化すれば派遣継続も長期化される可能性が高く、その際も今
 回のように何ら具体的な討議はされず、ただダラダラと流れる日本流の決断方式の中で
 イラク駐留継続が決定されていく恐れは非常に高いといえる。それはゴラン高原への自
 衛隊派遣の実態を見るまでもなく、日本人の性格が継続の自然性を保証したとも言える
 であろう。

支援継続に主体性欠如は問題

 さてこの継続に関する日本政府の考えは、「米軍駐留」という枠組みの中で組み立てら
 れているようである。よって「ゴラン高原派遣」のように無期限に駐留が継続されると
 いう可能性は少ないと判断されるが、米国からの強い要請があった場合もしくは米軍駐
 留の長期化が行われた場合、自衛隊のイラク駐留の長期化は大いに懸念されるというこ
 とになる。

 小泉首相が延長決定を発表したのが米国大統領選前ということから考えても、日本政府
 の自衛隊イラク派遣がイラクの現状を判断し出した結論ではなく、多分に米国の意向に
 基づいたものであるのではないかと懸念される。その意味で、唯一日本人の意思で決定
 される撤退の条件が自衛隊員の犠牲の下に成立するという特措法は、日本人不在の法で
 あるとの疑念を抱かざるを得ない。

 日本政府はイラク復興支援群を派遣する際に米国の意向とは関係なく、イラク国民の救
 済と復興の必要性から決断したと発表し、それを自衛隊行動の大義名分とした。「自衛
 隊は軍隊ではない」という魔法の言葉で自衛隊は神秘的な存在として世に知られている
 が、大義名分なくして動く集団ではない。隊員の一人一人が国の防りに命を捧げる集団
 である以上、その行動においては「意義ある名目」が必要である。その意味で「イラク
 復興」は大義名分として不足はない。こうして自衛隊は過酷なイラクへの活動に踏み切
 ったのである。

 今回の駐留継続決定においても、「イラク復興支援群」の現状分析に基づいて出された
 必要性から「支援継続」が決定されれば、大義名分もまた継承されることになる。それ
 は隊員として受け入れられたであろう。

復興に真の日本の姿勢を示せ

 イラク復興は意義ある行動である。中東の中原、イラクの安定は中東の安定につながり、
 それはエネルギーを通して世界の平和につながる。その意味でイラク復興支援は「意義
 ある目的」であり、イラク支援継続は正当性を持つといえよう。この意味においてイラ
 ク支援は真の日本の姿勢でなければならない。

 時あたかも小泉首相は国連総会の壇上から、日本の国連安全保障常任理事国メンバーと
 して十分に活躍できることを主張した。それが日米関係の枠組みの中で自衛隊の行動を
 決定するというのは、矛盾した決定ではないのかとの疑問が持たれる。イラク復興は日
 本国民の願うことである。そのためには十二月十四日を前にして単純に継続を決定する
 のではなく、一旦引き揚げて後、これまでの行動を十分に再検し、新たな復興支援プロ
 グラムを作り上げてから決定すべきことではなかったかと思われる。

 能力を有するイラク人の日本での再教育を含めてより効率の良い、継続性のある復興支
 援計画をまず立てることが先決であった。世界日報 掲載許可済み
Kenzo Yamaoka
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件名:  テロ先鋭化/ブッシュ再選阻止の狙いも   
   
  イラクでは、五つのキリスト教会を狙った同時爆破事件が起きるなど反米武装勢力のテ
 ロ攻撃が拡大し先鋭化している。今月に入ってエジプトやフランスなどでもテロが起き
 た。
 米国では、十一月の大統領選を前に、ブッシュ共和、ケリー民主両候補によるイラク戦
 をめぐる舌戦が展開されているが、勝敗の鍵の一つとなるのは現地情勢であり、テロ攻
 勢はブッシュ再選阻止を狙ったものといえる。

情勢悪化させケリー支援

 米評論家の中には「オクトーバー・サプライズ」(十月の奇襲)の名のもとに、今月に
 入ってからの武装勢力やテロリストの攻勢激化を予想する向きがあった。

 米大統領選の最大の争点はイラク戦争であり、ケリー候補が同戦争を“間違い”と批判
 しているところから、イラク情勢を悪化させ、同候補を助けようというのがテロリスト
 らの狙いとみられる。

 両候補の相違点は、ブッシュ氏がイラクをテロリストとの決戦場とみなし、より広い視
 点から戦争をやり抜く構えなのに対し、ケリー氏は米軍を早く撤退することを最優先さ
 せていることだ。武装勢力やテロリストはケリー氏のその見解に期待していると見てよ
 い。

 ゲリラ勢力が米国の大統領選挙に影響を与えようとして攻勢に出た前例に、一九六八年
 のベトナム戦争でのテト(旧正月)攻勢がある。

 同攻勢は、作戦的には多数の犠牲者を出した共産ゲリラ側の敗北だったが、政治的には
 彼らの勝利となった。

 サイゴンの米大使館までが攻撃されたことで、米国民に衝撃を与え、反戦運動が一挙に
 高まり、ジョンソン大統領に選挙への再出馬を断念させた。大統領に選出されたニクソ
 ン氏はハト派ではなかったが、共産側が期待したように米軍撤退を開始し、サイゴン政
 権は崩壊した。

 イラク戦争では今年三月、テロリストがマドリードの列車爆破テロでスペインの総選挙
 に影響を与え、イラクからのスペイン軍撤退を主張する野党の勝利を助けた。

 ただ、アフガニスタン大統領選挙は民主的に行われ、米国の推すカルザイ氏が圧勝する
 見通しだ。オーストラリアの総選挙でもイラク撤退派の労働党が敗北し、テロリストに
 打撃を与えている。

 アルカイダやイラクの武装勢力は、CNNなど米報道機関の情報を注視しており、イラ
 クでの米兵の戦死者が千人を超えたことで、戦死者の遺族や派遣兵士の家族たちの間に
 不満が高まっていることをよく知っている。

 イラク情勢に改善の見込みがないと判断すれば、米国民のブッシュ支持は下がる可能性
 があろう。

 一部には国際テロリストが米国内で9・11同時多発のようなテロを行うという予測は
 あるが、その可能性は少ない。米国内でのテロは米国民を再団結させて、ブッシュ再選
 を助ける可能性の方が強いからだ。

戦いの行方が選挙に影響

 ケリー候補の「誤算による間違った場所、間違った時での戦争」とする批判にはくみし
 ない。

 だが、イラク戦争で犠牲者が増え続ければ、米国民によほどの覚悟がない限り、ブッシ
 ュ支持を続けることは困難だろう。米選挙の行方がイラク戦を左右するだけでなく、イ
 ラク戦の行方が米選挙を左右するというのが現状である。

 イラク戦争の負担に米国民は耐えられるか。保革が拮抗する今度の選挙での米国民の選
 択は、日米同盟関係にも影響を与えることは必至だ。世界日報 掲載許可済み
Kenzo Yamaoka

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